才能を捨てた天才と夢を追い続ける幼なじみ   作:RUKA1235

2 / 13
全中決勝

 全国中学校バスケットボール大会 決勝

 

 英明中(85) -(58) 青嵐学園

 

 第4Q 残り1分

 

「やっぱり英明のPGすげぇな! 今の3ポイントで60点目だろ!?」

「去年の得点王が予選で50点でもすごいのに、決勝で60点って……」

「あれでまだ2年生なんだろ? 末恐ろしいな……さすが『天才』月城奏だ!」

 

 試合はすでに決まっていた。点差は27。残り時間はわずか1分。

 青嵐学園の選手たちの足は止まりかけ、英明中の選手たちは余裕の表情を浮かべていた。

 

 ──ただ、一人を除いて。

 

「……はぁ、はぁ……っ」

「……お前さえいなければ……俺らが全中連覇するはずだったのに……!」

 

 青嵐学園のキャプテンが、月城奏に向かって悔しそうに吐き捨てる。

 彼はこの試合を通じて、何度も奏とマッチアップしていた。誰よりも、この圧倒的な実力差を痛感している選手だった。

 

 だが、奏はその言葉に一切反応を見せなかった。

 

 ただ静かに、右手でボールを弾く。

 クロスオーバーで一瞬にして相手を抜き去り、ゴールへ向かう。

 

「っ、この化け物め……!」

 

 ヘルプに来た選手をかわし、そのままレイアップの体勢に入る。

 ブロックしようと跳んできた相手を、空中で逆手にボールを持ち替えて交わし──

 

「……!」

 

 ──ダブルクラッチで、静かにシュートを決めた。

 

「「「おおおお!!!」」」

 

「うそだろ、ダブルクラッチ……?」

「それ以前に、ドライブの時点で速すぎる……」

「どんだけの才能なんだよ……!」

 

 観客席からどよめきが広がる。

 青嵐学園の選手たちは呆然とし、ベンチの監督すら、ため息をついた。

 

(ここまで……才能が違うのか……)

 

 その事実を突きつけられた選手たちの目には、涙が浮かんでいた。

 だが、それは悔し涙ではなかった。

 

 ──絶望の涙だった。

 

「ピィィィィィィィィィッ!」

 

 試合終了のブザーが鳴る。

 結果は 85-58。英明中の圧勝だった。

 

「やったぞ!!」

「俺たちが全国制覇だ!!」

 

 喜びを爆発させる英明中の選手たち。

 一方で、青嵐学園の選手たちは崩れ落ちるように座り込んでいた。

 

「……くそ……先輩たちに託された夢が……」

「違う……俺たちは負けたんじゃない……」

「あいつに潰されたんだ……!」

 

 その中心にいるのは──月城奏。

 チームメイトが次々と彼に抱きつき、喜びを分かち合っている。

 

「奏! ありがとうな、お前のおかげでここまで来れた!」

「来年も頼むぞ!」

 

「……ああ」

 

 奏は微笑みながら、仲間たちの肩を叩く。

 だが、内心では違和感を抱いていた。

 

(……またか)

 

 自分が活躍すれば、勝てる。

 自分が点を取れば、相手は絶望する。

 それなのに──

 

(俺は、なんでこんなにも冷めているんだ?)

 

 周囲は歓喜に沸いているのに、心が動かない。

 優勝を決めたのに、達成感がない。

 試合中、ギアが一つも上がらなかった自分が、ひどく気持ち悪かった。

 

「いやー! 昔から上手いとは思ってたけど、まさかここまでとはな!」

「さすがは俺の息子だ! これは間違いなく俺の遺伝だな!」

 

「あんたのどこに奏の才能があるの? あの子の才能は絶対に私の遺伝!」

 

「はぁ!? 俺は高校時代、バスケ部のキャプテンだったんだぞ!」

 

「部員6人の弱小バスケ部のキャプテンでしょ? そんなんに比べたら私の遺伝に決まってるでしょ!名門校のバスケ部出身のこの私の!」

 

「どこがだよ!試合はほとんど出たことないくせによく言うわ! 出場試合数は両手で数えられるほどだろ!」

 

「ちっ、違う! 足でも数えられる!」

 

「一緒だよ!」

 

「……ふたりとも、そろそろやめましょうよ……」

 

 そう言って、月城奏の両親──月城大輝と月城瑠奈──の口論を止める少女がいた。

 彼女はふとアリーナの方を振り返る。

 

 チームメイトに担ぎ上げられながら、笑顔を見せる奏。

 その顔を見て、彼女は微笑んだ。

 

「……奏、優勝おめでとう」

 

 静かにそう呟くと、彼女──鹿野千夏は、両親の後を追い、会場を後にした。

 

 だが、このとき彼女は気づいていなかった。

 奏の笑顔が、どこか作り物のようだったことに。

 

 そして、その数ヶ月後。

「月城奏、バスケットボール部退部」 の報せが届くことになるとは──。




今日中には2話を出したいと思ってます!

作品が面白いと思われたらお気に入り 評価 感想お願いいたします!作品のモチベーションが上がります!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。