水魔法ぐらいしか取り柄がないけど現代知識があれば充分だよね?   作:mono-zo

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第151話 二人のフリム?

 

「こっちです!!」

 

「むぁっ?!フリム!!?」

 

「暴れないでくださいね!」

 

 

腕と口を縛られたままのシャルルが降ってくる。驚く彼だが、何も知らなかったのはシャルルだけだしなぁ。

 

崖の上から降ってくるシャルルやリヴァイアスの仲間たち……それとおまけにお腹にナイフが刺さった人、情報によればクリータの領主だろう。

 

水で持ち上がる体でシャルルを片手で抱きしめて、生きていることに安心する。

 

 

 

「ボルッソ!ボルッソーー!!あなた達もうちなさい!!<風よ!破砕しろ!!>」

 

「<火よ!ごほっ、燃やし尽くせ!!>」

「<土よ!ゴッ、げほっ!」

「<疾風、よ!我が身を、運べっ!!>」

 

 

海の下で待機してエール先生やレージリア宰相達を檻ごと確保したし、水で持ち上がってシャルルとクラルス先生たちを確保したし、後はこのまま落下して海に逃げ込めばいいだけだったが崖の上の城から攻撃が来た。

 

 

「<水よ!!壁となれ!!大 海 嘯!!!>」

 

 

追撃は予想はしていたし用意していた海を崖に当てて、下からそそり立つ水の壁を作り上げる。

 

ただの水だが水には質量がある。火も風も容易に貫通できないし、土は発動に失敗、風魔法使いは突っ込んできて水に当たったのでそのまま巻き取る。

 

うちの精鋭はちゃんと祝い金とスパイスをぶちまけて来たようだ。人命には替えられないし好きなだけお金もスパイスを使うように言っておいた。運び込ませた全てをぶちまけて目潰しと喉を潰し、その隙に逃げ出すという計画は成功したようだ。きっと上は今大変なことになっているだろう。

 

 

――――作戦はうまく行ったようだ。

 

 

花嫁作戦。クラルス先生には私としてクリータで花嫁に扮して撹乱してもらう作戦だ。処刑のタイミング次第で臨機応変に私も現場に紛れ込めるようにと花嫁衣装を着ている。結局は海の中にいたけどね。

 

それまで私はクリータ列島のクーリディアスの軍隊をじわじわと侵攻していた。

 

水を冷たくして海の種族を引き上げさせ、水の中も黒い布でぼんやり隠して移動して怪物に見せ……たまに調査に来る人を海に引きずり込んだ。

 

安全を確保してから姉弟喧嘩でボコボコになったアモスさんを私が水の中を移動して安全に送り届け、槍を使った舞と炎によって予め決めていた符号と照らし合わせて内部情報を流してもらっていた。

 

軽く万を超えるクリータの大軍に、クリータを探しても見つからないシャルルたち。三馬鹿と呼ばれたアモスの部下たちにも空と内部から情報を集めてくれていたが……正直、シャルルもレージリア宰相ももうダメかもと諦めかけていた。しかし、結構な怪我をしていても皆生きていてくれた。

 

護衛の数人は相当に痛めつけられたのか数日は治療しないといけないだろうけど生きているのならまだ希望はある。

 

 

それにしても宰相達を見つけた時は驚いた。

 

別の属性での戦いは属性の優位や使い方で圧倒的な格差が生まれるが、同じ属性同士ではまた別の戦い方となる。同じ属性だからこそ手の内がお互いに知られているし、技量や力量の何処かで差が生まれるが……最も顕著に出るのが『領域の取り合い』だ。

 

火や風はプラズマ体と気体だからかすぐに効果を終えるが土は個体でそれが残り続ける。だから土属性の魔法使い同士の決闘ではその領域を先に掌握するのが重要になるのだとか……。

 

強い精霊と契約したボルッソの建物はその土魔法使いが壁の一片までも支配している領域である。別の土の魔法使いがそこで土の魔法を使おうとしても前に力を使った人物の魔力が残っていてやりにくく、穴一つ開けるのも大変だったそうだ。

 

レージリア宰相とエール先生、それにシャルルの護衛たちは天井が勢いよく降ってきてほとんど無力化された。……が、レージリア宰相がその怪力で力で支えてきた。あまりの衝撃で足が埋まった宰相や衝撃で割れた床や壁だけで部隊はほぼ壊滅状態。

 

なんとか生き残ったレージリア宰相たちだがどこにも逃げ場がなかった。ボルッソは土の精霊と契約していて力も強いらしく、その領域になかなか干渉できなくて土の魔法を使える精鋭がやっと穴を貫通させたがそこは海だった。

 

現代のように人工物が漂っていることが多い海ではなかったことが幸いした。宰相の豪華な衣を少しずつ切り裂いて流してくれたので気がつけた。

 

しかし気がつけたは良いものの水魔法は視界まではない。私からすれば穴の中の人たちが敵か味方か分からなかったが……キャップ付き万年筆もどきを中に入れるとエール先生がハンカチに状況を書いてくれてようやく位置がわかった。

 

私も気がつくまでかなり時間がかかったが……小さな穴から少しずつだが食料を届けた。しかし、また宰相……豪華な服を少しずつ流すためとは言えパンツ一丁になってしまっているのは…………名誉のパンツ一丁だと思っておこう。

 

真水は中の水の魔法使いが出せるが、土の魔法使いは出入り口を作るほどの穴を作れなかった。

 

無理やり崖を挟んで海側から出入りできるように穴を開けることも考えたが分厚く頑丈な崖を破壊して脱出できても所在不明のシャルルの身の安全が確保できていない。

 

なのでエール先生には悪いが彼らにはそこで待機してもらって情報を集め、計画を立てて処刑に挑んだ。私もクリータよりもクーリディアスの足止めに集中して攻略にかかっていた。

 

クリータの花嫁作戦の最中にクーリディアスの横やりが来ないように、かつ「これは敵襲だ!」と感づかれないように慎重に「精霊によるお怒り」を演出しないといけなかった。

 

クラルス先生と私は体格が違うが、辺境に私の情報が流れるのに『超絶美人な姫君』という噂も多かったし写真もないから気づかれる可能性は低いと賭けた。クラルス先生だったら諜報活動をしている上、噂通りの美人で、とても賢い。もしも作戦がだめでも全員逃げられるようにすると約束してくれていた。

 

先に宰相達が檻ごと落とされると情報が伝わっていたし下でタイミングを待った。このためだけに自分たちで食べていた魚の内臓や血を集めて水の化け物が檻ごと食べたように見せて海を赤く染めた。

 

後はほとんど無力化しているクーリディアスの軍隊を全員捕まえれば、戦争は起きず、こちらの勝利となる。

 

 

――――だから……だから頑張っている。

 

 

争いは何も産まないとか、話し合いで解決できないことはないとか平和な日本では聞いたことがあるけど……相手は武器を持って襲いかかってくるのである。対応を間違えれば自分が死んでしまうし手加減は出来ない。

 

かと言って全員殺せば良いのかと考えるとそうではない。

 

できる限りの作戦を考え、クーリディアス軍の駐留する海域を凍えさせた。

 

温度を下げているとリヴァイアスが意思を感じ取ってくれたのか私の使っている力以上の災害が発生している。……列島周囲でのみ激しい嵐となっている。より精霊の怒りのように感じてもらえているようで良かったが、やり過ぎ感は否めない。それでもクリータとクーリディアスの連絡員らしき人を完全に止めることは出来なかったが。

 

情報を流すために外に出てきて日に数度槍を振るうアモスさんが可哀想だったが……本人も覚悟があると言ってたしなぁ。

 

 

「んっ……」

 

 

しかし、けっこうきついな。

 

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

先に爺たちが落とされ、自身も吊るされて殺されるかと思ったが……海からフリムが出てきた。

 

フリムが二人になって驚いたが、リヴァイアスの精霊杖を持ってるしこちらが本物か。

 

なぜ海から出てきて真っ白な嫁の衣装なのかは意味不明だが、ちゃんと小さく……頭の毛が元気にビュンビュン動いている。

 

てっきり上から降ってきているフリムが本物かと思ったが……とにかく助けられたことは理解した。

 

俺に片手でしがみついているフリムだが――――様子がおかしい。

 

 

「フリム!信じていたぞ」

 

「…………」

 

「フリム?」

 

「…………ぅ…………ぁ…………」

 

「おい、フリムはどうした?」

 

 

フリムの様子がおかしいが、それに気づいているこちらの兵士は動じていない。

 

生きていることを喜び合うものもいるがここは海の中だ。水に巻き取られて落ちた先には海の中に空洞と船があってすぐに海面は閉じられた。今は船の上にいる。

 

腕の縄を切ってもらってすぐにしがみついているフリムを抱え直す。

 

 

「フリム様!!」

 

「エール、無事だったか」

 

「姫様はあまり動けないにゃー」

 

 

エールもボロボロで近づいてきてフリムの顔を覗き込んでいるがフリムの反応はない。さっきは話せていたはずだが。

 

海猫族の……ニャールルだったか?いや、海猫族は顔が同じに見えるしわからない。

 

 

「どう――」

 

「どういうことですか!?」

 

 

すぐにエールがフリムの眼の前で手を振っているが目は開いているのに関わらずフリムは反応出来ていない。

 

エールがニャールルに詰め寄った。

 

 

「姫様は手探りで海の操作をしてるにゃー、クーリディアスのいるあたりとここの海を姫様が操ってるにゃー」

 

「…………」

「…………」

 

 

いくらなんでも無茶苦茶だ。精霊と縁を持っても人は人のままだ。

 

何百年も生きた賢者であれば天候を操り山だって作るかもしれない。精霊の支配する領域であれば可能なものもいるが……しかしフリムはこんな大規模な魔法は間違いなく初めてのはずだ。しかも、落下する人間一人ずつを水の腕で掴むなんて……負担が大きいのだろう。

 

未だに爺を含めて数人は水の腕に掴まれたままで中途半端に船に降ろしてもらえていない。操作が限界なのだ。

 

 

「だからしっかり抱えておくにゃー!これからクーリディアスの撃滅もするにゃー!!」

 

 

クーリディアスの言葉にピクリと動いたフリム。船が加速し、沖に出ていく。

 

 

「クーリディアスの戦況は?」

 

「皆凍えて動けないにゃー。王様助けても、軍がそのままだったらリヴァイアスは危険にゃ。だから軍の殆どをこのままひっ捕らえるにゃ」

 

「なるほど」

 

「無茶をして……」

 

「……ぅ……」

 

 

エールが目の前にいるのにフリムがほとんど反応しない。

 

俺の救出と同時にクリータ列島のクーリディアス軍の船はすべて奪い取ったし、壁が凍るほどの水で建物ごと凍らせクーリディアス兵はろくに動けない状態らしい。クーリディアスは暖かい国だし、服も防寒着というものがない。しかも薪となるものも島だからほとんどない。

 

兵士の殆どは既に戦闘不能だ。

 

フリムはクリータとクーリディアス、その両方を同時に攻略しないといけなかった。クリータはオベイロス王である俺がいて、クリータにはリヴァイアスを滅ぼせるだけの軍勢がいる。

 

だから抱えたフリムは焦点のあってないまま動けない。魔法に集中しているようだ。この辺りの水だけでもとんでもないのに、離れた島々の軍にまで魔法を使い続けている。

 

 

「爺!無事か?」

 

 

フリムは一人ずつ水の腕から選別して降ろしているが、目の前に爺が運ばれてきた。

 

 

「おぉ、陛下、陛下こそ無事で良かったです。まさか天井全部降ってくるなんてのぉ……お陰で体が固まってしまいましたわ」

 

 

変な格好で固まってる爺、他の皆息はあるようだが怪我したままで動けないでいる。なんでまたパンツ一丁なんだ?

 

怪我人は光る水に漬けられていくが主犯であるボルッソも同じように治すつもりなのか眼の前を運ばれていく。フリムが優しいのか、それとも今は治す相手を選べないでいるのか。

 

 

「くそ、俺様の初夜が、計画が……」

 

「残念だったなボルッソ。暴れるようなら貴様の妻子にまで手をかけねばならん。大人しくしておけ」

 

「くっ……。この首一つでどうにか……」

 

「それはフリムが決めるだろう」

 

 

法に照らし合わせても親族もろとも全員拷問の上に処刑さらし首、貴族院に悪名が刻まれ続け、国中にその悪行が公布されるのが妥当のはずだ。

 

しかし、人の死をいやがるフリムなら助けると思う。俺の処刑で集められたこいつの親族席、子供だけで100人いるとか……フリムが気にしそうだな。

 

とにかく食事に治療だ。檻の中で繋がれた精鋭たちは解放されていくが金属製の鎖を外すのに手こずっている。

 

 

「このまま一度沖に出るにゃー、リヴァイアスよりも安全な場所があるにゃー」

 

「領地よりも安全?」

 

「普通に戦ったらリヴァイアスは負けるにゃー、姫様落とさないようにしっかり抱えておくにゃー」

 

 

俺たちの周りにジュリオンとかいう大きな竜人や無事だった精鋭が取り囲んでいる。この場で討たれてはいけないのは俺とフリムだ。

 

船に用意されていた武具を身にまとって、終わったものから俺の周囲を取り囲んでいく。敵が軍である以上、思いもしない攻撃があるかもしれない。

 

しかし軍を相手にするのに数は少ない。いや、絶対的に足りていない。

 

兵の殆どは吊り天井の衝撃で怪我をしているし、廊下や別の場所にいた者は袋叩きにあっていた。装備は元々使っていたものはボルッソが取り上げて何も残っていない。

 

 

「オベイロスの王よ」

 

「なんだ?」

 

「フレーミス様に無体なことをすればリヴァイアスの者が貴様を殺す。リヴァイアスの誇りにかけてな」

 

 

ジュリオンはフリムに忠誠を誓っているようだが、望むところだ。

 

フリムには信頼できる人が少ないはずだし、むしろそう言ってくれて嬉しく思う。

 

 

「き、貴様!!?」

 

「よい……フリムは良い臣下を持ったものだ――――俺もフリムを娘や妹のように思ってる。その気持ちを常に忘れずにいることだな」

 

「言われるまでもなく」

 

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

 

「アモス殿、折り入って頼みがあるのだが……」

 

「なんでしょう?」

 

「クーリディアスの臣下にならないか?竜はクーリディアスでは信仰されているし、竜人の位は高い。それにアモス殿の武人としての力量も考えれば重宝されるだろう。どうだ?」

 

「ありがたいお誘いなのですが少し考えさせては貰えないでしょうか?」

 

「なぜだ?待遇は王子として保証するが……」

 

「先代リヴァイアスに仕えてきて、族長として皆のためにと戦ってきましたが……新たな領主と政治によって姉の手でここに流されてしまいました」

 

「なら……!」

 

「主がほしいのは確かです。しかし、今は見極める時がほしいのです」

 

「――――わかった。主として認められるよう振る舞ってみよう。待遇は保証する」

 

「そのお言葉、ありがたく」

 

「なぁに、主としての器を見せつけねば臣下はついてこないというもの!名臣は主を選ぶものだ!」

 

「ははは、そう言っていただけるのは嬉しいものですな。名臣になれるかどうかはさておき」

 

「なれるさ!アモス殿ならな!返事はいつだって良いからな!!」

 




カクホッ( *▓-▓ ))`-' )フリムッ!!?
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