Problem child in Parallel universe【更新停止】   作:無名篠(ナナシノ)

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ゴタゴタにつき投稿が遅れました。不定期更新ってこんなもんだよね!
いろいろ切羽詰まった状態でしたので内容がアレかもしれませんが、お楽しみ頂けたら幸いです。

読者の皆様、大変お待たせ致しました。

では、どうぞ!


第三話 現状のコミュニティ

 

あの後、ジンの後に続いて石造りの通路を通り箱庭の幕下に出た飛鳥と耀。ぱっと頭上に眩しいが降り注ぐ。遠くに聳える巨大な建築物と大空覆う天幕を眺めると、三毛猫がミャーミャーと鳴いた。

 

 

「…………本当だ。外から見た時は箱庭の街並みなんて見えなかったのに」

 

 

上空から落下中に箱庭を覆う天幕は見えたが、内側は見えていなかった。だというのに太陽が姿を現している。この奇妙な状態に首を傾げる。

 

 

「えー……と、箱庭を覆う天幕は内側に入ると不可視になるんです。そもそもあの巨大な天幕は太陽の光を直接受けられない種族のために設置されていますから」

 

 

青空を見上げていた飛鳥はピクリと片眉を上げ皮肉そうに言った。

 

 

「あら、それじゃあこの都市には吸血鬼なんかも居るのかしら?」

 

「え? いや、居ますけど」

 

「………………そう」

 

 

皮肉のつもりで聞いた問いだが、当然のように返ってきたことに複雑そうな表情をする飛鳥。まさか同じ街に住めるような種族とは思えなかった。

 

 

「─────」

 

「あら、何か言った?」

 

「……別に」

 

 

素っ気な返事を返す耀に首を傾げる飛鳥。だがそれ以上は追求せず、目の前で賑わう噴水広場に目を向ける。噴水の近くには洒落た感じのカフェテラスが幾つもあった。

取り敢えずどこかの店に入ろうと思い、妙にソワソワしながら辺りをチラチラ見ているジンに聞いてみる。

 

 

「ジンくん、オススメの店はあるかしら?」

 

「え……あ、すいません。段取りはすべて黒ウサギに任せていたので………よかったらお好きな店を選んでください」

 

「それは太っ腹なことね」

 

 

そう言ってどの店にするか選ぶ飛鳥。その傍には先程のようにソワソワしているジン。それもそのはず、彼らの周りの人々からの目線殆どがこちらを向いているからだ。視線の先には耀に引きずられている少年がいる。未だ目覚める気配はなく、むしろ深めているだけな気がするがそれをツッコム気力も無い。

なんとも居た堪れない気分になりながら待っていると、飛鳥が身近にあった ”六本傷” の旗を掲げるカフェテラスを指差した。

 

 

「あそこにしましょう。いいわよね? ジンくん」

 

「は、はい! では早速行きましょう!」

 

 

早くこの場から逃げたかったジンは飛鳥の提案に即答した。その時声が変に上ずったが誰も気にしなかった。

 

カフェテラスに座り、耀が少年をドサッと地面に下ろすと、店の奥から素早い動きで注文を取りに少女が飛び出してきた。

 

 

「いらっしゃいませー! ご注文はどうしますか?」

 

(猫耳………!?)

 

 

注文を取りにきた少女には猫耳、尻尾といった猫と思えるものがあった。

黒ウサギのような者がいるなら他にも似たような者はいるだろうと思っていたが、まさか異種族と共存しているとは思わなかった。

 

 

「紅茶二つに緑茶一つ。あ、やっぱり緑茶は二つで」

 

「紅茶と緑茶を二つずつ……と。以上でよろしいですか?」

 

「あ、あと軽食にコレとコレと」

 

「はいはーい。ティーセット四つにネコマンマですね」

 

 

………ん? と飛鳥とジンが不可解そうに首を傾げる。今我々が言ったのは紅茶に緑茶、ティーセットだけ。ネコマンマなんて言葉は言ってない。

 

 

「ネコマンマなんて頼んでないわよ?」

 

「いーえ、確かに頼まれましたよ。そちらの綺麗な毛並みの旦那さんが」

 

 

そう言って示す先には耀の膝に座る三毛猫の姿。ジンと飛鳥は驚いたが、彼ら以上に驚いているのは耀だった。信じれない物を見るかのような眼で猫耳の店員に問いただす。

 

 

「三毛猫の言葉、分かるの?」

 

「そりゃあ分かりますよー、私は猫族なんですから。お歳のわりに随分と綺麗な毛並みの旦那さんですし、ここはちょっぴりサービスさせてもらいますよー」

 

 

自身の耳と尻尾を指差しながら可愛らしくウィンクをする猫耳店員。

突然三毛猫がせわしなく鳴き始めたかと思うと、

 

 

「やだもー! お客さんったらお上手なんだから♪」

 

 

猫耳娘は照れたように長いの鉤尻尾を揺らしながら店内に戻る。

 

その後ろ姿を見送った耀は嬉しそうに笑って三毛猫を撫でた。

 

 

「………箱庭ってすごいね。私以外にも三毛猫の言葉が分かる人がいたよ」

 

 

ニャーと三毛猫は一鳴きすると、感慨深い様にほっこりしていた。

 

 

「ちょ、ちょっと待って。貴女もしかして猫と会話できるの?」

 

 

珍しく動揺した声の飛鳥に、耀はコクリと頷いて返す。ジンも興味深く質問を続けた。

 

 

「もしかして猫以外にも意思疎通は可能ですか?」

 

「うん。犬でも猫でも生きているなら誰とでも話は出来る」

 

「それは素敵ね………。じゃあそこに飛び交う野鳥とも会話が?」

 

 

「うん、きっと出来る………かも。ええと、鳥で話したことがあるのは雀や鷺やホトトギスぐらいだから…………あ、ペンギンがいけたからきっと大丈夫だとおも」

 

「「ペンギン!?」」

 

「う、うん。水族館で知り合った。他にもイルカ達とも友達」

 

 

耀の声を遮るように飛鳥とジンは声を上げた。

二人とも驚いた点は同じだ。野鳥や野良犬や野良猫などならまだしも、ペンギンと会話する機会があるとは思わなかったのだろう。

 

 

「し、しかし全ての種との会話なら心強いギフトですね。この箱庭において幻獣との言語の壁というのはとても大きいですから」

 

「そうなんだ」

 

「はい。一部の猫族やウサギのように神仏の眷属として言語中枢を与えられていれば意思疎通は可能ですけど、幻獣はそれぞれが独立した種の一つです。同一種か相応のギフトがなければ意思疎通は難しいというのが一般的です。箱庭の創始者の眷属に当たる黒ウサギでも、全ての種とコミュニケーションをとるのは出来ないはずですし」

 

「そう………春日部さんは素敵な力があるのね。羨ましいわ」

 

 

笑いかけられると、困ったように頭を掻く耀。対照的に飛鳥は憂鬱そうな声と表情で呟いた。

耀と飛鳥、気絶している少年もだが、出会って数時間。それほどまでに短い間柄だが、それでも飛鳥の表情が彼女らしくないと感じた。

 

 

「久遠さんは………」

 

「飛鳥でいいわ。よろしくね、春日部さん」

 

「う、うん。私も耀でいい。飛鳥はどんな力を持っているの?」

 

「私? 私の力は………そうね、まぁ酷いものよ。だって───」

 

「おんやぁ?誰かと思ったら東区画の最底辺コミュニティ ”名無しの権兵衛” のリーダー、ジン=ラッセル君じゃないですか。今日はオモリ役の黒ウサギは一緒じゃないんですかぁ?」

 

 

突然、品の無い上品ぶった声が飛鳥の声を遮り、ジンの名を呼ぶ。振り返ると2mを超える巨体を明らかにサイズが合っていないピチピチのタキシードで包んだ男がいた。

ジンは顔を顰めて男に返事をする。

 

 

「僕らのコミュニティは ”ノーネーム” です。”フォレス・ガロ” のガルド=ガスパー」

 

 

ガルドと呼ばれた男は鼻で笑うとギロリとジンを睨みつけた。

 

 

「どちらでも同じ意味だろう? この名無しめ。聞けば新しい人材を呼び寄せたらしいじゃないか。コミュニティの誇りである ”名” と ”旗印” を『奪われ』てよくも未練がましくコミュニティを存続させるなどできたものだ────そう思わないかい、”お嬢様方”」

 

 

愛想笑いを飛鳥たちに浮かべながら三人が座るテーブルの空席に勢いよく腰を下ろすガルド。しかし飛鳥と耀は、相手の失礼な態度に冷ややかな態度で返す。

 

 

「失礼ですけど、同席を求めるならばまず氏名を名乗ったのちに一言添えるのが礼儀ではないかしら?」

 

「おっと失礼。私は箱庭上層に陣取るコミュニティ ”六百六十六の獣” の傘下である」

 

「烏合の衆の」

 

「コミュニティのリーダーをして、ってマテやゴラァ!! 誰が烏合の衆だ小僧オォ!!」

 

 

ジンに横槍を入れられたガルドの顔は、怒鳴り声とともに激変した。口は耳元まで大きく裂け、肉食獣のような牙とギョロリと剥かれた瞳が激しい怒りとともにジンに向けられる。

 

 

「口を慎めよ小僧ォ………紳士で通っている俺にも聞き逃せねぇ言葉はあるんだぜ………?」

 

「森の守護者だったころの貴方なら相応に礼儀で返していたでしょうが、今の貴方はこの二一〇五三八〇外門付近を荒らす獣にしか見えません」

 

「ハッ、そういう貴様は過去の栄華に縋る亡霊と変わらんだろうがッ。自分のコミュニティがどういう状況に置かれてんのか理解できてんのかい?」

 

「はい、ちょっとストップ」

 

 

お互いを邪険に罵り合う二人を遮るように手を上げたのは飛鳥だった。

 

 

「事情はよくわからないけど、貴方達二人の仲が悪いことは承知したわ。それを踏まえたうえで質問したいのだけど───」

 

 

飛鳥が鋭く睨む。しかし睨む相手はガルドではなくジンであった。

 

 

「ねぇ、ジン君。ガルドさんが指摘している私達のコミュニティが置かれている状況………というものを説明していただける?」

 

 

飛鳥にそう言われ、ジンは言葉に詰まった。と同時に、自分がとんでもない失態を犯したことに気づく。それは黒ウサギと口裏を合わせて隠していたことだった。

飛鳥はその動揺を逃さず畳み掛ける。

 

 

「貴方は自分のことをコミュニティのリーダーと名乗ったわ。なら黒ウサギと同様に、新たな同士として呼び出した私達にコミュニティとはどういうものなのかを説明する義務があるはずよ。違うかしら?」

 

 

追及する声は静かに、しかしナイフのような鋭い切れ味でジンを責める。

それを見ていたガルドは獣の顔を人に戻し、含みのある笑顔と上品ぶった声音で飛鳥に肯定する。

 

 

「レディ、貴女の言う通りだ。コミュニティの長として新たな同士に箱庭の世界のルールを教えるのは当然の業務。しかし彼はそれをしたがらないでしょう。よろしければ ”フォレス・ガロ” のリーダーであるこの私が、コミュニティの重要性と小僧───ではなく、ジン=ラッセル率いる ”ノーネーム” を客観的に説明させていただきますが」

 

 

飛鳥は訝しげな顔で一度だけジンを見る。ジンは俯いて黙ったままだ。

 

 

「………そうね。お願いするわ」

 

「承りました。まず、コミュニティとは読んで字のごとく複数名で作られる組織の総称です。受け取り方は種によって様々でしょう。人間はその大小で家族とも組織とも国とも言い換えますし、幻獣は ”群れ” とも言い換えられる」

 

「それぐらい分かるわ」

 

「はい、一応確認までに。そしてコミュニティの縄張りを主張する大事な物。この店にも大きな旗が掲げられているでしょう? あれがそうです」

 

 

ガルドはカフェテラスの店頭に掲げられてある ”六本傷” が描かれた旗を指さす。

 

 

「六本の傷が入ったあの旗印は、この店を経営するコミュニティの縄張りであることを示しています。もし自分のコミュニティを大きくしたいと望むのであれば、あの旗印はのコミュニティに両者合意で『ギフトゲーム』を仕掛ければいいのです。私のコミュニティは実際にそうやって大きくしました」

 

 

自慢げに語るガルドはタキシードの胸ポケットに刻まれた模様を指さす。

そこには虎の紋様をモチーフにした刺繍が施されていた。

耀と飛鳥が辺りを見渡すと、広場周辺の商店や建築物には同様の紋が飾られていた。

 

 

「その紋様が縄張りを示しているのなら………この近辺はほぼ貴方達のコミュニティが支配している、と考えていいのかしら?」

 

「ええ、残念なことにこの店のコミュニティは南区画に本拠を構えているため手出しできませんが………。

この二一〇五三八〇外門付近で活動可能な中流コミュニティは全て私の支配下です。残すは本拠が他区か上層にあるコミュニティと───奪うに値しない名もなきコミュニティくらいです」

 

 

クックッと嫌味を込めた笑いを浮かべるガルド。その視線はジンへと向いており、当の本人はやはり顔を背けたままローブをぐっと握りしめている。

 

 

「さて、私のコミュニティの話はここまでにしましょう。そしてここからがレディ達のコミュニティの問題。実は貴女達の所属するコミュニティは数年前まで、この東区画最大手のコミュニティでした」

 

 

ガルドの突然な内容に飛鳥が驚きの声を上げる。

 

 

「あら、それは意外ね」

 

「とはいえリーダーは別人でしたけどね。ジン君とは比べようもない優秀な男だったそうですよ。ギフトゲームにおける戦績で人類最高の記録を持っていた東区画最強のコミュニティだったそうですから」

 

 

ガルドは一転してつまらなそうな口調で語る。

 

 

「彼は東西南北に分かれたこの箱庭で、東のほかに南北の主軸コミュニティとも親交が深かったらしいのです。私はジン君のことは毛嫌いしてますが、これは本当に凄い事なんですよ。南区画の幻獣王格や北区画の悪鬼羅刹が認め、箱庭上層に食い込むコミュニティだったというのは嫉妬を通り越して尊敬に値する凄さです。───まぁ先代は………ですがね」

 

 

全て事実なため言い返せず、ジンは歯を食いしばり耐える。

ガルドはそんな彼を気にせず話を続けた。

 

 

「人間の立ち上げたコミュニティではまさに快挙ともいえる数々の栄華を築いたコミュニティは………敵に回してはいけないモノに目を付けられた。そして彼らはギフトゲームに強制的に参加させられ、たった一夜で滅ぼされた。『ギフトゲーム』が支配するこの箱庭の世界、最悪の天災によって」

 

「「天災?」」

 

 

飛鳥と耀は同時に聞き返した。それほど巨大な組織を滅ぼしたのがただの天災というのはあまりにも不自然に思えたからだ。

 

 

「それは比喩にあらず、ですよレディ達。彼らは箱庭で唯一最大にして最悪の天災───俗に ”魔王” と呼ばれる者達によって………ね」

 

 

軽薄に、しかし重々しく真剣みを帯びた声でガルドはそう言い放つのだった。

 

 

 




──オマケ──


その頃の黒ウサギ




黒「あぁーもう! 一体どこまで行っちゃったんですか!? 十六夜さーん! カムバァァァァクッ!!」





いまだに十六夜を探し回っていた。



───主人公、いまだ目覚めず。
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