水魔法ぐらいしか取り柄がないけど現代知識があれば充分だよね?   作:mono-zo

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第150話 暴虐の花嫁?

 

すべてが上手くいっていて喜ばしい。

 

あと少しで美姫達が俺様のものになる。オベイロスを裏切るのにも領民の裏切りをなくすようにもできて……姫君達の真意だって同時に確認できる。

 

 

「シャルトル王の護衛が他にもいるように言っていましたね……死んでいるのなら王を殺すのにサメをおびき寄せる餌にし、生きているのなら檻に入れたまま落として……やっぱりサメの餌にしましょう」

 

「獣刑、ですか」

 

「はい。これを行うことで領民も家臣もオベイロスが攻め込んでくれば根切にされるとわかっているので必死に戦いますし、私が刑を執行することでクーリディアスに反オベイロスだと表明できるでしょう。オベイロス王をリヴァイアス領主が殺したとあっては因縁のあるクリータとでも足並みを揃える他ありません」

 

 

大罪を犯したものに使われる刑罰だが滅多なことでは行われない。痛めつけられ、杖も武器も取り上げた上で森や荒野、海などに縛って放置する。

 

血なまぐさいのだからすぐに獣に襲われることがある残虐な刑罰だ。

 

捕まえていた兵士共を確認すると一応皆生きていた。それも俺に気づかれることもなく俺の領域を上書きして外に逃げようとした形跡すらある。さすがは一国の精鋭と言うべきだろう。

 

穴の底から外に向かって小さな穴はあけられたようだがそこは海、人が出入りできるほどの穴ではないが海水は侵入し、入ってくる小魚で餓えをしのいでいたそうだが……かなり衰弱している。

 

どうやって勢いよく天井ごと降ってくるあの罠を回避したのかと不思議に思ったが王家の装備なら何かしらの不思議な道具でも持っていたのかも知れない。

 

何にしろ腐っていたり異臭を放っていなくてよかった。処刑が終わったらその場で結婚式を上げることになっているし臭うのはよろしくない。

 

罠を逃れて散っていた騎士たちも人質用に生かしてオベイロスの情報を引き出し、後の人質にしようと隔離していたが、彼らも含めて騎士は全員これから檻に入れて崖から落とす。

 

檻に縄をつけて吊るし、クリータとリヴァイアスの領民や家臣に縄を切らせる。

 

 

その後、俺様とフレーミス様方でシャルトルを落とし――――待望の結婚式だ。

 

 

終わればリヴァイアス秘蔵の酒を振る舞ってもらい、祝い金を姫君が配って、初夜となる。

 

崖は海面から山のように高いから生き残ることは不可能。風の魔法使いが抵抗したって全員が入った檻を浮かすことなど出来はしない。

 

……もしもクリータ列島へのリヴァイアスの怒りがクーリディアスを襲い続けているが、列島の兵が動かせぬ間にオベイロスから正規軍の援軍が来るとマズい。

 

国の賢い騎士様がオベイロスに定期的に報告していないのはおかしい。クリータに王と正規軍が入ったまでは連絡が行っているはずだ。しかし、海では精霊が荒れていることから――――軍がまるごとなくなるなんてよくある話だし、今なら全員殺してしまえば時間稼ぎは出来る。

 

調査には風の魔法使いが来るだろう。海には魔獣もうろついているしここの下のサメは掃除も得意だから全員殺してしまえばごまかせるだろう。

 

クーリディアスとは状況に応じて動くことは話していたし、どちらにしろ正規軍と王を殺し、リヴァイアスを味方につけられれば大功となる。

 

 

「これより処刑を開始する!!」

 

「「「ウォオオオ!!!」」」

 

 

城を使ったいつもと違う処刑方法に領民も猛っている。

 

このあと結婚式もあるし、祝いの振る舞いもあるとわかっているからか人も多く集まった。

 

 

「この者らはクリータ存続に関わる大罪を犯した!!よってクリータ領主として小奴らを処刑する!!」

 

 

予め兵の鎧兜は脱がせた。『オベイロスの兵を殺した』という印象のためには身に着けさせたほうが良いかもしれないがそれはもったいない。鎧はものすごく高いし、後から攻め込む時に使えるかもしれないから……うん、これはこれで良いはずだ。

 

国宝と呼べる装備もいくつもあったし、おそらくそれだけで小国なら買えるのではないだろうか?いくつか壊れていたのは残念だが全部押し潰すつもりだったのに回収できた。……これが精霊のお導きというやつだろうか?全部俺様に良いように進んでいる。

 

 

「一人一本!縄を切って落とせ!!」

 

 

何十本もの縄で吊るした檻、こちらで縄を切れば吊るされた彼らは海に落ちる。

 

縄を切るのは処刑人ではなくクリータの有力者の子弟を集めた。事情を知っている者もいるし、知らなくても処刑後では後戻りができなくなる。

 

 

――――城から海と列島を見ると……かなり酷い。

 

 

この城の辺りは晴れやかなのに、クーリディアスの軍のいる列島周辺だけ凄まじく荒れている。

 

精霊を舐めていたのだからそうなるのだ。化け物が出たなんて話も聞くが海には何がいるのかわからない。精霊の怒りに触発されて魔獣や謎の怪異でも暴れているのかもしれないな。……今もこの崖の下、水面には巨大な化け物の影が写っている。

 

これだけの高さがあっても見えるのだからとてつもない大きさだろうな。しかし、幼い頃は恐ろしくもあったが今では慣れたものだ。なにせこの城までは高さがある。海面が上がってきても届くことはない。元々崖は切り立っていたし城も頑丈に作った。

 

 

有力者の子弟の皆の前の縄を切ると……大きな檻は落ちていった。

 

 

「ひぃっ!!?」

「なんだ?!あれ??!」

「ば、化け物!!」

 

 

海面が盛り上がり、水そのものが生き物のように……檻ごと飲み込んだ。

 

 

「沈まれ!まだ刑は終わっていない!!一度下がれ!!」

 

 

精霊の恐怖など知らないであろう彼らは泣いたり祈ったりしている。流石に俺様も赤く染まっていく海面に少し背筋が凍りそうだ。

 

何も知らずに刑を執行した彼らももう取り返しがつかない。下がらせて続ける。

 

 

「クリータはあの政変から困難の連続であった!中央の勝手な政争でこの領地はただただ被害を受け続けた!食糧もろくに取れず!賊も増え!!中央からは税を増やせ兵をよこせと言われ続ける!!こんな生き方には耐えられない!!!」

 

「そうだー!!」

「息子を返してくれ!!!」

 

 

ざわついているし賛同の声が帰ってきたが妻たちの仕込みだ。じゃないと領主の言葉にいきなり声を返してくるなんてあり得ない。

 

演説は苦手だがもう引き返せない。何度も練習した通り、大声で伝える。初夜のためにも。

 

 

「その上!大国クーリディアスはこの周辺を攻め込もうとしていた!!クリータのみではない!!!オベイロス首都まで食いつぶす大軍を率いてだ!!!」

 

 

悲鳴も聞こえた。恐怖にざわめく領民。

 

いきなり大軍に襲われればと考えれば恐ろしいだろう。この場から逃げようというものもいる。

 

 

「そこで俺は先祖のクーリディアスとの不仲を!この地、この場に生きるもののためにと和解し!!このクーリディアスにつくことを決めた!!!」

 

 

もっと詳細にメディッサに話す言葉を練習させられていたが演説は苦手なのだ。

 

 

 

「もしも!もしも俺が何もせずにクーリディアスが攻め込んできたとしよう!!領民は皆殺しになり!中央は間違いなく助けてはくれない!!!だからこそ!!オベイロスとは決別し!!クーリディアスにつくのである!!」

 

 

領民にもわかる演説など、出来ているのだろうか?

 

メディッサに教わったとおりに、俺様自身も力を込めて伝える。

 

 

「先程処刑した彼らは!オベイロス正規軍である!!!精霊に愛されし我が土魔法によって捕らえていた!!!もはや我らに逃げ場はないのである!!!やらねば!先祖が作り上げ!守ってきたこの地はただ荒らされるだろう!!!国と国との争いに!!ただすり潰され!!人々は殺され!!奴隷として売られていく!!!!」

 

 

中央のただ偉ぶってる奴らは、絶対にこんな辺境を守ってはくれない。

 

海賊や他国の軍の報告を上げても「領主としての力量を見せられるところですな」とか「領地を守れないのであれば領主の立場も危ういですぞ」とか言われて終わりだった。報告すら賄賂をとるのに全然援軍をよこさない。腐り切ってやがる。

 

 

「それもこれも!!オベイロス王シャルトルが悪い!!!奴が政争さえ起こさなければ!!奴が辺境までまともに統治していれば!!!こんなことにはならなかった!!!見よ!!我が策によって捕まえたシャルトル王である!!!!」

 

 

先程の檻のように、吊るされたシャルトル王を見せつける。

 

 

「これより処刑を開始する!!このリヴァイアスと縁を結ぶ良き日!!!リヴァイアスとクリータはオベイロスと決別する!!よく見よ!これがオベイロス王だ!!!!」

 

 

下の領民は困惑しっぱなしであるが高揚しているものも見て取れる。

 

王の顔を知っているものはいないし、繰り返してこいつが王だと分からせる。

 

 

「こいつを殺せば!我らはクーリディアスと固い絆で結ばれる!!これをもってリヴァイアスの姫君と婚姻しクリータとリヴァイアスはともに困難に立ち向かう!!!オベイロス王シャルトル!!貴様は貴様が蔑ろにし続けてきた己の咎で死ぬのだ!死んでクリータとリヴァイアスの貴族の!兵の!民の!慰めとなるが良い!!生きたまま食い殺されてしまえ!!!!」

 

「クリータ!」

 

「「「クリータ!!クリータ!!!」」」」

 

「「「「「「クリータ!!!クリータ!!!クリータ!!!」」」」」」

 

 

時折リヴァイアスやクーリディアス、もっと無惨に殺してしまえなどと聞こえるがさっさと刑を済ませてしまおう。

 

シャルトルは痛めつけて喋れないように口に布を噛ませている。

 

繋がれた縄を短剣で傷つける。檻は縄で何本も繋いで落としたが今は一本だ。少し傷つけて、顔を隠した姫君に渡す。

 

彼女は白布の嫁入り衣装のままだし、武器となる物を持っていない。

 

 

「さぁ姫君方」

 

「――――はい、ありがとうございます」

 

 

全員で切り落としてもいいし、フレーミス様が一人で切るかもしれない。

 

しかし彼女は縄ではなく領民に向かっていった。

 

 

「フレーミス・タナナ・レーム・ルカリム・リヴァイアスです!!この日、この時をもって!!我らリヴァイアスはクリータと共にある!!!」

 

 

他の嫁も彼女に頭を下げている。

 

何人か集まっている獣人が振る舞い金を持って集まってきた。シャルトルを殺してから振る舞っても良いと思うのだが……。

 

 

「我が両親を殺したオベイロスへの恨みもあります!だが!その恨みよりも!我ら領主は領民の守り手としてあるべきです!!!」

 

 

頭のおかしいリヴァイアスとは中央では言われるが、リヴァイアスが怒るのは仲間が殺されたときだ。相手が王族だろうと絶対に恨みを晴らす凶獣リヴァイアス。しかしその根底は優しいのだろうな。

 

獣人の兵や海猫族が叫び始めた。

 

 

「「「「リヴァイアス!リヴァイアス!!」」」」

 

 

儀仗兵がその槍の柄で床を叩き、音が響く。恐ろしくもあるが彼女への忠誠もわかって頼もしくもある。

 

うちの兵士も猛った獣人が恐ろしいのか腰が引けているようだが彼らが持つ武器は形だけでどれも刃はついていない。

 

うちの領民も彼女の言葉に賛同してかリヴァイアスと叫んでいる。

 

 

「この一刀を持ってオベイロスとの縁は切れます!!しかし私達は一人ではありません!!このクリータにはリヴァイアスがいます!!そしてクーリディアスも!!これは婚儀の振る舞い金です!兵も受け取るが良い!!皆!この良き日に!これからの我らの未来に祝福のあらんことを!!!!」

 

 

彼女も俺様と同じで演説は苦手と言っていたがそれでも十分胸に来るものがあった。

 

あとは縄を切るだけなのだがしかし、彼女は短剣を縄に当てるも切れてない。

 

 

「あれ?あれ?」

 

 

縄が硬いわけではなく、刃を滑らすこと無く押し付けるだけなので切れていないのだ。……流石に刃物の扱いはうまくないのか。

 

 

「姫君、手伝いましょう」

 

「あ、ありがとうございます」

 

 

近づいて手を取る。これまでなら彼女に触ろうとすれば周りの嫁が止めてきたが流石に許されたようだ。

 

身体を密着させて手を添える。……凄まじく良い香りがする。

 

 

「えっ……うがっ!?」

 

 

くるりと短剣が回って……俺の腹に深々と突き刺さった。

 

 

「貴方ぁっ!!」

 

 

メディッサの顔がこちらを向いて歪んでいる。

 

 

「行きますよ!!!」

 

「「「「はいっ!!!」」」」

 

 

いつか刺されるとは良く言われていたが……まだ手を触れただけの嫁に刺されるとはな。

 

熱くなる腹に歪む視界、目の前で獣人や嫁たちが皆崖に飛び込んで――――自分も崖に投げ飛ばされた。……人生最高の日のはずだったのにな。

 

 

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

 

「何という寒さだ」

 

「これがリヴァイアスの怒りというものか……」

 

「しかしこんな攻撃がいつまでも続くわけがない。耐えろ」

 

「あのトカゲはどうした?」

 

「ドラゴンを見に行ったそうだぞ。竜人だからある程度意志が伝わるとかでな」

 

「この寒さじゃドラゴンも弱るかもしれないしな。ワイバーンなんて飛ぼうとしただけで羽が折れた」

 

「精霊なんざたいしたことないと思っていたが、ひでぇ国だな」

 

「王も精霊が決めるらしいぞ。派閥も何も関係なしに」

 

「ひでぇな、荒れないのか?」

 

「荒れまくってるな。だが近くの国は深くまで攻めないらしい」

 

「納得だな、こんなの攻め込んだって人が生きられねぇよ」

 




(っ▓ω▓ )≡▶))ŐдŐ)グフッ!!!
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