水魔法ぐらいしか取り柄がないけど現代知識があれば充分だよね?   作:mono-zo

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第112話 立ち向かわないといけない時もある。

 

長い詠唱もつければ地下の子供を一人ずつこの穴から逃がすことは出来るかもしれない。

 

あの魔導具をこの穴から持っていけるかもしれない。

 

痩せガキをここから出せるかもしれない。

 

 

―――しかし、今にも打ち破られそうな扉。というかガタついて少し開いてしまっている。

 

 

痩せガキは扉の周りを硬い土で包んだようだ。金属の扉は小さな小石一つで重くなるが、扉の隙間を詰めるように土魔法を使えば扉は壁のようになる。痩せガキも死にかけていたのによくもまぁそこまでできたものだと思うが……倒れたまま動かないのは心配だが見に行く時間はない。

 

物が散乱しているが一番部屋の奥に赤くなった魔導具。部屋の入口に痩せガキ、壁際に子供たちが固まって身を寄せ合っている。天井のここに熱気が伝わるのなら下はもっと熱いだろう。そこそこ大きな子が倒れた男達から奪ったのか短剣を持って扉の前にいる。

 

 

「開けろっつってんだろっ!!おっ?手間取らせやがって」

 

 

一際大きな音がして、扉が壊れた。―――……考える時間もない!

 

 

「<風よ、優美にして絶麗、絢爛なる旋風よ!>」

 

「うぉっ!?」

 

 

男数人が入ってこようとするが全員吹き飛ばす。

 

もう、魔力も心もとない……それでも何人も一度に吹き飛ばせた。通路であれば土が敵でなければ風が負けるものではない。

 

熱風が駆け抜け、ほんの少し涼しく感じる。風に巻き込まれて大きめの子が倒れてしまっていたので起こす。

 

 

「君は?」

 

「モーモス、味方だ。扉を閉めて出入り口を固めるからはたらけじゃない……ンンっ、手を貸すが良い」

 

「わかった、ありがとう!」

 

 

この大部屋は倉庫として使っているのか食品や衣類、ガラクタばかりでろくなものがなかったが内開きの扉を閉め直して辺りに散らばったもので支える。

 

しかしその辺に転がっていた薄い板では駄目だ。そのまま勝手に開いていく扉、いつ敵が入り込んでくるかわからない。少し離れた棚を数人がかりですぐに動かす。

 

 

「あがっ?!」

 

「やらせるかよ」

 

 

棚を動かすがいざというときのために添えていただけの杖を持つ右手、横から踏みつけるように誰かに蹴られた。―――扉は閉まったまま、まだ誰も入ってきたようには見えなかったが、突然男が横に現れた。

 

腕が氷水に突っ込まれたように冷えた。倒れた棚と一緒に転けたが……腕を見ると折れている。それよりも杖がどこかに行ってしまった。

 

 

「ちっ、揃いも揃って手間取らせやがってよ」

 

「レルケフ!?」

 

「あ”ん”?レルケフ様だろ!!裏切りもんが!!!」

 

 

いつどうやってそこに!?

 

そう思う前に立ち上がろうとしているところを殴られてしまった。

 

 

「雑魚どもが!せっかく俺様がのし上がる駒にしてやろうと思ってたのに……どいつもこいつも!!クソが!!死ね!!死んじまえっ!!!」

 

 

何度も殴りつけられて言葉も出ない。こんなに強い力で殴られたことなど、これまでになかった。

 

大男の無遠慮な暴力、脇を蹴られ、顔を殴られ、足を潰され、杖を折られた。

 

最後に頭を踏まれ、床の冷たさを感じる。

 

 

「はぁ!クソ、時間もねぇ!」

 

 

もう逆らうこともできないほど殴られ。視界も歪む。

 

 

……やれることはやったよな?

 

 

「や、やめてよ!!なんでこんなこと……」

 

「クソガキが俺様に意見すんなボケ!!」

 

 

魔導具の方に歩き始めたレルケフだが俺の横にいた子供に向かって行った。

 

無意識だったがその足首を掴む。

 

 

「まだ生きてんのかクソが……テメェ、俺の役に立たねぇのに俺の邪魔しやがって、気持ちわりぃ格好して、何の役にも立てずに死んじまう気持ちはどうだ?そうだ、おらっ」

 

「きゃっ!?離してっ!!」

 

「うるせぇ!!ぶっ殺すぞ!!!」

 

「ひっ……くるしっ………」

 

 

……どこまで腐ってやがるんだこの男は。

 

声からして女の子だったか、首を掴んでこちらに見せつけてくるレルケフ。

 

 

「モーモスだったな、テメェのせいでこのガキは死ぬ!よーく見てろ!!!」

 

「ま、待ってくれ、どうせ死ぬなら、これをレルケフ、様、に」

 

 

精一杯の力で起き上がる。

 

 

「なんだ?」

 

「水の秘薬、です。怪我をしてるよう、なので」

 

「………なんだ?イカれちまったか?」

 

「何も残せないし、負けた。なら勝者、が、全部受け取るべき、でしょう」

 

「――――珍しい貴族だな。投げてよこせ。あぁまずは短剣からな」

 

 

フラフラと懐から薬の入った袋、財布、ペン、短剣を出して見せる。

 

家紋の入った……命よりも大事と言われている短剣、左手で全力で投げる。右腕は折れていて動かせない。

 

 

「おいおい、しっかりしろよ……ボコボコにした俺が言うのも何だが」

 

 

レルケフを越えて変な方向に飛んでいった鞘入りの短剣。杖も折られたしこれで正真正銘丸腰だ。

 

投げた短剣はレルケフを超えて飛んでいったが警戒しているレルケフはそれに目をくれることもなくこちらを見たままだ。女の子の首をしっかり掴んだまま。

 

そうだよな、俺がもしも杖をもう一本持っていれば隙をついて攻撃するかもしれない。

 

 

「こ、の、薬、は傷口にかける。こっちは飲む。投げれば、いいか?」

 

 

息をするのもきつい。

 

袋から薬を取り出して見せる。運がいいことに薬瓶は割れていなかったようだ。

 

レルケフも負傷しているようだし薬は魅力的なのだろうな。

 

 

「待て待て!割れちまうだろうが、取りに行く。動くんじゃねぇぞ」

 

 

歪む視界、その視界に動くものがあった。

 

 

「オラ動ゲあっ!!??ぱ、パキス?!」

 

「よぉ……クソ兄貴」

 

 

俺の短剣を使って―――……パキスがレルケフの腹を刺していた。

 

 

「て、テメェ!?クッ……ソ、がっ」

 

 

揺れる視界でそれだけ見て、俺の意識は闇に落ちた。

 

 




評価と感想、いただけると作者はウッキウキで新話書き進めます。(現在投下してるのはストックですがここに投稿し始めてから3万字は書きました(*ノω・*))
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