Problem child in Parallel universe【更新停止】   作:無名篠(ナナシノ)

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本ッ当にお待たせいたしました。やっとこさ完成にこぎつけたした。

四話をコツコツと仕上げていく中で、ジワジワと増えていくUA&感想&お気に入り。感無量の極みでございます。

いざ投稿しようものなら納得がいかなくなったり付け足したくなったり、書いたら書いたで終わり直前にパーになったりで散々な感じで進んでましたが、なんとか書き上げました。お楽しみいただけたら幸いです。

ではどうぞ!


第四話 堕落の虎

 

 

「魔王?」

 

 

新たに聞き覚えのない言葉に首を傾げる二人。

 

 

「えぇ、貴女達の世界で取り上げられている ”魔王” とは少し差異がありますがね。”主催者権限(ホストマスター)” という箱庭における特権階級を持つ修羅神仏、それが ”魔王” です」

 

 

またもや聞き覚えのない言葉が飛び出し首を傾げる二人。ここまでくると流石に頭がショートする、そう思い飛鳥は問い返した。

 

 

「ちょっと待って。その ”主催者権限(ホストマスター)” というのは───」

 

「もちろん、そのことについても説明させていただきます」

 

 

そしてガルドは語り始めた。

 

主催者権限(ホストマスター)” とは、ギフトゲームを自由に開催できる権限のことで、いかなる難易度のゲームも、 ”主催者権限” にかかればどんな理由であろうと参加させられる。そして先に待つものは圧倒的な力で滅ぼされるという絶望。

 

 

故に ”魔王”、故に ”天災”。

 

 

その ”魔王” のゲームに敗北したジンのコミュニティは、コミュニティに必要な全てを奪われた。全てとはそれすなわち、名と旗印。そして寝食をともにし支え合った仲間。

その全てがたった一つのゲームで消え去ったという。

 

そんな彼の説明を静かに聞いていた飛鳥と耀は、それぞれに出されたカップを片手に話を反復する。

 

 

「………なるほどね。だいたい理解したわ。つまり ”魔王” というのはこの世界で特権階級を振り回す修羅神仏のことを指し、ジン君のコミュニティは彼らの玩具として滅ぼされた。そういうこと?」

 

「その通り。神仏というのは古来、生意気な人間が大好きですから。愛しすぎた挙句に使い物にならなくなるのはよくあることなんですよ」

 

 

ガルドはカフェテラスの椅子の上で大きく両手を広げ、皮肉そうに笑う。

 

 

「名も旗印も主力陣も全て失い、残ったのは膨大な居住区画の土地だけ。今や失墜した名も無きコミュニティの一つでしかありません」

 

「………」

 

「それに、名乗ることを禁じられたコミュニティに一体どんな活動ができるでしょう。商売? 主催者(ホスト)? 名も無き組織など信用されません。優秀な人材も失墜したコミュニティに加入したいと思うでしょうか?」

 

「………誰もそうは思わないでしょうね」

 

 

そう。ジンはそうやって出来もしない夢を掲げて過去に縋り付く、恥を知らず亡霊でしかない。ガルドは豪快な笑顔で彼とそのコミュニティを嘲笑う。

 

 

「もっと言えば彼はコミュニティの再建を掲げてはいるものの、その実態は黒ウサギにコミュニティを支えてもらうだけ。ウサギといえばコミュニティにとって所持しているだけで大きな ”箔” のつく存在。どこのコミュニティでも破格の待遇で愛でられる筈です。なのに彼女は毎日毎日子供達の為に僅かな路銀でやりくりしている」

 

 

それが非常に残念でなりません。と付け加る。

 

 

「………事情はよくわかったわ。それで、貴方はどうして私達に丁寧に話をしてくれるのかしら?」

 

 

飛鳥のもっともな疑問に、待ってましたと言わんばかりに笑みを深めるガルド。

 

 

「単刀直入に言います。もしよろしければ黒ウサギ共々、私のコミュニティに来ませんか?」

 

「な………なにを!?」

 

 

ジンは焦った。藁にも縋る思いで呼び出した優秀と太鼓判を押された人材を取られたら、もうコミュニティの未来がない。再建することも仲間たちを取り戻すことも不可能になる。

自分達のコミュニティとガルドのコミュニティを比べたらあちらの方が条件は美味しい。

 

 

「そうね………確かにガルドさんの話を聞いている限りだと貴方のコミュニティに入った方が賢明な選択といえるでしょうね。崖っぷちギリギリのコミュニティと支配者だと天と地ほど差があるもの」

 

 

飛鳥の言葉を聞いてガルドは勝利を確信し、いやらしい笑みを浮かべた。

ジンはこれから言われるであろう言葉にギュッと目を瞑り、諦めと共に待つ。

 

 

 

 

「でも結構よ」

 

 

 

 

しかし予想に反して彼女の返事はNO。キッパリとガルドの勧誘を蹴った。

ジンとガルドは理解できないような惚けた表情で「はっ?」と間抜けた声を出し、飛鳥の顔を窺う。

 

 

「聞こえなかった? 「結構よ」と言ったのよ。私はジン君のコミュニティで間に合ってるわ」

 

 

彼女は再び言うと何事もなかったようにティーカップの紅茶を飲み干すと、耀に笑顔で話しかける。

 

 

「春日部さんは今の話をどう思う?」

 

「別に、どっちでも。私はこの世界に友達を作りに来ただけだもの。どっちのコミュニティに属するかなんてどうでもいい」

 

「あら意外。じゃあ私が友達第一号に立候補していいかしら? 私達って正反対だけど、意外に仲良くやっていけそうな気がするのよ」

 

 

飛鳥は自分の髪を触りながら耀に問う。口にしておきながら恥ずかしかったのだろう。

耀は無言で少し考えた後、小さく笑って頷いた。

 

 

「………うん。飛鳥は私の知る女の子とはちょっと違うから大丈夫かも」

 

「そう、嬉しいわ。なら今度黒ウサギも交えて女の子同士、お茶でも飲みながら話ましょうか」

 

「………それ、ガールズトークっていうんだよ?」

 

「がーるず、とーく……?」

 

「えーと、ガールズトークっていうのはね………」

 

 

リーダー達そっちのけで話が盛り上がる二人。全く相手にされなかったガルドは顔を引きつらせ、それでも取り繕う様に大きく咳払いして二人に問う。

 

 

「………理由を教えてもらっても?」

 

「だから、間に合ってるのよ。春日部さんは聞いての通り。そうよね?」

 

「うん」

 

「そして私は裕福だった家も、約束された将来も、おおよそ人が望みうる人生の全てを支払ってこの箱庭にきたのよ? それを小さな小さな一地域を支配しているだけの組織の末端として迎え入れてやる、などと慇懃無礼に言われて魅力を感じるとでも思ったのかしら。だとしたら笑い物ね。貴方自身の身の丈にあった台詞を言われた方がマシよ」

 

 

ピキリとガルドに青筋が立つ。だが必死に堪え、自称紳士としての言葉を探していた。

そんなガルドを無視して飛鳥はさらに言葉を続ける。

 

 

「何よりこの久遠飛鳥がもっとも好きなことの一つは、自分の思い通りに事が運ぶと思っているヤツにキッパリと断ってあげる事よ………わかったら修行して出直して来なさい、エセ虎紳士さん?」

 

 

ピシャリと言い切る。ガルド=ガスパーの怒りは自身の沸点を超えていた。だが自称しているとはいえ紳士としての肩書きがなんとかブレーキをかけていた。

 

 

「お………お言葉ですが───」

 

「私の話はまだ終わっていないわ」

 

 

ガルドの有無を言わさずに話し出す飛鳥。彼女の内に渦巻いているある疑問をジンに問いかける。

 

 

「貴方はこの地域のコミュニティに ”両者合意” の上で勝負を挑み、勝利したと言っていたわ。けれど………ねぇ、ジン君。コミュニティそのものをチップにするゲームはそうそうあることなの?」

 

「い、いいえ。どうしようもない時なら稀に、でもかなりのレアケースです」

 

「そうよね。では ”魔王” でもない貴方がコミュニティを賭けあうような大勝負を強制的に続けることが出来たのか、そこに座っておしえてくださる(・・・・・・・・・・・・・・)?」

 

 

飛鳥がそう言うと、ガルドは椅子にヒビが入るほど勢いよく座り込む。

 

 

(なん………だ……!?)

 

 

ガルドの意に反した身体の行動。まるで強制的に動かされたかの様だった。

理解不能の状況にパニックになったガルドの思考が回転するよりも早く事は動き始めていた。

 

 

「お、お客さん! 当店で揉め事は控えてくだ───」

 

「ちょうどいいわ。猫の定員さんも第三者として聞いていてくれないかしら? きっと、面白いことが聞けるハズよ」

 

 

飛鳥が話せと呟くと、ガルドは語り始めた。

 

 

「………あ、相手コミュニティの女子供を攫っ…て脅迫し、ゲームに乗らざるッ………を得ない状況に圧迫するっ。コミュニティを、吸収した後も……」

 

「吸収した後も?」

 

「ガルド=ガスパー………?」

 

 

様子がおかしい。飛鳥の質問に答えているが、答え方が明らかに不自然だ。いうなれば、糸で操られる人形といった所か。

体が震え、テーブルにヒビが入るほど力を込めていることから必死に抵抗はしているようである。だが、結果はどれも無意味に終わっている。

 

 

「数人ずつ………ッ子供を人、質にとってある」

 

 

ピクリと飛鳥の片眉が動く。言葉や表情には出さないものの、嫌悪感が滲み出ていた。コミュニティには無関心だった耀も不快そうに目を細めている。

 

 

「………そう、それで? その子供達は何処に幽閉されているの?」

 

「もう……殺した………ッ」

 

 

その場の空気が瞬時に凍った。

誰一人として、自身の耳を疑った。

ジンも、定員も、耀も、飛鳥でさえも。

ガルドただ一人のみが命令されたまま淡々と言葉を紡ぎ続ける。

 

 

「始めてガキ……共をッ…連れてきた日、泣き声が頭にき……て殺した。それ以降は自重しようと……ッ思ったが、泣き続けるのでやっぱり殺…した。だから……ッ! 連れてきたらすぐに殺すことに決め───」

 

黙れ(・・)

 

 

ガチンッ! とガルドの口が先ほど以上に勢いよく閉ざされた。

ジンは思った。ガルドの奇行は全て飛鳥が言葉を発した通りに動いている。つまり、

 

 

(飛鳥さんのギフトは他人に行動を強制させる………?)

 

 

そう当たりを付け飛鳥の方を向くが、一瞬恐怖で体が固まった。

なぜなら彼女は先ほど以上に『スゴ味』を増し、絶対零度な目でガルドを睨んでいたからだ。

 

 

「………清々しい程に外道ね。流石は人外魔境の箱庭の世界といったところかしら」

 

 

絶対零度の目のままジンに話を投げかける飛鳥。その冷ややかな視線に慌てて否定する。

 

 

「か、彼のような悪党は箱庭でもそうそういません!」

 

「なら、今の証言で箱庭の法がこの外道を裁くことはできるのかしら?」

 

「……厳しいです。もちろんガルドの行為は違法ですが………裁かれるまでに箱庭の外に逃げてしまえばそれまでです」

 

 

それは、ある意味『裁き』とも言えなくもない。リーダーが消えれば、烏合の衆である ”フォレス・ガロ” が瓦解するのは目にみえている。

だが、久遠飛鳥はそれで満足するほど安い人物ではなかった。

 

 

「そう。なら仕方がないわ」

 

 

苛立たしげに指を鳴らす。それが合図なのだろう。ガルドを縛り付けていた力が拡散し、体に自由が戻る。

 

 

「俺に………手を出したな……」

 

 

ワナワナと体を震わせ不自然に膨張していくガルド。顔は虎に変わり、体毛も変色して黒と黄色のストライプ模様が浮かび上がる。

彼を包んでいたスーツは耐えきれずに弾け飛んだ。

 

 

「この───小娘がアァァァァァ!」

 

 

雄叫びとともにテーブルを粉砕する。どれほどの怒りがガルドの中で渦巻いているのかがよくわかる光景だった。

 

 

「テメェ、どういうつもりかは知らねぇが………俺の上に誰が居るかわかってんだろうなぁ!?箱庭第六六六外門を守る魔王が俺の後見に「キャァァァァァァァ!!」───ナンダァ!?」

 

 

突然響いた悲鳴の方へガルドは苛立ちを抑えようともせずに睨む。彼にしては当然だろう。上手く引き込めるかと思った新戦力が、自分のコミュニティではなくジンの方に付き、尚且つ秘密までギフトらしき力でベラベラと喋らされたのだから。

視線の先には、悲鳴の主である猫の店員が震えながらガルドを指している。いや、正確にはその下。ガルドによって破壊されたテーブルを指差していた。

そこには耀に引きずられ、今の今まで忘れ去られていた少年がテーブルの残骸の中に倒れていた。

 

再び空気が凍り、あちこちから悲鳴が上がる。

 

ガルドは訳がわからなかった。”ノーネーム” によって異世界から呼び出された者達を奪うつもりで近づいたのに、拒否られるは秘密を喋らされるは。しかも異世界の者はもう一人居て、自分の手で倒れていると言われている。

 

飛鳥と耀は忘れてたような表情をするものの、何を思いついたのか飛鳥の目が怪しく光る。耀も同じなのか笑みが黒い。

二人は目を合わせると頷きあい、行動に移した。

 

 

「あぁ、 なんてこと!? 私達の仲間が死んでしまったじゃない!!この……人でなし!外道!!悪魔!!」

 

「やっぱり彼は生き残れない運命なんだね………」

 

「それは切なすぎませんか!?」

 

 

今二人が行っているコレ。言うなれば『この状況、殺人未遂の疑いで手っ取り早く裁いてもらおう』作戦。

ガルド自身はすでに違法行為で裁かれるのは確定だが、待っている時間がもどかしい。だからこの状況を利用してさっさと裁いてもらおうという魂胆である。

当然、彼自身を知らない故に身に覚えのないガルドは狼狽える。

 

 

「ま、待て! 俺は殺ってな───」

 

「黙りなさい。 テーブルの残骸に埋もれて倒れているのがその証拠よ!」

 

「言い逃れなんて………流石は外道」

 

「あー……やはり人質を殺すような人物のやる事は残虐ですね」

 

 

それぞれがガルドを強引……というかなんというか。とにかく、言葉と状況を巧みに扱い追い詰めて行く。ジンも飛鳥達の意図に気付いたのか乗ってくる。

 

ガルドは無実を主張するものの、先程の自白により誰からも信用されていなかった。

 

このままいけば押し切れる。そう思った飛鳥はさらに言葉を紡ごうとした。だが、

 

 

 

 

「………うるさいなぁ。静かにしてくれ、耳に響くから」

 

 

 

 

気怠げな目とともに少年が、のっそりと起き上がった。

 

 

「ふんっ!!」

 

「───ぐッ!?」

 

 

とっさに飛鳥と耀が起き上がった少年に蹴りを叩き込む。飛鳥のつま先が溝内に、耀の踵が脳天に、それぞれヒットした。

強烈な蹴りを食らった少年は、白目をむいて昏倒する。

妙にやりきった表情の二人は手を叩くとガルドに向き直り、

 

 

「なんてことをしてくれたのよ!」

 

「やっぱり彼は生き残れない運命なんだね………」

 

 

彼が起き上がったことを無かった事にした。これにはガルドも少年に同情の念を禁じ得ない。野次馬達も堪らず微妙な表情。

飛鳥は誤魔化すように咳払いをすると、

 

 

「悪ふざけはここまでにして、ガルドさん。私達は誰が上であれ、屈する気はありません。それが魔王であろうともね。ジン君の最終目標はコミュニティを潰した ”打倒魔王” だもの」

 

 

”打倒魔王”。 その言葉に大きく息を呑む。怖気づきそうになる。目を逸らしたくなる。だが、それだけじゃ何も変わらない。今はこんなにも心強い『仲間』がいる。

ジンは自身を奮い立たせ、ハッキリと宣言する。

 

 

「………はい。僕達のコミュニティは ”打倒魔王” を目指しています。貴方の脅しに屈する気はありません」

 

「そういう事。つまり貴方には破滅以外の道は存在しないという事よ」

 

「く………クソッ……!」

 

 

逆に崖っぷちの状況に追い込まれたガルドは小さく悪態をつく。

それを見て機嫌を少し取り戻した飛鳥は話を切り出す。

 

 

「でも私は貴方のコミュニティが瓦解する程度では満足できないの。えぇ、できないわ。貴方の様な輩はズタボロになって己の罪を後悔しながら罰せられるべきよ。私が満足するまでね。そこで皆に提案があるのだけれど」

 

 

飛鳥の言葉に頷いていたジンや店員達は、顔を見合わせて首を傾げる。

飛鳥は悪戯っぽい笑顔でガルドを指差し、

 

 

「私達と『ギフトゲーム』をしましょう。貴方の ”フォレス・ガロ” 存続と ”ノーネーム” の誇りと魂を賭けて、ね」

 

 

堂々と、『ギフトゲーム』を挑んだ。

 

得るものも、失うものも、何も無い完全なる自己満足のゲーム。幕が上がるのは近い───

 

 

 

 

 

 

 

 

ちなみに、気絶させられた少年はジン君によって介抱されてました。

 

 

 

 






───オマケ───

飛鳥達がガルドに『ギフトゲーム』を挑んだ頃………


十「ところで黒ウサギ。引き込むのは勝手だが、あいつにはあのとき説明も何も聞いてなかったんだろ? そこから始めなきゃな(笑)」

黒「はい………え? え、えぇぇぇぇぇぇぇぇ!?」


また同じ説明をしなきゃいけない。あぁ、今度はどんな反応をされるんだろうか。そう思うだけで黒ウサギの疲れが倍率ドンで出てきたのは言うまでもない。
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