水魔法ぐらいしか取り柄がないけど現代知識があれば充分だよね?   作:mono-zo

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第116話 敵だった者たち。

 

フレーミス君の策のとおりに孤児院を救出に走る。

 

孤児院は孤児たちにとっての最後の逃げ場だ。当然防衛設備もあるし、どうしようもない時の脱出口もある。

 

裏から回ったはずだったが風の魔法使いに補足されてしまった。

 

そしてあっさり、敵に囲まれてしまった。

 

 

「やぁインフー先生、奇遇だなこんなところで出くわすなんて」

 

「……俺の仕事は終わった、子供を解放しろ」

 

「おかしいなぁ……そんな連絡きてないんだが、なぁお前ら聞いたか?」

 

「聞いてない」

「どうせ裏切りだ」

「見せしめに子供を殺しちゃいましょうよ」

 

 

駄目だな、交渉の余地はない。

 

こいつらには人道も何もない。

 

 

「<豪炎よ!!無頼の連中を焼き尽くせ!!!>」

 

「ぎゃあああ!!?」

「子供がどうなって!?くぞあじぃいい!!!」

「水!みずぅ”う”」

 

軽く焼いただけなのに大げさな……生かしておかねば孤児院に何を仕掛けられたか調べられないじゃないか。

 

少し話し、情報を聞き出そうとしたのだが崇高な目的の元作られた最高傑作を馬鹿にされてしまった。

 

 

「正気か?子供がどうなってもいいと?インフー」

 

 

無事な男、一人だけ炎に包まれていない。―――どこかで見た顔だ。

 

 

「政争ではよくあった話だ。人質の命は悲しいがお前らを殺して手向けにしよう」

 

 

本当は心配だが、こうでも言わねば被害が増える。数年前の政争でも似たようなことがあったし孤児院でもそう言わないといけないことを皆知っている。

 

……ただ、孤児院からこれだけ近くで戦えるのならやりようはある。

 

 

「ちっ、まぁいい。俺の手で手柄がとれるんだからなぁ!!」

 

「――――……やれるものならやってみるが良い」

 

 

横から飛んでくる矢を燃やす。

 

予定と違いすぎるが私がここで首魁と戦えば中の子供たちも呼応してくれるかもしれない。

 

いや……俺がここで引き付けて纏めて倒してしまおう。

 

もう一度、炎を敵の首魁らしき男と集まってきた横の二人にも当てる。

 

剣を中心に炎が消えた。一人は風で散らして逃げられ、弓使いの一人には当たって雨の中地面を転げている。

 

 

「何やってんだテメェら!」

 

 

この剣、魔法が効かない理由。厄介な。

 

身体強化をかけたのがグンと距離を詰めてきた『竜剣』。

 

鋭い振り下ろしに対して炎を全身包むように出して――――前に踏み込む。

 

 

「ごガッッ!!?貴様っ!!!」

 

 

炎を切り裂いてそのまま迫ってきた剣に対して左腕で受けながら右の杖を握りしめたまま顔面を強打した。……厄介だがやりようはある。

 

確かな感触はあったし、今ので終われば良かったが頑丈なようだ。

 

頭の位置を横振りで薙ぎ払われたのでしゃがんで左の脇を殴りつける。硬い感触、薄めだが鎧だな。

 

右の膝が迫ってきて蹴り飛ばされ、敵の矢が腰に当たった。

 

 

「ぺっ……さすが、さすが団長を殺しただけはあるなぁ!『悪夢』のインフー!!俺だけじゃない!王都には俺の兄弟たちが潜んでるぞ!!」

 

 

あの剣は先端以外切れない。他は切れるようには見えるが見せかけだ。

 

それを知っているからこそ踏み込めた。

 

 

「お前の大好きな子供を殺してやるからな!道で遊んでるガキも!餓えてるガキもな!!テメーのせいだ!インフー!!」

 

 

戦場において火と風を無効化するあの剣は厄介だが種を知っていればまだ対処できる。頑丈な賢者の衣であれば剣も矢もたいして警戒するものではないが……矢の方が厄介だな、頭に当たっていれば終わっていたかも知れない。

 

大声で気を引いて、風魔法使いが風の塊をぶつけてこちらの体制を崩し、合間に矢が放たれてくる。……オルゴ、挑発のためだろうが腹の立つことを言ってくる。

 

 

「おい!ガキを何人か連れてこい!!!」

 

 

なかなか仕留めきれず、子供が心配になったが建物から出てきた人物によって戦況はひっくり返った。

 

氷が空から降ってきて……オルゴの肩を貫いた。

 

 

「新手かよ畜生がっ!!?」

 

 

氷の騎士ヒョーカが他の数人を凍らせ、戦況はほぼ決した。

 

そこに、エール女史が俺の最高傑作を持って現れた。

 

 

「インフー!これどうやって止めるんですか!?」

 

「水で冷やすんだ!!氷じゃ駄目だ!!!」

 

 

敵味方関係なく一瞬で騒然となった。明らかに異常なその魔導具はこの雨だというのに熱を放っているのが遠目にもわかった。

 

 

「フレーミスの仇討ちです!各々奮起しなさい!!」

 

「「「おぉおおお!!」」」

 

 

エールだけではなく、その場でエルストラ君も現れ、火の魔法使いが視界いっぱいに炎を放った。こちらもろともか……炎の玉は孤児院の玄関を大きく破壊し、いつの間にかいなくなったオルゴ。

 

建物内に逃げ込んだ可能性を考えて探したが……見つからなかった。

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

フレーミス君の見舞いでフレーミス君の提案通りに「事前に敵の侵入を知って対処した」ことに出来そうだったが……本当に申し訳ない思いだ。俺はこの小さな子供を攻撃したというのに。

 

敵の首魁、オルゴの情報が出てきたのですぐに追撃に向かう。できれば王領からライアーム派閥の領地に逃げられる前に仕留めたい。

 

 

「この先よ。いつ戦闘になるかわからないわ」

 

「わかった」

 

 

火をつけて王都を荒らして逃げたオルゴ。クラルスの知る山を通って先回りした。そろそろ現れるはず―――しかし、その姿が見える前に、何かが光って……オルゴは焼け死んでいた。

 

近くで見ていた街道の商人に聞いてみる。

 

 

「この晴れた日に雷だよ。どこの誰だか知らんが精霊様に嫌われたのかもねぇ……」

 

 

こんな真似ができるのは……。いや、確証はない。政治的な争いに首を突っ込むのは………しかし――――。

 

釈然としないが、それでもこの一件はこれでケリが付いた。

 

フレーミス君には返しきれないほどの恩を受けてしまった。これから少しずつでも返していかねばならないというのが孤児院の総意だ。

 

新たな魔導具の研究を禁じられてしまったし、あの爆発で壊れてしまった魔導具の破片の改良だけするようにしよう。

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

 

「痩せガキ、何故フレーミス様のもとに出向かない?」

 

「……肉団子には関係ないだろうが」

 

「モーモスだ!……全く貴様は口が減らんな」

 

 

銭湯の屋上の、今は誰も使うことの無くなった施設の屋根の下、誰もいないそこで雨の中というのに寝ている痩せガキ。

 

事件の後、俺や関係した者はフレーミス様のもとで何があったかを説明した。王様からの呼び出しはあるかもと噂されていたし俺もありのままをしっかりと報告した。

 

ルカリム家の家臣たちの集まる中で報奨も頂戴した。俺の行動は近くにいた子供やエルストラ嬢からすでに報告が行っていたようだし裏取りされることもなく褒め称えられた。怪我で寝ながらも報告をしていたし褒賞を与えるためだけの形式的なものでマーキアー殿やタラリネ殿も同じく褒賞を授かっていた。

 

それだけのことをしたと言われたが部下として当然のことをしただけだし、受け取りを辞退しようとしたが部下の手柄を褒めるのは上役の役割だ。としてフレーミス様に金子をいただけた。

 

 

「これは私のために働いたものに対する正当な褒賞です」

 

「しかし」

 

「――――……モーモス、これは貴方が考え、行動した結果得られた褒賞です。それだけのことをしたのだと私が認めたからこそ出すものです。謙遜せずに受け取りなさい」

 

「しかし、俺はそれ以上のものをフレーミス様から受け取っています。これ以上は過分というものです」

 

「むぅ、強情ですね。じゃあ言い換えましょう。あなた達が働いたことで少なくとも一人の少女が命を落とさずにすみました。何人か倒れていた子供たちももしかしたら命を落としていたかもしれません。彼女らを救ったことに対する評価を貴方の主である私が行ったのです」

 

「………このモーモス、より一層の忠義を捧げましょう。ありがたく受け取らせていただきます」

 

 

地下にいた少女は、成り行きだったんだけどな……あまりにも俺の主は眩くて少し泣きそうになってしまった。

 

本来の働きはエルストラ嬢に援軍を頼んだことだが……政情を考えるに褒められたものではない。

 

 

フレーミス様には返しきれないほどの恩を既に頂戴してしまっている。

 

 

普段から気にかけてくれるし、悪い部分は何度だって注意してくれる。敵であった自分に、それほどされてしまえば報酬はいただけないと思ったのだが……これ以上受け取らないように言ってしまえばフレーミス様を困らせてしまいかねなかった。

 

フレーミス様は「部下を評価し労うのも上司の仕事」と言っていたがその場に現れなかったものもいる。―――このひねくれ者の痩せガキだ。

 

 

「なぁ、俺は……俺等は役に立てた、のか?」

 

「何を言ってる。充分に……」

 

 

折れた腕を吊ったまますぐにこの痩せガキ探しをした。こいつは刺された出血が酷く、さらに隷属の負担を受けて寝ていなければいけなかったというのに病室を抜け出していた。

 

こいつの言っている意味が一瞬分からなかった。

 

フレーミス様にとって役に立てたかだけを考えればそうではないかもしれない。そもそも事前に敵を発見できなかった、お護りできなかったことを恥じるべきだし……何より手傷を負わせてしまっている。

 

 

―――……何という無能か。

 

 

俺達が役に立てたかどうかを考えるとわからない。フレーミス様は怪我をしたのは確かだ。もしかしたら自分たちが何もしないほうが被害が少なかったかもしれん。

 

どうしていたら良かったなんてのはわからないことだ。だけど、きっと―――

 

「役に立てたかはわからんがフレーミス様の意に沿うような働きはできたと思うが」

 

「………そうか」

 

 

フレーミス様に敵対したものの末路は全員違う。

 

俺は敵対したのに許された。生涯仕えようと思っている。どんなに汚れても全く苦ではなかった。

 

ギレーネは一度は温情を受けたというのに完全に敵対した。政治的理由で幽閉が決まった。

 

オルゴは逃亡中に死んだ。

 

レルケフは……俺が見せた薬がなくなっていたことから生き延びたのだろう。

 

 

痩せガキは、パキスはどうするのだろうか……?

 

 

痩せガキが昔フレーミス様に楯突いていたことを知った。ドゥッガ殿のもとに来たフレーミス様は当時その血統も地位も知らずに生きていたため痩せガキの部下であった。それがフレーミス様の配下になって癇癪を起こしたのだとか。

 

母親の治療にも一役買ったフレーミス様に楯突いた恩知らずなんて評価がされているのも聞いた。ミュード殿に聞いてもそれは正しかったようで、ドゥッガ派閥の汚名であるそうな……しかし痩せガキは別の家に養子に出たので正確にはフレーミス様の配下ではない。次代の繋がりを考えると友好的にしておいたほうが良い関係である。

 

 

しかし、この痩せガキの行動を見るにも色々思うことはあるのだろう。

 

 

兄弟の裏切りに対してお互いに短剣を刺しあったというのに受け取るべき報酬も受け取らずにこうして何もない場所で寝ている。

 

 

「フリムはどうしてた?」

 

「どうとはどういうことだ?」

 

「チッ……なんでもねぇ。肉団子が来て腹が減ったから行くわ」

 

「………」

 

 

こいつを探し出して連れて行くはずだったのに、ついつい殴り合ってしまった。

 

折れた腕を吊っていたから負けて取り逃がしてしまった。強情者めがっ!

 




ここって何も書かなくてもいいの?いやいや、そんなそんな……ねぇ?
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