水魔法ぐらいしか取り柄がないけど現代知識があれば充分だよね?   作:mono-zo

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第131話 カレー?と不穏な空気?

 

一応、魔力水は回復に使えるという点はわかった。

 

かなりの時間が掛かるが、ボロ雑巾ナマズことプゥロは完全に傷が治った、攻め込んできたチャークさんもだ。なんと腕が生えた。両腕とも生えたが、チャーク曰く古傷のほうが皮膚が突っ張る感覚がするのと動かすのが久しぶりで少し難しいらしく……まだ水に漬けられることを希望している。全身の生傷の無くなったプゥロもだ。

 

 

「腕が、腕がっ。もうあんな下衆領主なんかよりもフレーミス様に忠誠を誓いますのでどうかお側にいさせてください!靴でも舐めます!!」

「お願いします!何でもしますからその中にいさせてください!!絨毯が汚れています!私めの背をお通りくださいませ!!」

 

 

かなり気持ち悪い。

 

 

「わーの主にちーよるな」

「にゃー!」

「引っ込んどれ!大体プゥロは裏切っといて何をいうんだ!!」

 

「気持ちイィ!!」「もっとぉ!!!」

 

 

空気が凍りついた。

 

周りの人が蹴り飛ばすとなんか気持ちよさそうな声を上げる2人。……痛みがひどすぎて痛みと快楽の区別がつかなくなってるのだろうか?

 

 

「私はフフまだ治ってないんで、フヒヒ!フフフフフ!」

 

 

一番ズタボロだったジュリオンさんは火傷もあって完全には回復していない。魔力水も私の技量が上がったのか光量も増えたが彼女の傷はあまりにも酷かった。あの状態で生きられていたのだから竜人というのは生命力が凄まじい。

 

ひとまず2人は監視付きで経過観察する。しばらくすれば痛みをちゃんと痛みと認識できるかもしれないし、もしかしたら過剰な治癒は骨や肉に異常をきたしているかもしれない。

 

 

疲れたのでシャルルたちと作戦会議である。

 

 

「しかし、こんなに簡単に回復できるものなんですね」

 

「普通にありえん。わずかに魔力を含む程度ならそれなりにいるが……この短時間で良くここまで治したな」

 

「え?普通はそうじゃないんですか?」

 

 

ちらりと宰相を見る。宰相も驚くほどだったしなんとなく超魔力水と名付けたこの水を欲しがったのは彼らだけではない。宰相も飲んでいる。

 

レージリア宰相はもはや中年どころか30前後ぐらいに見える。飲むだけでこれならこの人も漬け込んだらもしかして子供のように若く…………やめよう、この人なら10倍ぐらい筋肉が膨らむかもしれない。

 

 

「聞いたこともありませんな。過去に水の精霊と共にあった王でも老化を食い止めることはあってもここまではなかったですのぉ」

 

「そうか、しかしフリムはまた面倒な立場になったな」

 

「というと?」

 

 

シャルルの淡麗な顔が一瞬ピクリと動いた気がする。

 

何故か立ち上がってこちらに歩いてきた。

 

 

「腕を生やすなど、大家の長でもできん。光の魔法使いは神殿に取り込まれているからわからんが……瀕死だろうと癒やし、老人をも若返らせる。まるで他国の伝説にある薬のようだからな――――となれば狙われることになるだろう」

 

 

ちゃんとわかってるのか?そう言いたいのであろうシャルルが膝をついて目を合わせてきた。

 

 

「おっふ………」

 

 

それはそうか、現代にもしもそんな人物いたら善きにしろ悪きにしろ確実に大問題になる。

 

近代でも「死者を蘇らせる」とか「傷を作らずに悪くなった内臓を素手で除去する」と言う内容でメディアに取り上げられた事例はあったらしい。トリックだとかいう意見もあったはずだし、それが本当かどうかはわからないが……子供の頃にテレビで見た時は弟が「スゲー」と興奮していた気がする。謎に頑張って練習してたなぁ。

 

 

それはそれとして領地の状況を聞いてみると現在は普通の人もリヴァイアス領を出入りが出来るようになったので王都からこの領地に兵士を呼び寄せている。私も許可したが無用な刺激を避けるためにも領都ではなく問題の領地との領境いに直行してもらう。

 

アモスはリヴァイアスの神殿とやらで祈ってる。姉はもう大丈夫と伝えたいところだが、治療の経過は知らせないことにしよう……どう考えても危険な薬に漬けてるように見える。

 

 

――――もしも私が病院行ってお母さんや妹、弟が光る謎の壺に漬けられてウヒャヒャヒャ笑ってる状態だったら医者に向かって助走をつけてドロップキックするだろう。

 

 

今私がやらなきゃいけないことは領民に早く領主と認められることだ。そのためにも「言葉を話せるようになるスープ」を領民に飲んでもらうこと、そして隣と他国からの侵略について対処しなければいけない。

 

 

――――……動きは今のところ無いそうだがもしも攻め込んでくるのなら。

 

 

それはそれとして厨房を借りる。翻訳用スープには薬草が必要らしく特別なものではないが領民に配るには結構な量が必要でもう少し時間がかかる。

 

3人の水瓶に魔力水を流し続けている間に領地の様々なことを聞いていたのだが……食べたい物ができた。

 

 

「それは?」

 

「カレーです」

 

 

この領地は海を接しているのと多くの種族がいる関係から食材が豊富だ。王都では果物が中心だった。しかし、こちらはこちらで作られているものが違っていて美味しいものが多くある。

 

3人に流し込む食材は「滋養のあるもの」や「健康に良いものが中心」で……何を食べさせるかを考えるのにこの領地にある食材を把握していくとここにはスパイスが豊富にあった。

 

それらの扱い方を黒狐のワー・リングァーに聞くと、拙い喋り方で色々教えてくれて………絶対カレー作ってやると心に誓った。

 

カレーを思い出すほどに鼻孔をくすぐるスパイスがあった……私はカレーを思い出し、カレーに郷愁を抱き、カレーを魂で求めた。

 

この国で食べてきたこれまでの食事、ごった煮のスープ、果物、肉、パン……この4つが基本だ。

 

スープはちょっと酸っぱかったり、吐き気がしていたがその不味さが『もしもこれがカレーだったら』と考えさせられることが多々あった。アイス製造時に少しバターを作ってみてシチューを作ろうとしていたのだが美味しいコンソメもなかったし、もしも失敗したらと考えると出来なかった。

 

しかし今は猛烈にカレーを食べたくて仕方ない。この城に貯蔵されている香しいスパイスの数々から私の脳が可能だと言っている。肉汁の旨味に数あるスパイスを混ぜれば出来ると。

 

少しずつスパイスを混ぜて足して加熱して、理想を追求する。答えを知っているからこそ理想の味に最短ルートで向かうことが出来る。

 

ここには有り余るほどのスパイスがあって、自由に使えるからこそできる。領主就任によって近隣からは次々に食材が運び込まれてくる。

 

作っていくのにおかしくなりそうならここには食材を無駄にしない宰相がいる。美味しい料理を作りたいと言えば何でも手伝ってくれる便利なじーちゃんだ。今ではもう若々しいけど。

 

 

「これでも十分に美味しいと思うのじゃが……」

 

 

何故そんなことが言えるのか、バンと調理台を叩いて主張する。

 

 

「まだです!本場のカレーはこんなもんじゃないんです!!!」

 

 

そうしてどうせなら最高の水で作ろうと魔力水も使って作った逸品、スープカレー。

 

正直に言えば牛肉も足りない、玉ねぎも足りない、じゃがいもも足りない、人参も足りない、ルゥも足りない……カレーっぽいものだ。

 

食材が全部違うのだから、仕方がない。

 

うちのカレーははちみつと焼肉のタレ少しとトマト缶2つは入れるコクと深みたっぷりの激ウマカレーだった。母さんの料理は最高だった。

 

それに比べるとなんと貧弱でなんと物足りないカレーか……白米もないし、肉も野菜もぜんぜん違う、ただのカレー風味の異国のスープ。

 

 

でも、それでも故郷を思い出せる程度にはこれは『カレー』なのだ。

 

 

「うぐっ」

 

「突然どうした?!何故泣く!!?」

 

 

いつの間にか涙が止まらなくなっていた。

 

 

「ちょっと故郷のカレーを思い出しまして……。母さんが懐かしいです」

 

 

うまいうまいと食べている宰相を調理場に放置して、もう寝ろと口元をシャルルに拭かれてベッドに連れて行かれた。

 

スパイスの調合で落ちないようにまとめていた髪も下ろしてくれてブラシで少し整えてくれる親切っぷりだ。

 

 

「まだ、本調子じゃないかもしれませんの」

 

「そうだ、そもそも子供なんだから働きすぎだ」

 

「でも、私がやらなきゃ……」

 

「怪我人はそうかもしれん、しかし料理はどうだ?」

 

 

たしかにそうだ。年齢の割には私めっちゃ働いてる。

 

頭に手を当てられてシャルルの手が少し冷たく感じる。風邪でも引いたのか、それともまだリヴァイアスの影響が続いているのかもしれない。

 

3日寝てたってことは多分体が休息を求めていたのかもしれない。

 

 

「………無性に作りたかったんです」

 

「その感覚はわからんが……傍から見て今のお前は少しおかしい。さっさと休むが良い」

 

 

ボロボロと涙が出たのはカレーもどきで出たのだ。次は絶対もっと美味しく作ってくれる。

 

 

「でも」

 

「……あまり心配させるな。――――あぁ、フラーナとオルダースも俺を見てこんな気持ちだったのかもしれんな」

 

 

心配させてしまったようだ。味見だけでも結構お腹いっぱいだったし、今日はもうこのまま寝ることにしよう。

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

 

「お父様、お久しぶりです。お話があります」

 

「おぉ、顔を見るのは久しいな!こんなに大きくなって!!今日は宴を開くことにしよう!!」

 

「それはありがとうございます、でも、今すぐにでも話したいことがあります」

 

「なんだ?」

 

「――――フリムのことです」

 

「……あぁ、報告には目を通していたが」

 

「なんとか助けられないでしょうか?」

 

「は?あの裏切り者を?  の悲願の邪魔をする最悪の悪魔だぞ??」

 

「――――お父様にはそうでも私にとってあの子は歳の近い妹のようなもの、あの立場も生き残るために王都で苦労していたからと聞きます」

 

「何を言う!!?………いや、そうか、お前にとってはそうかもしれんな。……しかし」

 

「叔父上の娘であるなら!それに血族と仲間は助け合わねばならないと教えてくれたのはお父様ではありませんか!!」

 

「そう、だな。しかし、もう遅い」

 

「遅い、とは?」

 

「フリムは本当に邪魔をしてくれた。それが偶然か、シャルトルの策かは知らぬ。だがな、おそらくもうそろそろフリムは死ぬ。なぜなら        だ。いくら闇の大精霊の加護を得て水の精霊に好かれていようとも     が相手であればどのような杖でも足りんよ」

 

「……は?なら助けに行かないと」

 

「ここから何日もかかるリヴァイアスの領域に、もう死んでいるかもしれないフリムを助けに?やめておきなさい。賢いお前ならわかるだろう?」

 

「………それでも、フリムは、私の大事な妹です!失礼します!!」

 

 

「――――愚かな、いや、それでこそのルカリムかもしれんな」

 

 

 

久しぶりに会えたというのに、忙しない娘である。

 

王都から出てくるだけでもなかなか許されなかっただろうに……ここに来たということはもう墓参りは済んだということなのだろう。

 

普通に考えて儂の娘がリヴァイアスまで行ける許可を得られるはずがない。

 

 

「……これも精霊の導きのままにってことか」

 

 

娘の成長、この国、この社会。

 

言うことを聞かなかった弟に、殺さねばならない姪。

 

全ては精霊の導きでこの世は成り立っていると皆は言う。この国では全てが精霊が関わっているのだから当然とされるが――――

 

 

「――――――――……………反吐が出そうだ」

 

 

だからこそ、腹立たしくもある。

 




とりあえずこれだけ投稿しておけば数日の雨に読める分があるはず…………え?もう読んだって?
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