水魔法ぐらいしか取り柄がないけど現代知識があれば充分だよね?   作:mono-zo

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第147話 進まぬ婚儀?

 

顔だけは良い王を捕らえてすぐにリヴァイアスからの嫁が来た。

 

シャルトルをどうするかクーリディアスに聞こうとしているのだがクリータ列島にいる彼らと連絡が取れない。

 

クーリディアスからクリータ列島に援軍が来たのに海が荒れている。海は凍えるほどに冷たく、謎の黒い怪物が現れて船や人を襲っている……精霊が荒れるとその地は異界になるのは常識だろうに。

 

さっさとシャルトルを引き渡してしまいたいがこの城にはリヴァイアスからの貢物で常に人が出入りしている……それも鼻の良い獣人が。

 

王も近衛も地下空間に閉じ込めているし生きているか死んでいるかわからないが血臭や腐臭が漂えば亜人は仲間が捕まってると騒ぐやもしれない。だから今は動かせない。

 

 

――――それよりも新たな嫁だ!

 

 

顔を隠して神秘な雰囲気を醸し出している彼女等は全員が美人ではないかもしれない。しかし各種族で一番の美人を集めたなど……胸が踊って仕方ない。これが精霊の導きというやつだろうか。

 

纏う衣はリヴァイアスの青ではなく白色……不思議に思って聞いてみると結婚の後に「貴方に染まる」という意味もあるらしく、いじらしくてとても良い。彼女たちは時間をかけている間に貴族院に連絡しているそうだが、その白布の衣を剥ぎ取りたくて仕方ない。

 

家の中でもやはり賛成派と反対派があるのは当然だが表向きクリータにとっては隣の大領主と縁が深まるというのが一番利益になるはずだ。クーリディアスとのことは裏切らない家臣にしか教えてないしな。

 

だけどメディッサは良い家の出身だし、その座を引きずり降ろされれば立場がない。しこたま殴られたが……こういう時は男の俺が悪いし謝るしかない。そこは謝る。メディッサはこれまでずっと俺を支えてくれたが、政治的にはどちらを優先するかは明らかだ。

 

仕方ないというのも本人もわかっているのだとは思う。美醜や若さだけで選ぶのならとうのたった――――

 

「ウォゴっ?!何故殴った!!?」

 

「また失礼なことを考えていたでしょう?顔に出やすいのですよ貴方は」

 

「むぅ……」

 

 

しかし、リヴァイアスとの婚姻が成立すればリヴァイアス領の占領は容易になる。

 

フレーミス嬢に反対されたとしてもこちらに身柄はある……聞くところによるとオベイロスと仲は良くないそうだし、うまく行けば全面的な協力もしてもらえるかもしれない。

 

もしもすべてが上手く行けばメディッサの子供にも新たに爵位も与えられるのだが……。

 

 

「俺には君がいないと駄目なんだメディッサ、君と君の子供のためにも、リヴァイアスは必要なんだ。わかるだろ?」

 

「……わかってますよ。でも貴方ったら本気で頬を緩ませて!!」

 

「男の性だ」

 

「もう!」

 

「それにしても良いのか?計画がうまく行けばメディッサの実家とは……」

 

「何度も言ってるでしょ!良いのよあんなクソ実家!援助もなしでこんな田舎に送って!……しかも手紙は『顔の悪い旦那とはどうか?』『あんたにはお似合いね』ですって!!ボルッソのことを何も知らないで!あのクソ姉妹共が!!!」

 

 

いつも通り酷いことを言われたがそれが彼女の本心でもあるけど愛も感じるしこちらも惚れているから文句も言えない。というか、叩かれた理由は嫉妬も大きかったのか?いくつになっても可愛らしい俺様自慢の妻である。

 

 

彼女はクリータの事情も、クーリディアスにつこうという動きも理解している。

 

 

完全にこのまま行けばクーリディアスにつくわけだが、いざというときのためにクーリディアスの軍を潰してオベイロスに恩を売れるようにも考えてくれる。……メディッサはうちの家臣よりもよっぽど賢い人だ。

 

 

「…………」

 

「まぁ貴方がいい男ってのがわかってるからまだ耐えられるわ」

 

「ではなぜリヴァイアスの嫁にあんな真似を?」

 

「うちの人間でリヴァイアスに表立って反抗できるのは実家がライアーム派で家格も一応伯爵家の出の私ぐらいでしょ?顔も覆って何を考えてるかわかりませんしね……緊張状態を作っておかないと好き勝手に動かれて面倒になるじゃない」

 

 

王も護衛たちも殺したと思うが証拠は残していない。今ならクーリディアスと手切りになってもライアーム派につくなり、王はクーリディアス軍によって殺されたと中央に報告することもできる。

 

まぁ近くにクーリディアスの軍がいる以上、このままクーリディアスにつくのが妥当だが。

 

それよりも深く考えてくれるメディッサが嬉しい。

 

 

「…………おぉメディッサ!我が精霊よ!」

 

「やめなさい熱苦しいわね」

 

 

新しい嫁たちも楽しみではあるがメディッサ達も愛している。

 

俺様は数字には詳しくないが俺様の嫁は売る物の値段を交渉してくれたり、政治とは何かをしっかりやってくれている。……もしも彼女がいなければきっと統治なんてうまく行っていなかっただろうな。

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

あれから数日、そろそろ婚儀を進めたいところではあるがなかなかうまく行っていない。

 

彼女達の作る料理は美味しくて誰しも唸るほど。野菜にかけられていて食べていなかったがマーヨニーズとやらも食べてみると手が止まらない。

 

メディッサを含む妻たちもリヴァイアスからのドレスや装飾品の数々を差し出されてご満悦だ。俺には良くわからないが女の世界での格付けとやらの意味もあるらしい。メディッサは苦笑していたが。

 

子どもたちにも多くの贈答品があって新たな嫁たちはうちに溶け込みつつある。リヴァイアスは裕福だな。

 

俺様も廊下ですれ違うときにはその色気で思わず寝室に連れ込んでしまいたくなる。しかし、それをして儀礼を台無しになったり……それどころか、戦争にでもなったら今度こそメディッサに殺される。一時の欲望に手を出して全てが手に入らぬなど馬鹿げている。だから我慢する。嫁たちが言うように俺様は我慢もできる良い男なのだ。

 

 

――――……しかし、明らかに姫君達の様子がおかしい。毎日王都から届く手紙によって気分を害している。

 

 

様子を聞くと「リヴァイアス領の統治はいかがなものか」と、領地を持たない法衣貴族からの嫌がらせもあるそうだ。彼らの中には「働いて成果を上げているんだからそろそろ領地を頂きたい」という考えは当たり前にある。

 

精霊の力の弱い空白地なら城で雑務ばかりをしている法衣貴族が代官や領主に任じられることもある。リヴァイアスの地は大精霊の地ではあるがオベイロスの中では大いに栄えている。精霊のことなどわからない木っ端な法衣貴族にとっては『どうせ領地持ち貴族になるのなら荒れて何もない土地よりも栄えている地が良い』と考えるから口に出したい気持ちも少しは分かる。

 

しかし邪魔をしたところで選んだのはリヴァイアスだ。彼女に「リヴァイアスに認められた」という名目がある以上、誰にも有無を言わせずリヴァイアスは姫君のものだ。姫君にとって中央の邪魔は腹立たしいだろう。

 

毎日鳥人に手紙を運ばせているようだけど彼女達が日に日に荒れていくのが伝わってくる。メディッサに言われたし探りを入れることにする。

 

 

「どうかされましたか?また手紙が届いたようですが」

 

「……婚儀が遅れてすいません。王都から領地に関する話し合いが上手く行っておらず、このままでは時間ばかりが過ぎてしまいそうです」

 

「どういうことでしょうか?」

 

 

申し訳無さそうな彼女の声。

 

姫君らの立場であれば既に大精霊リヴァイアスに認められてリヴァイアス領の領主である。認めざるを得ないはずなのに中央でなにか起きているのか?

 

婚儀を進めるのに立場がはっきりさせてからでないといけないとジュリオンと名乗る嫁が言っていた。たしかにそうだ。そうでなければ後で面倒なことになるとメディッサも言っていた。

 

年若い姫君たちでは中央の貴族の行いは我慢ならないだろう。あいつら屑だからなぁ。

 

 

「シャルトルが、いないとかで、承認されないんですよ!!!」

 

「…………」

 

「王都にいるはずのシャルトル王、以前から求婚してきて腹立たしかったのですがこんなにもみみっちい嫌がらせをしてくるなんてっ……!!」

 

 

あぁと口に出てしまいそうだった。

 

顔は見えないが怒りに震える彼女。蠱惑的な香水にくらくらしていたのだが……酷く激怒している。

 

 

「だいたい、王なら王都にいるでしょうし!貴族院の決議が済んでいるのなら後は王が形だけの承認をすればいいだけなのにっ!!あの男!私が相手をしなかったからって何という卑劣な!!!それに王がいなくても宰相がいるはずでしょうに!!!!」

 

 

シャルトル王の承認は無理だろう……なぜならここの地下で放置している。

 

王都で承認どころか今頃死んでいる可能性のほうが高い。

 

宰相ももしかしたら「腰が痛くて動けないこともある」と聞いたこともあるし休養中かもしれない。

 

 

「姫君はオベイロス王家になにか思うところが?」

 

「おおありです!私はそもそもルカリムの人間のはずなのに商人に拾われて水を売って金稼ぎをしていました。父も母もシャルトル王の護衛として長年仕えて命を散らしたというのにその娘である私は?!大体シャルトル王が王位を望んだから私の両親は死んだようなものじゃないですか!なのにあの男っ……!」

 

 

腕を組んで身震いしている彼女。

 

王都からの噂ではシャルトル王が迫っているというのは聞いたことがあるが彼女が迫ったという話は聞いたことがない。

 

考えてみれば彼女からすればシャルトルは仇のようなものかもしれない。憎むほどに腹立たしく思っているのならリヴァイアスも交渉だけでこちらの味方につけることが出来るかもしれない。

 

そんな彼女に提案を――――いや、裏取りとメディッサに相談が先だな。

 

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

 

「ハッハー!飛ぶのは気持ちいいなぁ!!」

 

「海の近くを飛ぶのも面白いですぞ!」

 

「行け行け!さいっこうだな!!!」

 

「そろそろ帰らねば共のものが死にそうな面でこちらを見ていますぞ」

 

「気にするな」

 

「良いのですかな?」

 

「良い良い!そうだ!良いものを見せてやろう!!向こうだ!!」

 

「……おぉ、流石クーリディアス、竜もいるのですな!!」

 

「やっとアモス殿を驚かすことが出来たな!リヴァイアスには竜はいないのか?」

 

「ほとんどいませんな。オベイロスは精霊の統べる土地ゆえ竜には居心地が悪いのでしょう」

 

「二君その地に座せぬ定めと言うやつか……触ってみるか?」

 

「よろしいのですか?」

 

「グルルル……」

 

「ルルルァ」

 

「言葉がわかるのか?」

 

「なんとなくですが腹が減っているようですな」

 




(# ▓Д▓ )<シャルトルゴルァ!! (´・ω・`).。o○(あっ……地下にいるし無理だわ)
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