アクセルの街──円形の城塞に囲まれたその都市は、元々魔王城から最も遠く、周辺に生息しているモンスターも比較的弱いものばかりという平和な街であった。女神が転生させた日本人たちも最初はこの街に降り立ち、ジャイアントトードなどの手軽な獲物を狩ってレベルを上げ次の街へ行く、いわば『始まりの街』的なポジションであった。
しかし王都がゴジラによって滅ぼされ、アクセルの街はベルゼルグ王国にとって重要な都市になりつつあった。ゴジラの放射熱線による被ばくの影響も街を囲む城塞である程度は抑えられる上に、浄化魔法を使える女神アクアまでいるのだ。
そしてアクセルにはなぜか高位の冒険者が多いため、その庇護を求めて他の都市から移りこんでくる者もあった。
そんなアクセルに、ある日を境に転生者たちが集まり始めた。女神エリスからの神託を受け、希望を捨てなかったもの達が集まり始めたのだ。もちろん全員ではない、ゴジラを恐れ逃げた者、王都での戦いで散っていった者も大勢いる。だがそれでも世界を救おうと再び立ち上がった転生者はアクセルを目指したのだ。
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「やあサトウカズマ、久しぶり……君に魔剣を盗まれて以来だね」
「げっ魔剣の人じゃん……アンタも生きてたんだな」
カズマが酒場にやって来ると、そこにはかつてアクアの扱いでひと悶着あった冒険者─ミツルギキョウヤが立っていた。その腰には以前スティールで盗まれた魔剣グラムを帯びている。カズマはその剣を売り飛ばしたはずだが、いつの間に買い戻したのだろうか?
「君との勝負に負けてから鍛え直しとグラムの買い戻しのために色々な場所で依頼を受けてたんだ。そのおかげといっていいのか、丁度ゴジラが現れた時王都にいなくてね。この前エリス様の神託を受けてアクセルに戻って来たんだ」
「へえ……まあなんだ、生きててよかったよ」
「ありがとう」
以前は険悪な雰囲気であったが、皮肉なことにゴジラによる危機感を共有したことで二人の間には同郷の仲間意識のようなものが芽生えていた。
「世界の終わりみたいな状況だったから武具屋はグラムも含めて大安売りのバーゲンセールでね……そのおかげで思ったより早くグラムを取り戻せたんだけど複雑な気分だな」
「ハハ……でもアンタが来てくれたら心強いよ」
キョウヤの仲間であるクレメアとフィオは相変わらずカズマを睨みつけていたが、キョウヤが許している様子を見て何も言わないことにしたようだ。
「ところでその……アクア様は?」
「ああ、アクアの奴なら被爆した人たちを治療してるよ。なんやかんやであいつも女神だからな」
「……君がアクア様を下天させたことを感謝する日が来るなんてね」
──アクア様がいなければ……放射能による知識もないこの世界はどうなっていただろうか?地球ですら遠ざけるくらいしか対策を取れないというのに……。
ミツルギは心の中で女神アクアに感謝を捧げた。今すぐ自分も女神の元へ馳せ参じたいが、自分が行っても役に立たない。それよりもこれから始まる会議に意識を向けなくては……。
「ちゅうーーーーもーーーーく!!!」
「始まったかな?」
「あれクリスじゃん……なんであいつが発起人みたいになってんだ?」
カズマとキョウヤが声の方向に意識を向けると、そこには冒険者クリスがテーブルの上にのって皆の視線を集めているところだった。なぜか袋を背負っており、それがもごもご動いている。
「さて転生者諸君!今回は集まってくれてありがとう!私も夢で神託を授かってね!というわけで女神エリス様の諧謔なる信徒、クリスが司会進行を務めさせてもらうよ!」
「なあクリス、どうしてお前が……」
「それは私が熱心なエリス教徒だからだよ!」
「お、おう」
ゲフンゲフンと咳払いをしてから、クリスはまた口を開いた。
「ゴジラは王都を滅ぼしてから姿を消したけど……また近いうちに姿を現す。そうなったらまたこの国は…、いや世界が滅ぶかもしれない。そうなる前に私たちでゴジラを倒す!」
「い、いやでも……クリスさんだっけ?ゴジラはいつ現れるのかエリス様にはわかるのか?現れてから向かったんじゃ遅いし、目の間にいきなり現れても対処できないぞ?」
「その点は大丈夫!カズマくん、最初にゴジラが現れたとき何があったか覚えてる?」
「え?俺?」
カズマはいきなり話題を振られて驚いたが、こんな緊急事態では真面目に答えるしかない、必死に当時の記憶を思い出すと……
「……爆裂魔法?」
「そう!あのゴジラは戦いの熱に引き寄せられるんだよ!多分出自的にも大きな光と熱はトラウマなんじゃないかな?……そしてそれだけじゃない、当時あの現場には
「ヤメロー!ヤメロー!」
「うわっなんだよソイツ!」
クリスが袋から汚いものに触るかのように取り出したのは人の……いや、アンデットの生首だった。どうりで袋がもごもご動くわけだ……。
「ク、クリスさん!?そいつの顔……魔王軍幹部のベルディアじゃないか!」
「魔王軍?!」
「……あのゴジラの状態は神と獣の中間、死んでも生きてもいない、そんな不安定な状態なんだ。この世界も魔王軍のせいでバランスが崩れている……ゴジラに所縁のある日本人の魂、生死が曖昧なアンデットという存在、そして熱と光……それら触媒となるものがそろった状態でコイツが召喚魔法を使った時ゴジラが現れた……つまり全部コイツのせい!」
「!!?」
いきなり責任を追及されたベルディアは泣きそうな顔になったが、魔王軍幹部に同情するものは一人としていなかった。
「こいつに爆裂魔法を打ち込んでもらえば!意図的にゴジラを顕現させることができる!多分!」
「ちょ……ちょっと待てよ!ゴジラを呼んだところでどうすんだよ!倒す手段がないから困ってるのにさぁ!」
「君はさ……デストロイアって知ってる?」
「はあ?確かゴジラの敵怪獣だろ?……え?いやまさか……!」
いる。この世界にもゴジラのような巨大な人類の敵が。奇しくもデストロイアと似た名前を持つアレが。
「この街にデストロイヤーが近づいてきてる!バケモノにはバケモノをぶつけんのよ!」
「もうやだ日本帰る!!」