ファム・ファタール   作:某某

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息抜きのような回です。これほどまで沢山の方に読んでいただけるとは思わず驚いております。ありがとうございます皆さん。感想も読ませていただいており、執筆の活力となります。改めて感謝を。

日間ランキングの方に自分の名前が見えた気がして目を白黒させている私でした。ティアマト、やはり大人気……同士が多く嬉しいですね。


閑話休題

さて、まだカルデアには獣が残っている。第4の獣、霊長の殺人者(プライミッツ・マーダー)……キャスパリーグである。獣でありながら災厄の獣となる事を良しとしなかった比較の獣はしかし、藤丸立香……否、■■ではビーストⅣへと育んでしまう恐れが多分にあった。

 

■■はいつも比べてきた。常に比べられてきた。藤丸立香(主人公)は常に■■の先を歩んでいた。比べない筈もない……彼には無数に救えなかった人がいた。ただの雑種にしてはよくやったじゃないかと自分を慰めようとそこには消えない悔恨の念と輝かしい善性への嫉妬の念が付き纏う。

 

自らの悪性をどこかへ捨てる事もままならぬまま這いずり、歩んできたこの旅路。その中でジュクジュクと膿んだ傷はビーストⅣを成体へと育てるには充分なものであった。

 

だが同時に獣は見てきた。ずっと泣きながら、それでも誰かを助けなければと迷子の様にちっぽけな善性を握りしめて進んできた藤丸立香を見てきた。

 

結局の所フォウはカルデアを愛していたのだ。自らが獣に成り果てるかもしれずとも見守るくらいには気に入っていたのだ、皆が小さな善性を握り締めて助け合ってきたこの場所が。美しいものを見てきなさいと送り出され、そして懸念通りに醜いものも沢山目にし……しかし、その醜さを抱えつつも美しく生きている人間を見た。

 

故にフォウは最後の決戦を終え、皆の前に現れたマスターと()()()()()を見て決めた。

 

 

 

(あ、それが許されるんなら一緒に見守るフォーウ!)

 

 

 

ビーストⅣの幼体、フォウくんは幼体であるまま藤丸立香の旅路を見届けることにしたのである。まさかの現状維持だった。だってズルいでは無いか、獣性があってなお受け入れられ共に歩めるなんて。なら自分もいいではないかという比較の獣らしい嫉妬であった。嫉妬と言うにはいささか可愛らしいものかもしれないが。

 

フォウくんは悔恨、嫉妬、優越(嫌いなもの)と同時にそれでも失われない善性、人が人たる理性と優しさ(好きなもの)を喰らい続けたせいで、端的に言って性癖が歪んでいたのである。苦味の中に風味を感じ楽しむコーヒー好きのような、ヴリトラの同類が生まれた瞬間であった。

 

そしてフォウは偶にはいいだろうとマシュやドクターに抱き締められている藤丸立香の顔面へ張り付いた。

 

───────

 

藤丸立香が無事に()()()()を撃退して帰ってきた事に喜ぶカルデアの面々。しかし少し経ち冷静になった彼らは困ったようにティアマトを見ていた。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()という事実にこれは……大丈夫なのか……?と頭を抱えていたのである。

 

身体検査の結果、藤丸立香の体は問題なく、むしろティアマトと契約した事でその耐久性は大幅に上昇していた。ティアマトが召喚されなければ人よりも少ししぶとい、ぐらいで済んでいたかもしれないがティアマトとカルデア式では無い直接契約を結んだ現状藤丸立香は正真正銘「竜の心臓」であり「神の心臓」とその目、脚を持つ人間と化していた。元の器が器の為英雄等にはなれないが……それでも()()()()()()()には役に立つものであるとティアマトは理解していたのである。

 

突然お出しされた過剰とも言える神秘の塊となった藤丸立香。魔術協会が放っておくわけが無いとムニエル何某は冷や汗と共に嘆く。失われた名の神とその肉体を保有するマスターなど厄ネタ以外の何物でもないのである。

 

また助けに行けなかったと嘆く心優しい少女と自らの尻拭いをさせてしまったと謝るドクターに挟まれながら藤丸立香は申し訳なさそうに笑った。旅路はここで終わらず、今度は世界を滅ぼす旅を始めなければならない……だが、藤丸立香はティアマトと共に歩めるならば、もう少しだけ頑張れそうだと思った。最早これからの旅路は()()が当てにならぬとしてもその暗闇に飛び込もうと彼は飛び込んできたフォウに驚きつつ束の間の休息を得るのであった。

 

───────

 

 

case1 人をダメにする地母神

 

 

藤丸立香は束の間の休息の間、ティアマトに癒されていた。おはようからおやすみまでティアマトが傍におり甲斐甲斐しく世話をされているのである。そんな極楽の中でしばしの後、藤丸立香は呟いた。

 

「アカン駄目になる」

 

キャラごと尊厳の崩壊の危機であった。今までずっと泣きながら頑張ってきた彼を見ていたカルデアの面々やティアマトからすればこれぐらいもう少し甘受していても良いのではないかと思ったが、マシュはそんな藤丸立香に偉いです!と共にトレーニングなどを誘っていた。

 

そうして健康的な人間らしさを取り戻した藤丸立香だったが問題はそれ以外の職員に起こっていた。頑張る藤丸立香を微笑みながら眺めていたティアマトは同時に、愛しい我が子達であるカルデア職員達をも標的にしたのである!

 

ある者はティアマトから差し入れられた弁当の温かさに故郷の母を思い出して泣き、ある者は過労寸前であった(カルデアの現状しかたなくはあるのだが)中で膝枕されて安眠した結果バブみというものを理解してしまったり、ある者は男の娘好きだったはずがその包容力に触れて年上好きに目覚めかけたりしていた。

 

いちばん酷かったのはロマニである。彼は今までのストレスもあり、速攻でバブみに堕ちていた。

 

「ティアマト母さん〜、マギマリ一緒に見ませんか〜」

 

あははうふふ。そんな副音声が聞こえてきそうな緩みっぷりであり、端的に言って仕事になっていなかった。

 

かくしてカルデアのサーヴァントが行ってはいけない事リストの中に一文が足されるのである。

 

 

・ティアマト神は人を甘やかし過ぎないこと。それが必要なほど疲れているもの達には過剰でなくとも劇薬になります。

 

───────

 

case2 母VS母

 

さてカルデアには以前より母を自称するサーヴァントはもう一騎いる。源頼光だ。

 

今母を名乗る二騎(一騎は真に母であるのだが)が向かい合っていた。どちらが藤丸立香を膝枕するかで揉めているのである。藤丸立香は遠い目をしていた……彼は母の愛には飢えていたが、母を名乗る不審者は普通に怖かった。それ以外はとても優しい、綺麗な人なんだけどなぁ……と。

 

「立香、母の膝枕は嫌ですか……?」

 

「■■、何故彼女は母を名乗っている……?」

 

「頼光、嫌じゃないけど別に求めてもいないよ?ここ食堂です。ティアマト、それは俺にも分からない。あと頼光ごと膝枕しようとするのはやめてほしい」

 

どうやら最近のティアマトの甘やかし事件に感化されたらしい頼光は求めていないという言葉に某少女漫画のように真っ白な画風となるほどの衝撃を受けた。ティアマトは変わらずだが最近思ったらしい。人を甘やかしすぎるのはダメでもサーヴァントなら良いのでは?母の愛を必要としている子はまだまだ沢山いる!と。カオスであった。

 

藤丸立香からすればせっかくマシュと共に頑張ってオギャり状態から抜け出したのだ。逆戻りして人権を失うのは嫌であった。何より藤丸立香からすれば生殺しに近しいものが多いのである。男の子はそっと煩悩を胸にしまい、理性を働かせるのであった。

 

後日保母さんの格好をした2人を見つけ、どうやら同盟を組んだらしいと知ったカルデアのサーヴァント達には戦慄が走ったという。戦う西〇屋の誕生である。マーリンやギルガメッシュの千里眼持ちはカルデアには居ないが、どこか遠くの地からそれを爆笑している。地母神はその視線を見逃さなかった。にっこりと確実にこちらへ目線を合わせガラガラを振るティアマトは彼らにも戦慄を覚えさせたようだ。

 

尚、存分に愛せるとはしゃぎすぎた2人はその後ダヴィンチに懇々と叱られていた。

 

 




投稿の時に少し修正がかさみました。申し訳ない。
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