才能を捨てた天才と夢を追い続ける幼なじみ   作:RUKA1235

10 / 13
昨日投稿出来なくて申し訳ないです。現在体調不良で…明日は設定出す予定です


涙と驚き

「ご飯ってなんだろうね」

 

「…ピザとか買ってんじゃない?」

 

「瑠奈さんの唐揚げ、久しぶりに食べたいなー」

 

「…作ってるかもね」

 

登校時に弾んでいた会話とは対照的に、下校時の二人の会話にはどこかぎこちなさがあった。

 

「楽しみだなー、瑠奈さんの唐揚げ」

 

「…そうだね」

 

「昔から好きだったんだよねー」

 

「…そうだね」

 

「瑠奈さんって本当に料理上手いよねー」

 

「…そうだね」

 

「そういえば奏、今日なんの呼び出しだったの?」

 

「…そうだね」

 

「…奏?」

 

「…そうだ、って痛っ!? 急にデコピンすんなよ!」

 

「奏、話聞いてた?」

 

「聞いてたよ! スティーブが船に乗って吉田さんにフライパン持ってきたって話でしょ!」

 

「は? スティーブって誰? それに吉田になんでフライパン?」

 

「…千夏さん、そんな冷たい目で見ないでよ」

 

結局、話し始めるといつものように会話は弾む。それでも千夏は、奏の上の空な様子が気になっていた。

 

彼がこの状態になっていたのは、千夏が帰る準備を終えて奏の元へ向かったときからだ。さっき会ったときには涙目だったのに、もう感情の見えない顔になっていた。

 

歩いている間も、奏の返事は淡泊で、ようやく反応が返ってきたかと思えば意味不明なものばかり。

 

ついさっきも「アンドレスとアルバレスはサウジアラビアに行って、パレナスとメリンドはフィリピンに帰ったんでしょ?」と言われた。

 

なぜか奏の返答には必ず外国人の名前が出てくる。その理由が気になりつつも、千夏は核心に迫ることにした。

 

「…ねえ、今日、体育館の外でなんで涙目だったの?」

 

「…」

 

「奏が何かあったらすぐ泣くのは知ってる。でも、今日のは特別な気がしてさ」

 

「…ドラマ見てて感動しちゃっただけだよ」

 

「…」

 

奏の目をじっと見つめる。

 

「…何?」

 

「嘘だよね」

 

「ち、違うよー! ユリアン・ロドリゲス主演の『エターナル・プロミス〜100年後も君を待つ』を見て感動してたんだよ!」

 

「また微妙なドラマ見てるの?」

 

『エターナル・プロミス〜100年後も君を待つ』は、知る人ぞ知るクソドラマ。評価は2.1/10。

 

「それに、奏が嘘をつくときの癖、出てた」

 

「え!?」

 

「嘘をつくとき、奏は耳を触る。だから、本当のことを話して」

 

奏は視線をそらし、下を向く。

 

「…怖かったんだよ」

 

「怖かった?」

 

「1年ぶりに、あの時間の体育館に入るのが怖かった。勝手に急に辞めた俺のこと、みんなどう思ってるのかなって考えたら…怖くなった」

 

顔を赤くしながら呟く奏を見て、千夏は思わず頭を撫でた。

 

「ふぇ!? き、急になに!?」

 

「ふふ。久しぶりに奏の弱いところを見たら、可愛いなって思って」

 

奏は一瞬で顔を赤くし、さらに俯いた。

 

「…1年前も言ったけど、私は奏がバスケを嫌いになるわけないって思ってる。だから、奏がまたやりたいって思うのを待ってるよ」

 

「…」

 

千夏は、奏の頭を撫で続けながら続ける。

 

「確かに、奏が急に辞めて困った人もいたと思う。私も最初は寂しかった。でも、奏が体育館に入っちゃいけない理由なんてないよ」

 

「…」

 

「バスケ部の子たちも、『奏、試合見に来てくれないかな』ってよく言ってるんだよ? それは私も同じだし、針生くんもだと思う」

 

「…」

 

「だから、そんなに心配しなくていい。もし奏が来て、何か文句を言う人がいたら、私は許さないから」

 

奏の目には、また涙が滲んでいた。

 

「…ありがとう」

 

そう言って、静かに涙を流す奏の背中を、千夏はそっとさすった。

 

そして、五分ほどそうしていると——

 

「ママー! カップルがイチャイチャしてる!」

 

「見ちゃダメ!」

 

「……」

 

「……帰ろっか」

 

「そうだね…」

 

どこか気まずさを残しながらも、二人の距離は、少しだけ縮まっていた。

 

 

翌日。

 

「…今何時?」

 

昼過ぎ、奏はようやく目を覚ました。昨夜は、鹿野家と月城家の久しぶりの食事会を楽しんだあと、疲れ果てて寝落ちしてしまった。

 

「…水」

 

喉の渇きを癒そうとリビングへ向かう途中——

 

ガチャリ。

 

玄関の扉が開き、大きな荷物を抱えた千夏が現れた。

 

「おはよう」

 

「…お、おはよぅ」

 

「今起きたの?」

 

「う、うん。それより…千夏、その荷物、なに?」

 

「それはね——」

 

千夏が何か言おうとした瞬間、

 

「千夏、来たのね!」

 

瑠奈が玄関へとやってきた。

 

「改めまして、これからよろしくお願いします!」

 

「こちらこそ、よろしくね」

 

「…は? どういう意味?」

 

状況が飲み込めず固まる奏に、千夏は微笑みながら告げる。

 

「これから月城家にお世話になります。鹿野千夏です。よろしくね、奏?」




ご覧いただきありがとうございます。面白いと思われたらお気に入り 感想 評価お願いいたします
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。