世界を救う英雄を育てた英雄   作:スカイハーツ・D・キングダム

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第14話 迷宮魔境都市決戦〜4 散り抜く命 決着

 

シン・陰・六月は、生まれたころから忌み子として扱われた

極東の名家で生まれ、その家の者が代々仕えていた極東の神により生まれた瞬間に恩恵を刻まれた

 

だが 発現したスキルにより生まれた時から一切の魔力を持たずに生まれ落ちた

極東の古くからある名家では魔法を呪術として扱っていた為、それを発動するのに必要な魔力を持たない六月は蔑まれていた

 

産んだ親から見放され、兄弟達からも出来損ないと呼ばれ、虐待され

人として扱われることもなかった

 

そんな日々を送ること14年 

 

極東を訪れていたある女と出会い この時、無意識に恋に落ちた

彼女と出会い彼女からその特異性からなる才能を見出され、自分に付いてくるよう声を掛けられた

 

それまで、自分の意思を持たず、唯々親兄弟に親族から言われるがままの人生を送って来た六月はそんな彼女──アルフィアに付いていくため生まれて初めて家に反抗することにした

そうして初めて知る 自身の中に秘められていた力

これまで一度たりとも家の者に反抗したことがなかったが

自身の実家 シン・陰家は面白いくらいに六月一人の手で叩き潰され

 

挙句の果てに、アルフィアが連れてきたヘラにより六月に恩恵を刻みながらもなにもせずにいたシン・陰家が仕えていた神を強制送還させ、そのまま晴れてヘラの眷属となった

そうして六月は実家から数多の武器や道具等を持ち出し極東から去っていき、六月とヘラにより壊滅的なまでの大打撃を受けたシン・陰家は当時権力争いをしていた五条家に敗れ崩壊し、その五条家もすぐ滅び去った

 

こうして始まった彼女たちとの生活

厳しくも自分を人として扱い 家で過ごしてきた時とは打って変わり 暖かさを感じる日々送った。恩義と愛情を抱きながら生きていた

 

そうして暫く、三人だけの生活を送る中

アルフィアが気絶しボロボロとなった六月と同い年くらいの若い少年を連れ、本人の承諾なしに勝手に眷属に加えられ、それ以来その少年──一夏はヘラとアルフィアに強い敵意を向ける様になりいつか切り刻んでやると豪語した

 

そんな一夏とは唯一の同性であることや共にアルフィアの厳しい指導を乗り越えて行くにつれ親交を深めていき、いつしか自他共に認めあう親友、相方とも言える間柄となった

それからオラリオへ旅立つまでの三年間

アルフィアと喧嘩する一夏の仲裁に入りとばっちりを受けたり、時にはレベルを上げる為に世界各地に存在する古代に封印された強大なモンスター討伐をアルフィアと一夏の三人で行ったり、少し背を伸ばしアルフィアをデートに誘ったりして一夏から『こいつ正気か!?』って顔をされて乱闘したり、オラリオに流れ着きそこでも騒動に巻き込まれながらもアストレア・ファミリアや一夏と楽しい日々を送り、自分は幸福だと実感しながら生きてきた

 

そして、今はまだ弱いがいつの日かアルフィアに勝って自身の気持ちを伝えようと考えながら自分を高めていたそんな矢先、そのアルフィアが闇派閥に与し多くの命を狩りとっていき、そんなアルフィアの犯した罪のケジメをつける為に一夏がアルフィアを殺そうと戦いを挑もうとし、それを止めようとした

しかし、迷いを抱えたままではどうすることもできず、六月自身どうすべきか考えた

アルフィアを止め罪を償わせる

自分のこの甘い考えは一夏にもアルフィアにも通じないと思い知らされつつ覚悟を決められない中、これが本当に最後となる予感を胸に、アルフィアのやろうとしていることを止めるべく一夏と共にアルフィアと対峙

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アルフィアに吹き飛ばされ、どうにか起き上がりながら戦局を見る

 

──領域の崩壊する音がした

 

──領域で鳴り響く鐘の音は徐々に大きくなっていく

 

──見誤っていた あの人を

 

──俺たちが過去一度として勝つことが出来ず 

 

──ただ一度として全力を見せることがなかったあの人を

 

──感じる フィジギフの五感が告げている

 

──間もなくこの領域もろとも滅ぼされる

 

──そして理解する これをくらえば自分は死に体になる

 

──対して一夏は くらえば確実に命を落とす

 

──いや 一つだけこの状況から助かるすべはある

 

 

 

だからこそ俺は考えた──今の自分にできる最善を

 

この先の未来を思い──誰に先を託すべきかを

 

いつかの日 一夏はアルフィアの『英雄となれ』に対し、『自分より六月の方が相応しい。自分は精々身近の誰かを助ける程度だ』

 

そう言っていた

 

──違う 違うんだよ

 

俺の方こそ──お前が相応しいと思っている

 

恩に報いる為だけに英雄になろうとした俺と違う

 

アルフィアに救われなければ 恩に報いることがなければ俺は誰もを救おうとなんて思わなかった 

 

アルフィアと出会って英雄となるべく強くなろうとする過程で人を救う俺と違って

 

お前は最初から その目に死にそうな誰か見てしまえば 聴いてしまえば放ってはおけない 優しさと意思があるお前こそが英雄に相応しい

 

だからこそ お前を死なせねえ

 

そう頭で結論をつけてからの行動は早かった

 

俺は一夏に向かって走り出し

 

バングルから 黒の縄(・・・)を取り出すと

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ジェノス・アンジェラス

 

アルフィアの持つ最強にして領域を除き、最後の奥の手として、これまで手札の一番端に置いていたそれを領域内で放ったソレにより

 

2つの重なり合った領域が内部から崩壊した

 

通常、領域は外側が脆く、内側が硬いため

本来ならばこの魔法で領域が崩壊することはなかった

 

しかし、この魔法を放ったアルフィア自身の領域の維持が限界に達していたことと、一夏自身が領域を維持できないだけのダメージを受けたことにより、同時に2つの領域が崩壊することとなった

 

突如出現した黒い球体に飲み込まれた三者に驚きを隠せなかったロキ/アストレアの面々だったが

 

アルフィアはいうと、吐血した血が黒のドレスに染み付き、身体の一部が焼けていたが軽症で済んでいた

領域内という密封した空間でのジェノス・アンジェラスを自爆として使ったが、自身の魔力での魔法ということもありダメージも最小限程度で済んでいた

 

それに対して 一夏は無傷 全くの無傷で立っていた

 

アルフィア「…………お前だけは立ってられるとは、頑丈だな。いや、それのおかげか(・・・・・・・)

 

アルフィアと同じく、領域内での自爆を受けてなお、魔力とマインドの消耗により地面に倒れるが無傷のままだ

 

だが、そんな一夏とは対照的に

 

一夏「…………馬鹿野郎が…………なにやってんだ六月!

 

六月は満身創痍だった 身体の半分は焼き尽くされ、もはや指で突っつけば倒れてしまいかねないほどの致命傷を負っていた

 

六月「…………悪いな、こうするしかなかった」

 

一夏「──お前、──黒縄(こくじょう)はいざって時に自分に使えって言っただろ!俺を助けるなって約束しただろ!」

 

一夏が無傷でいられた理由

それは、六月の手に握る焼き焦げた黒の縄丈 黒縄と呼ばれるものの特性によるものだ

 

その効果はあらゆる触れた魔法術式効果の相殺 シンプルだが強力な術式効果を秘めていることと引き換えに相殺する度に縄は焼けていき、対象の魔法が強力であるほど焼けていく縄の長さも変わる

曰くこの縄一本編むのに、極東の者達が何十年も掛かる 効果に反し制作に大きな手間がいる使い捨てのアイテム

 

それをいざという時まで取っていたが、アルフィアの魔法から一夏を守るために喰らう寸前の一夏の身体に巻き付け一夏を庇ったのだった

 

強大すぎるアルフィアの魔法を相殺したことにより縄はほぼ燃え尽きもうほんの僅かしか残らなかった

 

アルフィア「…………その傷では、もう助からないな」

 

六月「…………ああ……悪いけど義姉さん。介錯頼めるかな。貴女にだったら殺されてもいいよ」

 

アルフィア「…………」

 

アルフィアは無言で、ただその表情はどこか悲しそうにしていた

自らが鍛え育てた弟子であり弟同然に育てた六月を自らの手で介錯するのだから

 

アルフィア「…………痛みは一瞬だ。  今まで 私達への恩返しの為に人生を使ってくれてありがとう

 

六月「気にしないでくれ。俺が決めた生き方だから。俺、やっぱ英雄の器なんかじゃないや。俺よりも一夏こそ器だよ」

 

覚悟を決め、その最後を迎えようとした六月

 

一夏「待て!やめろ!アルフィア!」

 

這ってでも止めようとしたがリゲインによる肉体治癒に使う分のマインド不足で立てずにいる

 

そうしてアルフィアは六月の胸に手を当て

 

六月「……一夏。ごめん。お前は生きろよ。それと、アリーゼたちに伝えてくれ、先に逝く俺を許してくれって。元々死に場所は決めていた。それに」

 

一夏「!」

 

一夏に振り返りながらも一切の苦痛を感じさせない笑みを見せ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アルフィア義姉さんがいない世界に生きるのは、やっぱきついわ

 

その最後の言葉を伝えるとともに放たれ手刀は六月の胸を貫き

 

穏やかな表情を浮かべたまま、戦いの余波で崩壊しできた奈落の底へ落ちていった

 

一夏「──ッ!」

 

声にならない嗚咽を漏らし、力いっぱい拳を握り地面を殴る

 

アルフィア「…………先に逝って待っておけ。すぐに私もそちらへ行く」

 

リュー「アルフィアアアアア!!」

 

そのアルフィアへ怒りと涙を浮かべながらも怒りと悲しみを抱き襲い掛かるリューとそれに続くアストレア・ファミリア

 

よく見れば彼女たちが戦っていたモンスターはかなり削られ、残ったアイズとリヴェリア、ガレスで倒せるほど弱っていた

そんな中、モンスターを倒すことよりも自分たちが恋焦がれていた六月を殺めたことに怒る面々たち

 

それを負傷状態でありながら俊敏に動き回り圧倒する

 

音の衝撃波で吹き飛ばされるアリーゼ達の所持品のポーション類が散乱し、その一つを拾い上げ完治とまでは行かずとも傷を癒す

 

一夏「………あの馬鹿」

 

六月が消えていった奈落の底へ目を向ける

 

約束を破った上に、満足そうに逝った相方に怒りを覚える

だがそれ以上にこのような結果を生んでしまった自らの非力さにより大きな怒りを抱いてしまう

 

一夏「……(まだだ。悲しむのは後だ。あいつが庇って生き延びたこのチャンス。何が何でもモノにする)」

 

アルフィアと戦うアストレア・ファミリアをよそに、一夏は目を瞑り考えた

アルフィアに勝つための方法

 

最大の壁である不可侵を突破するそのためにどうするべきか

否、もう頭の中ではいくつかある

 

領域展開? あれが一番有効だったがもう発動する為に必要な魔力量が足りない

 

物理攻撃? 今の手札なら単純かつ効果的だがそれでも有効打になりえない

 

もしくは

 

リヴェリア「──一夏避けろ!」

 

リヴェリアの大声に反応し振り向くとリヴェリア達が相手していたモンスターがその巨体を揺らしながらこちらへ突っ込んでくる

 

それに対し一夏は逃げようとも避けようともせず

 

邪魔だデカブツ!

 

襲い掛かったデルピュネの胴体を竈を発動し炎を纏った拳で思いっきり殴りつけた

 

その瞬間──炎を纏った拳から黒い閃光が発生するとともにデルピュネの胴体を半分吹き飛ばした

 

リヴェリア/アイズ/ガレス「──!?」

 

驚きながらも瀕死に追いやられたデルピュネに追撃するリヴェリア達

 

アストレア・ファミリア「「「「!!」」」」

 

驚きながらもアルフィアへの攻撃を止まないアストレア・ファミリア

 

アルフィア「──今のは」

 

一夏「…………まさか、ここで発生すんのかよ。黒閃(こくせん)

 

それは 打撃との誤差0.000001秒以内に魔力が衝突した瞬間

 

空間は歪み

 

込めた魔力が黒く光る現象

 

衝突の際すると通常時の2.5乗の威力という攻撃を叩き込めるだけでなく

 

一時的にゾーンの状態に入り、秘めたるポテンシャルを向上させる

 

だが 黒閃を狙って発動できるものは存在しない あのアルフィアですら例外じゃない

 

そのため発生させられるかどうかは魔法を使えるうえにエンチャント系の魔法、もしくはそのエネルギーである魔力を纏うなどができる上で運しだいとされている

 

一夏「……どうせならさっきアルフィアを殴りつけた時にでも発生して欲しかった。そうすればあいつに勝てただろうがなぁ…………待てよ」

 

黒閃を決め、全能感を感じながら愚痴を溢していたが そこで先ほどの黒閃を振り返る

 

アルフィア「……黒閃を決めたか。だが、それで何が変わった?お前が不利であるこの状況に変化はない!」

 

アストレア・ファミリアを返り討ちにしたアルフィアがそう叫びながら拳に音の魔法を纏わせながら接近した

 

その迫りくる状況の中、一夏はなにかを掴みかけていた 掴もうとし無防備状態を晒し

 

アルフィア「ッッ!」

 

音の魔力を纏わせたアルフィアの拳が一夏の胴体に叩き込んだ瞬間 拳から黒い閃光が発生するとともに一夏を吹き飛ばした

 

黒い火花は 微笑む相手を選ばない

 

アルフィア「(ここで私も出したか だがこれでお前も終わりだ)」

 

そう内心確信しながらも吹き飛ばされ力尽きる姿を見届けようとする

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アルフィア「──!!」

 

だが そんなアルフィアの予想とは裏腹に、一夏は口から大量の血を吐きながらも倒れることなく踏ん張った

否 ただ絶えたわけではなかった

 

アルフィアが拳を叩き込んだ一夏の胴体に 先ほどアルフィアが見せた領域展延と思われるものが纏っておりそれがダメージを最小限に抑えていた

 

アルフィア「(あいつ、展延を覚えたのか!?この短期間で)」

 

黒閃の副次効果により跳ね上がったポテンシャルが、一夏の技術を向上させた

しかし、いくら黒閃を決めたとはいえこの短い時間でそれを会得するのは至難の業

 

黒閃を決めたことと 一夏自身の元々高かったポテンシャルがこの窮地に成長を施したのだ

 

一夏「──はあ、はあ、初めてにしては、悪くないんじゃねえか(あっぶね、一か八かやってみたら成功したが。失敗してたら詰んでたな)」

 

アルフィア「(私ですら、物にするのに数時間は掛かったアレを。それも効率よく防ぐためにヤマ勘で胴体にのみ展延を)……この土壇場でもなお成長をするとはな。だが、まだ私には及ばん」

 

黒閃を決めたことでアルフィアもまたボルテージが上昇し、ダメージと肉体の負担により下がっていた魔法の出力が上がりつつあった

 

片や黒閃を決め、120%のポテンシャルを引き出しつつもボロボロの肉体を無理に立たせ魔力とマインドが切れかかっている一夏

 

片や黒閃を決め、下がっていた魔法の出力を取り戻しつつも一夏以上に身体への負担を抱えるアルフィア

 

互いに限界を超え、一歩間違えればその時点で死は確定する

 

一夏「……アルフィア……そろそろ終わりにするか」

 

口元から吐いた血を拭いながらも決して背を向けず、弱い姿を晒さないヘラの最後の眷属たち

 

アルフィア「ああ………これで最後だ。 来い、英雄の作法を教えてやる

 

一夏「………興味ねえな」

 

互いに確信する 次で決まると

 

いつでも斬撃を出せるように指先を構える一夏

 

いつでも音の衝撃波を出せるよう残った腕を構えるアルフィア

 

各々の魔法の早撃ち勝負

 

アルフィア「……(魔法の早撃ちに関しては、お前は私をも上回っている。だが、それでは決定打にはならない。私の不可侵がある限りは。……ここまでなのか──お前も成長は──もっと魅せて見ろ、織斑一夏)」

 

一夏「…………」

 

勝負は一瞬で決まる

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ほんの数秒の沈黙の間 両者にはそれ以上に感じられた時間

 

 

福音(ゴスペル)

 

 

先に動いたのはアルフィアだった

 

残された腕から放たれるは不可視の高速の音の衝撃波

 

それに対し遅れて一夏の指先から放たれるは不可視の高速の斬撃

 

黒閃を決め、魔法の出力が上がったとはいえ、まともに撃ち合えば威力で負けるのは一夏の方だ

 

────さらばだ 一夏

 

自らの勝ちを確信し この先の結末を迎え入れようとアルフィアはその散りざまを見届けるのだった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

                                                          

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ザッシュ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次の瞬間アルフィアの視界に 残された腕が切り飛ぶ光景が映る 

 

────はっ?

 

アルフィアが疑問を抱く間にその目に映る光景は変わる

 

まるで身体が崩れ落ちる様に態勢を崩し ついには仰向けとなる

 

アストレア/ロキファミリア面々「「「!!」」」」

 

そんな光景に驚く面々をよそに 

 

アルフィアは理解した

 

────ああ、そうか

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アル/フィア「切られたのだな 私は

 

今の自分が置かれた状況を

 

一夏「……俺の斬撃魔法は早い話、目に映る物を斬る魔法。だが、それではお前の不可侵を破ることはできない。だからこれまで、どうすればお前の不可侵を破れるのか。どうすればお前を斬れるのか、ずっと考えてきた。皮肉なことに、お前とのこの最後の戦いの死にかけたこの状況でようやく掴んだ。お前の不可侵を破る方法をな」

 

ゆっくりとアルフィアの方へ歩きながらも口は止まらない

 

一夏「あの時、黒閃を決めた際の空間の歪み、そこから着想を得た。俺は今まで、不可侵ではなくアルフィアを斬ろうとした。それこそが間違いだった。俺が本当に斬るべきは目に見える物ではなく、目に見えない物を斬るべきだった。」

 

斬撃を放った自身の指を見ながら、一夏は先ほど放った物を思い浮かべる様に噛みしめる

 

一夏「今お前に向け放ったのは、今までみたいな斬撃じゃねえ。あれは術式対象を拡張させたものだ」

 

アル/フィア「………そう、いうことか」

 

一夏「……ようやく理解したみたいだな。あの斬撃は、術式対象をアルフィアではなく アルフィアの存在する空間 世界そのものまで拡張して斬った お前の不可侵なんざ関係なく、お前が空間 世界に存在する限り空間 世界ごと存在を分断させる。正直自分でも驚いている。魔法は自身の解釈次第でどこまでも伸びるとはいえ、ここまでのことが出来るなんざ。まあ、俺にこれを教えたのはお前だけどな」

 

自身の放った音の魔法ごと切られ上半身と下半身に真っ二つにされ、多量の出血をするアルフィアを見下ろす形でそばに立つ一夏

 

アル/フィア「フッ……ハハッ、まさか。この私が、お前一人に敗れるとはな。それも……私ですら思いつかないやり方で。ゼウスとヘラ最盛期だった私たちの時代でさえ、これを破った者は一人としていなかったというのに………」

 

口から血を吐きながらも、もはや死はそこまで迫っているのが見ていて分かる状況であるにも関わらず、アルフィアは笑っていた

 

一夏「……いつものお前なら、直前で察知してギリギリで回避できたはずだ──本当に弱くなったな」

 

アルフィア「………ああ、全くだ。だがこれでも、お前たちと出会った後に領域を会得出来たことを考えれば、全盛期とは違う強さを得たと言えよう。そして、お前自身も、よくぞここまで強くなった」

 

────誇れ お前は強い

 

一夏「…………誇れるかよ。六月とふたりがかりで挑んでこのざま。あいつがいなかったら死んでいたのは俺の方だ。結局お前は、俺との約束を破って死んでいく。闇派閥に手を貸さず、静かな余生を送っていたら、お前の病を治す可能性が僅かにもあったはずだ。なのに死に急ぎやがって」

 

アル/フィア「…………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一夏『はあ…はあ……はあ』

 

アルフィア『ふむ、昨日よりはマシな動きをするようになったが、まだこの程度か』

 

一夏『はあ……はあ……クソ、化け物が、何が不治の病で先が短いだ。病のデバフが全く機能してねえだろ』

 

アルフィア『そんなわけあるか。これでもヘラ・ファミリア最盛期だった頃よりも衰えている』

 

一夏『──!』

 

アルフィア『──私に残された時間は少ない。だからこそ、この限られた時間に強い者を育てる』

 

一夏『………』

 

アルフィア『立て、衰えた私にすら勝てん者が英雄になれるか。あの黒き終末に勝てるか』

 

一夏『…………はぁ………だーかーらー、俺は英雄になる気はねえしお前らの悲願なんざ知らねえってんだろ!そんなものより今の俺が優先してんのはてめえに勝つことだ。それもただ勝つんじゃねえよ。ハンデも背負ってないお前を叩き潰すことだ!』

 

アルフィア『!!』

 

一夏『お前、どうせ先がねえからって、俺たちを強くした後そのまま死のうとか考えてないか?ざけんなよ!人を勝手にお前らの悲願に巻き込んでおいて、なに死んで一抜けようとしている!当事者のお前は意地でも生きて生きて生き抜いてから死ね』

 

アルフィア『………一夏』

 

一夏『約束しろ。お前がいつの日か、なんのハンデを背負わずやり合えるその時が来るまで、俺がそんなお前を超えるその時まで…………死なねえって

 

アルフィア『…………生意気言うな若造が、なら精々私が死ぬよりも早く上に来い』

 

一夏『ああ、今に見てろよ。すぐ追い越してお前を見下ろしてやる』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一夏「…………最後に 言い残すことはあるか?」

 

ヘラ・ファミリア最後の一人となる者としての言葉なのか

 

アルフィアを超えようと足掻いた1人の挑戦者(チャレンジャー)としての言葉なのか

 

織斑一夏という一人の男の言葉なのか 本人もわからない

 

ただ考えもせず呟いたその一言

 

アル/フィア「──ないな」

 

旧時代最強の一角だった ヘラ・ファミリアが誇る静寂の魔女は、そういうと間もなく訪れる死を受け入れようとゆっくりと目を瞑った

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

────もし......本当にもし私に子供ができたら、男の子でも女の子でも......『ベル』と名付けたい。アルフィアの魔法の鈴の音と同じ名前を──

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アルフィア「………」

 

────ゼウスに預けられた 私の甥だが お前の好きにしろ

 

一夏「──ッ」

 

その言葉を最後に 旧ヘラ・ファミリア最後の眷属 静寂のアルフィアはこの世を去った

 

その表情には 一切の苦しみも恐怖も感じられることはなく

唯々安らかに逝ったことが伝わった

 

一夏「………なにが未練はないだ。あんじゃねえかよ………嘘つき」

 

そうアルフィアの遺体に吐き捨てながらも悔しそうに拳を握る

 

やがて、デルピュネを倒した他の面々がそろって一夏の下へ集う

 

脅威を跳ね除け乗り越えることができたが、その表情はどこか暗かった

アルフィアを倒すことと引き換えに、ひとりの男を失った

 

特にアストレア・ファミリアの面々は皆涙の跡が残っていた

 

一夏「…………行くぞ。まだ地上では戦いが続いている」

 

ネーゼから貰ったポーションを飲み干すと地上へ歩こうとする

 

リュー「ま、待ってください!六月は、六月はどうなるんですか!?」

 

一夏「……あいつは死んだんだ。それは確固たる事実だ」

 

リュー「ええ、それは分かっています。ですがせめて、遺体だけでも回収を」

 

一夏「駄目だ」

 

一夏は六月の亡骸を回収に行こうとするリューを制止する

 

リュー「な、なぜです!?なぜあの人を回収しようとしないのですか!」

 

一夏「言ったはずだ。まだ地上では戦いが続いている。そんなことに時間を使っている暇はない。あいつは置いていく、無論アルフィアもな」

 

冷たく言い放つ一夏の言葉に場は氷かけるがリューは激高し掴みかかる

 

リュー「どうして、どうしてそんな言葉が出るんです!?あの人は、貴方の親友じゃなかったんですか!!無二の相方じゃなかったんですか!貴方だけじゃない!私達にとっても大切な人だった!なのに、なぜだ!!」

 

涙を流し、自身の内なる感情を強く吐き出す

 

輝夜「よせリオン!」

 

そんなリューを輝夜が取り押さえる

 

リュー「離せ輝夜!貴女はなぜ怒らない!こんなことを言うこの男に!」

 

捕まれながらも激高し言葉を続けるリュー

 

そんなリューを止めたのは

 

アリーゼ「リオン」

 

団長のアリーゼだった

 

リュー「ア…リーゼ」

 

アリーゼ「……一夏のいう通りよ。私たちは早くいかなきゃいけない」

 

リュー「……え?」

 

アリーゼ「行きましょう。皆」

 

アリーゼがそういうと他のアストレア・ファミリアの面々が歩き出し、それにリヴェリア達も付いていく

 

リュー「ッッ!────あの人をここに置いて行くなんて私は嫌です!!あの人を一人になんてさせたくないです!!」

 

自分を置いて先へ行こうとする皆に声の限り叫んだ

例え自分一人になってでも六月の亡骸を迎えに行きたい

そう心の奥底から吐いた言葉は

 

アリーゼ「リオン!!」

 

アリーゼの更に強い言葉にかき消された

 

アリーゼ「これは団長命令よ。私達は、都市の安全を守るアストレア様の眷属、アストレア・ファミリア!本当に優先すべきはなんなのか、よく考えて!」

 

そういうアリーゼの顔を改めて見たリュー

 

アリーゼの顔は多くの涙を流し、悔しそうにしていた

 

アリーゼではなかった

他のアストレア・ファミリアの眷属達は皆悔しそうに、涙を流していた

 

そう

 

皆だって六月の亡骸を探しに行きたかった

 

だが自分達の使命は 多くの人々を守ること

 

ここで六月の亡骸を探しに行けば、助かるはずの命を見捨てるも同然だった

 

リュー「──!」

 

そして 戦闘を歩く一夏の口元や手からは、強く噛みしめているのか 握りしめているのか血が流れていた

 

本当は一夏だってそうしたかった

 

だがそれを今は堪えて、成すべきことを果たそうとしていたのだ

 

リュー「──許して下さい、六月!」

 

顔を拭い、ここにはいない六月に謝りながら一夏達に付いていく為に走り出した

 

そうして、18階層から地上に上がるまでの道中

 

モンスターに襲われつつも地上へ向かう一行

 

そんな中でもアストレア・ファミリアの面々は涙を流し、地上へ上がるとそれまで流していた涙を拭い

 

全員が成すべきことを成すために都市を掛けまわった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

こうして のちに死の7日とも呼ばれたオラリオは始まって以来の大抗争は終焉を迎え 闇派閥とオラリオ全勢力との戦いは

 

オラリオが制したのだった 

 

多くの犠牲の中 旧新オラリオ最強/最恐は死に 新たな最強が誕生したのだった

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