水魔法ぐらいしか取り柄がないけど現代知識があれば充分だよね?   作:mono-zo

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第104話 杖とフリム。

 

 

「以前、リヴァイアスの当主になった者が知己にいての」

 

 

 

 

――――………ユース老先生は私の知らない話を知っていた。

 

 

 

リヴァイアス家の当主、ユース老の友人だった彼は若かりし頃に当主に就任。リヴァイアスの屋敷でお披露目があった。

 

記録には残っていないがその友人は魔力切れ寸前で一ヶ月の間学校に通ってきていたことがあったそうだ。

 

 

「じゃからの、もしかすればなんじゃがその杖も当主となるものが直接魔力を注ぐ必要があるのかもしれん。そう思い至っての」

 

「しかし、普通一度でも魔力を注げば魔導具の認証は終わるものでは?」

 

 

エール先生が聞いてくれた。私も周りの皆に言われて恐る恐るだけどそれはした。

 

それでも杖は言うことを聞かず、いまだにお風呂だろうとトイレだろうとついてくる。

 

 

「大半の魔導具ならそうじゃな、特別なものでも3日ほどもかからん。……しかしそれは精霊杖じゃ。我が友ヴェースは疲れ果てた頃「我が家の試練」そう言っていた。それと「母や祖父もこうだった」ともな。これが儂が知る、その杖の書物にのらぬものじゃ」

 

「ありがとうございます」

 

「役に立つかはわからんがの」

 

 

他にもユース老先生は同じような特別な魔導具、精霊具などとも呼ばれるそれについて色々と教えてくれた。

 

似たような道具は水のリヴァイアスの家のものだけではなく、別の属性にも似たようなものもある。

 

この国ほど多い訳では無いが他国にも似たような事例はある。

 

 

―――ユース老先生の過去を聞いてから、私はこのストーカー杖に魔力を注いできた。

 

魔力をそのまま杖に流し込んでいけばそれだけで良かったが……それなりに時間はかかった。毎日地道に魔力を注ぎ込む。すると杖と私が一体化するかのように馴染んだ。

 

できればエルストラさんとの会談の前に屈服させたかったが、そのすぐ後に杖は私に従うようになった。

 

孤児院で子供が触った時に何も起きなかったのは本当に良かった。

 

まぁ、今までよりも杖は従ってくれるようになったものの……屋敷に行ってもマーキアーは敷地に阻まれた。

 

………完璧に当主に成れたわけではないだろう。私は期待を胸に少し浮かれてリヴァイアスの敷地内に入った瞬間、見えないゴスボフさんに顎を打ち抜かれた。絶対一度やり返してやる。

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

 

「――――っ?!!」

 

 

視界を埋めつくほどの炎、杖は私を守ってくれた。

 

私の目の前に水の壁が大きく出現し……一瞬で炎は消えた。

 

部屋の中央にごちゃごちゃしていたものは弾けた水で吹っ飛び、私とインフー先生が向かい合う。

 

 

「―――――あれ?」

 

「インフー先生……なんで?」

 

 

目を閉じ、杖を私に向けずに両手を広げているインフー先生。

 

火が発生したからか熱風があたりを漂っているが……ほんの一瞬だが空気が固まった。

 

 

「き、君が悪いんだ!!!」

 

「インフー、先生?」

 

 

すぐに私に向けられた杖。私も杖を持っていつでも防御魔法が展開出来るように準備した。

 

 

「<紅髯たる火よ!!世界を構成する偉大なる炎の化身よ!!!輪を持って水を切り裂け!!>」

 

 

黒いライオン。真っ黒な毛に、尻尾の先が燃えている。……おそらくインフー先生の契約している精霊が虚空から現れた。

 

長い尻尾をしならせるように振ると尾の先から炎の輪が飛んできた。

 

 

「っ!!?」

 

 

すぐに防御する。

 

水のバリアの五層、逸らすことは出来たが全て切り裂かれた。

 

 

「<水よ!押 し 流 せ ! ! ! ! >」

 

 

すぐに反撃する。

 

彼は、一体何がしたいのか。きっと私が想定していたからこの不自然さに気がつけたのだ。

 

 

「ぐっ!?外の争いをここに持ってくるなんて!<炎よ!キーリディグレス!!>」

 

 

海の波のように腰ほどの高さまで一気に水を出し、津波のように押しつぶそうとした。しかし、黒獅子がインフー先生の前に出ると水が一気に蒸発し、熱波があたりを覆った。

 

予想通りだ。

 

 

 

―――インフー先生は、誰かに監視されている。

 

 

 

 

「<水よ! 包 み 込 め !!!>」

 

「ゴフッ!!?」

 

 

部屋ごと水で包み込み、外部に会話を知られないように遮断する。

 

ちょっと予想外だったのがインフー先生が水で両足を取られて倒れて頭を打ってしまった。

 

 

インフー先生はおそらく人質を取られている。この先生は孤児の仕事のことで私に恩を感じているのはわかっていたし、普段の様子からも私に一目置いていた。

 

おそらく私のお客さん、ルカリム本家か前王兄殿下がなにかしたのだ。

 

現代日本では平和ボケしていても少しぐらい想像ができる。敵がいるのならどうやって攻撃してくるのか?

 

日本の戦国武将だって様々な理由で裏切っていた。「所領安堵」や「プライド」、「過去の因縁」「人質」「地形」「血縁」などなど様々な理由で……だからもしも親しい人が裏切ってきたのならそれらが想像できる。

 

インフー先生の原動力は基本的に「子供の為」だ。研究物だって地方の子が貧しくてもお腹を下して死なないようにするためだったし、孤児院での様子もモーモスによれば「子供のために真剣に向き合ってくれる」と言っていた。私にも子供への態度は真摯なものに見えた。

 

だから、今のこれはきっとそういう状況――――更に、私への攻撃だと思ったけどきっとリヴァイアスの杖を見ていたから反撃で私に攻撃されて……多分死ぬ気だった。

 

見た目は派手だったけどすぐに消えた炎、私が何も察していなかったらインフー先生に反撃して殺していた。

 

しかし「私がインフー先生を殺す」というインフー先生の予想は外れて、多分第二の策を取った。あの黒獅子の攻撃は私の後ろの壁に少し穴を空けた。

 

私ではなく私の後ろの壁に少し穴を空け、何が起きているのかエール先生に伝えて……その後どうするか分からなかったが私を殺す気はなかったはずだ。だって私に向かって炎の輪のような攻撃を続けていたら私はそれで終わっていた。この密室であの黒獅子を前進させればそれだけで私は死んでいたはずだ。

 

 

―――だから部屋ごと水で包んだ。

 

 

監視者がいるのならきっと風の魔法使い。エール先生は賢いし、彼女も風の魔法使い、インフー先生の発言を聞いてきっとすぐに動いてくれてるはず。

 

問題はちょこんとインフー先生の横にいる黒いライオン、インフー先生はさっき水で両足とも滑らせて頭から壁にぶつかって動かない。

 

 

今のうちにペンを取り出してその辺で濡れている紙に「話し合い」「監視者」と何枚にも書いてインフー先生のもとに水の腕で届ける。

 

 

「<ガウゥッ!!>」

 

「アホライオン!!?<水よ!!放水し!氷結して!!!酸素よ!!>」

 

 

水の腕に持たせた滲んでぎりぎり伝わればいいなと思う程度のわからない手紙。倒れたインフー先生に差し出そうとすると燃やされた。

 

攻撃と思ったのか黒獅子がまた燃え上がってきた。たてがみが大きく燃え、こちらに火炎が迫ってくる。

 

まっすぐ、強く放水する。

 

 

「コフッ?!」

 

 

喉にゆらりと熱された空気が滑り込んできて熱い。

 

尻尾の炎と違って頭の周りのたてがみから出た炎は杖を通した水と拮抗している。これが火の魔法使いの恐ろしさか。私には蒸気の熱だけでも呼吸が難しい。

 

部屋ごと水で包んだが、私自身も水のバリア内で酸素を吸う。

 

酸素も作りすぎれば燃焼作用があるから作りにくい。かと言ってこの部屋の空気は熱すぎる。

 

過冷却水と同じ要領で部屋ごと冷やし、黒獅子の熱で弾けそうな部屋の内圧を下げる。

 

インフー先生と意思疎通が取りたいがピクリとも動かない。

 

人間に空気は必要。なのに蒸気は増えていて……熱と圧が上がれば私もインフー先生も危険だ。私はインフー先生をどうにかしたい。

 

 

だと言うのにこのアホライオンは……!!

 

 

放水、私のバリア、過冷却水にするのと同じで出す水を冷やす、更に部屋の圧を逃がすのにコントロールを割かれる。

 

―――私の力を蓄え、私の意のままに、何倍にも力を増して使えて、私を守ってくれるこの言うことを聞くようになったこの杖がなければきっとあっさり負けていた。

 

 

「<ゴルルルアァッ!!!>」

 

「<水よ!>」

 

 

少し押され気味だ。

 

当たり前だ。いくつも複数の魔法に集中して操作して……これまでにない感覚で鼻血が出そうだ。

 

 

「<リヴァイアスよ!!>」

 

 

圧力鍋のようになってしまっているこの部屋。蒸気を解放すれば風魔法使いは蒸気を反らしてこの部屋の中を伺うことになる。

 

このアホ精霊がいる限り、インフー先生に事情を聞いて……きっと孤児を助けることができなくなる。

 

水の膜に一瞬穴をあけて圧を部屋の向こう側に逃し、また穴を塞ぐ。蒸気を逃さないとインフー先生への体への負担が計り知れない。それと監視者が飛び込んでくる想定をして穴は開きっぱなしに出来ない。

 

早くこの黒いアホライオンを倒さないと、部屋の熱で、インフー先生も私も危ない。

 

 

――――リヴァイアスがこの杖に居るのかは分からないが、神頼みだ。

 

 

「<このアホライオンを!!潰せ!!!>」

 

 

真っ向から放水し、出せば出すだけ激しい蒸気になったが―――それは囮。

 

黒獅子の足元から本命の水の腕で精霊を水で掌握。一瞬水に紛れてクジラのようななにかが見え……黒獅子を食い潰した。

 

 

しかし黒獅子が消えると同時に熱と蒸気が激しく発生し、衝撃で私は吹き飛ばされて壁に叩きつけられた。

 

熱すぎる空気を思い切り吸ってしまった。

 

「ごふっごふっ」

 

 

膝をついたまますぐに水の膜の中に戻って部屋の蒸気と圧力を部屋の奥から解放した。

 

蒸し暑すぎるし体が痛い。打ち付けられた背中が一番痛いが喉と耳も痛い。

 

水を氷結させていき、できるだけ室温を下げる。

 

インフー先生が無事だといいんだけど。

 

蒸気が解放されて、また部屋ごと水の膜で覆う。

 

倒れたインフー先生の横に行くと目が開いていた。

 

 

 

「……外に会話がもれないようにしています」

 

「―――――……すまない」

 

 

 

私が転倒させてしまったが私もこんなことになるなんて予想外だし許してもらおう。両足とも滑ると結構人間どうしようもないよね。

 

それよりもインフー先生には伝えないといけないことがある。

 

 

深呼吸して、ちゃんと目を見て話す。

 

 

 

「―――――私が、死にます。子供たちを、どうにか助けてください」

 

 




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色んなバリエーションで適当に書いてるこの後書き。ちょっと楽しくなってました。
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