水魔法ぐらいしか取り柄がないけど現代知識があれば充分だよね?   作:mono-zo

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第16話 石像の掃除、早速の爆発。

 

「お待ちしておりました。ドゥッガ様の家来の方々ですね?」

 

「はい、掃除をしに来ました」

 

「では、よろしくお願いします」

 

 

バーサル様のお屋敷に行くと家の人に案内された。

 

広すぎる中庭を見てみると仕事を命じられた理由がわかった。偉そうな服の石像が大量にあった。

 

奇妙な配置で、向きもバラバラ、ポーズも一定じゃない。60体はあるだろうか?なにか意味があるのか……どれもかなり汚れている。

 

 

「これらはこの国の貴族様を模したものです。定期的に掃除をしているのですが。何分、石の汚れというのはなかなか取れませんので………」

 

「―――なるほど」

 

 

見れば緑や黒色に汚れている……色がつけられているのではなく苔やカビだろう。日本でのお墓掃除とかでも落としにくかった汚れ、ブラシで擦ればいくぶんかはマシになるがそれ以上は綺麗にならない厄介な汚れだ。

 

何十年、何百年物の汚れか、数体は顔もわからない。石自体の劣化もあるし、ところどころ指や髪の毛が欠けて落ちているのもある。

 

 

「よく来た!おぉ、パキスまで来てるじゃないか!よろしくな!」

 

「はいっ!今日はよろしくお願いします!」

 

「ウス」

 

 

バーサル・ドゥラッゲン、ドゥッガ親分さんの兄である。

 

今日も親分さんと同じ顔で派手な服を着ていた。甥であるパキスとは面識があるようだ。

 

 

「早速仕事したいのですが石自体が傷んでるものもあるようですし魔法で壊れても責任は取れませんよ?」

 

「構わん、これでも既に磨いた後なんだわ……式典もあるってのにいつも見窄らしいが、まぁ駄目で元々だわ」

 

 

これは確認しないとかなり危ない。もちろん圧力は弱めから試していくがそれでも首を物理的に飛ばされる危険性はグッと下がったはずだ。

 

 

「わかりました、一応試してみたいので壊れても良いようなものを教えてもらってもいいでしょうか?」

 

「完全にぶっ壊れてもよろしく無いしなぁ……こいつで頼むわ」

 

「わかりました。かなりの範囲に水しぶきが舞うので離れていてもらってもよろしいでしょうか?」

 

「かまわん、今日は風呂に入る予定だからな」

 

 

多分そのお湯出すのは私かな?まぁいいや。

 

 

「ローガンさん、貴族様の横で飛沫がひどかったら守ってください」

 

「はい」

 

「<水よ、出ろ>」

 

 

両手の先からバシャーっと洗浄していく。賭場の掃除で大分慣れたもので力加減もバッチリだ。

 

ボロい、汚れの酷い石像だったが見る間に汚れが落ちていく。高圧洗浄って準備は面倒くさいけどやるのは楽しいんだよね。

 

 

「おおおおぉ!!」

 

「な、なにか?!」

 

「素晴らしいなお前の水は!」

 

 

まだ水をかけている最中だというのに石像に向かって突進してきたバーサル様。やっば、当てるところだった。

 

高圧洗浄は見ていて楽しいよね?わかるよ。

 

 

「徐々に強くして見ます」

 

「良いな!見てるから続けろ!」

 

「すいません、一度止めます」

 

 

両手の前の水を丸くまとめて花壇にポイと落とす。

 

 

―――できれば近くにいてほしくはない。

 

 

水を出している私に汚れが飛んでくることはよくあるし、基本怪我をするようなものではない。それでも近くにいて服が汚れるし貴族様の怒りの最低ラインがわからないのも怖い。

 

 

「貴族様、石は髪の毛や指先などの薄い部分が割れて飛んでくる可能性もあります。御身のために後ろに下がった方が良いと進言します」

 

「むぅ……まぁ屋敷から見るぐらいは構わんだろう?」

 

「おそらく大丈夫ですが、風向きなどでも飛んでいく可能性はあるかも知れません」

 

「バーサル様、進んで汚れることはありませんよ。下賤に任せるべきです」

 

 

若干酷いことを言われてるがこの家人さんを援護したい。私の首がかかっているのだから。

 

 

「仕方ないか……まぁ心配する気もわかるけどもよ、まぁ良い……励めよ」

 

「はい、精一杯お役目を務めさせていただきます」

 

 

若干不服そうな貴族様。

 

頭をきっちり下げると貴族様はこの家の人を連れて離れていった。

 

 

「………」

「………」

「………」

「チッ」

 

 

オリュミュロイとタラリネのリザードマン兄妹にマーキアーは目を丸くしている。舌打ちはもちろんパキスだ。帰ってほしい。

 

 

「フリムお嬢様はとても丁寧に話せるようですね。驚きました」

 

 

小学校も行ってないようなおこちゃまがちゃんと話せていれば前世の私も驚くと思う。もっと子供らしく話したほうが気味悪くならないか?……いや、それでは危険だった、何もしていなければ餓死の可能性もあった。

 

話し方でこの身の安全が少しでもマシになるのならするべきだし、せざるを得ない。もっとこの国に合うような話し方はあるのだろうし、より奇妙に見えるかも知れないが。

 

 

「そうですか?では仕事を言い渡します。ローガンさんは私の近くで補助、オリュミュロイさん、タラリネさん、マーキアーさん、パキスさんはこの付近の掃除と掃除中の――――」

 

「―――偉くなったもんだなフリム、クソが」

 

 

パキスだ、なにかしてくるとは思ったがもう我慢できなかったのか。

 

 

「パキス、さん……これも仕事です。親分さんに命じられた仕事で「知るかよクソがっ!!調子乗ってんじゃねぇ!!!」

 

自分よりも大きな男の子、拳を握って向かってくる。いつものように両手を前に出して大事に至らないように身を縮こませる。

 

 

「はぁなぁせっ!!!??」

 

 

ローガンさんがパキスの拳を止めていた。パキスは私よりも大きいとは言え子供で、立派な体格のローガンさんには太刀打ちできないようだ。私を殴ろうと藻掻くパキスだがマーキアーとオリュミュロイ、タラリネが割って入った。

 

 

「ご主人さまにフリム様の護衛を命じられていますので」

 

 

空いた片手でナイフを抜いたパキス、何が……何がそんなに気に食わないのだろうか。

 

向けられた殺意で体の中がヒヤリとしたものが伝う。

 

ナイフはローガンさんが後ろからパキスの手首を握ったからかその場に落ちた。

 

 

「はっ?!離せよローガン!!こんな愚図!!クソ!クソクソクソ!!!死ねよクソがっ!!!」

 

 

武器がなくなっても、諦めるどころか怒りが膨らんだようで両手首をローガンさんに掴まれていたパキスだが足で蹴ってきた。間にいたオリュミュロイがパキスを殴った。

 

 

「うぐっ?!何すんだ奴隷風情が!!?」

 

「なんだいこのきかん坊は?ローガン、どうするね?」

 

 

マーキアーが呆れたようにローガンさんにどうするか聞いている。

 

 

「ぶっ殺す!ぶっ殺してやるぞフリム!クッソがぁああ!!!!!」

 

 

叫ぶパキス、ここをどこだと思ってるんだろうか?親分さんの顔に泥を塗っているとなんでわからないんだ?

 

しかし責任者は私だ、首が落ちる可能性があるとすれば私。

 

 

「これ以上は迷惑がかかります、フリム様、気絶させる許可を」

 

「おねがいします、殺しちゃ駄目ですよ」

 

 

言い終わるよりも先にローガンさんの太い左腕で首を裸絞にし、組んでほんの少しあいた右手でぽんと頭を叩くとパキスは一瞬で落ちた。

 

 

「殺してないですよね?」

 

「はい、眠らせただけです」

 

「ありがとうございます。ローガンさん、マーキアーさん、パキスを親分さんのもとに連れて帰って……ありのまま起こったことを話してください」

 

 

ローガンさんとマーキアーの奴隷という立場上、私も行った方がいいかも知れない。

 

しかし、ここを離れられない。ここでの掃除は私にしか出来ない。

 

 

「フリム様は?」

 

「私は命じられた掃除をします。これ以上親分さんの顔に泥を塗るような真似はできません」

 

「わかりました。一時護衛の任から離れることをお許しください」

 

 

親分さんがどう反応するか。パキスに怒るか、御しきれなかった私に怒るか、ローガンさんに怒るか……分からないのがとても怖い。

 

 

「はい、一緒に行けなくてすいません」

 

「いえ、これは仕方がないでしょう。マーキアー、行きますよ」

 

「たくっ……なんて仕事だい」

 

 

脇にマーキアーさんがパキスを抱え、ローガンさんが先導して庭園から出て行ってしまった。

 

なんでこんなことに……、今ここにバーサル様が出てきて処刑されないか心配だ。もしもそうならローガンさんとマーキアーさんを逃がせたことは喜ばしいのか?

 

自分の命一つでも気が重いのに、他人の命までかかってることにストレスで吐きそうだ。パキスが嘘の言い訳をしないかが本当に心配だ。

 

 

残ったのはリザードマン兄妹。ほとんど話したこともないし、これはこれで怖いんだが……。

 

 

「オリュミュロイさん、タラリネさん、先程はありがとうございます。助かりました」

 

 

私を守ろうという動きだった。ナイフを持っている相手との間にだ。

 

 

「いえ、大したことはしていない……それと俺はオルミュロイだ」

 

「失礼しました、一度聞いただけだったので間違ってました……その、改めておねがいします。オルミュロイさん、タラリネさん……であってますよね?」

 

「はい」

 

 

多分私の顔は真っ赤だろう、安心して、ホッとしたところにこのミスは恥ずかしすぎる。

 

 

「改めて自己紹介を、私はフリム。路地裏で拾われてそれからドゥッガ親分さんのもとで働いています。水の魔法が得意です」

 

「オルミュロイだ」

 

「タラリネ、です」

 

 

いきなり爆弾は爆発した。それでも逃げ帰ることも出来ないしどう転ぶかはわからない。

 

それでも仕事は仕事、続けなければならない。

 

二人には付近の軽い掃除と他の人を見かけたら飛び散る危険があると伝えるようにしてもらう。高圧洗浄は当たった水で音がするから私には人の接近が気が付かないこともあるから結構大事だと思う。

 

まだ胸がどきどきする。いい意味ではなく、いわれのない殺意とナイフを向けられたという恐怖。それとこのあと親分さんがどう判断するか……なんて、嫌な想像をしてしまって。

 




投稿初日、UA数もうすぐ1000だ!

(/>ω<)/アリガトーッ✨️✨️
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