水魔法ぐらいしか取り柄がないけど現代知識があれば充分だよね?   作:mono-zo

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第10話 奴隷の扱いを改善させるための非人道的な提案。

 

エグエグ泣いている私にローガンさんはうろたえている。

 

いきなり子供が泣き始めたらびっくりするよね……ローガンさんのせいだと見られれば、奴隷という立場では良くないかもしれないと気がついて、乱暴に袖で涙を拭う。

 

 

「ごめっなさい!」

 

「いえ、大丈夫ですか?」

 

「大丈夫、です!!ローガンさんにお願いがあります!」

 

「何でしょうか?」

 

「―――ここの常識を教えてください」

 

 

ローガンさんは丁寧に奴隷について教えてくれた。

 

闘技場で闘うのは奴隷だけではないが奴隷であることが多い。戦争や借金に犯罪なんかで奴隷となるものもいる。ここではオークションも開かれているから強い奴隷を求められることもある。怪我は治療とも言えないような治療だけ。

 

聞いて、見て回って……本当に酷い。いや、私の常識の中では酷いと思うけどここでは普通なのだろう。

 

基本的に奴隷には自由もなく、石の床の上で寝る。食べ物は残り物や粗末なもの。病気で死ぬものも多くいる。見て回った施設自体も不潔で、いつでも懲罰ができるように人を打つための道具が壁にかけられている。

 

流石にここでは飢えて死ぬようなことはなかなかないが、反抗するものを見せしめにそうすることはあるそうだ。

 

 

「………」

 

「ほら散れ!」

 

 

彼らは私に威嚇してくるがローガンさんの言うことは聞く。彼らにとって小さな子である私すら警戒の対象なのだ。

 

 

―――主にするのにふさわしいか、自分を鞭打たないか、媚びたほうが良いのか、なんでこんなところに子供が、全てのものへの怒り、なにか恵んでくれないか……そんな視線が私を貫く。

 

被害妄想かもしれないがそう読み取れてしまう。胃も痛いし、悲しくて悲しくて、泣き崩れそうだ。

 

 

「今日はありがとうございました」

 

「いえ、なにか役に立てたのなら幸いです」

 

 

ローガンさんは心配そうな視線を向けてくるが命じられないことはしない距離感で―――ますますやる気になった。

 

ここの奴隷を全員助けることなんて出来ない。力もない私一人が暴れたって大したことは出来ない。

 

それでも彼らを少しでも救うことができるチケットを握っているのは確かだ。親分さんに命じられたのは新たな賭け事。すぐにでも何十ものアイデアが浮かぶが自分が目立たないように、かつ何度も命じられるように有用なアイデアを出さねばならない。それも奴隷の命を救える形で行えれば最高だ。

 

親分さんの部屋に帰るまで考えに考え、自分の中で考えがまとまった。

 

 

「おぉフリム……なんか思いついたか?」

 

「思いつきました!」

 

「聞こうか」

 

 

奴隷を人とは認めず、私の提案で人が傷つき、おそらく死人も出る。

 

………最低最悪とはわかっているがそれでも私に思いつく彼らを少しでも助ける方法だ。

 

 

「……それはおもしれぇのか?」

 

「面白くないですかね?」

 

「良くわからんな……お前らはどう思う!」

 

「いーんじゃないっすか?」

「全然わからん」

「奴隷が死ぬのも勿体ないし良いんじゃないでしょうか?」

 

「お前らに聞いた俺が馬鹿だった、フリム、もう一回説明してみろ」

 

 

私が提案したのはボクシングスタイル。グローブのような立派なものはないが拳を布で巻いて殴り合い、休憩を挟む。

 

日本では賭け事自体が珍しいが海外では様々な賭け事がある。現環境ではどちらかの勝利にだけ賭けるが、それは勿体ない。

 

もちろんわかりやすく既存通りにどちらかの勝利だけにかけても良いがしかし9ラウンドまでを区切ればそれだけでも賭けが変わる。例えば「3ラウンドまでの勝利」に賭けるとか「5ラウンド目に決着がつく」というものができれば新たな賭けの対象が産まれて落とす金も増えるし、お金が欲しくて賭けるんじゃなくて賭け事が楽しい人に新たな選択肢ができるしもっと真剣に奴隷を見るようになるだろう。

 

戦い抜けば泥試合だろうから決着つかずでドロー!再戦決定!とかでごまかせるかもしれない。

 

 

「複雑にはなるが面白いな、あっさり奴隷が死んじまうのも良くなかったしな……いい案だ!でかした!」

 

 

親分さんのゴツい手で乱雑に撫でられる。私の安全が少し確保されたが、それでもこんな提案で褒められていることが気持ち悪くて仕方ない。

 

 

―――それでも、武器を持っての殺し合いよりはいいはずだ。

 

 

「他になんかあるか?」

 

「後はやはり賭場全体の掃除と、奴隷にもうちょっといい暮らしをさせたいですね」

 

「掃除?」

 

「やっぱり人は居心地がいいところだといやすいと思うんです。下は汗とか血とか酒とかすごく臭かったです。吐いちゃいました」

 

「あー……まぁそうだな、賭場がクセェのは俺も前から思ってた。だが、奴隷にいい暮らしが必要か?」

 

 

いきなり突っ込みすぎたかな?ちょっと怖かったがそれでも奴隷を助けることの叱責のようなものは親分さんからは感じられない。純粋な疑問だろう。

 

 

「やっぱり力のある奴隷のほうが売れやすいでしょうし、力のないヘタレ同士だと見てて面白くないですもん」

 

 

ちょっと力の強い言葉を、モルガさんの言いそうな言葉を使って親分さんを説得した。

 

 

「わかった、空いた時間でいいから掃除と新しい賭けの準備は任せた」

 

「はいっ!」

 

 

機嫌の良くなった親分さんに許可は取れたがモルガさんのことを聞かれて正直に答えると肩を怒らせて賭場に行ってしまった……あーあ………。

 




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