「なんでゴジラが出てくるんだよおおぉぉっ!!」
前線で戦っていた日本人は逃げだした。
彼も以前は、普通の学生として日本で暮らしていた。
だがチートを持って以来彼は変わった。
彼は魔族と戦うことに生きがいを感じるようになっていた。
しかしゴジラには勝てない。勝つイメージが沸かない。勝てるわけがない。
ゴジラが歩いた、ただそれだけで地割れが起こり、優秀な冒険者は死んでいった。
「なんだあのバケモノは…味方なのか?」
魔族は目の前で人間を踏みつぶすゴジラを見て呟いた。
自分たちが束になっても敵わないチート持ちの冒険者たちが次々と命を落としていく。
それは冗談を通り越し都合のいい夢のようだった。
「へへっ人間共がやられてるぜ!ざまーみろ!」
「…ああ、そうだな」
本当にそうか?
仲間の言葉に無難な相槌を返しながら、目の前の破壊から目をそらすことが出来なかった。
そしてそれが仲間との最後の会話となった。
「もしかしてあのバケモノは魔王様の切りふっ」
「え…?」
気が付けば味方の首から上がない。
ゴジラが巨大な尾を振り回す、砕かれた地盤が岩石の雨となり、頑強なハズの魔族は死んだ。
「駄目だあっ!魔法が効かない!」
「チートが全然役に立たないっ!」
王都に向かうゴジラに冒険者たちは少しでも足止めをすべく攻撃を開始した。
しかしどんな高位の冒険者の攻撃もゴジラの進撃を止めることは出来なかった。
「顔や足を狙うんだ!的を絞れ!」
攻撃を集中させたことにより、少しずつゴジラの体が傷ついていく。
しかし……
「嘘だろ…傷が…治っていく…?」
冒険者たちが見たのは、逆再生かのように元通りになるゴジラの肉体だった。
ー煩わしい…ー
ゴジラはヒトとヒトモドキを踏みつぶしながら王都へ向かっていた。
あの時ゴジラを妨げた鉄の玉を打ち出す駆動体はこの世界には存在しない。
それならば自分にとって障害となるものは無く、簡単に破壊の限りを尽くせるはずだった。
しかし、この世界の小さき者共は不可思議な力を使う。
取るに足らないはずのクズ共に邪魔をされることにゴジラは苛立ち、最後の手段を取ることにした。
ー後ろにいる奴らは殺すー
王都はその後でいい。
ゴジラはゆっくりと後ろを向いた。
その日、王都の住人たちは青い光と眩い閃光、そして聞いたことのないような轟音に襲われた。
冒険者と魔王軍が激突する、そんな戦場の近くに住む彼らでさえ、あの光と音には恐怖を覚えずにはいられなかった。
「な…なんだ!?魔王軍が攻めてきたのか!?」
「一体何が起こったんだ…?」
「…あれは…」
その言葉を呟いたのは一人の日本人だった。
彼はチートを持って異世界に転生したものの戦うことを嫌い、一般人として生きることを選んだごく普通の人間だった。
しかし、生きていくため冒険者としてレベルを上げ、盗賊として索敵系のスキルを取得していた。
そのスキルで彼は見た。
見てしまった。
「ゴジラだ…」
「GOAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!!!!」
彼が見たのは、人間も魔族も平等に踏みつぶす破壊の化身、怪獣王ゴジラの姿だった。
続く