世界を救う英雄を育てた英雄   作:スカイハーツ・D・キングダム

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第17話 懐玉・玉折~③ 巡り合えた英雄 誓い

 

もし 自分にとって、運命の瞬間に巡り合えたとして

果たして 皆運命を感じるのだろうか

 

僕にとって その瞬間とは あの人と出会った時だ

 

たまたま 村の外を出て遊んでいたら 野生のミノタウロスと遭遇

 

逃げても幼かった当時の僕の足じゃ、すぐ追い付かれ 殺されかけた

 

殺されそうになった瞬間 僕の短いこれまでの人生が走馬灯になって頭の中に流れて

みっともなく泣きじゃくっていた

 

将来 冒険者になりたいと夢見ていて、おじいちゃんから『男ならハーレムを目指せ!』ってよくわからないことを言われながらも、物語の英雄みたいな男になりたいと思っていた

 

けど、この頃の僕は

どこにでもいる無力でなにも知らない普通の子供でしかなかった

 

村の大人たちの言いつけをやぶって村の外へ出たことが運の尽き

 

このままミノタウロスに殺される

きっと想像だにしない痛みを味わいながら恐怖の中死ぬのだと、そう思いながらこちらへ手を伸ばすミノタウロスに怯えていた

 

 

その瞬間

 

 

ミノタウロスの身体が上半身と下半身を真っ二つに切断したかと思えば更に細かく切り刻まれ、最後には血と肉片が散っていた

 

そのミノタウロスがいたその背後に 1人の男の人が立っていた

 

その人は 黒髪で黒のコートと剣みたいなものを腰に二つ差し、皮の手袋をつけていた

 

突然の出来事に困惑した僕に

 

────怪我はないか?

 

その人は声をかけた

 

そして察した 僕を救ったその人は 武器を使わず、どうやってか知らないけど触れずにこのミノタウロスを倒して見せたのだと

 

────凄い

 

まるで物語の英雄の様だ

 

この時の僕は 助かったことの安堵以上に その心に決して消えない情景が深く刻まれた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

これが僕 ベル・クラネルにとっての英雄 織斑一夏との初めての出会い そして 初めての運命の瞬間だった

 

 

 

────────アルフィア?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アルフィアとヘラの下から旅立つより前、ヘラからオラリオにいる神々についての知識を教わる機会があり、その中の一柱、ヘラやヘラの旦那でありオリュンポスの神々を束ねる大神ゼウスと同じく故郷で最高の栄誉となる「十二神」の地位を持ち、商業・盗賊・知恵を司る神、ヘルメスの話を聞いたことがあり

 

ゼウスの使いっ走りをしている神であるから、機会があったらゼウスの居場所について聞くように言われたことがある

 

なおゼウス当神はファミリア崩壊後に姿をくらましたそうだが、一部の神々曰く妻であるヘラのヒステリックヤンデレぶりを恐れ逃げ回っているのではないかと囁いている

 

ゼウスは大神という立場でありながら女好きでよく浮気をしそのたびにヘラからトラウマになるレベルの折檻を受けているようだった

 

シャクティとの会話により、オラリオから出てこれから先、どう生きるかを決める為行先を考えていたところ、アルフィアの遺言を思い出し、ゼウスに預けられたアルフィアの甥に会いに行こうと考えた一夏は、もし今もゼウスの使いっ走りをしているならば恐らくヘルメスは知っているだろうと考え問い詰めた

 

割と本気で問い詰めたことで観念したヘルメスからゼウスのいる場所までの地図を受け取り、そこから徒歩で二日(レベル6だからこその時間)で辿り着いた村のすぐそばで、野生のモンスターに狙われていた少年を見つけた一夏は、即刻排除した

 

一夏「(………一瞬アルフィアの面影を見たが、あいつ双子だから実際はメーテリアの面影が正しいか)」

 

襲われた少年 ベルがアルフィアの甥であるのは見た瞬間に理解し、そのままベルを育てている祖父ことゼウスにも出会い、村に滞在する事数日

 

冒険者に憧れを抱くベルにせがまれ、オラリオでの戦いや冒険者人生について色々話、助けたことも含め懐かれた

 

なおゼウスには、自分が妻ヘラの眷属だと話せば驚きながらも自分の事は話さないでほしいことや、自分が神であることは孫のベルには話さないでほしいと頼み込まれた。そして、ゼウスにとって最後の眷属だったザルド、オッタルに敗れ死亡したのち火葬され、その遺灰をゼウスに渡せば、悲痛な顔をしながらも一夏に礼を言った

 

この数日間 ベルを見てきて思うことがあった

 

一夏「(……アルフィアの甥とは思えないほど才能を感じねえ。どこまで行っても普通の子供って感じだ。恐らく恩恵を刻んでも大成する可能性が極めて低い。そして純粋過ぎる。穢れを知らない子供の代表例だな…………こんな純粋な子供にハーレムとか余計な知識教えやがってあのクソ爺)」

 

冒険者になることを夢見ているベルに内心辛辣な評価を下す

とてもじゃないが、冒険者になるべきではない

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ベル「…ねえ」

 

夕暮れの帰り道

周囲には麦の海が広がっていた。

大粒の実を宿す穂が涼しい風と一緒に、音を立てて揺れている。西の彼方に沈もうとする日の光によって黄金色に輝く光景は、まるで御伽噺の中で語られる天界のようだった

辺りをぼんやりと眺めていたベルは、そこでふと、隣にいる人物を見上げ、声をかけた

 

一夏「…………なんだ?」

 

ベル「……僕を産んでくれたお母さんと亡くなった僕の叔母さんは、どんな人なの?」

 

一夏「…………」

 

この村に来た目的は、アルフィアの甥であるベルの顔を見る為だった

元々は、自分がどう生きるかを決める何かを期待してだった

 

あのアルフィアの甥 もしかすればと思い、気まぐれに近い形で訪れた

 

この村に来た当初、ベルには亡くなった母と叔母とは同じファミリアだと話したことで、興味を持たれ、このようなことを聞かれたのだろう

 

一夏「……お前の母については、お前の叔母と親代わりだった主神の言葉でしか聞いたことはなかったが…………優しい奴だったみたいだ」

 

ベル「……優しい?」

 

一夏「ああ。生まれつき身体が弱くて、人の手がなければ満足に生きれないほど弱かった。だからこそ、生きることのありがたみを理解し、まわりにいつも笑顔や優しさを振りまくって、多くの人に愛されていたらしい」

 

ベル「……そっか」

 

一夏「ああでも、食べ物の恨みは恐ろしかったらしいぞ」

 

ベル「え?」

 

一夏「昔、取っておいた甘味をこっそり食べたお前の叔母と主神を凄まじい怒りで石畳の上で正座させて説教したことがあったらしくてな」

 

ベル「えぇ……」

 

一夏「(あの傍若無人女神と細目白髪が説教されている姿とか、見たかったなあ。それこそ100億払ったら見れるって言われたら迷わず払いたくなるくらいに)…………お前がなんの不自由もなく健康に生きられているのは、お前を産んでくれた母親の愛なんだと、俺は思っている…………きっと、お前の叔母もそう言うだろうな」

 

ベル「!」

 

一夏「…………本音を言えば、俺はお前に会いに行こうなんて思わなかった」

 

ベル「え?」

 

一夏「いくらあいつの遺言だからと言って、気にならないと言えば嘘だが、あの時の俺は色々自暴自棄になっていてな。自分がどうしたいのか分からなくなってた。本当にこの選択でよかったのか。後悔を募らせてばかりだった」

 

ベル「…………」

 

一夏「………そんでお前の叔母はな、お前の母の双子の姉の癖に性格がかすりもしないほど似てないんだよ。傍若無人でいつも勝手に決めては勝手に巻き込んで挙句、自分が悪くとも謝らないと来た…………そんでむかつくくらいに俺の知る中じゃ紛れもなく最強だ」

 

ベル「最強……」

 

一夏「それも、お前の母ほどじゃないが身体が弱いってハンデ背負った上でだ…………もし、あの女が虚弱体質じゃなければ、今頃この世界の頂点に立ってただろうな」

 

ベル「……凄い人だったんだ」

 

一夏「褒めるところが強さくらいしかなかったんだよ。間違っても尊敬するな。どうせ尊敬するなら虚弱体質でお前を産んだ母の方にしろ」

 

純粋なベルが間違えないよう注意する一夏

 

一夏「………そして……馬鹿な選択をして、大勢の命を奪い、最後は俺に殺された」

 

ベル「!!」

 

自分にとって叔母にあたる存在を殺めた

 

そう告げた一夏の横顔は、後悔していた。

 

自らその暴挙を止める為、罪人の烙印を押された身内を、身内としてケジメをつける為に殺めたその判断と選択を

 

一夏「世界を救うため 最後の英雄を生み出すために………自分が許されないことをした末、自分が育てた者に殺された………そんなんで最後の英雄が…生まれるわけないだろうが…………」

 

まだ幼いベルに包み隠さず話す一夏

本来なら隠すべきところを隠さずに言うその意図は至極単純

 

────嘘をつきたくなかった この子供には全てを話したかった

 

まるで罪の懺悔 裁かれたかったのかもしれない

話をしていて、時より見せる暗い表情に

ベルは怖さを覚えた

 

あんなに強い 自分を救って見せた 自分にとっての英雄とも言える一夏

そんな彼の心に影が差しているのを、幼いながらも感じ取っていた

 

そして理解した

 

自分にとっての英雄はいる

でも彼にとっての英雄はいない

 

一夏「…………これからの世界………どうなるか。アルフィアが言い残した。最後の英雄…………そいつは現れないのかもしれない…………」

 

ベルがこれまで耳にしたことのないほどの慚愧の声、目にしたことのないほどの儚い表情

 

何故そうまで悲しんでいるのか、ベルにはわからない

わかるわけがない。けれど、自分にとっての英雄の彼が悲しみに囚われてほしくないのは、確かだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ベル「……だったら」

 

 

だから。

 

だから。

 

ベルは、それを口にしていた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

???「ゲゲゲゲ!どうしたんだい剣姫!そんなもんかい!?」

 

アイズ「はぁ……はぁ…はぁ」

 

ダンジョンの上層付近

 

あるひとつの冒険を終え、地上に帰還しようとした時だった

 

このオラリオに存在する二柱の美の女神の片割れ 

女神イシュタル率いるイシュタルファミリア団長にして、アマゾネス

自分を美しいと思い込んでいる化け物蛙ことフリュネ・ジャーミルに疲弊した所を狙われ負傷し追い込まれていた

 

以前から一方的にアイズに敵意を向けており、疲弊しきったタイミングを狙い襲撃した

 

フリュネ「いいねえ、その不細工な面が歪むその姿。ようやく殺すことが出来るねえ!」

 

見た目も醜悪だが中身もまた醜悪

 

万全なら頑張って引き分けにもつれ込めるが疲弊した今ではそれは不可能

 

フリュネ「ゲゲゲゲ!死んじまいなああああああ!」

 

そう叫びながら握りしめた戦斧をアイズに振り下ろそうとした

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

おい

 

 

フリュネ「!?」ゾクッ

 

 

彼女たちのいる階層に広がるその声

 

そして放たれた殺気はフリュネを包み込む

 

フリュネ「あ……ああ……」

 

その殺気に触れた瞬間 フリュネの身体は震えだした

 

こちらに向かってくる殺気の主の姿を見た瞬間 まるで心臓を捕まされたかのような感覚を覚えた

 

アイズ「!」

 

対するアイズは、殺気を飛ばした当人を見て驚いた

 

彼が帰ってきたことに

 

────別に、ダンジョンの中で疲弊しきった冒険者を狙って襲うのを卑怯だなんて言うつもりはねえよ俺は

 

一歩一歩近づくにつれ殺気の圧が増し、フリュネはこの場から逃げたいと思うようになり足に力を込めようとしたが、心と体の状態が一致しないのか力が入らない

否 力が入らないのではなく入れない

 

フリュネ「あぁ………ぁぁ(こ、殺される……一歩でも動いたら、殺される)」

 

生存本能から来る危険宣告に考えるよりも先に身体が止めたのだ

 

────だが仮にも冒険を終え、一つ乗り越え疲弊したガキを襲うなんざ無粋すぎやしないか?ましてやこれからを担う若い芽を摘もうとするとはなあ

 

やがて、動けずにいるフリュネの首を掴み引き寄せ、ほぼゼロ距離からその醜悪な面に向け告げた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんなに怖いか? アイズ達の時代(新たな世代)

 

 

フリュネ「あ────」

 

通常、アマゾネスは強い雄に惹かれ発情、本能からその雄の子を孕みたくなるもの

だが、この時彼が放った殺気を直に浴びたことで フリュネのアマゾネスが持つ生殖本能をも上回る生存本能が働き、発情する間もなく命の危険を察知し 

それをゼロ距離で浴びた結果

 

アイズ「き、気絶した」

 

フリュネは口から泡を吐いて白目を向いて気を失った

 

そんなフリュネをぞんざいに扱いながらも彼はアイズに近づき地に膝をつけ、倒れているアイズと目線を合わせた

 

────背中に乗れ 帰るぞ

 

アイズ「…………」

 

アイズは無言でその背に乗る

 

そして歩きだす少女を乗せた男

 

アイズ「………」

 

何から言えばいいか分からなかった彼女だったが

 

いつもホームに帰って来た家族たちへ向けて言う言葉を口にした

 

────おかえり お兄ちゃん

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

夕暮れを背景に、都市を歩く男──一夏と背負られるアイズ

 

地上へ戻るまでの間、なにをしていたのか聞いた

曰く、レベル4に上がるための偉業を達成する為に単独でゴライアスに挑み、無事勝利を収めた

無事勝利を収めた

 

なぜ他の誰かと一緒に行かなかったのか問い詰められ、とことん自分を追い込んだ上で戦いたかったからだと言い、なおのこと怒られた

なおのこと怒られた

 

一方、一夏の方はというと

都市に帰ってきたタイミングで住民や冒険者達が、フリュネが1人武装してダンジョンに潜り込む姿を見たと話していたのを聞き、嫌な予感が働きダンジョンへ潜ったところ、フリュネと対峙するアイズを見つけた

 

一夏「俺が言えたことじゃないが、せめて不足な事態に対する保険的な意味でリヴェリアあたりに頼んで一緒に行くとかすればよかっただろ」

 

アイズ「うん……次からはそうする」

 

一夏「………なあ、なんでいきなりこんなことをしたんだ?お前、また前みたいに強くなることに焦ってないか?」

 

以前のように、アイズ自身が復讐する力を求めて暴走していた時のことを思い出しながらそれを口にする一夏

 

アイズ「…………違う」

 

だが、そんな一夏の問いは否定される

 

一夏「じゃあなぜ?」

 

アイズ「…………ねえお兄ちゃん。お兄ちゃんにはもう、力で並べられる相手も、心から支えになれる誰かも居なくなったんだよね」

 

一夏「…………」

 

アイズ「私、今までお兄ちゃんはとっても強くて、弱い所なんてないって思ってた。でも、違った。お兄ちゃんだって、寂しいって、悲しいって思う、私達と変わらないって」

 

一夏「…………」

 

歩く足を止め、アイズの言葉を黙って聞く

 

アイズ「私にとってお兄ちゃんは憧れ、英雄みたいなものだって思ってた。でも、お兄ちゃんにはお兄ちゃんにとっての救ってくれる英雄がいない。悲しんでいるお兄ちゃんを笑顔にしてくれる誰かがいない」

 

一夏「アイズ」

 

アイズ「……リヴェリアと話して、私なりに考えて、どうしたらいいのか悩んで…………決めた」

 

そこでアイズは一夏の背中から正面にまわり込み

 

普段そんなに大きくはない声に力を込め、大きく宣言した

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

────だったら 僕が英雄になる

 

────私が英雄になるよ

 

 

 

 

 

アイズ「お兄ちゃんがもう悲しむことがない様に お兄ちゃんの心を満たして癒せられるように────お兄ちゃんを受け止められるように!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ベル「僕が!最後の英雄になるから!叔母さんや、僕の親ファミリアが出来なかったことを、僕がやり遂げるから!だから────そんな悲しい顔しないで。

 

ベルの声は、麦畑に響いた

 

ベル・クラネルはいつか、この日の選択を呪うかもしれない。

 

背負ったモノの大きさに気付いて、けれどもう引き返せない場所にいて、絶望する日がやって来るかもしれない。

 

それでも、今は――

いや、たとえ、そうなったとしても――

 

 

 

一夏「────クフッ」

 

ベル「!」

 

一夏「ハハハハハ!!」

 

 

 

――この時の、彼の顔に宿った笑顔を瞳に焼きつけ、誇ろう。

 

『英雄』のように、人に笑顔をもたらしたことを

『希望』を指差し、『未来』を示したことを

『理想』を目指して歩み出すと決めた、今日という始まりを

 

姉と違い、才を持たない妹と逃げる事しか能に無いサポーターから生まれた才能を持たない少年

 

だが その少年の言葉は 

 

一夏「……生意気な餓鬼が」

 

彼の心を動かした

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アイズ「お、お兄ちゃん?」

 

アイズの宣言を聞いた一夏はその場でひとしきり笑い声を挙げ、アイズやまわりの人を困惑させた

 

一夏「ああ笑った。まさか、こんな短期間で俺に向かって英雄になるなんて言った餓鬼がふたりもいたとは驚いた。それも、こんな身近に一人いたなんてさ」

 

アイズ「……え?」

 

一夏「全く、お前らは揃いもそろって、大きく出やがりやがる。それがどういうことか分かってんだろうな?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一夏「英雄になる。それはつまり、俺を超えるってことだからな?俺に向かって英雄になるってほざいたんだ。生半可な覚悟は許されんぞ?」

 

ベル アイズ 場所も時も違うが

このふたりの子供に同じ言葉で問いかけ

 

それをふたりは

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

────────うんっ!必ずやり遂げて見せる!

 

────────うんっ!絶対なるよ!

 

 

迷わず答えて見せた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ベルとアイズの宣言を聞き、一夏の中で、その後の生き方は決まった

 

アルフィアとは違うやり方で、後進を育てようと

 

強くて聡い者に育てて見せようと

 

英雄を育てようと

 

そして 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一夏「なら」

 

それを見届けた一夏はおもむろに腰に差してある友の形見を取り出すと ベル/アイズに渡した

 

ベル/アイズ「「!」」

 

一夏「俺の親友の形見を託す」

 

ベルに神武解

 

アイズに飛天

 

刀を受け取った少年少女には、そこに込められた想いの重みを手から心まで伝わった

 

一夏「これは誓いの証だ。未来の英雄様へな」

 

ベル/アイズ「「!」」

 

それは彼/彼女にとっての英雄が発した、信頼の言葉だった

 

片やスタートラインにすら立てていない 片や未だ足元にも及ばない矮小

 

だが、そんな自分がいずれ本当に超えてくれると、本当になってくれるという可能性を心の底から信じているという言葉

 

 

そんな言葉を贈られ

 

 

少年は刀を握りしめ泣いた

 

英雄に信じられたことに

 

少女は刀を抱いて泣いた

 

信じてくれた英雄に感極まって

 

────もしかしたら こいつらなら

 

 

 

 

 

────ベル

 

────アイズ

 

泣きじゃくる少年少女の頭に手を当て撫でながら

 

────強くなれよ 俺に置いて行かれないように 俺を追い越すようにな

 

これから先の未来を見据えるかのように、ふたりの弟子に激励の言葉を贈るのだった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【おまけ】

 

アイズ「ねえ、さっき言ってたことだけど、私以外にお兄ちゃんに英雄になるって言ってた子がいたの?」

 

一夏「ああ。お前と違って、才能とかはまるで感じない奴だった」

 

アイズ「………でも、その子にも渡したんだよね」

 

一夏「そうだな…………才能はない。でもお前と同じくらい可能性に満ちた奴だった」

 

アイズ「むぅ~」

 

一夏「お、妬いてんのか?でも仲良くしてやれよ。俺の弟子、お前にとっては弟弟子、つまりは弟分にあたる。」

 

アイズ「お、弟!?」

 

一夏「ああ、姉弟子として、姉貴分としてしっかり高め合ってくれよ」

 

アイズ「…………お姉ちゃん…………私がお姉ちゃん」

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