水魔法ぐらいしか取り柄がないけど現代知識があれば充分だよね?   作:mono-zo

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第121話 お祭り?

 

色々と言いたいことはあるが宰相閣下は自分が魔法を使えるわけではなく自己強化と自己回復しか基本的に使えない。見た目通りに盛り上がっている筋肉で戦う。

 

最近は政争で消耗し、体に合う水もなくて大分老化していたが私の水で大分若返ったそうだ。

 

これって魔法使いなんだろうか?どう考えても純粋な身体能力ではないし……。

 

 

「ニャールルさんを呼んできてくれますか?」

 

「「「にゃっ!」」」

 

 

小さな猫ちゃんたちがニャールルさんを呼んでくれるそうだ。

 

一匹の猫ちゃんがすぐに戻ってきてロープで縛られていく牛の獣人。見事にのびている。

 

 

「いや、それにしてもちゃんと言語が理解できるのですね」

 

「何言ってるんですか?そんなことよりもこれって逃げたほうが良くないですか?」

 

「ほっほっほ」

 

「……おい?」

 

 

猫のように首の後ろあたりの服を宰相につまみ上げられた私はシャルルに渡され、私を受け取ったシャルルごと片手で掴まれた。宰相、大きくなりすぎてない?

 

貴賓室だけあってテラスがある。持ち上げられた私達はそのまま外に出て浜辺を見ると多くの人が集まっていた。少し天気が悪くなってきたな。

 

天井よりも身長の大きくなった宰相、狭かったのか屈伸して体を伸ばしている。どうする気だろうか?

 

 

「――――……こういう時は                        」

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

この領地は楽園だと思う。飢えることもなく外敵も少ない。

 

 

それに亜人が多くて純粋な人間が少ない。他にもこういう土地はあるがここほど多種族が集まる地はなかなかないだろう。

 

数の多い人間は最も神に姿が近く、神が自身の姿を水鏡で見て作りあげたとされ、獣人や亜人は獣から人に近くなるように姿を変えたという説法がある。

 

多くの精霊教であれば成り立ちを気にすることはないが精霊教の中でも精霊と契約した人を尊いとされる精霊人教では『人が大精霊と契るのは純粋な人こそが最も神に近いからだ』と言われる。故に「獣人や亜人は神から最も遠く、卑賤で下卑た存在であるのだから人間様の役に立て」と明確に差別してくる。

 

亜人には何をしてもいいと考える輩がいるから住む場所には気をつけないといけない。そういう人間たちにとって亜人は人間ではなく売りさばける生きた商材である。

 

危険なのは人間だけではない。その地に住まう精霊にも気をつけねばならない。精霊の気まぐれでお恵みをいただくこともあるが災害に見舞われることもあるし、山から獣や魔獣も湧いてくることもある。亜人同士でだって漁場や狩猟場でも争う。

 

自分たちだって生活の糧になるのならと獣を集団で襲う。そう考えれば人間が亜人を売るのも理解は出来るが……襲われる方はたまったものではない。

 

 

―――――……これが世の理か、とにかく大精霊様は人と契約しやすい。そして我ら少数の獣に近い獣人は動物のように扱われる国がほとんどで、世界は優しくは出来ていない。

 

 

どこであっても最低でも「家族で助け合って生きていくのが当たり前」のはずだがこの国の王はそんな常識すら知らない愚か者ばかりで殺し合って死んだ。だから争いは国中に広がって奴隷商人や他領の兵士が現れては略奪を繰り返し、この地も大いに荒れた。そして――――主であるリヴァイアス家の人間はひとり残らず死んでしまった。

 

リヴァイアス家の皆さんはみな優しかったが異常なまでに仇を許さなかった。仲間が一人でも害されれば全員で絶対に復讐する。精霊と縁ができたものは何かしら肌の色や性格が変わることがあるためきっとそういうものだったのだろう。せめて自分たちを連れて行ってくれればとも思ったがお優しい方々だったから………。

 

この領地に元々いた者は悪さをするものはほとんどいなかった。もしも海神様の勘気に触れれば生きてはいられないからだ。

 

 

しかし……よくもまぁオベイロスのゴミどもは何故精霊様に見捨てられないのかと不思議に思う。精霊様の考えを批難したいわけじゃないが何を考えているのか全然わからない。

 

 

人の多くがリヴァイアサン様の水で強制的に追い出されてしまったがこの領地は他領の兵士に荒らされることもなくなり、同じく苦境に立たされていた亜人がここに集まった。

 

この地に入れるものは誠実な者ばかりではなく「奪うことしか考えないもの」や「領地に入れない誰かに命じられて暴れるもの」もいる。

 

海神リヴァイアサンの領域は広く、力も強大。人間である当主様方も獣人や亜人への偏見はなくこれまでずっと外敵から守ってくれた。……そんな精霊と契りが持てればと期待してくる者は多い。大いなる精霊の考えは分からないが、もしも心正しくないものが新たな当主になってしまえばどうなるのかわからない。

 

自分以外の種族を追い出してしまうかも知れないし、大きく税を取るかも知れない。……心の荒んだ亜人の中には自分が上に立てばそうすると考える者もいるだろう。

 

 

リヴァイアサンは海を泳ぎ回り、たまに浜辺に見に来る。我々は皆で喜んで迎え入れる……リヴァイアサンがこの領地の新たな主人を見定めているのかも知れないからだ。

 

精霊によっては姿を見ることも一生ないが神とも称されるだけあってリヴァイアサンは誰の目からでもくっきりと見える。

 

しかし、悪しき考えのものが主人になるのだけは避けなければならない。有力者は同盟を組んで誰が主になってもそういうことはしないという約定をしているが本当にそうするかは分からないし、明らかに権力に溺れそうなものもいる。

 

リヴァイアサンは精霊だし、我々の何を見て選ぶのかはわからない。もしかしたらこの領地を守れるだけの強そうな乱暴者を選ぶかもしれないし、漁の上手いだけのものを選ぶかも知れない。舞が上手い者、酒造りが上手な者……何が正解かわからないがリヴァイアサンは浜辺からじっとこちらを見てくれるしその間、必死にリヴァイアサンに自分を選んでくれと披露する。

 

皆で踊り歌うのもよし、自分たちがどれだけ叡智に優れているのか語るのもよし、殴り合って強さを見せつけるのもよし………ただ、武器を持ってリヴァイアサンに襲いかかった愚か者は空の彼方まで吹き飛ばされてしまった。

 

 

近頃はリヴァイアサンが浜辺に来る頻度が上がってきて期待が高まっている。

 

 

もしかしたら「こういう祭り事を数ヶ月してやっと認められるかも知れない」という意見も出ていたが……今日こそ誰かに決まるのか?

 

 

「時間だ」

 

「もう少し!もう少しだけ」

 

「だめだ!さっさと下がれ!」

 

 

「「「「にゃ~にゃ!にゃ~にゃ!にゃにゃ~!!」」」」

 

 

リヴァイアサンの前で演劇を披露していたおっさん共はすぐに連れ出され、彼らの残した衣装や小道具なんかを海猫族が片付けてくれた。

 

見苦しくも残ろうとするものを隠すように海猫族は踊っている。

 

彼らはこの領地にずっと暮らしていて数も多い。自ら権力を得るのではなくこの祭りを手伝ってくれている。

 

順番を決めて一組ごとにリヴァイアサンの前に出ることにしている。全員が一気に芸を披露してもリヴァイアサンも困るだろう……というか多分困っていた様子だった。

 

だから順番にしているのだが準備が必要なこともある。その間海猫族はリヴァイアサンを引き止める役割で歌って踊って舞台を用意してくれる。数だけは多いしあの統率した動きだけは他の種族に真似はできない。砂浜の足跡も消してくれる辺りキッチリ仕事をしていて気分がいい……普段は間抜けに壁の上とか木の陰で寝てることもあるのに。

 

 

リヴァイアサンの様子がいつもと違う気がする。いつもよりも海から出している顔が砂浜に大きく出ているし……気のせいかも知れないが楽しそうにしている気がする。

 

 

――――それに雨だ。

 

 

これまでのリヴァイアサンの御領主様の継承では『歓喜の雨』が降っていたそうだ。

 

この雨がそうかは分からないがいつもよりも皆の気合も一段と入っている。

 

 

海猫の用意が終わって舞台に駆け上がってきた竜人は有力候補の一人だ。

 

体格も良く、つややかな鱗と角が一目で見栄えする。見た目だけでも魅力が溢れている。酒好きで陽気、この領地を守る竜人の息子……彼は槍の名手で強さも申し分ない。

 

厳かに、それでいて力強く槍で舞っているが―――もしかして決まりか?彼こそが次のリヴァイアサンの縁者になるのか?

 

彼が舞い始めてから雨が降り始めたのは兆しなのだろうか……場の盛り上がりは最高潮を迎え、決まりか?決まりか?と胸が高まってきた。

 

 

 

「「「「< キ ュ ア ッ >」」」」

 

 

 

リヴァイアサンが大きく鳴いた。

 

あまりにも大きな声が反響し、耳が痛い。

 

 

槍を天に掲げた竜人は見事だったが――――皆の視線は別を向いていた。

 

 

浜辺にトロール……?いや、耳の尖った筋肉の塊のような巨大なオーガが何処かから降ってきたのだ。青い髪をした少女と金の髪をした青年を掴んで。

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

 

「――――……こういう時は精霊の騒ぐ場所に乗り込んだほうが案外良いのですじゃよ」

 

「きゃあああああああ!!!??」

 

「爺の阿呆ォォオオ?!」

 

宰相は私達を片手で掴んだまま遠くに見える砂浜に向かって――――跳んだ。

 




いつの間にか執筆しながら寝ちゃってて、く、首が…………!!?
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