強面男が幻想入り 作:疾風迅雷の如く
第37話
俺は現在進行形で困っている。
俺の楽しみ、それは風呂だ。と言ってもただの風呂ではない。風呂の中でも俺は特に他の連中が逃げ出す程の熱い風呂が好きだ。というかそのくらいの温度でなければ逆にぬる過ぎる。
故に俺は霊夢が入った後に入らなきゃいけない。そうしなければ霊夢が風呂に入れないまま寝ることになる。流石にそれは可哀想だ。だから気を使って俺は後にした。
「勇姿さん、背中流しに来たわよ!」
そう、霊夢が裸で風呂に入ってきたからだ。
霊夢が裸で入ってきたということはこれから風呂に入るということだ。霊夢は(俺にとっては適温の)風呂に入れない。いやそれどころか風呂の湯を使って背中を流すから背中を流すことすらも出来ずに終わる…霊夢は表には出さないが気にするだろうな。
「いや必要ない。俺の背中は俺で洗うからな。」
そう言って俺は霊夢の額を見えない速度でデコピンで気絶させる…しかしこのままじゃ風邪をひくので俺は霊夢をシステムの袋の中に収納した。
『裸霊夢が収納されました。』
霊夢の身体にかなりモザイクがかかった状態で収納が終わった…すまん。
…まあ過ぎたことを言っても仕方ない。俺は霊夢の服を収納すると『脇巫女服』がシステム袋の中に入り、それを選ぶとシステム袋の中の道具がほとんど黒くなり元の色のままであるのはモザイクがかかっている『裸霊夢』だけだ。
『裸霊夢』を選ぶと『裸霊夢を着せ替えますか?』と表情され俺はYesと答えた。すると『脇巫女服』と『裸霊夢』がなくなり変わりに『脇巫女霊夢』がシステム袋の中に表示されている。…待てよ?裸霊夢を選択しなかったらどうなっていたんだ?システム袋の中に裸魔理沙が存在したら着せ替えることも出来たのか?こういう時はヘルプだ!
『服飾の道具に対象となる人物を選択すると着せ替えることができます。ただし服飾の道具の中には、男性のみを着せ替える男性用、女性のみを着せ替える女性用、そしてそれぞれその職業に就かなければ着せ替えられないものや種族によって着せ替えられないものがあります。その人物に適したものを着せ替えましょう。』
最初適応してなかった癖になんて無駄な能力…今回は助かったかもしれないがこんなのマジックしか使えねー…あん?そういえば服を脱がすことは出来るのか?
『出来ます。対象となる人物を選択して脱がすを選択すれば裸○○○と表記され、袋に服が移され成功となります。』
ちなみにこの『脇巫女霊夢』を脱がさずここに魔理沙の服があってそれをさらに着せたらどうなる?
『重ね着を選択すれば脇巫女霊夢が魔理沙の服をその上から着た状態になります。重ね着の状態で脱がすを選択すると対象者の服を選択して脱がすことができます。また重ね着を選択しなければ脇巫女霊夢が魔理沙コス霊夢となり脇巫女服が魔理沙の服の場所に移動します。』
…今度実験してみよう。霊夢ではない他の誰かに。
そんなこんなで風呂から上がり、袋から『脇巫女霊夢』を取り出し布団に寝かせた。するとマップに三人ほど俺に近づいてきたので廊下に出た。そしてそこにいたのは萃香、フラン、フウの三人だ。
「いたいた!」
「勇姿〜もっと飲もうよ〜!」
「でなきゃ既成事実作っちゃうぞ〜?」
…寄生事実?はっ!?まさかこいつら俺が博麗神社に寄生しているってことをバレているのか!?いやいや寄生じゃないよな?むしろ共存、いや逆に貢献しているはずだ。寄生ってのは一方的に住み込み、害を与えるだけの存在だ。パラサイトとかニート(稼ぐ奴は別)なんかよくそんな扱いをされている。俺はきちんと金を稼いでいる上に家事もやっているからその点心配ない…はず。
となれば寄生事実ってのはもしかしたら俺が寄生しているって噂を流すことなのかもしれない…こんな時に辞書がないのが痛いな。何にせよ無闇にそんな噂が流れても困るので俺は付き合うことにした。
「お前達に比べたら酒は飲めないと思うが勘弁しろよ?」
俺はこれまで酒を飲んだことすらないがこの三人が酒に異常なまでに強いのは知っている。特に萃香は幻想郷随一とも言われるほどの酒豪だ。しかも萃香によれば「東西問わずみんな鬼は酒に強い。」らしく、西洋の鬼であるフランも強い…フウは天魔という職業柄か喧嘩も酒も強い。
「わかってるって!」
「じゃあ乾杯!」
「「「乾杯!」」」
数時間後
幻想郷の皆さん、おはよう御座います。さて本日の博麗神社はカオスな状況になっています。三人(見た目幼女二人と見た目女子高生一人)が顔を真っ赤にして酔っ払ったあげく爆睡しています。
…ねえよ。この状況を冷静に解説出来るしどんだけ俺酒強いんだ?しかし俺が飲んだ酒がノンアルコールって可能性も否定できない…そう思って新しく導入されたシステム、物質調査を使って酒を調べた。
『この周りにある飲料水は全てアルコールが含まれています。』
じゃあアルコール度数が低かったとか…
『貴方の周りにある飲料水はアルコール度数60を超えています。尚見た目幼女二人と見た目JKの周りの飲料水はアルコール度数50以下です。』
嘘だろ?俺すでに萃香達三人全員分の飲んだ酒よりも多く飲んでいるんだが。確かにアルコールが分解される様子が飲んだ一瞬だけ強く感じたけどそれだけで全てアルコール分解し終わったのか…永遠亭で調べて貰おう。それがいいな。
とにかくこの三人を運ぼう。システム袋がこんな形で役立つとは…幸いにも萃香とフランは小柄だし、フウも普通より少し小柄だ。この三人を特注で作った俺用の布団に寝かせてやると気持ち良さそうに寝ていた。
翌朝
「「「頭痛い…」」」
当然というかなんというか三人は二日酔いして頭を抱えていた。
「勇姿さん、アレどうする?」
アレ扱いかよ…酷えな。
「確か前に買った酔い止めが残っていたはずだからそれを出しておく。」
流石にほっとけと言うほど鬼でも悪魔でもない。…その前に霊夢に命令するような立場ですらないしな。
「そう。ところで昨日お風呂で勇姿さんの背中を見たことだけは覚えているんだけど…気がついたら布団で寝ていたわ。何か知らない?」
説明が凄え面倒くさい…どう説明するか。
「貧血で倒れたから俺はタオルで身体が冷えないように霊夢を運んで後はあの三人に任せた…詳しくはあの三人に聞いてみるといい。」
まさか俺の能力で着せ替えましたなんて言えないしな…
「でも勇姿さんに聞く方が良いって勘が言っているのよね…」
鋭い奴!これが咲夜だったらすぐに聞きにいくんだが。誰とはいわないが。
「そうは言ってもな…俺がやったことは霊夢の軽い身体を運んだことくらいだ。」
「う〜ん…そこまで言うならそうなのね。じゃあ勇姿さん。これにサインしておいて。」
霊夢はそう言って俺の前に霊夢の名前が書いてある婚姻届けを差し出した。…何故に?
そう思い、霊夢の顔を見ると上目遣いで顔を赤くし、モジモジと腿を動かしていた。これが俗に言う修羅場って奴か…
「ダメよ霊夢!」
「紫、それを返しなさい。」
ソプラノの声なのに何故か低く、冷たい声だ。俺はこの声を聞いたことがある。
そう、あれは去年のことだ。去年、俺が作った苺大福を霊夢が楽しみに取っておいた…しかし偶々魔理沙が見つけて苺大福を食べてしまった。そしてそれをちょうど見かけた霊夢の第一声が「…吐け。」だ。シンプルだが下手な脅迫よりも恐ろしい。魔理沙が戸惑っている間に霊夢は魔理沙に腹パンをしてそれを吐かせた…慌てて俺が止めようとするがその間にも霊夢は狂気に取り憑かれたかのように魔理沙の尻を蹴っ飛ばし、やりたい放題していた。
その後俺が仲裁して二人は和解したが魔理沙が人里の最高級の大福を用意することになったのは言うまでもない。それ以降、霊夢を怒らせないようにしようと決意した。
…その時に言った声のトーンが今と全く同じで霊夢が何をするか全くわからない状態だ。紫、お前は霊夢の封印を解いてしまったんだよ。
「流石にそれは出来な…グヘェ!?」
一瞬だった。霊夢の右ジャブが紫に直撃し、紫の顔が歪んだ。てか車に轢かれて無事な奴が霊夢の拳程度で顔を歪ませるなよ…
「じゃあ、隙間妖怪を退治するわ。それで問題解決ね。」
何の解決方法にもなってねえ!霊夢は御札とかそんなの出し始め、紫を退治しようと準備していた。これはやばいな…
俺はメニューを開き、システムを作動させる。半径300m以内の物ならばシステム袋やシステム倉庫にぶち込むことも出来るので霊夢の御札や針、とにかく武器になる物を倉庫に入れ没収し、ついでに紫のスキマの中にあった婚姻届も袋に入れて没収する。
そして現実に戻ると霊夢が御札や針を投げようとするも手元にはない為、紫も霊夢も唖然とする。
「霊夢、そこまでにしておけ。婚姻届はこっちにある。」
そう言ってシステム袋の中の婚姻届を取り出し霊夢を振り向かせる。すると紫は信じられないと言った顔になっていた。
「そんな…!?確かにスキマの中に入れたはず…!!」
紫はスキマの中を慌てて探すがそこにはなく、あるのはくたびれ儲けだけだ。
「霊夢、紫、よく聞け。俺はとある事情から結婚が出来ない。」
「え?」
「勝手に結婚しようものなら親戚どもや親兄弟から狙われる。そうなれば俺はともかく幻想郷の危機になる。」
あいつらマジでしつこいからな…執着心の塊みたいなやつらだ。時間を越えて幻想入りしかねない。
「何言っているの?そんなこと普通の人間に出来るわけないでしょう?」
紫…その認識改めた方がいいぞ…あいつらでも素手で妖怪退治出来かねないスペックを持っているからな。
「そう思うの勝手だが向こうには震度6の地震を瓦割りの要領で止めた上に幻想郷に来てから無敗の俺を何度も負かした
だが敢えて親戚どものことは言わず、婆さんのことを言った。婆さんマジで何者かわからないよな…ホント。
「…ごめんなさい。」
よし、紫の認識は改めた。となれば後は霊夢か。秘術を使うか…その名も話を逸らしまくって結婚の話を後回しにしよう作戦!…名前の通りだが注意するのは結婚、婚姻などのNGワードだ。それいったら作戦は失敗なのでNGワードを言った時の保障としてセーブしてと。
『セーブ処理が終わりました。』
「霊夢、俺はお前のことを家族のように思っている。だからお前のことも大切にしたいし、
「そうなの…?」
ここでメニューを開き、俺は考える。メニューを開いた時、時間が止まるポーズ画面の導入は有難いよな。おかげでゆっくり考えられる。
「だから俺はお前に支えてもらいたい。」
…ん?プロポーズになってるぅぅぅっ!?ロードだ!ロード!!ロォォォーーード!!!
『ただいまエラー発生によりコードの一部やロードは出来ません。』
何だよエラーって!?今までにないほど役立たずのヘボシステムだな?!セーブが出来てロードが出来ないシステムなんて糞の役にも立たねえ!!!俺は怒りに任せポーズ画面を解く。
「勇姿さん…有難う!!」
イカンイカン…ココで怒りを露わにしちゃダメだ。霊夢に八つ当たりするのは一番良くない。そう思い俺は笑顔にする…出来ているのか怪しいが大丈夫だろう。
「…わかったわ。私も貴方のことを誤解していたみたい。」
…あん?俺、何か言ってたのか?
「幼い頃、霊夢は私が拾って娘のように育ててきた…だから霊夢が貴方に夢中になって嫉妬していたんだわ。」
「紫…」
「貴方の幻想郷を支配するって言葉も貴方なりに幻想郷を守ろうとしていたのにそれに気づかないなんてバカみたい…」
いや普通そう思うからな?戦国時代なんてその典型例じゃねえか。
「紫がどう思おうと同じ事だ。状況は大して変わらん。」
人間は自己満足の為に動く。目的を達成した後のことを考えられる奴はそうはいない。妖怪は人間よりもひどいもんだ…
「私は貴方からすれば取るに足らない小物なのね…」
紫はショボンとしていつもの威勢がなくなっていた。
「小物から大物になるにはある程度の量の餌と時期が大切だ。今こそその時だ。今までのことは水に流して協力しよう。」
臭え…かなり臭すぎて鼻が捻じ曲がりそうなくらい臭いセリフを吐いて俺は紫を説得する。これしか結婚についてあやふやにする手段はない!
「そうしましょうか…では改めて言うわ。」
そして紫が咳を払って笑顔でいった。
「ようこそ幻想郷へ。幻想郷は全てを受け入れますわ。」
…ようやく歓迎された気になったな。いつの間にかあの三人組も復活して笑顔で迎えているし。
感想待ってます!