世界を救う英雄を育てた英雄 作:スカイハーツ・D・キングダム
ダンジョン18階層
そこはモンスターが湧いてこないダンジョン内でも楽園と揶揄させる階層だった
だが今 その階層が火の海に包まれていた
闇派閥がオラリオに宣戦布告した大抗争一日目
闇派閥側の神が、ダンジョン内にて神意を発動するという禁忌を犯し、結果それまで存在したことのない最悪のモンスターを生みだし、ダンジョンの深層から階層破壊をしながらここまで上がってきた
エレボスからデルピュネと名付けられたやせ細った黒き龍がその姿を討伐隊として向かったリヴェリア、ガレス、アイズのロキ・ファミリアとアリーゼ筆頭のアストレア・ファミリアが対峙した
それだけでなく、既に来ていたアルフィアともかち合い
その場にいた全員がアルフィアに攻撃を仕掛けようとしたその時
一夏「おい なに勝手なことしてんだ。そいつは俺たちの獲物だって言っただろうが」
どこからともなく飛んできたセリフと共にアルフィアに向け複数の斬撃を飛ばし、それを不可侵の守りである魔法を使いアルフィアは防ぎ、それ以外のアルフィアに当たらなかった斬撃はそのままアルフィアと冒険者たちの間をまるで境界線でも示すかのように地面に斬撃が落ちそのまま深く刻まれた
地面に落ちた斬撃の境界線を見ると、その斬撃によって生まれた境目の底が見えないほど深く、当たればひとたまりもないとその場の面々は思い知る
斬撃の飛んできた方を見ると、片腕をあげた一夏と六月のふたりが歩きながら近づく
リヴェリア「遅いぞ(今の斬撃………なんて威力だ。アルフィアの魔法にも引けを取らない)」
六月「悪いな。道中モンスター共が道を塞いでいて手間取った。みんな、まだ戦っていないな」
一夏「……」
六月がまわりの面々を見ている中
アイズ「………ふーっ、ふーっっ…………」
デルピュネを前にアイズは我を失いかけていた
(アレは──!!)
あたかも仇を前にしたかのように、憎悪と殺意を剝き出しにする
すぐにでもその小さな身体に秘めたる黒き風を解き放ちかけ
一夏「アイズ」コン
アイズの頭を軽く叩く一夏
アイズ「──ッッ、お、お兄ちゃん!」
一夏「今気が付いたのかよ。それはそうと、落ち着きなアイズ。そしてよく見ろ。アレはお前の仇なんかじゃねえだろ」
アイズ「!!」
一夏「俺の教えを忘れたか?自分ひとりじゃ勝てない相手と遭遇したらまず落ち着いて考えろ。どうすれば勝てるのか、どうすれば生き残れるのか。俺の見立てじゃ、お前たちでも勝てない相手じゃないと思ってるぞ」
一夏はアイズの頭を撫でながら諭すような口調でアイズに語り掛けた
アイズ「…………すーっ、ふぅーっ、すーっ、ふぅーっ…………」
すると、一夏の言葉が届いたのか
少しずつ落ち着きを取り戻していくアイズは改めて周りを見た
そして
アイズ「…………あのモンスターは強い。でも、私の攻撃が一番あいつに効く。だから、みんな協力して。お願い!!」
この黒き怪物に勝つためには、自分の力が必要不可欠だと
だが、それでも自分ひとりで勝てない
そう判断したアイズはまわりに協力を仰ぐ
リヴェリア「……ようやく落ち着き冷静に判断することが出来たか」
ガレス「正直あのモンスターを前にいつ爆発し飛び出すかヒヤヒヤしたが、どうにか諫めたか。聞こえたなアストレアの小娘ども!!うちのじゃじゃ馬娘はモンスター、特に竜に対してめっぽう強い攻撃を繰り出せる!!ワシらはあの娘のサポートをするぞ!リヴェリアは拘束と攻撃をやれ!!」
アリーゼ「うそでしょ。あんな小さな子をメインにする気!?」
ライラ「だが言われた以上、アタシらがやるしかねえって団長」
輝夜「あの子供に負けているのは屈辱だが、背に腹は耐えられん」
リュー「正気ですか!?どう見ても階層主クラスはあるアレを攻略する要として、あの子にやらせる気ですか!?」
一夏「大丈夫だ。強いっていったって、俺や六月よりかは弱いから」
リュー「全然大丈夫じゃないですよそれ!…………いやそれならまだいけるのか?」
ネーゼ「すっかり感覚を狂わされてる」
ライラ「うちら全員、あいつらに散々ボコられたしな」
一夏「それじゃあお前ら、あのドラゴンの出来損ないみたいなの相手よろしくな…………そして死ぬなよ。これが終わったら宴だ。ガレス、せっかくだから飲み比べしようか」
ガレス「言ったお主!ならドワーフの火酒しこたま飲ませやるわい!」
一夏「アイズ!勝てよ。お前には、まだまだ教えることが山のようにある。大丈夫だ、まわりを忘れないうちは、お前が負けるようなことはないからよ」
アイズ「──うん!お兄ちゃんたちも頑張って!!」
それだけ言うと、アイズを筆頭に次々と武器を片手にデルピュネに突っ込んでいく
六月「……お前、宴の席の飲み比べ、また俺にガレスの相手させるつもりだろ」
一夏「いいじゃん別に、どうせフィジギフの影響で酔わないんだからよ…………それはそうと」
それまで黙ってこちらの動向を無言で見て何もしてこなかった者
アルフィア「…………来たか。愚弟共」
一夏「改めて……よう、
六月「……ケリをつけようか。アルフィア義姉さん」
黙って見ていた者
アルフィアは相も変わらず目を瞑りながらも、黒のロングドレスに身を包み
ふたりの前に立ちはだかる
アルフィア「………私を殺すか。できるのか、お前たちに。過去数百を超える戦いで、一度たりとも私を負かすどころか、地面に膝をつけさすこともできなかった。そのたびにお前たちは地面に背を向け、血にまみれていた。そして今度という今度はそのようなことはない。お前たちは私に負けて死ぬ。今日ここでな。そのためだけにここへ来た自殺願望者共め」
一夏「…………それ、遺言のつもりで言ってんのか?誰が死ぬつもりでここへ来たって?んな安い徴発に乗るかよ。生憎だが、俺たちは死ぬつもりで戦いに来たんじゃねえ。生きる為。明日を生きる為にここへ来た。どうせ先がないだろうって自棄を起こした挙句未来を生きようとせず死ぬ為に来たお前と違ってな」
アルフィア「…………私が自棄を起こしただと」
一夏「違うのか?自分が不治の病で長く生きられないと見て、俺たちに自分たちの代わりをやらせるために育て、最後は自らを俺たちに喰わせたうえで死のうとする。てめえらのできなかったことを無関係の俺たちに押し付ける。そこまではまだいい。だがな…………てめえの目的の為に、無関係な命を刈り取ってきたその行動は容認できねえ。てめえは人の気持ちも理解できないクソアマとは思っていたが、まさか考え付いた末の結論が、大の為に小を犠牲にするとはな。曲がりなりにも俺たちの誰よりも強かったお前がその道を選んだって知った時、これまでで一番お前に対して怒りと失望を覚えた。そんな道しか選べなかったことによ」
拳を握りながら、一夏の言葉に込められた意思には、大きな怒りと失望が籠っていた
それだけ一夏にとってアルフィアとは、決して歪むことのない 生物としても自分達とは比較にならないほど強大で不動な人物だった
六月「…アルフィア義姉さん……アンタのその考えは、考えに考え着いた末と思っている。このオラリオから新たな英雄を生み出すための礎になろうと立ちはだかろうとする。俺には、アンタの苦悩やそこに至るまでの軌跡は知らない。分かるのは、アンタが今この瞬間、自分の存在の全てを燃やし尽くした上で、未来を築こうとしていることだけ──どうしてだ──どうしてアンタはそうまでして自分が生きることのない未来の為にそうまで命をかけようとするんだ!唯でさえ少ない時間なら、戦いとは無縁 これまで頑張ってきた自分の為の静かな余生を送ったって良かったはずだ──どうして──」
アルフィアを思うがゆえに、そのアルフィア自身が存在しない未来を自ら進もうとすることに悲痛な叫びをする六月
一夏「……六月」
アルフィア「…………意味なんてないからだ。元々私が今もこうして生き残っているのは、あの日仲間達が庇ったからだ」
そうして語りだす
本来病弱でありながらその類い稀な才を持ったことで、ヘラ・ファミリアの中でも異質にして主戦力に数え切れる存在の自分がなぜ、当時自分よりも強かったゼウスとヘラの両ファミリアの団長すら敗れ、五体満足でなかったにも関わらずなぜ自分だけは五体満足だったのか
その答えは単純 戦いに参加しなかった 否 参加させてもらえなかったからだ
ゼウス・ファミリアが
ヘラ・ファミリアは
だが、その代償に元々弱かった肉体への負荷は凄まじく
とても黒竜との戦いに参加できる状態じゃなかった
そんなアルフィアの身を案じた多くの仲間達は無理やり引き留め参加させなかった
もしも、アルフィアがあの黒竜との戦いに参加していたら
果たして生き延びていたか
当時からアルフィアはファミリアないでもトップ層に入れるだけの実力を有していた
そんなアルフィアを引き止めた多くの仲間は皆がアルフィアよりも弱い面々だった
本来ならば、強い者が前にでて、弱き者を後ろに立たせるはずだった
だが、あの日アルフィアを救ったのは
自身より弱くも
アルフィア「…………考えなかった訳じゃない。何度も考えた──もういいんじゃないか──元々私が戦っていたのは、世界を救うためでも、多くの人々を守る為でもない。妹を──メーテリアの生きる未来を守る為だった──だが、そのメーテリアはいない……仲間達もいない……この世界に、命をかける目的はない。どこかで静かな余生を過ごして静かにその人生に幕を下ろそう──そう考えたことだったあった……………………だが………見てる気がするんだ…………死んでいったあいつらが、私を見てる気がする…………」
一夏「……………それが、お前がそうまでして戦う理由…………だとしたら、まるで呪いだな。黒竜を倒すまで、死ぬまで解放されることのない呪いそのもの」
アルフィア「……そうかもしれない」
一夏「……アルフィア…俺にはお前の気持ちはわからねえ。お前の言ったことなんざ知ったことないって吐き捨てたい気分だ。今俺たちと対峙する道を選んだのも、早死にを選んだのも、全部お前の意思。対して俺たちが今こうしてお前の前に立ちはだかるのも俺たちが選んだ道。互いの主張も平行線…」
そう言いながら、一夏は普段ダンジョンに潜る際に着ているコート丈の軽装に手を掛けると脱ぎ去る
それに続く形で六月も普段着ていた濃緑の着物に手を掛け脱ぎ去る
両者の服の下は上が黒のシャツ 下は白の袴となっていた
一夏「………なら、後は……お前とここでケリをつける。それだけだ。それが、同じ神から恩恵を刻んだ者としてのケジメ……なによりこれは、俺自身の悲願…………俺は──今日お前に勝つ──これまでのお前との全てに終止符を打つ──行くぞ 静寂のアルフィア!」
六月「この服装、覚えているよな?ヘラ様のもとでボコられてきた俺たちにアンタが修行用と言われ、今の俺たちにとっては勝負服のようなもんだ──俺も、今日ここで、積年の気持ちとケリをつける──来い アルフィア義姉さん!」
かつての最強派閥の若き二人の眷属はそういうと
それぞれ左右反転だが同じ構えをする
そんなふたりの言葉を聞き終えた 同じかつての最強派閥最盛期の最後の生き残りの女は それまで瞑っていた目を開き
アルフィア「…………あれだけ力の差を見せつけられ、一度は見逃し、挙句死をも予感させる死闘に自ら飛び出す。それが お前たちの選んだ道だというなら──いいだろう──ならば来るがいい。そして思い知れ──何人たりとも超えることのない高き壁を そして絶望し跪いて許しを請え」
ふたりと同じように構えた
両者から放たれた殺気や気迫、魔力の圧などがその場を包み込む
最初に動き出したのは ヘラの新時代の若きふたりの眷属
第一級冒険者でも捉え切るのは容易ではないその速度で、ヘラの旧時代の最強へ各々拳、蹴りを叩き込む
それを片方を容易く受け止め、もう片方をそらして腕を掴む
一夏/アルフィア/六月「「「──!」」」
次の瞬間三人の姿が消えたかと思えばその場から飛び上がり、徒手空拳を炸裂させた
互いに魔法も武器も使わない純粋な体術のみ
だがそれだけで張り合っていた
リュー「な、なんて戦いだ」
アリーゼ「強いってわかってたけど、この階層であの三人だけ場違いすぎない!?」
ライラ「いやあの女どうなってんだ!?いくらレベルが上とはいえ、あいつらと体術だけで渡り合ってんのかよ!」
一夏がアルフィアの腕を掴んでダンジョンの壁の方へ投げ飛ばし、続けざまに六月を足に乗せアルフィアの方へ蹴り飛ばす
壁に投げ飛ばされるも空中で翻し壁に両足をつけ体勢を整えていたその直後
迫りくる六月の拳
それを寸でのところで避けると壁に突き刺さった六月の拳の影響でダンジョンの壁にクレーターができ凹み
それに意を介さず瞬時にアルフィアに徒手空拳を繰り出す六月
だが、そんな六月にすら対応して見せるアルフィア
両者は壁に足をつけながら壁伝いでありながらも階層内を移動しつつ下へ落下する形でぶつけ合った
やがてアルフィアは壁についた足で壁蹴りをし宙へと飛ぶ
そうして宙へと飛び、逃げ場のないアルフィアを逃がすわけもなく一夏は右手をアルフィアへ構え
一夏「『解』」
不可視の高速の斬撃を飛ばして見せ
アルフィア「『
呼吸するかの如く詠唱し不可侵を生み出し斬撃を無効化した
だが
アルフィア「──!」
先ほどと同様
アルフィアに当たる部分の斬撃はかき消されたが、それ以外の部分の斬撃はアルフィアの頭上 18階層の天井にある階層全体を照らす巨大結晶へ届き
切断しそれが階層の下
アルフィアの頭上へと落下していく
当然それに気づいたアルフィアがそれに対応しようと振り返った
その瞬間を逃さなかった一夏は先ほどとは逆に
いつのまにか一夏の元へ来ていた六月に蹴り飛ばしてもらい、アルフィアへ迫る
一夏「『
発現させた炎を拳に纏わせ、それをアルフィアに向け打ち込む
アルフィア「──チッ」
それを片手で防ごうと一夏の拳を片手で受け止めるアルフィアの周囲に展開されていた不可視の対魔法の結界がクリスタル状になってその姿を現し、一夏の炎と衝突し押し合いが繰り広げられた
これはかつての地上での戦いを再現する結果となっている
魔法を使っている限り、アルフィアには一夏の炎魔法が届くことはない
だが魔法を解いてしまえばその瞬間炎はアルフィアを貫く勢いだ
アルフィア「(この炎、そして先ほど斬撃──地上での戦いのときと比べ物にならないほど出力が向上している………こいつ)」
前の一夏を相手取りながらも上空から降り注ぐ巨大結晶
アルフィア「──ッ」
一夏を蹴り飛ばしながら上空へ高く飛び、降り注ぐ巨大結晶の瓦礫の中を、結晶を足場に飛んでまわりながら突き進み、やがて結晶の雨を抜けると
アルフィア「『
お得意の不可視の音の魔法を上空から結晶の瓦礫へ向け放つ
狙いは無論
結晶の下で落下しているであろう一夏を狙ってのものだった
放たれた不可視の音の衝撃波は落下する結晶をも巻き込み勢いよく18階層の地上へと叩きつけられる形で地面にめり込んでいった
アルフィア「──!」
次の瞬間、腰にさしてある短剣を抜くとそれを後ろへ振る
すると
ガキィィンン
アルフィアの更に上まで飛んでいた六月が刀を振り下ろしていたがそれを受け止めた
六月「はあああああああ!!」
アルフィア「──!!」
しかし、流石に身体能力の差があり、そのままアルフィアは地上へと叩きつけられたが、落下する寸前に極小の音の衝撃波を地面に向け放つことでその反動で体制を上手く整え着地して見せた
アルフィア「…………(この動きのキレ………あの時は測りきれなかったが、やはり全盛期のザルドとほぼ同等の身体能力を持っている。先ほどのアレだけで腕が少ししびれる)」
アルフィアは先ほど短剣を握っていた方のしびれた手を見ながら六月の力について考えていた
地上に降りた六月は刀を握りながら、刀を腕の間にまわして見せ、余裕な風貌を見せ笑う
アルフィア「………(報告では、六月はレベル5のまま。しかし現時点での身体的なステイタスはレベル7と言った所か。そして…………!)」
地面に落ちた衝撃で結晶の瓦礫から出た土煙から不可視、だが土煙を切ることでその実態を僅かに捉えきれる斬撃が無数に放たれ
それら全てを不可侵でガードするアルフィア
一夏「アルフィアァァァァ!!」
斬撃を放ちながら片腕に不可視の斬撃の魔法である
いわゆる
アルフィア「──『ゴスペル』!」
対するアルフィアは不可視の音の魔法であるサタナス・ヴェーリオンを纏わせた拳、いわゆる
ドオォォォォォンンン
両者の魔法を纏わせた手と拳がぶつかり合い、その瞬間大きな衝撃音と共に周囲に余波が発生した
アルフィア「やはり
これだけの力を見せてなおも全力を出し切っていない一夏に不敵な笑みを浮かべるアルフィア
一夏「まあな!!最もまだてめえには届いちゃいねえがな」
対して憎いながらも目指した壁と殺りあえていることに高揚感を覚えつつ笑みを見せる一夏
激しい戦いを繰り広げたが
未だ第一ラウンドの序盤でしかなく
誰が生き残るかわからない戦いをしてなおも
三者ともに笑って見せた
一夏と六月の着ていた服装は伏黒甚爾と決戦時の五条悟が来ていた恰好がモチーフです。
そして一夏はヘラの元へステイタスの更新をしに行き、無事ランクアップを果たし、これで現時点で都市陣営でレベル6に至った者は現旧フレイヤ・ファミリア団長の2名に続き3人目です。また、もしも六月もステイタス更新しに行っていたら確実にレベル6になっていました。