強面男が幻想入り   作:疾風迅雷の如く

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久しぶりに感想キターッてはしゃいでいたらテンション舞い上がりすぎて頭少し打ってしまいました。


第36話

〜数日後〜

 

博麗神社にて三つの勢力の話し合いが行われていた。

一つ目は天狗を始めとした妖怪の山の勢力。天魔の他に射命丸や大天狗達を集めてこの場にいた。

もう一つ目は守矢神社。守矢神社の二神がこの場におり、風祝の東風谷早苗はこの場にはいない。その理由は割愛させてもらう。

最後に二つの勢力の中立の立場であり司会を進行する博麗神社。この勢力の敷地内で話し合いが行われるのは博麗神社の勢力が戦争を止めたという理由と常に中立という立場にあるからだ。

 

「他に妖怪の山と守矢神社の条約に関して何か意見はあるか?」

魔王のような威圧感のある声で話を進めるのは博麗の魔人こと大和勇姿。皮肉にも天魔を匿ったことが幸いし、天狗達の統率がバラバラになり天狗達は守矢神社へと侵攻できなかっただけでなく、勇姿が守矢神社の二神を抑えたことから戦争を止めたという形になっており、現在この場において発言力が最もあると言っていい。

「なければ天魔から報告したいことがあるらしい。」

勇姿はそれだけ告げ、天魔と目を合わせると天魔は口を開けた。

「我は今日まで天魔として行動してきた。だが皆も知っての通り、我は弱小天狗と言われたところから成り上がった。精々よくて中堅とまで言われ続けた我は努力してここまで来られた…」

大天狗達は天魔の境遇を思い出す…当時、天狗社会においては血統は外の世界でいう学歴みたいなものであり、天魔という役職は総理大臣…いや縦社会の例なら警視総監のようなものだ。しかしこの天魔には優れた血統というものがなかった。学歴で例えるなら高卒だ…それがこの天魔の境遇だった。だが幸いにも努力と才能はあった。その努力と才能を駆使してノンキャリでありながら天狗社会の警視総監、つまり天魔という役職まで成り上がることが出来た。

 

「しかしだ。無駄な犠牲を出すことなく守矢神社との衝突を避けれたのは妖怪の山、諸君らの力であり我の力ではない。」

その言葉は嘘ではない。しかし天狗達はむしろ侵攻しようとした立場であり天魔がいなかったからこそ侵攻が出来ずにいた。天魔の言葉を聞いて称賛されたのに思惑とは違うという複雑な気持ちにならざるを得なかった。

「故に我は天魔を引退する。」

だがそれ以上に天狗達はその言葉を聞いて騒然とした。

「我一人の力なくとも皆がやって来れた以上、我には天魔という役職は重過ぎたようだ。」

それから天魔は引退する理由を語り始めた。

 

「(そういうことね…)」

その中で霊夢は冷静だった。もしここで天狗達が天魔を引き止めるために過激な発言をしようものなら守矢神社が黙っていないがそれ以外に説得する材料はない。そして勇姿から天魔はどういう訳か天魔を引退したがっていたのを聞いていた。つまり予め守矢神社を利用して自らの引退をしようとしていたのでないのかと霊夢は考える。

「(流石は努力と才能で天魔まで成り上がっただけのことはあるわ…)」

霊夢は天狗の言い分をのらりくらりと躱す天魔を見ると目があった。

「(勇姿さんすらも利用するその胆力と行動力は紫とは大違い。何故紫が妖怪の賢者なんて呼ばれるのか不思議なくらい…)」

紫は確かに妖怪の賢者と呼ばれるだけの頭脳を持ち合わせている。それは月との大戦で証明済みだ。しかし最近は勇姿に対する妨害などの失敗が続き、霊夢を始めとした周囲の評価は急降下している。

「(勇姿さんに敵対したのが一番の間違いだったわね…紫。あんたらしく利用するなり何なりすればよかったはず。私を利用したように。)」

そしてパンパンと手の叩く音が鳴り、全員そちらに注目した。

 

「愚痴るのもそこまでだ。もし不満があるようだったらこの場ではなく、妖怪の山でして貰う。天魔が引退する話し自体がこの場ですることじゃないしな。」

「なら何故この場で話させた!!」

大天狗が怒鳴り、立ち上がる。彼は天狗の中でも激情家…つまりかなり感情的な性格だった。故に勇姿の言う事に反発した。

「天魔はこの場で話したいことがあるとしか言ってなかったものでな。この場で話すべきことくらい脇構えていると認識していたようだが…どうやらそれすらもわからないダメ天狗だったようだ。」

もちろん嘘である。勇姿とて黙って天魔に利用される形では終わらない。毒を吐くことでそれを抑えていた。

「な、何をっ!?」

そしてその大天狗が勇姿に飛び掛かり襲うが勇姿は大天狗の高い鼻を捻り、折った。全員はそれを見て戦慄する…勇姿に逆らったらこうなるのだと。

「少なくとも今やるべきことは妖怪の山と守矢神社の関係を深めることだ。まさか妖怪の山と守矢神社の仲をよくするために天魔の座を守矢神社の風祝、東風谷早苗に渡す訳でもないだろう?」

「当たり前だ!」

大天狗のうち一人がそういった瞬間、銃声が鳴り響き、大天狗は目を回して気絶していた。

「…てめえには聞いてねえ。天魔に聞いているんだ。雑魚は黙ってろ。」

そして勇姿の殺気が大天狗達を襲い、天魔を除いた天狗達は青ざめてしまった。

「確かに我がこの場で引退する事を話したのは間違いだった。皆の者、時間を取らせて申し訳なかった。」

天魔は頭を下げ、謝る。すると大天狗の顔色が少しずつ回復していき冷や汗も出るようになった。その冷や汗の原因は天魔の一言で勇姿の機嫌を損ねないか?という不安から来ているものだ。だが天魔に矛先が向かうため直接被害を受けるよりもまだマシなために安心していた。

「わかればいいんだ。そんなことも分からなきゃ迷惑だろうが…部下達がよ。…さて博麗の役割も果たしたことだし、これから博麗神社で宴会の準備をしよう。な?霊夢。」

勇姿の殺気が収まると大天狗達は汗の量が少なくなるのを感じ、一息ついていた。

「そうね…じゃあ皆に知らせてくるわ。」

霊夢が飛び立ち、天魔達が気絶した大天狗達を回収してその場を立ち去った。

「それでは我等も行くとしよう。」

そして神奈子と諏訪子も立ち上がり、守矢神社へと帰っていく。

 

〜数時間後〜

 

すっかり夜となり、博麗神社には多くの人妖が集まっていた。だがその中で浮かない顔をしていたのはアリス・マーガトロイドという人形使いだった。

「どうしたアリス?」

魔理沙が近づき、話しかける。それだけでもアリスはホッとする。

「ねぇ、本当に大丈夫なの?」

アリスは元々は幻想郷の住民ではない。魔界の住民だ。だが幻想郷には魔界にはないものが多く、幻想郷に憧れた…しかし自らの母である神綺は猛反対した。数多くのワガママを言っても許してくれた親バカ全開の母親がだ。いや親バカだからこそ許さなかったのかもしれない。

「勇姿のことか?」

勇姿の顔はまさしく魔王といったような顔であり、見る者を威圧する。

「ええ…」

そうアリスが頷くと魔理沙は苦笑する…そしてある日神綺は幻想郷にいるアリスに勇姿の事を伝えた。というのも彼女は勇姿の威圧に呑まれてしまい、遂には化け物扱いする程だ。

 

その話をアリスは半分程度に聞いていたが…悪魔の姉妹、妖怪の賢者、伊吹鬼、月の頭脳、そして神綺すらも叶わなかった霊夢が勇姿に敗北し、神綺の話は本当だったと認識させられ…そして前回の異変では説教の長い閻魔を逆に説教したということもあり、アリスもまた勇姿を恐れていた。

「大丈夫だって!こんな美味い飯作ったの誰だかわかるか?勇姿なんだぜ。こんなに美味い飯を作れるのは歪んだ心を持つ奴じゃ無理だ。んっ…美味い…!」

魔理沙は手に持っていたフランクフルトをかじると口の中がホクホクとし、暖かくなる。そして程よい塩分が酒を促し顔を赤くする。

「ま、話してみればわかるさ。とって食われるようなことはされないから安心しな。実際負けた女を性的に食っているなんて噂、微塵もないだろ?」

確かにその通りだった。それどころか同居人の霊夢にも手を出したという噂は流れておらず、もしかしたら紳士なのでは?と思い始めた。

「そういうならそうさせて貰うわ…」

そしてアリスは勇気を出し、勇姿に近づく。だが背中を見るだけでも物凄いプレッシャーがかかる…そして声をかけた。

 

「勇姿さん…?」

最後こそ疑問形になったがそれでも声をかけた。それだけでもアリスは一安心する。

「何でしょうか?」

低い声ではあるが言葉遣いは丁寧。そしてアリスはこの男は紳士だと感じた。

「ちょっと貴方の話を聞いてもいいかしら?」

何も考えずに話しかけておいてよくここまで頭が回ったものだ。とアリスは感心しながら勇姿を見る。

 

「私のですか?」

「ええ。貴方の噂は聞いているわ。だけど怪物とか魔人とか言われているのに黒い噂が一切流れない…だから気になったのよ。本当はどんな人なのかって。」

「ではどんな人に見えましたか?」

「見た目は噂通りだけど中身は爽やかかつ紳士な青年…そんな感じね。」

「爽やかかつ紳士な青年ですか…そんなことは初めて言われましたね。」

勇姿は苦笑気味にそう答え口に手を添えて口元を隠す。

「私は思ったことを言っただけよ?」

「今までが今まででしたからね…私は見ての通り老け顔で顔も強面。それ故に私は爽やかとは程遠い生活をしていたんですよ。」

「そう…でも貴方は貴方。貴方らしく生きるのが一番良いと思うわ。」

「貴方らしくか…そういえば貴女の名前を聞いていませんでしたね。教えて頂けませんか?」

「アリス・マーガトロイドよ。」

「アリスさん…また御会いしましょう。」

「ええ…それじゃ勇姿さん。」

アリスは勇姿と別れを告げ、見かけによらずかなり紳士だと神綺に報告したが誤解は解けずしばらくの間頭を悩ませた。

 

その数日後、天魔が正式に引退を発表し、【文々。新聞】を始めとした多くの天狗の新聞にその事が報道された。




今回は天狗から見た勇姿とアリスから見た勇姿の姿を第三者視点で書きました。
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