首都高バトル外伝~Those who gave up their names~ 作:れいめん
実際の道路では規則を守り、交通安全を心掛けて下さい。
ep.1 イグニッション
都内の中枢を担う首都高速道路…通称、首都高。
ここは曾てスピード数多の走り屋達が
しかし、度重なる事故や一般車両への迷惑行為から、政府は規制を厳重化し、走り屋達は首都高を去っていった。
――それから数年の時を経て20××年。
政府が首都高に対する規制を緩和したことで、この場所は再び、速さに飢えた者達による戦場と化していく。
ゆっくりと、確実に…。
【AM0:30 とあるガレージ】
渉
「…よし、出力調整はこんなもんか。
アシもいい感じで、これならいいタイムも出せそうだ。」
意気揚々と車の中で語るのは、首都高デビューから間もない走り屋…名前は
愛車は知人の紹介から、中古車販売店にて、学生時代でのバイトから貯めてた費用で購入したRX-7 FD3S。
坂城
「おーおー…吹かすのいいけど、時間と場所考えろよ。」
渉
「あっ…すんませんオジさん。」
ガレージの入り口前から現れた壮年の男…
渉の叔父で、幼少から両親を亡くした渉を引き取り、シングルファザーさながら長い間育ててきた。
実家は寂れた整備ショップで、渉が車好きになったのは、叔父である彼の影響によるもの。
坂城
「この時間に出るってことは、首都高か?」
渉
「当然っすよ。チカラを試すには、やっぱあの場所しかないですから。」
坂城
「気ぃつけろよ。
最近は、誰彼構わずバトル吹っかけてくるアホンダラが目立ってるって、顧客の噂にもあるからな。」
渉
「了解っす!んじゃ、夜明けまでには帰ってくるんで!」
ガレージの明かりを消すと、渉は足早にFDに乗り込み、首都高へと目指していった。
坂城
「…フッ、若いってのはいいもんだな。
俺も渉の頃は、あんな感じだったよな…
あそこまでバカじゃねーけど。」
【首都高 C1内回り】
C1ゾーン…デビューしたてなら、まずはこのエリアを手始めにする走り屋が多い。
渉も車の慣らしも兼ねて、ここを走り込む日々を送っていた。
当然ながら、パッシングを介してバトルを仕掛けて来る者も多い。
だが、坂城の教えにより、幼少時代からカートやジムカーナで鍛えられたウデと、生まれつき持ったセンスで返り討ちにしていった。
渉
(思ったより今日は一般車の流れがいいな…。
こういう時こそタイムアタックで、誰にも敗れない記録をつけて、次のエリアに踏み入れる…!
…と、いうのが俺なりの攻略法。)
【AM2:00 パーキングエリア】
渉
「結構走ったな…。
タイヤもタレてきたし、少しガスだけ入れて帰るか。」
ここは走り疲れた者達が集う憩いの場。
一昔前は、サーキットに則ってピットエリアという名称だったが、今の走り屋にはパーキングエリアという名で統一されている。
そんな走り屋の中には、自分の車に酔いしれる者や、走り屋同士で情報交換をする者など様々である。
渉は車の傍でコーヒーブレイクを摂っていると、自販機前でたむろしている2人の走り屋の会話に興味を持ち、聞き耳を立てると気になるワードが飛び交っていた。
渉
(首都高の伝説…ね。
そういや俺が首都高デビューする前、叔父さんも伝説がどうこう言ってたな。
ぶっちゃけそんなもの興味はないけど、俺でも想像つかないような、化け物じみたスピードの走り屋とかココにいたりするのかな…?)
そう物思いにふけていると、コーヒーを飲み干していることに気づく。
渉はFDに乗り込み、パーキングエリアを後にした。
【C1外回り】
渉
(このエリアはとにかくアシを突き詰めていかないと、レコードは出せそうにないよな…。
後は敢えて出力を抑えて、加速にギアを弄ったほうがいいか…叔父さんに聞いてみよ。)
帰路を目指して流していると、ふと1台のヘッドライトが近寄っていることに気づく。
そのヘッドライトは、間髪入れずに渉のFDにパッシングを仕掛けた。
渉
(…この辺のヤツらは大体チギってきたけど、まだ嗾けてくるのがいるのか。
しょうがねえ…帰りついでに1回相手してやる!)
パッシングを受け、2台は一気に加速してバトルに突入する。
渉
(気のせいか…一般車がさっきよりもつれてきてるな。
思うようにラインが作れない…!)
予想もしない状況に焦りを感じる渉の背後には、バトル相手のヘッドライトが貼りついている。
それは、まるで相手を試すようなもので、体勢が崩れる隙を狙っている動きだった。
渉
(落ち着け俺…こっちがリードしてる分、精神的には相手がすり減ってるハズだ。
このままジリジリ離せば、
膠着状態が続くなか、2台は新環状線と合流する室町~汐留セクションに入る。
距離は短いが、所々そびえる橋脚は、攻めるドライバーにとっては接触と隣り合わせのようなものであり、かなりの度胸が試される。
渉
(ここでのミスを誘って自爆を待つか。
走り慣れてるヤツでも、結構ビビるんだよなぁ…。
タイヤ持ってくれよ…!
ココが正念場だ!)
汐留を抜け、2台は尚膠着したままだった。
特に勝負に出る様子もなく、背後の相手はFDにヘッドライトを浴びせている。
渉
(浜崎橋か…まだ続ける気か?
もうじき降りるポイントなんだけど…)
その直後、背後にいた相手はマシンを左に寄せて、勝負に出る体勢に出た。
渉
(はぁ…!? FD相手にコーナー勝負だと?)
即座に応戦するも、分岐手前で相手は新環状線ゾーンへと入っていった。
相手が気になるあまり、一瞬、視線を横に向けると、派手なバイナルを施したNSXだった。
渉
(なんだよ…てっきり合わせてくんのかと思ったのに、拍子抜けっつーか、何か弄ばれた気分だぜ。
…にしても、あの雰囲気…今までバトルしてきたヤツらとは違うものだった。)
一瞬、車を見ただけでも伝わる威圧感。
自分は、まだ首都高の奥深さを知らない…。
そんな衝撃を抱きつつ、渉は帰路へと向かうのだった。
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