ゴジラVSめぐみん   作:雁木まりお

5 / 7
黒い雨

 その後、ゴジラは王国を踏みつぶしながら移動を続けた。街も人も蹂躙され、後には草木も残らなかった。不幸中の幸いというべきか、王国が壊滅した後踏みつぶされたのは魔王軍であった。逃げ惑う魔王軍にとって不幸だったのは、彼らが人間より頑丈だったことだ。

 

 人であれば即死するような怪我でも、放射能に侵されても、手足が千切れても死ねない。人魔がぶつかり合った戦場は、今では「殺してくれ」と泣き叫ぶ怨嗟の声が響く地獄絵図と化した。それでもゴジラの歩みは止まらない。自分が手を下さずともいずれ死ぬのになぜ情けをかける必要があるだろうか?既に死にかけの魔族などゴジラにとっては路傍の石以下のゴミだった。

 

 そんなことよりもゴジラは次の獲物を探していた。ゴジラはこのヒトではない生き物が何か上位の存在の庇護下にあり、どうやらソレによって強化されているということを本能的に感じ取っていた。

 

 ソレとはつまり魔王である。自分は安全な場所でふんぞり返り、配下を敵に差し向ける。ゴジラにとって許しがたい生き方だった。魔王は自分で望んでそういう風に生きているわけではなく、生まれ持った在り方としてそういう生き方しかできないだけだがゴジラには関係無かった。

 

─殺す。生きてきた痕跡など一つ残らず消し去ってやる!─

 

 そう考えたところで、ゴジラは自分がこの世界に来た時のように自身が不安定になっていくのを感じた。今のゴジラは神でもなく、獣でもなく、また生きても死んでもいなかった。海底に残してきた心臓が動く限りゴジラは不滅である。だがそれは神と成る獣として、憤怒と絶望、破壊の化身としてまだ発展の途上ということでもあった。

 

 ゴジラは今一度深い眠りに落ちていく。だがしかしこれで終わりではない。遠くない未来、ゴジラは再び顕現する。何度倒れても再び蘇り、蘇る度により強くなる。この世界か自身が滅びるまでそれは続くだろう。

 

────────────────────────────────────

 

 地平線が見えないほど広く、どこまでも黒が続く世界。死後や闇を連想される黒の中に、ただ一か所だけ神々しさを放つ白があった。光源すらないその空間の中で、白い椅子とそれに座る長い銀髪の女神だけが光り輝くような存在感を主張していた。

 

「ああ、どうしてこんなことが…。一体どうして…」

 

 彼女は女神エリス。この世界の国教であるエリス教の御神体であり、女神アクアの後輩である。彼女は死んだ人間を導く役目を果たすべく、今まで優しさや慈悲の笑みを絶やさず死者たちと向き合ってきた。だがしかし今の彼女の表情は笑みの代わりに悲痛に歪んでいた。

 

 幸運を司る女神エリスは、神の理に背くアンデットや悪魔に否定的だが、そんな彼女ですらゴジラに踏みつぶされた魔王軍に同情していた。彼らは確かに悪だが、あそこまで苦しんで死ぬ必要はあったのだろうか?

 

 この世界で死んだ人間は必ずこの空間を訪れる。定命の者である限り避けられないことではあるが、今回は死に方と数が異常であった。あらゆる生命が恐怖、苦痛、絶望しながら死んでいったのだ。とある大国が自身の作った兵器で滅んだ時でさえここまでひどくはなかった。あの要塞は理不尽な脅威で今なお被害を出し続けているものの、それ自体に悪意はない。進路から逃げれば踏みつぶされることもない。

 

 だがゴジラは明確に人間を憎み、呪っている。逃げ惑う者をどこまでも追い詰め殺す。核の存在などこの世界の人間は知らないというのに!

 

 もはや一刻の猶予もなかった。ゴジラは魔王以上の脅威である。この世界を守るため、戦わなくてはならない。

 

────────────────────────────────────

 

 その日、転生者たちは夢を見た。自分が死んだ日に行った、あの黒い空間で女神からもう一度使命を託されたのだ。

 

 

       緊急クエスト

   怪獣王ゴジラからこの世界を守れ

        レベル制限なし

        全員参加

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。