強面男が幻想入り 作:疾風迅雷の如く
突然だが勇姿の寝相はかなり悪い。どのくらい悪いかというと、ついこないだ萃香が部屋を間違い、座禅したまま寝ている(曰くこの方が寝やすいとのこと)勇姿に体重をかけた途端、萃香は関節技をかけられていた。勇姿と萃香の体格差はかなり開いており、本来関節技をかけにくいはずなのだが鮮やかとも言えるほど素早くかつ綺麗に勇姿は萃香に関節技をかけた。その後はフランドール、霊夢、フウと続いて以降、博麗神社の中で勇姿の布団に近づく者はいなくなった。
「ギャース!!」
そして寝ている勇姿に関節技をかけられている女性がそこにいた。
彼女の名前は幻月。一見すると天使のように見えるがレミリアやフランドールと同じく悪魔であり、性格も極悪であるのだが…勇姿の関節技により、現在幻月は涙目でキャラブレイクしていた。さて何故こんなことになってしまったのかは数分前に遡る。
〜数分前〜
ここは夢幻世界という場所で幻月とその双子の妹である夢月が住んでいる。ここに来る方法は通常、現実世界で眠り夢を見るか、あるいは博麗神社の裏山にある湖の内部から潜り込むかのどちらかだ。大半の者は前者であり、勇姿もその例だ。ただしその場合は勇姿のように部屋で眠った状態でつく為、幻月や夢月のおもちゃとなる。
「いいもの見つけちゃった♡」
今回も幻月は寝ている勇姿を見つけ、女装させようと企んだ。見た目ガノンド○フの男が女装したら悪夢である。
夢月のメイド服…はどう考えても着せられないので仕方なくサイズを合わせドレスにした。そして勇姿の服を脱がせようとした瞬間…腕が引っ張られた。
「えっ!?」
幻月が驚いている間にも体勢は整い、ギュウギュウと締め付けられ、痛みが増していった。
「夢月ー!!助けてー!!!」
幻月は妹である夢月に助けを求めるが現在買い出しへ行ったことを思い出し、幻月は青ざめる。
「これ詰んだ…?」
勇姿が起きていたならば「テンプレ乙」とか思っただろうが、現在勇姿は起きていない。どちらにせよ関節技をかけるだろうが。そして幻月が叫び声を上げ現在に至る。
〜現在〜
「起きて!起きてってば!!」
「違うぞ、咲夜。カレーはもっとこう!スパイスを加えてだな…」
幻月の叫びも虚しく、勇姿は咲夜に料理を教えている夢でも見ているのかそう寝言を言って更にキツく締める。
「こんの〜っ!!」
幻月は遂に怒り、勇姿の顔面に向けて弾幕を放つ…が無駄だった。勇姿は何故かそれを避けてしまった。夢遊病ではないのか?この男。
「…チルノ、料理の最中に弾幕を放つとは何事だ…説諭…!」
そして勇姿が寝て関節技をかけたまま器用に幻月を殴ると、関節技から解放された代わりに吹っ飛ばされた。その原因はメガトンパンチのコードである。勇姿はあろう事かメガトンパンチのコードを消し忘れた状態で眠りについてしまったのだ。これまでメガトンパンチのコードを入れた状態で眠ったことはあるが幸いにも被害はなかったので消し忘れても勇姿は問題はないと思っていた。だが今回に限っては違った…幻月という悪魔が犠牲となってしまったのだ。
勇姿の手により幻月がいなくなる。すると勇姿の身体が今まで抱いていた枕がなくなったと認識して目覚め、あたりを野獣のようにギラギラと見渡し起きる。
「ここは…どこだ?」
そして勇姿がコマンドを使い、マップ機能を広げると『夢幻世界』と表示されマップが記されていた。
「(…ん?人が来るな。)」
ここは部屋の内部であるが何故か一部壁が抜けている。もしこのまま誰かが来れば面倒なことになるのは違いない。しかし時間を考えてももう間に合わないのでせめて修理しようと材料をシステム倉庫から取り出した。
「姉さん、今帰ったわ…っていない?」
そこに現れたのはメイド姿の金髪少女、夢月だった。
「どうも。」
そして二人のファーストコンタクトが取れ、互いに見つめ合う。
「「…」」
そして二人は動いた。
その一時間後、夢月の姉、幻月がようやく帰ってきた。
「ただいま…」
幻月はげっそりとしており、服もボロボロだ。こんなにボロボロになったのは靈夢にやられた時以来だ。
「あ、おかえりなさい。姉さん。」
そしてそれを迎える夢月に幻月はホロリと涙を流す。いやポロポロと涙が溢れた。
「むげづ〜っ!!」
それから幻月はワンワンと泣き続けた。彼女だって女の子だ。歳はそうでもないが。
「(姉さん、溜まったもの出してね…)」
夢月が母性を発揮し、撫で続ける。しばらくすると幻月が泣き止んだ。
「姉さん、すっきりした?」
「うん…ありがと。」
「ところで姉さん。私に友達ができたから紹介するよ。」
「友達…?」
「そう、とっても気がきいて、私の悩みも相談してくれたいい人よ。」
「へぇ〜…面白そうね。苛め甲斐がありそうじゃない。」
幻月は悪い笑顔になり、夢月に案内される。そして夢月の友達のいる部屋の扉を開いた。
「(げぇっ!?)」
そして幻月は固まる。口にこそ出さないで済んだが幻月はこの男には関節技を掛けられたり、ここから飛んで一時間もかかる場所まで吹っ飛ばされたりと散々な目にあわされた…
「紹介するわ。」
そんな幻月の心境とは裏腹に夢月は機嫌がよさそうに紹介する。
「私の友達、大和勇姿よ。」
そう、夢月の友達とは勇姿だ。
何故か勇姿と夢月はあれから敵対することはなかった。むしろ逆に共感したのだ。夢月は姉の趣味…所謂メイドフェチでこんな格好をしているが夢月はそれを悪く思っていない。家事が得意で戦闘にも自信がある。それは勇姿も同じだ。服装に関しては別にしても料理は得意で戦闘も出来る。まさしく夢月が性転換したような男だ。
しかも勇姿曰く「自分に近いほど仲良くなる」ので夢月と仲良くなるのは最初のファーストコンタクトで済んだ。更に幻月はここに来た客を脅す為にかなりの確率で壁を壊す。その為夢月は勇姿が幻月の手によって壊された壁を直そうとしていると思いこんでいた。夢月は勇姿の負担を減らす為に手伝っていたらいつの間にか二人とも友と呼べる仲になっていた。
「初めまして幻月。大和勇姿だ。」
手を伸ばし、握手を求めるが幻月は反応しなかった。いやプルプルと震えていたのだ。
「夢月!こいつよ!こいつ!こいつにやられたのよ!」
ビシッ!と幻月は勇姿に向かって指をさして言うが二人は訳がわからないと言いたげだ。
「こいつが寝ていたもんだから、女装させる為にこいつの服を脱がそうとしたらいきなり関節技をかけられたのよ!?」
「それ、姉さんが悪いと思う…」
夢月の言う悪いとは勇姿を女装させる為に服を脱がしたことではない。今までそうやって来たから今更だ。では何が悪いかというと幻月が反応出来なかったという点だ。仮にも悪魔なのだから寝ている相手に関節技をかけられるとは情けない…そんな心境だった。
「確かにな…」
勇姿は夢月の言葉に頷く。もし自分が幻月に女装させられていたらぞっとする。多分黒歴史を通り越してホラーとなっていただろう。
「どこが悪いのよ!?」
「全部。因果応報という奴だ…自分もそれなりに覚悟したらどうだ?夢月。」
「はい。」
勇姿の言葉と共に、夢月は縄で縛り、幻月を拘束した。
「ちょっと、夢月!?何のつもり!?」
幻月は夢月に裏切られ、夢月が裏切った理由を尋ねるが夢月の答えは淡白なものだった。
「寝た状態で関節技をかけられる訳ないのにあの言い訳はないでしょ?」
そう、普通ありえないのだ。寝ている人間が器用に…それも幻月相手に関節技をかけるなんて。
「いやだから本当…!」
しかしそれをやらかすのが大和勇姿という男だ。幻月は夢月に説明しようとするも夢月の次の言葉でばっさりと切られた。
「まあ姉さんのそういう姿もたまには見てみたいのが本音だけど。」
「ちょっと!?」
幻月が反論しようとするが勇姿が幻月の前に立ったことによりそれは失敗に終わった。
「さて…話は終わったようだし、落とし前つけて貰おうか。」
勇姿が指をムカデよりも気色悪い動きを幻月に見せじわりじわりと詰め寄る。
「これからすることはわかっているよな?」
幻月に尋ねると幻月は勇姿を睨み一言。
「いっそのこと殺して…!」
あんな目に遭うくらいならば殺して欲しい。幻月はそう思った。
「ああ、殺してやるよ。呼吸困難でな。」
そして勇姿が笑い、刑が実行された。勇姿はこの時Sの心を宿し、幻月の言葉は勇姿の行動に拍車をかけた。
「くひひひひひ!やめ、やめ、ひひ、ひひひひ!!」
その刑とは擽り5分間の刑だ。実をいうと幻月は擽りに弱く、それを夢月からポロっと聞いていた勇姿はこの刑を考えていた。
「勇姿、姉さんはうなじの部分が特に弱いからそこも攻めるといいわ。」
「あ、はは、む、ははは、むげ、夢月!後、ひひ、で、覚え、くひひ、てなさ、はは、い!」
「おお、そうか。」
そして勇姿はうなじの部分を攻める。夢月の言ったことをすぐに実行するあたり勇姿もかなりのSの心を宿しており性格が悪くなっていた。だからこそ夢月と仲が良いのだが。
「あ〜っ!ひゃはははは!」
それから5分…ではなく延長され10分間の拷問に幻月は涙とヨダレで顔が汚れてしまった。
「うう…お嫁に行けない…」
シクシクと幻月は泣き、顔の涙跡とヨダレの跡を拭く。その姿は誰がどう見ても悪魔に汚された天使のようだった。悪魔は幻月なのだが。
「姉さんに結婚願望があったなんて驚きだわ。」
「全くだ。」
それを棒読みで言う悪魔と魔王。まだまだ二人にはSの心が宿っていた。
「というかあんたら何でそんなに仲がいいのよ!?」
幻月は思わず突っ込んだ。彼女はツッコミ属性などなかったのだが勇姿の手によって目覚めてしまったのだ。もし夢月が幻月の立場であったなら夢月も同じようになっていただろう。
「夢月とは何か共感を覚えたから。」
「勇姿とは何か共感を覚えたから。」
二人はまるで打ち合わせたかのように答え、ハイタッチをする。その様子を見て幻月は「こいつらはこういう奴らなんだ。」と諦めてしまった。
「ところで二人とも、どうやったら俺は元に戻れる?」
「あら、もうおかえり?せっかくこの夢幻世界に来たんだからもうちょっとゆっくりしていきなさい。ね?勇姿…」
夢月は甘い空気を出し、勇姿に迫る。
「夢月…俺だってお前のことは忘れたくないんだ。だが俺にも帰る場所がある。」
勇姿はその空気を読んで悪ふざけで対応する。
「帰れぇぇっ!お前ら二人とも幻想郷に行ってしまえ!」
それにキレた幻月は塩を撒くように勇姿をキ○ラの翼っぽいものでこの世界から追放した。…ついでに夢月も巻き込んでしまったのは余談である。女の嫉妬って怖い。
〜博麗神社〜
「…ん?元に戻れたか。」
座禅の状態から立ち上がり、周りを見渡すと何やら唸り声が聞こえた。
「うぐ〜…」
何とも特徴的な唸り声だ…勇姿はそう思いながらもその唸り声の元を探す。するとメイド服が目に付いた。
「夢月…か?何でここにいるんだ?」
そう呟いた瞬間、襖が開いた。
「おはよう勇姿さん…」
そして霊夢が目に付いたのは勇姿の関節技の犠牲になったであろう夢月の姿だった。何故ここにいるのかはともかく霊夢は同情した。彼女も勇姿の関節技の被害者なのだ。
「おはよう霊夢。ところでこいつどうすればいい?」
「しばらく放っておきなさい。」
とはいえ勇姿に近づく者には容赦はしない。それ故の態度だった。
「まあそれもそうか。」
勇姿は非情な物言いで言うが夢月を布団に移動させた。それから夢月が起きて一騒動起こすがそれはまた別の話である。
今回は旧作キャラの幻月と夢月登場の話でした。幻月と夢月はこれからも多分出ると思います。