世界を救う英雄を育てた英雄   作:スカイハーツ・D・キングダム

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前回 決着をつけた一夏でしたが、その心に影を落としている状態です。

ここからどう立ち直るか


第15話 懐玉・玉折~① 残された者 憤怒の凶鬼  

 

 

 

 

 

────待て

 

悪いな、こうするしかなかった

 

この私が、お前一人に敗れるとはな

 

────待てよ

 

 

俺、やっぱ英雄の器なんかじゃないや。俺よりも一夏こそ器だよ

 

誇れ お前は強い

 

────待てって!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アルフィア義姉さんがいない世界に生きるのは、やっぱきついわ

 

ゼウスに預けられた 私の甥だが お前の好きにしろ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一夏「はあ、はあ、はあ、はあ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

オラリオ 世界の命運を掛けた死の7日間とも呼ばれる戦いを終え、オラリオに平和が戻った

 

終戦から約二か月

各ファミリアやギルドに住民達は復興作業に勤しみ

少しずつだが、かつてのオラリオの姿を取り戻しつつあった

 

しかし 破壊された建物が戻ることはあれど

失った多くの命が戻ってくることはなかった

中には生きていれば将来有望な冒険者に慣れていたであろう若き命もあった

生き残ることのできた多くの者が、その心に大きな悲しみを抱えていた

 

 

アーディの様に、その遺体を発見し無事埋葬できることができればまだ幸福だが

多くの遺族や友、仲間や愛する者達を見つけられずにいる者が多くおり

 

オラリオで亡くなった命のうち、その三分の一近くが未だ瓦礫の下におり、時間が経ちもはや判別も難しい

 

しかし

そこで活躍したのが一夏の眼だった

 

一夏の眼はスキルにより魔力を可視化でき、亡くなった者の生前使っていた所有物を見せ、そこに僅かに付着した魔力を覚え、そこから見つけ出し判別した

 

この眼を持つ一夏曰く、『魔力は生物全てが持っているものであり、六月の様な例外を除いて恩恵持ちじゃなくても、無意識に微量な魔力を日々の生活中に垂れ流している』と述べここ二か月、死んで見つけられずにいた多くの遺体を遺族や多くのファミリア達と再会させることができ、多くの感謝の言葉を掛けられた

 

だが この二か月の間

一夏はほぼ不眠不休で働き続けていた

 

少しでも眠って休もうとすれば 自身が殺したようなものの相方と自身の手で殺めた大嫌いだった彼女の最後の光景と言葉が夢の中の自分に見せられ、何度も眠りから覚めさせられる

 

疲労は溜まり、それをごまかすためにポーションを飲んで無理に身体を動かしていた

少しでも気が抜けると、眠り再びあの夢を見る羽目になるからだ

 

そんな無理をしている一夏を心配するのは、六月を失い悲しみに満ちていたアストレアファミリアや、居候先のガネーシャファミリア、アイズを筆頭としたロキファミリアの面々たちだったが、それでも自分の弱いところを決して他人に見せられたくはなかった一夏は虚勢を張って自分はなんともないかのようにふるまうのだった

 

 

復興作業はあらかた進み、最近では発見できていない遺体の数も減少傾向にあり、一夏にも時間ができたが

最近 無理する自分の姿を見せたくないが為に、あの廃教会で寝泊まりをし続けていた

 

一夏「──」

 

ポケットにしまってた小袋を取り出し眺める一夏

 

その中身はアルフィアの遺灰

 

あの戦いの後、すぐにでも六月とアルフィアの遺体を運びたがっていた一夏やアストレア・ファミリア達の気持ちを汲んだフィンやリヴェリアがロキファミリアの団員たちをダンジョンに向かわせ、遺体の回収を命じた

それなりに時間が経っていたのでもしかすればモンスターに食べられていたかもしれない

 

そう危惧していたのだが なんとアルフィアの遺体は一夏に切断された以外にどこも傷がなく綺麗な状態で残っていた

しかし、一方の六月の遺体だけは見つけられずにいた

唯一奈落に落ちたので一応その先も調べたがやはり見つからず、モンスターに食べられたかもしくは未だどこかで行方不明になっているか

 

魔力を持たないがために一夏の眼では探しきれず、今なおアストレアファミリアを中心に捜索している

魔力を持たない存在であるため一夏の眼に映らず判別できないが、逆に言えば一夏が見ても魔力がない遺体ならそれは六月である証明となる

 

だから、ダンジョン内で骨だけになった遺体や身体の一部は回収し見る作業をしているが、どれも魔力の反応があるものばかりで、六月の遺体の欠片も見つからなかった

 

一方のアルフィアの遺体は回収され次第一夏がすぐに燃やし火葬した

 

その行動の速さにロキファミリアの面々は驚くが一夏は淡々と遺灰回収作業をする

 

もっと他に無いのか

例え殺し合い嫌っていた相手とはいえその迅速な対応に思うことはあれど誰も口には出さなかった

 

この二か月

仕事以外は人目を避けるかのように生きている一夏

まるでなにかを探しているように

 

悲しみと向き合いながらも歩き続けるアストレアファミリアと違い、一夏はその悲しみと向き合え切れずどこか逃げ腰になっていた

 

一夏「………どうしてだ」

 

あの日 六月とアルフィア

ふたりを亡くしたあの日から

 

一夏の胸の内を巡っていたものは 例えようのない寂しさと孤独、喪失感だった

 

六月を失ってそう思うのは理解できた

だが アルフィアを亡くしたことでもなぜそう思えてしまうのか

わからずにいた

 

そんな日々を送り、自問自答を繰り返す始末

 

そうして陰鬱に過ごしていたある日

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

オッタル「俺と戦え」

 

オラリオをひとり歩いていると、見知った顔に戦いを挑まれた

 

名をオッタル

かつて、一夏と六月に敗れるまでは都市最強と呼ばれたフレイヤファミリアの武人

 

一夏に敗北して以降レベルが格下に負けた元最強という不名誉な呼ばれ方をした

だが先日の大抗争の際、因縁のあったザルドに打ち勝ち晴れてレベル7へのランクアップと最強の称号を取り戻すことに成功した

 

一夏「………会ってそうそういう言葉がそれか?生憎こっちは今傷心中だ。他の日を当たれ」

 

そうして立ち去ろうとしたが

 

オッタル「──俺に打ち勝ったあの日 お前は俺に言った言葉を忘れたか」

 

オッタルの言葉に立ち止まる

 

一夏「…………『負けたことが悔しいならいつでも挑みに来い。俺はいつでもいいぞ』か。……我ながらなんてこと言ったんだか」

 

オッタル「男が一度口にしたことを曲げる事が何を意味するのか、知らんわけでもないな?」

 

一夏「……はあ、言っただろ。今俺はやる気がないんだって。仮に今お前と戦った所で、得られるものはなにもない。ほっといてくれ、マジでさ」

 

普段ならともかく、今現在気力を出せずにいる一夏はこれ以上言葉を交わすことすら億劫に思っており、この場を去ろうとした

 

オッタル「………そうか。ならここで貴様を叩き潰す!」

 

その瞬間、背を見せた一夏へ、背負っていた大剣をオッタルは振り下ろす

 

すぐに気づいた一夏はバックステップで避ける

 

一夏「話聞いてないのか?俺の事情分かってて攻めてくんじゃねえよ!そんなんだからお前は身内にもよそ様にも嫌われんだよ!」

 

オッタル「俺にとって優先すべきは女神の真意に従うこと。そして、誰よりも強くなり、わが女神を頂点にすることだ」

 

一夏「お前らのその女神至上主義にはいい加減うんざりしてんだよ!」

 

攻撃を交わし大剣を腰に差してある飛天で受け止めたが

 

一夏「ッッ」

 

そのままオッタルの拳が飛んできた

 

その拳を受け止めた瞬間ステイタスの差による膂力により吹き飛ばされ、復興仕立ての建物にまで吹き飛ばされた

 

オッタル「どうした。お前の力はこの程度のはずはないだろう」

 

一夏「ゴファ、ゴフゥ」

 

吹き飛ばされたときのダメージで腕に痛みを感じながらも立ち上がる

 

それでもオッタルはお構いなしに殴りつける

 

レベル6とレベル7

 

ステイタスで見てもオッタルの方が格上

しかし、本来なら例えランクアップした所で一夏が負けることはない

 

いつも隣で共に戦っていた六月が居なくなったことによるメンタルは最悪であり、判断を鈍らせる始末

 

その結果

 

完膚なきまでにオッタルにぼこぼこにされ、壁に身体を預けるまでに負傷した

 

一夏「はあ………はあ……」

 

オッタル「………何たる脆弱、何たる無様。これが、かつて俺から都市最強を奪った男の姿か」

 

一夏「……言っただろ。今の俺は傷心中だってな。お前との戦いにもやる気を出せないくらい、気力がねえんだよ」

 

オッタルの攻撃を受け、全身の骨にヒビや骨折相当の負傷を負ってなおも

一夏はスキル【リゲイン】による肉体の治癒に入り回復しかけていた

 

身体の傷は癒え、その気になればいつでも戦えるがそれでも頑なに戦おうとする姿勢を見せない

 

そんな一夏の姿についにはオッタルも剣をしまい

 

オッタル「そうか。どうやら俺の見込み違いだったようだ。あの女に鍛えられ、俺を一度は超えたお前が、このような腑抜けだったとは」

 

一夏「………どうとでも言え。なにを言おうが変わらねえ」

 

オッタルからの一方的な失望の言葉すら気にするそぶりを見せず、さっさとこの場を去ろうと考えていると

 

オッタル「六月が居なければ戦う意義も持たないほどの軟弱ぶりを晒すとは 先代の眷属やアルフィア、六月が哀れでしかない。お前の様な臆病者が生き、六月(あの男)が死んだことが哀れでしかない

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アッ?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

門番1「お、おい…」

 

門番2「あ、アレは…」

 

フレイヤファミリアのホームの門

 

そこで見張りをしていた門番達は目の前の光景に戦慄していた

 

ズル ズル ズル ズル

 

1人の男が、何かを引きずりながらフレイヤファミリアのホームへ向け迫って来ていた

 

血まみれになりながらその男は片手で何かを引きずるその姿には、オラリオ随一の過激さを持つフレイヤファミリアの団員たちですら恐れるものがあった

 

なにせ、その男 一夏が引きずるのは

 

門番「オ、オッタル団長!?」

 

現オラリオ最強にして唯一のレベル7 フレイヤファミリア団長

オッタルだったのだから

 

一夏に引きずられたオッタルのその姿は見るも無残なものだった

 

まず身体中には何かに切られまくったかのような斬撃の跡が残り

四肢すべてが切り落とされ、そこから身が溢れ出ていた

 

一夏が頭から被っていた血は全て一夏ではなく、一夏に返り討ちにされたオッタルの返り血だった

 

誰がどう見ても瀕死

生きているかどうかすらも怪しい とても現最強と呼ばれたその姿から想像しきれないほど無残な姿だった

 

門番「き、貴様、いったい何を」

 

門番が武器を持ちながら警戒した瞬間オッタルを引きずっていた腕を振りかぶりそのままオッタルを投げ飛ばし、投げ出されたオッタルは門番ごと門に激突し、ホームの門は破壊され、そのままフレイヤファミリアホーム内に侵入する

 

その破壊音を聞きつけ、多くの眷属達が向かうが彼らが目にしたのは、破壊された門から侵入したかつて自分達に屈辱的な敗北を味合わせたふたりの男の片割れ

 

そして 自分たちが崇める女神の隣に唯一立つことを許された不俱戴天の敵であるがその腕っぷしに関しては絶対的と認めた団長オッタルの無残な姿

 

辛うじて息はしてはいるものの、早く治療をしなければ死んでしまいかねない

 

アレン「てめえ、白昼堂々女神の庭園に殴り込みに来やがったな」

 

ヘディン「……まさか、あの脳筋猪をここまで(やはりか………レベル7に上がったとはいえ、あの男はかつてレベル差が2あった状態でも打ち勝った。あまり当たりたくない予想が当たってしまった)」

 

ヘグニ「わ、我らが敬愛せし女神の庭をあ、荒らすオ、凶鬼(オーガ)め、き、今日こそわわ、我らの間にに、あ、ありし、い、因縁に、けけ、決着を」

 

フレイヤファミリアが誇る第一級幹部(レベル6)三人が武器を片手に一夏を睨む

 

一夏「…………別に、お前らに用はねえ。俺は唯、お前らのところの元最強の脳筋団長を返しに来ただけだ。こいつ、なにをとち狂ったのかレベル7になった程度で俺に勝てる気だったのか、傷心中の俺にお構いなしで挑んで見事返り討ちにされた。こいつ死なせたくないなら早く治療するんだな。それと、これは返す。今なら繋げられるんじゃねえか?」

 

もう片方の腕に握られていたオッタルの手足が入った袋を投げ渡し、ホームから出て行こうとした一夏

 

アレン「待ててめえ!」

 

それに待ったを掛けた副団長のアレンは、持っていた槍を一夏に向け一突きしたが、それを余裕そうに避けた

 

一夏「………一応聞こうか。喧嘩売ってんのか?」

 

アレン「それはこっちのセリフだ!門を破壊し、土足で女神の庭を荒らしたてめえをこのまま生かして返すと思ってんのかアアッ!」

 

ドヴァリン「アレンに同意するわけじゃないけど」

 

ベーリング「お前にはかつて屈辱的なまでの敗北を味合わされた」

 

グレール「丁度いい、あのお方の庭を荒らしたお前をこの場で始末しつつ」

 

アルフリッグ「レベルアップした我らの力量を試す相手にしてやる」

 

ガリバー兄弟「「「「我ら、フレイヤ様に使えし強靭な勇士(エインヘリヤル)が葬り、我らこそが女神の最強の矛と盾であることを証明して見せよう」」」」

 

同じく幹部(レベル5)のガリバー兄弟の号令と共に多くのフレイヤファミリアの眷属達が武器を構え殺気立ちながらいつでも立ち向かえるようにする

 

かつて 生前の六月と共にレベル4ふたりがかりで当時最強を誇っていたフレイヤファミリアを攻め滅ぼし、彼らから最強の称号を奪って見せた

 

それから過去数え切れないほどの襲撃をかけた団長幹部以下団員達だったが悉く敗北しプライドはズタズタにされた

 

しかし、暗黒期を乗り越えたことでファミリア全体がランクアップを果たし、かつて一夏達に負けたあの頃以上の実力を身に着け、その雪辱を果たそうと躍起になっていた

 

一夏は、一度はオッタルによって抑えていたものを解き放たれ、感情の赴くままオッタルを瀕死へと追いやり、またここでも同じことになりかねない気がし、適当の言葉を交わしつつ出て行こうとした

 

ヘディン「貴様は確かに異常なほど強い。だが、あの時とは決定的に違うことがある。あのフィジカルに全振りした脳筋はもういない。いくら貴様があの時以上に強くなっていようと、貴様ひとりに我らが負けることはない

 

フレイヤファミリア幹部にして参謀をするホワイトエルフのヘディンが杖と長刀の両方を併せ持つ武器を一夏に向けこちらの優位性を口にし

 

一夏はそれに一瞬反応したと思えば

 

一夏「…………フッ」

 

アレン「アアッ?なに笑ってんだ」

 

一夏「いや、笑えるだろ。まるで、六月が居なければ俺に勝てる。なんだったら群れれば俺に負けるはずがないって、言ってるみたいでよ。日頃アレだけ互いを女神の寵愛を求めあう敵としか見ておらず、徒党を組んで挑むなんざ真似を死んでもやろうとしないくせに。俺一人を殺る為だけに随分と必死になってる姿がさ、守れもしない下らないプライドも矜持も破り捨ててまで俺に勝った気でいるその姿が、実に滑稽で笑えてくる

 

瞬間、一夏を囲っていたフレイヤファミリアの団員達がこれまで以上に殺気立ちながら、武器を握る掌から血が滲み出るほど強く握りしめ

 

一夏「それともう一つ 勘違いするな」

 

一夏の言葉を無視しながら一斉に武器を魔法を 一夏へ放つ

 

そんな状況に置かれながらも 

 

一夏「お前ら如き」

 

一夏は閻魔天の印を結ぶと

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

六月抜きでも相手にならねえよ   領域展開

 

 

 

己の世界を開くワードを口にした

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

リヴェリア「なんだ………これは」

 

少し時が経ち 街中でオッタルと一夏が交戦しているという知らせを団員から聞いたリヴェリアとフィン、ガレスの少数精鋭は武器を片手に止めにきた

 

ようやく都市内は復興し落ち着きを取り戻しつつある中、またしても建物が壊されることがあってはならないことと、六月を失い不安定と化している一夏の状態を考えれば万が一戦闘になる恐れもあり、先日の抗争でレベル6に上がったロキファミリアの最強戦力が事態の終息にあたろうとしたが、ふたりが暴れた場所にはふたりの姿はなく、何かを引きずった血の跡だけが残っており、それを辿って行ってみれば、そこはフレイヤファミリアのホームまで続いており、中を覗くとそこは

 

 

血まみれのフレイヤファミリア眷属たちがぼろ雑巾の様に辺り一面覆っていた

 

一夏「……なんだ。お前らか」

 

その中央に一人立っていたの周りには見るも無残にズタボロに幹部たち、そのうちの1人であるアレンの首を掴みながら、目の前のフレイヤファミリアの治療師筆頭のヘイズに呼びかけていた

 

一夏「ほら、また治療しろ。俺が飽きるまで何度でも付き合ってもらうぞ」

 

ヘイズ「ヒッ」

 

過激揃いのフレイヤファミリアの中でレベルを上げ、気性の粗さは幹部にも遅れを取らないヘイズだったが

返り血を浴びながら唯々延々と団員達をズタボロにし、何度も自分を含めた治療師達に治させ戦闘を継続させ、それが30を超えたあたりで自分以外の治療師が魔力とマインド切れによりダウンし、遂には自分だけがこの狂気な光景を延々と見せられながらそれを継続させるために無理やり手を貸せられ、なにより一夏から放たれる殺意により敵対者への怒りをも上回る生存本能から来る恐怖に呑まれ、徐々に精神は疲弊しもう涙目になって怯えていた

 

ヘイズ「も、もう許して」

 

遂にはフレイヤファミリアらしからぬ弱音を吐き許しを請うが、

 

一夏「駄目だ。これはお前らフレイヤファミリアが始めた戦いだ。俺が飽きるまで続ける。今この場の連中を殺さないのは俺の慈悲だ。途中で逃げたきゃ逃げてもいい。だがその場合、ここにいる団員は一人残らず殺す

 

軽い口調から発せられた言葉に、自分一人にファミリア存続が掛かっていることを告げられ逃げ道を塞がれ、どうすることもできないヘイズ

ちなみにフレイヤは一夏が団員を相手にしている間に他の眷属達により避難させられこの場にはいない

だからこそ帰って来た時に荒らされたホームと眷属達の姿に、かつての悪夢(全盛期ゼウス・ヘラファミリア達による蹂躙)を思い出すことだろう

 

まだ続けようとそばにいた団員に手を伸ばそうとした時だった

 

リヴェリア「よせ一夏!」

 

これ以上の暴挙を見逃せないリヴェリアが止めに入り、ガレスとフィンも武器を向け止めようとする

 

一夏「なぜ止める。これはこいつらが俺に喧嘩を売って来た結果だ」

 

フィン「うん。まあ君から彼らに手を出したとは思っていないよ。大方彼らが君に突っかかった結果怒らせて今に至るって想像できるよ。でももういいんじゃないかい?」

 

ガレス「まさか、たった一人でフレイヤファミリアを壊滅寸前にまで追い込むとは恐れ入ったわい。それも、レベル7に到達したオッタルすらこの始末。これで名実ともにオラリオの真の最強が誰か決まったな」

 

一夏を止めるフィンと、一夏の強さに驚くガレス

 

三人は共にレベル6になったがそれでも一夏を戦いで止めきれるとは思っておらず、できれば穏便にことを済ませようとしている

 

リヴェリア「彼らがお前を怒らせたのは分かる。だが、彼らはよくも悪くも我々と双璧を成すオラリオの二大派閥。彼らには彼らの役目がある。だからこそ、ここで潰してもらってはダメだ」

 

二大派閥であるロキファミリアとフレイヤファミリアにはそれぞれ役目があり

 

ダンジョンの攻略や都市の人々をガネーシャやアストレアファミリアと共に守り、人々に安心を与えるという希望と人望を集め与えてきたロキファミリアに対し、女神第一主義の集まりであるフレイヤファミリアはその過激なまでの女神フレイヤへの忠誠心とフレイヤからの寵愛を得たいがために日夜殺し合い、人々から恐怖や忌避の対象として見なされ、評判は良くなく、だがその畏怖に見られる様が犯罪を犯す者達への抑止力となり、良い意味でも悪い意味でも都市の治安維持に貢献しているのだが

 

一夏「……前から言おうと思ってたが、それはこいつらが全くと言っていいほどダンジョン攻略せず、ギルドからの依頼も聞かず散々好き勝手するが強いから、上手く罰せられないからこそロイマン辺りが考えた体のいい役割だろ?まさかオラリオの二大派閥の片割れが全くと言っていいほど都市に貢献しない女神狂いの異常者共の集まりなんて思わせたら都市の風当たりが悪くなるからとってつけたような役目だろ」

 

フィン「うっ」

 

リヴェリア「ぐっ」

 

ガレス「言いおったわい。ワシらが敢えて言わずにいたことを躊躇なく言いおった」

 

一夏の発言に内心思っていたが言わずにいた面々が挙って苦み潰したような顔で受け止めた

 

一夏「それに 都市への敵対者に向けた睨み、恐怖を与える役目は俺一人で事足りる。じゃあ唯々周りを荒らすだけ荒らして特に社会貢献するまでもなく強いだけで許されてるなら、より強い俺がいるならこいつら別に要らなくないか?」

 

フィン「いや待ってくれ、冷静になりな(まずい、普段ここまで過激じゃないのがここに来て不安定さと重なって暴君になりかけている。六月が生きていた時はもっと冷静でいられたはず)」

 

一夏「あと前々からこいつらの存在がとにかく目障りだった。六月が言うからこれまでは許してきたが、もうあいつはいなくなったし、俺がこいつら見逃す理由もなくなった。それでも俺を止めようっていうなら、次はお前らが相手になるか?

 

リヴェリア「駄目だ。正気を失っている」

 

ガレス「忘れていた、こいつもヘラファミリアじゃった」

 

三人を睨みつける一夏と一夏に武器を向けながら息を呑む三人

 

両者の間に僅かな間沈黙が走り

 

一夏が手を三人へ振り下ろす

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アイズ「やめてお兄ちゃん!」

 

寸前、なぜかその場にいた妹の呼び声に手を止めた

 

リヴェリア「ア、アイズ、なぜお前がここに」

 

アイズ「街でお兄ちゃんと猛者が戦って、フィン達が止めに入りに行ったって聞いたから、街の皆に聞いてここまで来た」

 

よく見れば戦闘服ではなく、普段着のままここまで走って来たのか、息を荒げて立っていた

 

アイズ「もう、やめて。こんなのお兄ちゃんらしくない!」

 

一夏「…………アイズ」

 

一瞬悩んでいるかの表情を浮かべたかと思えば

 

一夏「……はぁ…………何してんだ俺」

 

それだけ言うと、ホームと外へ出ていき、その後ろ姿をリヴェリア達は見届けていた

 

アイズ「………ねえ、リヴェリア」

 

リヴェリア「………なんだ」

 

アイズ「……お兄ちゃんは、大切な人を亡くして、悲しんでる。そうでしょ」

 

リヴェリア「……そうだな」

 

アイズ「だから、こんな八つ当たりみたいなこと、したんだよね」

 

リヴェリア「……ああ。一夏は強い。それこそオラリオで唯一肩を並べられた存在が六月唯一人だった。あの男にとって、唯一自分を受け止められた存在。それを亡くしてしまったからこそあいつは今、迷っている。自分がどうすればいいのかわからずにいる。お前も、親を亡くして、自分を受け止められる誰かが居なくて暴走していたことがあっただろ」

 

アイズ「…………」

 

リヴェリア「あいつの場合、精神的に受け止めてくれる誰かだけじゃない。強いあいつを強さを持って受け止める誰かが必要だ。だが、今のあいつの強さを受け止めきれる者は、恐らくこの世にいない。それこそ、世界を救う英雄でもない限り」

 

アイズ「…………英雄」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一夏「…………」

 

時刻は日付が変わる少し前の深夜

 

フレイヤファミリアを半壊した帰り、武器を持ったシャクティを筆頭としたガネーシャとアストレアファミリア面々に囲まれ、事情聴取という名の帰宅(ガネーシャファミリアホーム)命令を言い渡され、逃げる気力が沸かなかった一夏は大人しくガネーシャファミリアの自分が使っている部屋に行く

自分が来るまで大人しく待つよう言われ、シャクティが来るまで、唯々じっとしていた

寝ればまた悪夢を見かねない為、寝ないように部屋の中で定期的に身体を動かしながら待つこと数時間後

 

シャクティ「一夏」

 

部屋をノックしたシャクティの声を聞き部屋に入れた

 

一夏「…随分と遅かったな」

 

シャクティ「ああ、なにぶんまだ治安維持や復興作業が万全ではなくてな、さっきまで書類整理をしていた」

 

一夏「……んで、なんで俺の事情聴取がこの部屋なんだ?普通取調室でやるはずだろ」

 

シャクティ「いや、事情聴取とは言ったが、私はそのつもりはない。お前がフレイヤファミリアと争ったことだが、お前が自分から喧嘩売るような真似するはずがない。大方フレイヤファミリアがお前に喧嘩売って先に手を出した結果だと思っている、違うか?」

 

一夏「…………随分と俺を信用してんだな。まあ、そうだよ。ただ付け加えるなら、あいつらの下らない徴発にマジになって反応した結果だ。じゃあ、事情聴取じゃないなら何がしたいんだお前は」

 

シャクティ「…………」

 

ベットに座りながら話す一夏

 

そんな一夏の隣に座ったかと思えば

 

シャクティ「…………少し、お前の胸の内を話してくないか」

 

一夏の手を握りながら、一夏を心配する目を向けながらシャクティはそう言い

 

一夏「…………」

 

シャクティがなんのことを言っているのか理解し、そんなシャクティに少し戸惑う様子を見せたが、もう逃げられないことを悟りつつ、ゆっくりと口を開くのだった





オッタルは悪意を持っていったわけではなく、わざと怒らせてやる気を出した一夏とやり合いたいが為に言った結果普通にボコられた挙句今回を機に一夏の中でただでさえ低かったオッタルの評価が更に低くなりました

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