才能を捨てた天才と夢を追い続ける幼なじみ 作:RUKA1235
「え、こんなに人いるの? しかも女子高生ばっかじゃん、学校帰りの」
「いろんなブランドの商品が揃ってるし、値段もそこまで高くないから人気なんだよ。この店。花恋が言ってたやつも、ここでしか売ってないし」
「へぇ〜。それをひとりで買いに行こうとしてたなんて、針生くんチャレンジャーだね。ほら、早く行っといでよ。『女子高生に囲まれてニヤける針生くん』ってタイトルで写真撮って、花恋ちゃんに送っとくから」
「やめろって…そのあと被害受けるの俺なんだから。この前もめっちゃ怒られたんだぞ…」
「それは針生くんが悪いよ。いくら“綺麗な人が道を尋ねてくる”っていう漫画みたいな展開でも、鼻の下伸ばして対応してたらそりゃ怒られるよね」
「……あー、たしかにあのときの花恋は怖かった。ていうか俺、彼女いるのにそんな対応しちゃダメだよね」
「そうそう。自覚あるならよろしい」
「してねぇっての! 本当、奏のせいで俺がどれだけ被害こうむってるか…今日だって、ちーだけでよかったのに…」
「ん? 今なんて言ったのかな針生くん? せっかく可愛い後輩がついてきてあげてるのに」
「……お前が勝手についてきたんだろ…」
* * *
新年度に少し慣れてきた頃、奏は針生と千夏と共に商店街を歩いていた。
きっかけは、針生の彼女・守屋花恋からの「化粧品を買ってきて」というお願いだった。
しぶしぶ了承したものの、針生には女性向けコスメを一人で買うという行為に少し抵抗があった。そこで千夏に相談し、同行してもらうことにしたのだ。
放課後、学校の門近くに集合した針生が現れると、そこにはすでに奏と千夏が楽しそうに話していた。
奏は、針生にとって小学生の頃からの友人で、これまでも花恋に関する相談や、その他多くの悩みを打ち明けてきた信頼できる後輩だった。
しかし──
(ちーだけなら問題ない。でも奏が来ると絶対めんどくさいことになる…!)
針生の脳裏に、過去の“事件”の数々がフラッシュバックする。
花恋に怒られる原因のほとんどは、彼女がその場にいなかった時の出来事だ。にもかかわらず、なぜか花恋にはその内容が筒抜け。
(問題が起きた時、そこには必ず奏と千夏がいた…!)
もちろん口止めはしている。だがこの二人、揃いも揃って天然のため、無自覚に情報を漏らしているのだ。
(最近は奏に揺さぶりかけて聞き出してるしな…)
ちなみに、奏が気づかずに花恋に話しているのが約4割。脅されて話しているのが2割。残りの3割は、千夏の素直な暴露による。
「……あーっ! 針生くん、早くおいでー!」
躊躇する針生を、満面の笑みで呼びかける奏。その声は、針生にとってまるで地獄の入口からの誘いのように響いた。
こうして奏は「面白そうだから」と同行することになり、冒頭の場面に戻る。
「花恋ちゃんに頼まれてるのって、どれ?」
「えっと…たしかこれ。ちー、合ってる?」
「うん、合ってるよ」
「へぇ〜。じゃあ買っておいでよ。女子高生に囲まれてニヤける針生くん、しっかり撮っとくからね」
「だからやめろって!」
* * *
針生が店内で商品を買っている間、奏と千夏は外で待っていた。
「今日の晩ごはん、なんだろうね?」
「肉じゃがとかありそうじゃない?」
「あー、あるね。かき揚げでもいいな〜」
「食べたいねぇ。そういえばさ、なんで今日残ってたの? あんな時間まで学校にいるの珍しいじゃん」
「菜緒さんに頼まれたんだよ。生徒会には入らないけど、代わりに時々手伝うって約束しててさ」
「生徒会長の三倉さん? 仲良かったんだ」
「楓が生徒会長のときに振り回されたんだよ、色々」
「なるほどねぇ〜」
ここまでの会話は、普通の姉弟のようなものだった。
だが──この2人がそのまま終わることはない。
「ねぇ、千夏。化粧品って飲んだらどうなると思う?」
「えっ、飲むの? それって…危なくない?」
「だってさ、化粧水って“潤う”って言うじゃん。内側からも潤いたいな〜って」
「内側から潤ったら、ぷるぷるのお腹になっちゃうかもよ?」
「ぷるぷる奏、って呼ばれるかも。それ嫌だなあ〜」
「うーん、でもちょっと見てみたい気もする…」
「じゃあ今度飲んでみようかな。お腹ぷるぷるになっても、責任は取らないでね?」
「いや、それは困るよ! まずは試食用のリップからにしとこう!」
周囲から見れば理解不能な会話だが、彼らにとってはごく自然なやりとりである。
(なんで生徒会の話から“化粧品飲んだらどうなる”って展開になるんだよ!? しかも真剣に考えた末の結論が“試食用のリップ”って! そんなもんねぇよ!)
買い物を終えて戻ってきた針生も、その会話を耳にして思わず心の中でツッコミを入れる。だが、それを口に出したらさらにややこしいことになりそうだったので、心に留めてふたりと合流した。
その後、奏が「買いたい物を思い出した」と言って少し別行動になる。
「思い出してよかった〜。今日発売だったの、すっかり忘れてた」
奏が向かったのは書店。目的は、好きなアーティストが掲載されている雑誌を買うこと。
そのアーティストを好きになったのは小学生の頃からの友人の影響で、今でもライブには必ず一緒に行くほどの熱狂的なファンだ。
機嫌よく、商店街の出口に向かって歩いていると──
「あれ? あれって…」
そこには、クラスメイトの蝶野雛と猪股大喜が、仲良くふたりで歩いている姿があった。
「へぇ〜、蝶野さんって匡よりも大喜と仲良いとは思ってはいたけど…やっぱり、そうなんだ」
そうつぶやいて、奏は少しにやけながらその様子を見つめていた。
次も1週間以内には…
次回はオリジナルかな?出すとしたらおまけ的な感じで