幼馴染はもう幼馴染じゃない。   作:ただの片栗粉

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この度高校卒業しました(*^^*)


恋する女社長

「ねぇ〜秘書見習い君!」

 

 莉々華がそう呼ぶと、薫は少しうんざりしたような顔をした。

 

「だから、その呼び方やめろって」

 

「やーだ♪ 薫は莉々華の秘書見習いなんだから!」

 

「俺はお前の友達だ」

 

「友達でもあるし、秘書見習いでもあるの!」

 

 莉々華はそう言いながら、薫の横にピタッと寄る。

 

 薫のちょっと拗ねた顔を見るのが好きだった。

 

 だって、それって莉々華にだけ見せる表情だから。

 

「それで? 何の用だよ」

 

「ん〜、別に? ただ呼んでみたかっただけ!」

 

「お前な……」

 

 薫がため息をつく。でも、どこかんまり本気で怒ってはいないのがわかる。

 

 莉々華はそのまま、薫の腕にちょっとだけ指先を触れさせた。

 

「ねぇ、薫」

 

「……なんだよ」

 

「今日、どっか寄り道して帰らない?」

 

「またかよ。昨日もコンビニ行ったろ」

 

「いいじゃん、楽しかったんだもん」

 

「お前、社長のくせに暇なのか?」

 

「社長だからこそ、息抜きが必要なの!」

 

「へいへい」

 

 薫は肩をすくめながら、それでも歩調を莉々華に合わせてくれる。

 

 こういうとこ、ほんとに優しい。

 

 ——だから好き。

 

 莉々華は自分の気持ちを誤魔化しながら、薫の隣を歩く。

 

 この距離が、ずっと続けばいいのに。

 

 でも、この距離はいつか変わってしまうのかな?

 

 そんなことを考えたら、少しだけ胸がチクリと痛んだ。

 

 ……ダメダメ! 莉々華らしくない!

 

 気を取り直して、薫の顔を覗き込む。

 

「ねぇ、どこ行く?」

 

「急に振るなよ……」

 

「だって、薫の行きたいとこに付き合ってあげるつもりだったのに!」

 

「え、俺の付き合いなのか?」

 

「うん! だから、薫がどこに行きたいか決めていいよ!」

 

 莉々華がにっこり笑って言うと、薫は少し考え込んだ。

 

「そうだな……」

 

 しばらく考えたあと、薫はぽつりと呟く。

 

「……たまには、ゲームセンターとかどうだ?」

 

「え? 薫ってゲーセン行くの?」

 

「いや、普段はあんまり行かないけど、お前と行ったら面白そうだし」

 

「ふ〜ん?」

 

 莉々華はじっと薫を見つめる。

 

 なにそれ? もしかしてデートのお誘い?

 

 ……なんて、そんなこと言ったら薫は絶対に「違う」って否定するだろうな。

 

「じゃあ決まり! 薫が莉々華を楽しませてくれるんだよね?」

 

「いや、俺が楽しませるって話じゃ……」

 

「莉々華が勝手にそう決めました♪」

 

「おい……」

 

 困ったように頭をかく薫。

 

 でも、その口元がちょっとだけ緩んでるのを、莉々華は見逃さなかった。

 

 もしかして、ちょっとは楽しみにしてくれてる?

 

 そんなことを思うと、莉々華の心が少し弾んだ。

 莉々華と薫はコンビニを出て、ゲームセンターへ向かうことになった。

 

 道すがら、莉々華はルンルン気分で歩く。

 

「ねぇねぇ、薫はゲーセンで何するの?」

 

「うーん、特に決めてないけど、莉々華がやりたいのやればいいんじゃね?」

 

「え〜、そう言われると迷うなぁ」

 

 正直、莉々華はあまりゲームセンターに行く機会がなかった。仕事が忙しいのもあるし、行く相手もいなかったから。

 

 でも、今日は違う。薫と一緒なら、何をやっても楽しい気がする。

 

「よし、じゃあ莉々華、UFOキャッチャーに挑戦する!」

 

「おっ、いいじゃん。何狙うんだ?」

 

「うーん……あっ! あのぬいぐるみ可愛い!」

 

 莉々華が指差したのは、大きな猫のぬいぐるみ。

 

 もふもふで、抱きしめたら気持ちよさそう。

 

「よし、やってみる!」

 

 意気込んでコインを入れ、レバーを操作する。慎重に狙いを定めて……

 

「えいっ!」

 

 アームがぬいぐるみを掴み——そのまま虚しく落ちた。

 

「あぁ〜っ!? なんで!?」

 

「はは、そんな簡単には取れないだろ」

 

「もう一回!」

 

 再挑戦するも、またもや失敗。

 

「くっ……! これはもう意地でも取る!」

 

「おいおい、熱くなりすぎだろ……」

 

 そんな莉々華の様子を見て、薫がふっと笑った。

 

「貸してみろ、俺がやってみる」

 

「えっ、薫ってこういうの得意なの?」

 

「まぁ、ちょっとだけな」

 

 自信満々に言う薫。

 

 何それ、ちょっとカッコいいんだけど。

 

 そう思いながら、莉々華はじっと見つめる。

 

 薫はコインを入れ、スムーズにレバーを操作した。無駄のない動きでアームを調整し——

 

 ガシッ。

 

 しっかりと猫のぬいぐるみを掴み、そのまま景品口へ。

 

「……え? 取れた?」

 

「ほら、莉々華」

 

 薫はぬいぐるみを莉々華の腕にぽんっと乗せる。

 

「うわぁぁ! すごい! ありがと薫!」

 

 思わず飛び跳ねて喜ぶ莉々華。

 

 ぬいぐるみも嬉しいけど、それ以上に、薫が取ってくれたことが何だか特別に思えた。

 

「えへへ、大事にするね」

 

「おう。まぁ、たかがゲーセンの景品だけどな」

 

「たかが、じゃないもん! 薫が取ってくれたんだから、特別だよ!」

 

 そう言って、莉々華はぎゅっとぬいぐるみを抱きしめた。

 

 その瞬間——

 

 薫の耳が、ほんのり赤くなった気がした。

 

(……あれ? もしかして、照れてる?)

 

 ぬいぐるみを抱きしめながら、莉々華は薫の顔をじっと見つめた。

 

 やっぱり気のせいじゃない。少しだけ耳が赤い。

 

 普段はどんなことを言っても軽く流すくせに、こういうときは照れるんだ。

 

「ねえ、薫?」

 

「ん?」

 

「もしかして、今ちょっと照れてる?」

 

「……は? 何言ってんだ?」

 

 薫はそっけなく答えたけど、明らかに視線をそらしている。

 

 これは怪しい。

 

「え〜、絶対照れてるでしょ? ねぇねぇ、薫、顔こっち向けて?」

 

「うるさい、別に照れてねぇって」

 

 そう言いながら、薫はそっぽを向く。

 

 でも、その態度が余計に怪しい。

 

 莉々華はぬいぐるみを抱えたまま、にやりと笑った。

 

「ふーん、そうなんだ〜? じゃあ、試してみよっかな?」

 

「……試す?」

 

 薫が警戒するように莉々華を見る。

 

 その反応が面白くて、つい意地悪したくなる。

 

「薫ってさ、こういうの弱いでしょ?」

 

 そう言って、莉々華はぬいぐるみを抱えたまま、ふわっと薫の腕に寄りかかった。

 

「なっ!?」

 

 案の定、薫がビクッと肩を震わせる。

 

「ふふっ、やっぱり〜! 照れてるじゃん!」

 

「……お前なぁ……」

 

 呆れたようにため息をつきながらも、薫は莉々華を軽く押し返そうとはしなかった。

 

 むしろ、ほんの少しだけ、心なしか動きがぎこちない気がする。

 

(やっぱり薫も、ちょっと意識してるのかな?)

 

 そんなことを思うと、莉々華の胸がくすぐったくなった。

 

「まぁまぁ、薫が可愛いところ見せてくれたお礼に、クレーンゲームの代金は奢ってあげる!」

 

「俺が取ったんだけどな……」

 

「そういう細かいことは気にしなーい!」

 

 莉々華は楽しげに笑いながら、薫の腕にぬいぐるみをぽんぽんと押し付けた。

 

 薫は苦笑しながらそれを受け取り、「ったく、好き勝手言いやがって」と小さく呟いた。

 

 でも、その声はどこか優しくて——

 

 莉々華は、自分の頬がほんのり熱くなるのを感じた。

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