才能を捨てた天才と夢を追い続ける幼なじみ 作:RUKA1235
全国中学校バスケットボール大会 決勝
英明中(85) -(58) 青嵐学園
第4Q 残り1分
「やっぱり英明のPGすげぇな! 今の3ポイントで60点目だろ!?」
「去年の得点王が予選で50点でもすごいのに、決勝で60点って……」
「あれでまだ2年生なんだろ? 末恐ろしいな……さすが『天才』月城奏だ!」
試合はすでに決まっていた。点差は27。残り時間はわずか1分。
青嵐学園の選手たちの足は止まりかけ、英明中の選手たちは余裕の表情を浮かべていた。
──ただ、一人を除いて。
「……はぁ、はぁ……っ」
「……お前さえいなければ……俺らが全中連覇するはずだったのに……!」
青嵐学園のキャプテンが、月城奏に向かって悔しそうに吐き捨てる。
彼はこの試合を通じて、何度も奏とマッチアップしていた。誰よりも、この圧倒的な実力差を痛感している選手だった。
だが、奏はその言葉に一切反応を見せなかった。
ただ静かに、右手でボールを弾く。
クロスオーバーで一瞬にして相手を抜き去り、ゴールへ向かう。
「っ、この化け物め……!」
ヘルプに来た選手をかわし、そのままレイアップの体勢に入る。
ブロックしようと跳んできた相手を、空中で逆手にボールを持ち替えて交わし──
「……!」
──ダブルクラッチで、静かにシュートを決めた。
「「「おおおお!!!」」」
「うそだろ、ダブルクラッチ……?」
「それ以前に、ドライブの時点で速すぎる……」
「どんだけの才能なんだよ……!」
観客席からどよめきが広がる。
青嵐学園の選手たちは呆然とし、ベンチの監督すら、ため息をついた。
(ここまで……才能が違うのか……)
その事実を突きつけられた選手たちの目には、涙が浮かんでいた。
だが、それは悔し涙ではなかった。
──絶望の涙だった。
「ピィィィィィィィィィッ!」
試合終了のブザーが鳴る。
結果は 85-58。英明中の圧勝だった。
「やったぞ!!」
「俺たちが全国制覇だ!!」
喜びを爆発させる英明中の選手たち。
一方で、青嵐学園の選手たちは崩れ落ちるように座り込んでいた。
「……くそ……先輩たちに託された夢が……」
「違う……俺たちは負けたんじゃない……」
「あいつに潰されたんだ……!」
その中心にいるのは──月城奏。
チームメイトが次々と彼に抱きつき、喜びを分かち合っている。
「奏! ありがとうな、お前のおかげでここまで来れた!」
「来年も頼むぞ!」
「……ああ」
奏は微笑みながら、仲間たちの肩を叩く。
だが、内心では違和感を抱いていた。
(……またか)
自分が活躍すれば、勝てる。
自分が点を取れば、相手は絶望する。
それなのに──
(俺は、なんでこんなにも冷めているんだ?)
周囲は歓喜に沸いているのに、心が動かない。
優勝を決めたのに、達成感がない。
試合中、ギアが一つも上がらなかった自分が、ひどく気持ち悪かった。
「いやー! 昔から上手いとは思ってたけど、まさかここまでとはな!」
「さすがは俺の息子だ! これは間違いなく俺の遺伝だな!」
「あんたのどこに奏の才能があるの? あの子の才能は絶対に私の遺伝!」
「はぁ!? 俺は高校時代、バスケ部のキャプテンだったんだぞ!」
「部員6人の弱小バスケ部のキャプテンでしょ? そんなんに比べたら私の遺伝に決まってるでしょ!名門校のバスケ部出身のこの私の!」
「どこがだよ!試合はほとんど出たことないくせによく言うわ! 出場試合数は両手で数えられるほどだろ!」
「ちっ、違う! 足でも数えられる!」
「一緒だよ!」
「……ふたりとも、そろそろやめましょうよ……」
そう言って、月城奏の両親──月城大輝と月城瑠奈──の口論を止める少女がいた。
彼女はふとアリーナの方を振り返る。
チームメイトに担ぎ上げられながら、笑顔を見せる奏。
その顔を見て、彼女は微笑んだ。
「……奏、優勝おめでとう」
静かにそう呟くと、彼女──鹿野千夏は、両親の後を追い、会場を後にした。
だが、このとき彼女は気づいていなかった。
奏の笑顔が、どこか作り物のようだったことに。
そして、その数ヶ月後。
「月城奏、バスケットボール部退部」 の報せが届くことになるとは──。
今日中には2話を出したいと思ってます!
作品が面白いと思われたらお気に入り 評価 感想お願いいたします!作品のモチベーションが上がります!