世界を救う英雄を育てた英雄   作:スカイハーツ・D・キングダム

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最近、三年半遊んできたグランサガというソシャゲがサ終して喪失感が大きいです。

ソシャゲでこんな気持ちになったのは、キングダムハーツユニオンクロスがサ終した時以来でした。
結構ユーザー離れするなどいろいろ問題はありましたが、自分としては楽しませてもらいました。遊んだことがある人にしかわかりませんが、ハードモードのシンヤを倒しきれず、サ終する五分前まで足掻きましたが結局倒しきれなかったのが心残りです。
結局ストーリーの結末が明らかになる前に打ち切り同然に終わったのが引っ掛かりました。

ストーリーだけでもいいので結末を運営側が見せて欲しかったと思います。

皆さんはそんな経験はないでしょうか?

キングダムハーツユニオンがサ終して喪失感が大きかった自分にとっては、その喪失感を埋めてくれたゲームだったのでとても思い入れがありました。

またいつの日か巡り合えることを信じて、また新しいソシャゲを探していきたいと思います。


第23話 強さを求めし者 ベート編

 

この日、一夏はとある酒場に立ち寄った

 

そこはオラリオの数ある酒場としても料理を出す店としても上位に入る程で一夏もお気に入りにカウントされている場所だった

 

一夏「ようリュー、店には慣れたか?」

 

リュー「は、はあ……一応店での仕事内容について頭にいれてますが」

 

???「嘘ニャー!リューは今日も皿何枚も割って客と揉めてたニャー!」

 

オラリオに存在するこの酒場 

名を豊穣の女主人(ほうじょうのおんなしゅじん)と呼ばれており、この店の店主と知り合いであった一夏の口利きでリューを店員として働かせている

 

 

リューの言動に反応をして見せたのはこの店の店員の猫人 アーニャ・フローメル

かつてフレイヤファミリアの団員であったが今は半脱退しこの店で働いている

 

そして(一夏を除けば)都市最速の異名を持つフレイヤファミリア副団長 アレン・フローメルの実の妹でもある

 

一夏「お前、確か先週も皿割ったり客と面倒ごと起こさなかったか?」

 

リュー「う…そ、それは………」

 

アーニャ「リューはアホニャー。料理できないから野菜の皮むきやらせたら切りすぎて中身も大量に切るし、皿洗いをさせたら勢いよくやって皿を割るし、ウェイトレスさせたら注文間違えるわ。挙句少し手を触ったお客を投げ飛ばすわで、てんで役に立たないニャー」

 

一夏「…………お前なあ」

 

リュー「わ、私はいつもやりすぎてしまうから……」

 

一夏「ソレ先週ミスした時も言ってなかったか?」

 

今のリューの恰好は女性店員の証である制服を着ており、あのアストレアファミリアの『疾風』が店員として働いているということで一時は話題を呼び神々や冒険者たちが物珍しさに集まったが、戦闘以外はアストレアファミリア随一と言ってもいいポンコツっぷりに今のところ店側に対して損失しか生んでおらず、正直一夏は紹介する仕事を間違えたと考えだす始末

余談だが、そんな働いているリューを見にアストレアファミリアの面々がよく店に来るのだが、そんなリューのミスする姿を笑う輝夜と店の中で乱闘に発展しそのたびに二人まとめてこの店の店主に叱られるのだった

 

一夏「…………とりあえずリュー………お前は時間を見つけてアリーゼ達と一緒に俺から料理習うこと…………いいな?」

 

リュー「…………はい…」

 

この後 店先で食事を終えると、店の奥でまたやらかして店主に怒られるリューを尻目に店を後にした

 

時刻は深夜になる前の雨降る夜だった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

迷宮都市オラリオには 強さに渇望する1人の狼人がいた

 

名をベート・ローガと呼ぶ

 

彼は元々 オラリオから離れた

獣人部族である平原の獣民の族長の息子として生まれ育ち、両親と妹、初恋の幼馴染にも恵まれ順風満帆に生きてきた

 

だが、12歳を迎えたその年

世界三大秘境の一つ「竜の谷」からやってきた一匹のモンスターによって、家族と幼馴染みを含む部族全員が殺され、ベート1人生き延びてしまった

弱肉強食という父からの教えを痛感したベートは故郷を滅ぼしたモンスターを倒す強さを得るべくオラリオに行き、冒険者となり、ヴィーザルファミリアに入団し、そこで一気に頭角を現すようになり

当時の団長だったセレニアからその地位を譲られ、副団長となった彼女と恋仲になった

やがて暗黒期を生き延び、レベル3になった彼は親兄弟、部族の敵である『平原の主』となったモンスターを倒す為に1人オラリオを離れ、勝利する

 

 

しかし

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

彼の恋人であったセレニアがダンジョンで瀕死に追い込まれ、他の団員も傷を負ったことを知り、強者が傍に居なければ弱者が簡単に死んでいく現実に怒り

感情のまま彼らをオラリオから追い出し、ファミリアから半脱退を受けた

 

そこからは

強さを求めダンジョンへ単独で潜り、周囲の冒険者には喧嘩を売り、その周囲に振りまく獰猛で狂暴な姿から【凶狼】の二つ名で呼ばれるようになった

 

そんな日々を送り続けていたこの日彼は

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一夏「酷い面だ。まるでどこに嚙みつけばいいかわからねえから無我夢中で噛みつく狂犬みたいだ」

 

1人の青年(人類最強)と出会った

 

ベート「────!」

 

ベートはその男を知っていた

 

織斑一夏 先日神々からオラリオ、そしてこの世界にいる全ての人類で最も強き者と認められた絶対強者

 

そして

 

本来であれば死んでいたはずだった恋人セレニアの命を救った相手でもある

ベート不在のあの時 ダンジョンに潜っていたヴィーザルファミリアは、モンスターの奇襲により追い込まれた末に、殿を務めたセレニアが死ぬはず…………だった

 

偶々リューを除いたアストレアファミリアの面々が助太刀する形で乱入しモンスターを倒した事と、同行していた一夏のリゲインで重傷を負っていた内臓の修復再生をしたことで一命を取り止め、他の団員達にもアストレアファミリアで治癒魔法を使える面々に治させられた

つまりベートにとっては一夏は恋人と団員を救った恩人であるのだが

 

一夏「俺の姿を見た瞬間に襲い掛かってくるとか、マジで飢えてんのか?」

 

ベート「────っるせえ!」

 

突然飛び掛かり普段冒険者たちに喧嘩売るように殴りかかったのだが、それを一夏はあっさりと拳を避けると軽く胸を押して吹き飛ばした

レベル3のベートとレベル8の一夏

レベル差5はある両者の間には絶対に覆せない差があった

 

ベート「ゴフォ、ゴフォ!」

 

ただ押しただけとはいえ、レベル8の筋力で軽く押されれば並みの冒険者はそれだけで瀕死になる

ベートはレベル3だった為せき込み、多少痛めるだけで済んだがそれでもこの状態で長時間の戦闘継続は難しいものだった

 

一夏「お前、聞いたぞ。セレニアと喧嘩別れしたんだって?命が助かって泣いて喜ぶとか分かるがなんで喧嘩別れになるんだ」

 

ベート「───黙れ!テメエには関係ねえ!」

 

そうしてまたも殴りかかるベート

 

オラリオに帰還し、セレニアと団員達が一歩何かが違っていたら死んでいたことを知ったベートは、またかつてと同じように

失う事になるのだと恐れ、ヴィーザルファミリアを、ベート自身が嫌われるよう言葉で傷つけ、その際セレニアには特に厳しい言葉を言い別れさせてオラリオから追い出した

 

恋人との喧嘩別れ

彼が今傷心している理由の一つ

 

その為恋人の名を口にしたことで更に苛立ち噛みついた

 

喧嘩に明け暮れ多くの冒険者を踏みつけて来た彼だったが、その内心満たされない思いでいっぱいだった

 

彼が今求めていたモノ

 

それは…………

 

一夏「ふーん。レベル3にしては悪くない。苛立って動きが単調になっている以外は軒並み想像以上。お前は恐らくこのオラリオに居るレベル3冒険者の中じゃ最上位と言ってもいい(現時点でもレベル4になったばかりのアイズと遜色ない)」

 

ベート「うるせぇ──!んなもんで満足するか!」

 

一夏の評価を聞いてなおも攻撃の手を辞めず、ますます怒りを募らせる

 

ベートにとって織斑一夏は恋人や仲間達を救った恩人であると同時に

 

ベート「テメエ…………舐めてんのか」

 

一夏「────」

 

ベート「なんでテメエさっきから本気出さねえ!俺をおちょくってんのか!?」

 

ベートには分かっていた

相手は今の自分なんか手も足も出ないほど遥か彼方にいる存在

 

即ち 彼が求めていたモノ 

 

自分なんぞ足元に及ばぬ強さを持った絶対的強者そのものだ

 

その強大な壁にぶつかり 叩きのめされることで彼は知ろうとしたのだ

 

弱者に絶望した己に屈辱を

 

だが戦い続ける事で、当初はそれだけでよかったはずのその心に別の思いが舞い込んだ

 

ベート「俺みてえな雑魚には力を振るう必要はねえって見下してんのかアァ!」

 

見て見たくなった

 

最強の力がどれほどのものか

 

自分と相手との間にある明確な差を

 

いつの間にか雨は止み

雨雲が消え去り

月の光がオラリオを照らした

 

獣人という種には『獣化』と呼ばれる能力が存在し、発動すれば獣性と力を解放させることが出来る、獣人に発現するスキル

しかし、発動条件は獣人の種によって異なり、狼人の発動条件は『月の光を浴びる事』

その為狼人は数多くいる獣人の中で最もダンジョンに向いていない種とされていた

なぜならダンジョンに月の光が届くことがないのだから

 

しかしここは地上 それも月の光が地上を照らす真っ最中

 

獣人である己の力を発動させるスキルを発動させる条件は満たした

 

怒りの感情のまま獣化のスキルを発動させたベートの毛並みは逆立ち、牙はより鋭く、瞳はまさしく飢えた獣の如く力強くギラつかせ、狼の獣人らしくその狂暴性が増した

 

ベート「ウガアアアア!!」

 

獣人としての本能剥き出しにその牙立たせ、再度一夏に襲い掛かった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一夏「獣人の獣化は……お前ら獣人なら誰もが発現する可能性のあるスキルだが、その能力の上昇上限は個人差がある…………だがお前の獣化はまるでランクアップにも等しい能力上昇具合だった。今のお前はレベル4相当はあると見てもいい…………やっぱお前もアイズやリュー同様に素質があるな…………まあ最も」

 

ベート「ッッ────」

 

一夏「俺のレベルの半分程度じゃ、かすり傷一つ負わせられねえな」

 

獣化を果たし、ステイタスを大幅に引き上げたベートだったが、それでもその差を埋め切れず、たった一撃(手加減)胴体に叩き込まれただけでもう立ち上がれないほどの痛みを受けた

 

一夏「…………そういえばなんで手加減するのか聞いたな。まあ今のお前相手に本気出したら簡単に殺すことになるし、なにより全力出さない相手に本気出すわけないだろ

 

ベート「────!」

 

一夏「なんでソレをって顔になったな。まあよく異端の眼(見える)からな、俺の眼は」

 

一夏のスキル『異端の眼』は当初魔力を視認することができるものだった

しかし、レベルアップを重ね続ける事で、相手の魔法の有無までも視認出来るようになった

 

だからこそ一夏は理解する

この狼人にはまだ先がある

まだ本気でないことに

 

ベート「ッ──」

 

その指摘を刺されたベートは内心大きなものが渦巻いていた

 

一夏の言う通り、ベートにはたった一つ使える魔法が存在する

それもレア魔法に分類される代物であり、この魔法を使えば格上に勝つ確率も上げられるベートにとっては獣化に次ぐ第二の牙とも言える

 

だがベートはこの魔法を使いたがらない

なぜならこの魔法はベートにとって傷であるからだ

 

その詠唱は、過去に負った心の傷と向き合わせる根源そのもの

 

これまでこの魔法を使うくらいなら自死を選ぶ方がマシと言えるくらいに、ベートはこの魔法が嫌いだった

なにを言われようとこの魔法だけは使わない

そう決めていたベートだったが

 

一夏「なあ、お前は何にビビってんだ?

 

ベート「────アアッ?」

 

突然一夏の口から吐き出されたその言葉に、ベートの中に渦巻いていたものがかき乱された

 

一夏「強がって隠し通してるつもりだろうが、お前のその目は何かを恐れて逃げてる奴特有のだ」

 

ベート「────」

 

その物言いに反論しようとしたが言葉を吐けなかった

なぜならベート自身心のどこかで自覚していたことだからだ

救えなかった親兄妹 一族 初恋相手

彼らを守れず己が生き延びた日に負った心の傷に向き合えず それに強くなろうとすることで自分を誤魔化し向き合おうとしなかった

 

一夏「同時にお前は何かを憎んでいる。それはなんだ?誰かか?それとも人じゃねえ何か?あるいは俺たち人じゃどうしょうもできない概念に対してか?」

 

続く言葉でベートの中で縛られていた鎖にヒビが入った

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

推奨BGM【平等に与えられている不平等な現実】

 

 

────ああそうだ 弱者が嫌いだ あいつらはすぐ死ぬ 世界が嫌いだ 悪人だろうが強ければ善人だろうと弱い奴の犠牲で成り立たせられる平等に見えて不平等でクソッタレな世界の在り方が憎い 俺が嫌いだ 肝心な時に守れもしねえ弱い俺自身が許せねえ

 

一夏「お前が何に怯え、何を許せないか知らねえ。だが、それに向き合おうとせず逃げてばかりでいるうちは、テメエは強者になれねえな。例え辛くても、消えない痛みでも、憎しみに心を染めても、真に辿り着くべきものに自らの心を向けない行為…………そうしているうちはお前は何者にもなれない…………お前は何者にもなれないままか?」

 

ベート「────くそ…………」

 

悔しかった

 

彼の言葉は正しく今の自分の心を指していた

 

心の傷と向き合うことから逃げるあまり、それがいらないプライドを作り出し、本当に憎むべきものの存在を許していた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

────そうだ 許しちゃいけねえ これを使わねえってことは 向き合わねえってことは 死んでいったあいつらから目を逸らすことだ 奪われていった弱者達(あいつら)を忘れる事だけは 絶対許して言いわけがねえ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

推奨BGM【呪術師・伏黒恵】

 

ベート「────【戒められし悪狼(フロス)の王】」

 

それは傷 

 

一夏「────!」

 

ベート「【一傷拘束(ゲルギア)二傷痛叫(ギオル)三傷打杭(セピテ)。飢えなる涎が唯一の希望。川を築き血潮と交ざり涙を洗え】」

 

己の奥底に刻まれ消えない傷

 

ベート「【癒せぬ傷よ、忘れるな。この怒りとこの憎悪、汝の惰弱と汝の烈火】」

 

決して忘れてはならないあの日の傷

 

ベート「【世界(すべて)を憎み摂理(すべて)を認め(すべて)を枯らせ】」

 

決して目を逸らしてはならない 決して向き合うことから逃げてはならない己の傷

 

ベート「【傷を牙に慟哭(こえ)猛叫(たけび)に——喪いし血肉(ともがら)を力に】」

 

例えこれから多くの傷を負うことになろうとも

 

ベート「【解き放たれ縛鎖(ばくさ)、轟く天叫(てんきょう)。怒りの系譜よ、この身に代わり月を喰らえ、数多を飲み干せ】」

 

例えこれから 多くのつらい現実が己に降りかかろうとも

 

ベート「【その炎牙(きば)をもって平らげろ】」

 

己の原点であるその傷を 失った全てから

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

目を逸らすことは 決して許してはならない

 

ベート「【ハティ】」

 

超長文詠唱を終えた瞬間 ベートの手足から凄まじい熱光が発生し、彼の四肢に四つの紅蓮の炎が纏った

 

ベート「テメェの言う通りだ。俺は、向き合いたくないもんから目を逸らして逃げて来た。強くなることで、傷を忘れようとしていた。だがちげえ。コレは、忘れちゃいけねえ、目ぇ逸らしちゃいけねえ俺の原点。俺にとっての強くなるために向き合い続けなきゃいけねえ俺の想いだ!

 

迷いを捨て、己を見つめ返し、己の傷を受け入れ前に進むことを決めた一匹の狼

 

一夏「────はは」

 

その光景に一夏は思わず笑いがこみ上げたかと思えば

 

一夏「そうか。そういうことか。それがお前の全てか。なら俺に魅せてみろ、ベート・ローガ!

 

それまでのどこか退屈そうにしていた態度を一変させ、楽しそうに頬を緩ませながら挑戦者の前に立ちはだかるのだった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一夏「お、起きたか」

 

ベート「…………ここは」

 

一夏「俺がよく寝泊まりしている廃れた教会…………お前俺に負けた後今までの無理が祟って倒れたんでな、近くのここまで運んでやった」

 

ベートとの乱闘を終え、お気に入りだった教会で待つこと数時間

目を覚ましたベートに声をかける一夏

 

ベート「…………傷が…………ねぇ」

 

一夏「ああ、それは俺のスキルで治した。と言ってもこれ肉体の損傷部位や傷を修復再生させるもんだから別に痛みが取れるわけじゃねえ。ここに常備してたポーション掛けといてやったんだ」

 

自分のスキルの説明をしている間も、ベートはどこか上の空で床に顔を向け項垂れている

 

ベート「…………負けたんだな…………俺は」

 

一夏「ああ」

 

ベート「………ハッ、あんだけ大口叩いておいてこのザマかよ俺は…………結局俺は口だけの雑魚…………テメエみてえな奴からすれば本気を出すまでもねえ、取るに足りねえ雑魚だったか」

 

自虐するように口を開くベートだったが、その口調と空気からは先ほどまでの苛立ちと言った感情は消えていた

不平不満を抱えて生きて来た彼だったが、本当の強者たる一夏に叩きのめされたことで心の中にあったものが吐き出され、気分は澄んでいた

 

そんな風に自虐するベートに

 

一夏「いや、存外悪くなかったぞ」

 

一夏が口を開く

 

ベート「は?」

 

一夏「ヒューマン、ドワーフ、エルフに小人。アマゾネス、そして獣人。数多くの連中とやり合ってきた。その中には今のお前よりも強い奴だっていた…………だがお前はその中でも大分良かった。いいもん持っていたな」

 

ベート「…………本気で言ってんのか」

 

一夏「ああ」

 

ベート「テメエよりも、テメエがやり合った奴の中にいた俺よりも強い奴らと比べてもか?」

 

一夏「ああ」

 

ベート「テメエよりも弱ぇ俺がか?」

 

一夏「ああ。それに」

 

一夏は項垂れるベートの下に行くと

 

一夏「俺が本気出すまでもないなんて言ってるが、よく見ろ」

 

ベートの目の前に右手の掌を見せた

 

そこには僅かだが焼けた跡が残されていた

 

一夏「(展延使わなければもう少し焼かれてた。あの魔法、表面とはいえ俺の展延を喰らおうとしていたな)俺に技を使わせて防いだと思ったら焼けていた。もしお前が最初から万全で本気出していたらならもう少し焼けていた…………まさかこの俺が、レベル半分以下の相手にサシで技を使うことになるなんて夢にも思わなかった…………お前の牙は、確かに俺に届いていた」

 

それは 強者から見れば弱者でしかないはずの己の攻撃が届いた確かな証明

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

────────誇れよ お前は強い

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それは 絶対強者である者からの哀れみや世辞から来た言葉ではなく 強者からの敬意から来た言葉であった

 

ベート「────!」

 

気が付けば、ベートの手に一滴が流れていた

 

ベート「ッッ!なんだよ、これは」

 

それは 己では届くことのない域に立つ者が、自身よりも格下でしかない己を認めてくれた事実に感極まったものかもしれない

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そこから先 泣き止むのを待った一夏は、ベートにこれまでの生い立ちやその心情全てを吐かせた

 

当初話そうとしなかったベートだったが、勝負に勝った特権を持ち出され

渋々話し出した

 

全てを聞き終えた一夏は

 

一夏「…………そうか…………お前優しいな」

 

ベート「ハッ!何聞いてんな答えが出てくんだ!」

 

一夏「お前が雑魚を、弱者を嫌うのは、何も守れず無力だったころの自分を見ているみたいだからだろ?さらに言うなら、何もできず死んでいく奴らの姿が自分の大切だった一族や家族だった奴らと重ねて見てしまうからだろ?」

 

ベート「!」

 

一夏「だからたとえ乱暴な言い方や態度をしてでも、そいつらを死地に行かせないようにしている。けど、これが自分の所のファミリア相手ならともかく、よその弱小ファミリアにも同じことするとは…………死んだら何もかも手遅れだから、たとえ傷ついても死ぬよりマシ………自分の身内だけでなく無関係なはずの他の弱者の事まで嫌われ役になってまで死なせない…………本当にお前は不器用で、乱暴で言葉足らずで」

 

ベート「うるせえ!んなことは」

 

一夏「だから気に入った」

 

ベート「──はあ?」

 

一夏「お前、この先もやり方を変える気はねえんだろ?」

 

ベート「────ああ…………俺はこの先も雑魚共を打ちのめすのをやめねえ。本当に強ぇ奴はたとえ傷ついても変わろうと足掻く。弱ぇ奴は何も変えきれず死んでそれまでだ。俺がああやって雑魚共蹴飛ばさねえなら、誰があいつらを蹴飛ばす!!」

 

一夏「…………俺はお前のやり方を間違いだとは思わねえ」

 

ベート「!」

 

一夏「だが、誰もが皆強いわけじゃねえ。挫折も絶望も積み重ねて、それをも乗り越えようと足掻く奴ら、足掻ききって乗り越えた奴らが強くなれる。今のところ、お前がやってんのは弱者とこれから強くなる可能性のある弱者の選別だけだ…………どうせやるなら、選別ではなくそいつらに強くなろうとする意志を持たせる、そいつらが死なねえようにする為に後ろから罵倒して育てる立場になればいい」

 

ベート「…………」

 

そこで立ち上がると一夏は教会のステンドグラスの下に行き

 

一夏「お前の過去も心情も傷も理解した。その上で聞いてやる」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

────お前はどうなりたい?

 

────強くなりてぇ

 

 

 

────なぜ強くなりたい?

 

────繰り返されねえ為だ

 

 

 

────お前の進もうとしてるのは茨の道 何せ無関係な奴諸共守ろうとする行為だ分かっていてやるつもりか?

 

────俺みてぇな奴が居なきゃ勘違い野郎どもが増えていく そんで犬死するだけだ

 

 

 

 

────最後に問う お前の望む未来は?

 

────決まっている

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ベート「俺のそばで雑魚が野垂れ死んで哭かねえ未来だ

 

立ち上がり、力強く一夏に目を向け自らの意志を継げたベート

 

一夏「………そうか。よくわかった…………なら、俺についてこい。俺がお前を強くしてやる」

 

ベート「………は?」

 

一夏「さて、そうとなれば、お前が新しく所属するファミリアを探すか、できればお前を受け入れられるくらいの度量のあるとこじゃねえと」

 

ベート「お、おい」

 

一夏「理想なのはロキファミリアだな。フレイヤファミリアじゃこいつの良さ潰してしまいそうだから却下」

 

ベート「なに勝手に話進めてんだ!俺はまだ何も」

 

一夏「だが強くなりたいならファミリアに入るべきだろ。そんでお前はファミリア所属後に俺がみっちり鍛えてやる」

 

勝手に話を進める一夏に戸惑いを覚えながら口を挟むベートだが止められた上に一夏の言葉に思うところがあったのか勢いが少し止み

 

ベート「…………なんでテメェ、俺みたいな他人にそこまで関わろうとする」

 

一夏「…………そうだな。まあ敢えて言うならお前を気に入ったからだな。迷惑な押し売り、いやお節介を焼いてまで他人を死なせないようにするお前がさ…………それにお前程の資質がある奴をこのままにして腐らせるのは勿体ないしな」

 

なんてことない様に答える一夏

 

ベート「…………テメェお節介って他人に言われねえかよ………」

 

一夏「いや別に?お節介なのはお互い様だろ」

 

ベート「…………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

────────俺も テメェみたいに強くなれば もう失う事はねえのかよ

 

────────さあな だが 1人強くなっても守れる数には上限がある だからその分切り捨てるのか?────違うだろ 誰かを守れる強い奴が増えればいい そうすればいつの日か 唯奪われるだけの弱者はいなくなる その為にまずはお前が強くなる

そしてお前もまた強者を生み出してみな どうする? このままの自分で居続けるか それともこれまでの自分を超える為に、理想を現実にする為に俺と来るか

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

────────俺は

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ベート「強くなりてぇ、強くなりてぇ!!もう失わねえ為に、もう理不尽に奪わせねえ為に、俺は強くなりてぇ!だから、俺を強くしてくれ!!いつかアンタを超えたその先に立つために

 

一夏「…………言うねえ」

 

ベートの意思表示を聞いた一夏はニャッと笑うとその場でベートの腕を掴み

 

一夏「ならなって見せろ。そんでもって俺を追い越して見せろよ、ベート」

 

期待の言葉を贈るのだった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この日迷宮都市の廃教会にて 

傷ついていた1人の若き青年は 己の理想を叶えるために 織斑一夏(最強)を超えると宣言した

 

これが後に ロキファミリアにてアイズ・ヴァレンシュタインと並ぶロキファミリア最速の獣人 ベート・ローガがロキ・ファミリアに入るまでの前日譚だった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【キャラクターズファイル】

 

ベート・ローガ

 

本作で救済された人物

原作では失うばかりの人生だった為苛烈すぎる性格となったがこちらでは一夏により本来なら死んでいたセレニアが生存したことや一夏と出会い、ボコボコにされつつも力を認められ早いうちに胸の内を吐露し、一夏の弟子入りしたことで原作ほど厳しくはなくなった

ロキファミリア入団時、ロキに恩恵を刻まれた時になって、一夏との戦いが偉業にカウントされレベル4にランクアップ可能となりそのままランクアップした

その実力と才覚で徐々に頭角を現し、唯一同レベルにいるアイズとは原作と違い派閥内で時に競い合うライバルの様な関係であったり後に入団する双子のアマゾネスの教育係を押し付けられ向こう数年は年下娘の面倒を見る保護者の様な立ち位置になる

また原作同様ダンジョン内で他の団員に厳しいことを言いつつも、自身が入団してから亡くなった団員の顔と名前を忘れることはなく、定期的に墓に顔を出しに行く姿を他の団員に目撃されたりどんなに疲れていても自分に鍛えて欲しいと声を掛けた団員が居れば疲れた様子を見せず指導するなどの優しさや面倒見の良さを随所見せたことで原作と違い派閥内でベートを嫌うのは入団仕立てでベートをよく知らない新人団員だけだったりする

そしてロキファミリアに入団ししばらく経った頃、一夏からセレニア達に謝りに行くよう言われ、今更どの面下げて謝ればいいと気にしていたベートに『会えるうちに言いたいことは言っておけ。でないと俺みたいに後悔する…………俺も言えずに後悔した口だからさ』と言い背中を押す。やがて心の整理をつけるとオラリオの外へ行きヴィーザルファミリアが活動拠点にしている町に行き、自分が放った厳しい言葉についての謝罪をセレニアを始めとした団員達に言い無事和解しセレニアとも復縁することができ、それから毎月必ず会いに行くようになった

なおそれからオラリオに戻り一夏と再会した際一夏の方を見ず背中越しで

 

『ありがとよ 兄貴』

 

と照れくさそうに言われ、機嫌を良くした一夏に鍛えられるのだった

 

 

 

織斑一夏

 

ベートの人柄と才を気に入り弟子に迎えロキファミリアへ入団させるよう働きかけた

ベートからは恩義と尊敬を向けられ、弟のように思い始めた辺りで兄貴と呼ばれたことで嬉しさが頂点に達しその日は日が暮れるまで指導した

 

 

アイズ・ヴァレンシュタイン

 

一夏経由で入団したベートの強さを評価しつつも一夏の関心を買うベートに一時期嫉妬に近い感情を抱き無言でこちらを睨む金髪幼女の剣士に内心戸惑うベートの姿が目撃される

嫉妬期間が過ぎた後はベートとも絡むようになりダンジョン内ではモンスター討伐数を競い合ったり速さで勝負するなどライバルの様な関係を築くが仲自体は悪くはなく、後に自身と友人になる同年代の双子のアマゾネスと都市に繰り出す際にはいつもベートがアマゾネス達とついでにアイズの保護者をすることとなり、彼女達がなにかしらの問題を起こした際には自分たちの代わりに謝罪することが何度かあったためアイズと特に双子のアマゾネスはベートに頭が上がらなくなる

 

 

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