水魔法ぐらいしか取り柄がないけど現代知識があれば充分だよね? 作:mono-zo
光の魔法は闇の魔法と同じくレアな魔法だ。使い手も少なく、現状この領地で使える人はいない。
卵は見てみると1メートルほどある大きなもので……触れてもなにか感じるものではない。鶏卵の実験みたいに懐中電灯の光を当てればわかることもあるんじゃないかと思ったがそういうわけにも行かなかった。
実は有精卵と無精卵がなにかわかっていなかったシャルルに卵について教える。
「生まれる卵と生まれない卵があるわけだな?」
「そんな感じです。わかってるのかと思ってました」
「あの場ではわからなくてもわからんと言えるわけがないだろうが」
王様ともなればそういうものなのだろうか?
王都では卵は業者に頼めばいくらでも手に入ったし、卵を割って雛が出てくるということは一度もなかったから管理もとてもされていたはずだ。
私も中に何がどうなっているのか確認する方法は2つしか方法を知らない……『音』そして『光』だ。
触れてみてもピクリとも動かないし、聴診器みたいなものがあれば中の音を聞けると思ったがそんな便利な道具はない。そして考えたのが光で卵を照らすことで中を透過できればわかるかもしれない……が、太陽光は駄目だよね。ゆで卵か焼き卵になると思う。
太陽の光でなにか焼くというのは昔からよくある実験だ。虫眼鏡で黒く塗った紙を焼くなんて昔からずっとある……。けど今欲しいのは卵に害が出ない程度の熱の光だ。
そんなわけで超魔力水、頑張って照らしてみたけどいまいちである。卵を透過するほどビカビカ強く光るわけでもないので鏡を集めてもらう。しかし多くの鏡は金属を磨いた鏡が主だったので研磨してもらう必要があった。
火を使える魔法使いがいるからかガラスを利用した鏡もあるにはあるが高価で数が少ない。
研磨と設置だけでも私よりも大きな卵を照らすには不十分だ。というか卵の殻の厚み次第では出来ないかもしれない。準備してもらっている間に卵以外の問題についてシャルルに聞く。
戦争なんていう大問題だから……聞く人によって情報が全然違う。論功行賞を気にしてか戦場での活躍を言ってくる人もいるし、私に反抗的だった三馬鹿と呼ばれていた3人の活躍や船の損失を伝えてくる人もいる。他にも「宰相が壁に穴を開けて顔をのぞかせ、しかも攻撃が全く効いていなかったと泣き叫ぶものが数名いる」とか……可哀想だけどそれは多分報告するべきことじゃない。可哀想だけれども。
私にとって必要な情報が何かをわかっているキングシャルルの報告が最も役に立つ。……便利に使ってるわけじゃないが、大きな観点での情報って本当に大切。
敵の貴族たちの殆どはドサクサに紛れてドラゴンと船で逃亡、15万ほどいた兵士は全員隷属に成功。一部の将校や交渉に使える人材、それと人手が王都でもほしい部分があるからと5万ほど王都に連れて既に向かっている。
宰相とクラルス先生によって既に知識層や鍛冶などの技能のある人間、貴族の中でも逃げ遅れたもの、そして凶悪犯罪を起こして奴隷になって戦争に参加していたものなどを分けて処理してくれている。
知識層や技能のある人間は半数ほど王都に、半数リヴァイアスに残して情報を聞き出す。ネットもない世界で他国の情報は未知のものも多いから必須である。
凶悪犯罪者は重労働に当てるが内部を調査して冤罪の人もいると思うから選別してもらおう。数の多すぎる元兵士たちは食料調達のためにも獣を狩ったり畑の作成を急ピッチで行わせている。が、すぐに成果が出るものばかりではないので近隣の領地にも緊急で食料を集めているそうな。遠方からも時間はかかるが続々と届くことになっている……素晴らしきかな王様の権力。
王都に向かう隷属済みの兵士5万はシャルルの配下に抑えられる人数を考えた上での5万であり、ライアーム派閥との争いにならないためにも必要な人材らしい。……食料事情を考えるともっと連れて行ってほしくもあるが政治的問題もあると言われれば仕方がない。クーリディアスが再び攻めてきた場合には武器を持たせて前線に揃えれば……それで戦争自体をやめてくれれば良いのだが。
食料は亜人たちも含めて総動員で集めている。海で巨大な魔獣を倒してもりもり食べているようだが……リヴァイアス流行りのカレー風味はクーリディアスの人にも好評のようだ。
捕まえた騎獣やワイバーンは素直なものは狩りに使って、言うことを聞かない者は檻に閉じ込めている。
私が寝ている間にも多くの問題は解決したそうだけどまだまだ手がつけられていない事案も多い。
「それと、だな……決めなきゃいけない問題もある。これはフリムが決めればいい話なんだが」
「なんです?」
「クリータのことだ」
そう言えば忘れていた。少し聞いて――――――気分は最悪である。
とは言え無視できない問題なので、その大元に会いに行く。
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「うぇーん、うぇーん」
「頭下げればいいの?こう?」
「おなかすいたー」
「しっ!静かにするんだ!」
「どうか、どうか私達を許してください!」
「うわぁ…………」
シャルル処刑は私が考えたシャルル脱出のための作戦だった。だが、クリータはそれよりも先にシャルルを殺しても良いように動いていた。
普通に王様に向かってなにかするのは完全にアウトだ。族滅、根切り、一族郎党皆殺し……うん、それほどのことをしたのはクリータの当主であるボルッソだ。
自国の王への殺人未遂に反逆に国家転覆、情報漏洩……多分どれか一つでも重罪に当てはまる。
だから今回の場合、ここの法律に当てはめるならボルッソにボルッソの妻、ボルッソの親族……そして子供、その全てが殺されることとなる。
「とりあえず、子供の泣き声で聞こえないのでメディッサさんとボルッソだけついてくるように、事情を聞かせてください」
「はい」
計画が失敗した彼女たちにできる選択肢は3つ。
ひとつ、親族の権力者に頼ること。これは無理、ただでさえ反乱や国家転覆の罪になるのに手助けすればそれが罪に問われて助けようとした人の首が落ちるから親族は助けようがない、むしろ殺される。
次に全員逃亡、これが普通は正しい選択肢だ。子供も100人以上いるし、何人かは逃げ切れるかもしれない。しかしそれは国家を相手に逃げるということを意味していて……過酷だ。シャルルの派閥の人間はシャルルを殺そうとした人間の親族を許す気は絶対ないし名誉にかけて殺そうとする。そして他の貴族も続いて殺しにかかる。更にライアーム派閥もメディッサの親族はライアーム派閥の重鎮であるから関与を疑われることが考えられるからむしろ積極的に生き残りを殺しにかかるだろう……うまく生き残れても片手で数えられるかという程度になるはずだ。
最後にありえない選択肢――降伏だ。普通に考えてどう謝ろうとも処刑は免れない。潔いとは思うがむしろ集まって処刑に来てくれて面倒が無くなる……だけのはずだ。
「子供の命だけは、どうか!どうか!!」
「と言ってますが?」
「ふん、俺を処刑しようとしたくせに自分たちは生きたいのか?」
「勿論物心つかぬものだけでも!この身はライアームの重臣、ゴルンドの縁もあります!ゴルンド家に罪を被せてもいいですし派閥の懐柔に使うなど御身の命じるままに働いた後に死にましょう!!ですから!!!」
命乞いする第一夫人の人に、冷たく突き放すシャルル。
シャルルは私に対処を任せると言ったが、殺すのなら自分の命令で行うと言ってくれた。
「俺や宰相を殺そうとしただけでも一族郎党処刑が当たり前だ。子供の命を助ける?それも百を超える子供を?俺を殺そうとしたボルッソの百の子供を?……ははは!そんなことをすれば俺は甘く愚かだと笑われることになるではないか!!」
「このままではライアームを刺激して戦争になりかねません!私達のことは使い潰した後に病死として構いません!ですから!!」
「うぅー!うぅうー!!!??」
メディッサさんと猿ぐつわをつけられたままのボルッソ。――――ドラゴンや兵の問題もあるがこれはこれできつい。
子供のための命乞いをする親というのは見てられない。私に気を使っているとわかるシャルルを見るのもだ。
「シャルル、なんとかなりませんか?」
「……なに?」
不機嫌そうにシャルルに言われる。
シャルルからしたら完璧に間違いなく加害者と被害者だし仕方ない。
「フレーミス様!!おぉなんと慈悲深い!」
「此奴らは大罪人だぞ?だと言うのに何を言うのか?」
「メディッサさんは黙っていてください。私はこの人たちではなくこの人たちの子どもたちを殺すのはどうかと思います。親のことで言葉も喋れない子供が死ぬというのは……」
「しかしだな」
シャルルの顔が渋い。これは私が無理を言っているのは自分でもわかっている。
私にも立場や守るべきものがあるから言うべきではないだろう。だけど、私の倫理観がもっと妥協点を探せ、考えろと……言っている気がする。
「ではこう考えてはいかがでしょう?ボルッソは愚かな政治を行っていましたがその土魔法で領地の経済を回していました。そんな土の使い手と、その子供100人を隷属させることで国の生産力が大きく向上すると」
「……まて、子供全員に魔法の才能があるのか?」
「恐るべきことに……」
「はい!おそらく岩と茨の精霊様のお陰か私共の子供は皆土魔法の才能があります!お好きにお使いくださいませ!!ですからどうか命だけは!!!」
「…………」
黙っているように言っても黙らないメディッサさん。
頭を下げるメディッサさんとボルッソは子供のために犠牲になろうと頭を床にこすりつけている。
クリータを調べるとこの話は有名だった。平民だろうと奴隷だろうとボルッソの子供は全員が土の魔法が使える。
魔法の強さはある程度遺伝するようだが全員がその才能を継げるわけではない。王都にいるドゥラッゲン分家当主ダワシ・ドゥラッゲンは土の魔法使いとしてはものすごく強いそうだがバーサル様は普通ぐらいらしいし、親分さんは土の魔法の才能はなかったそうだ。
だと言うのにボルッソの息子は土魔法が使えるのが当たり前と領地を玩具にしていると報告にある。
クリータ領地の全ての村に複数の子供がいるし、何をどうすれば……数えるのも難しいほどの数の子供ができるのか。貴族は跡継ぎのためには子供が多い方がいいとは習ったがそれにしたって多すぎる。
私は子供を刑に処すのは嫌だし、これまでの経験から『殺さなくてもいい理由』も探してしまう。ギレーネのように慈悲をかけても問題は起こりうるが……これを理由に「出来れば」の範囲で私も助命したいと思う。
「私は親の罪で子供が害されるのはいやです」
「しかし親を殺せば子はその恨みを燃やして杖を向けてくるぞ?」
「そうかもしれません。でも、なら杖を向けさせないだけの処置をできるだけ取りませんか?根切りはあまりにも……」
「……子にボルッソのように力があるとは思えんがその数はたしかに力だな。伯父上にクーリディアス、諸外国の動向を考えると土魔法使いはいればいるほど良いが。……しかし、王と国を裏切っておいてそれでは示しがつかんぞ?」
「そう、ですね」
困ったように言うシャルルにそれ以上何も言えなかった。
そもそも、こんな申し出をする私の方が間違っているのはわかっている。
これ以上言うのなら。私の立場が、私を信じてくれる人のためにならないかもしれない。
「……まぁいい、今回の勝者はフリムだ。俺の命を救った。クーリディアスからの侵攻を防いだ。宰相を、兵を、民を守った。竜王と呼ばれるような災害までも打ち倒してみせた。――――俺はフリムを尊重して根切りはやめておくこととしよう」
「おぉ陛下!寛大な沙汰!ありがとうございます!!」
「勘違いするな。フリムが優しいだけで俺はお前たちなぞ殺しておいたほうが良いと考えている。俺はその選択が正しいと言えるように出来得る限りの縛りを行うこととする。……せいぜいフリムに尽くすことだな」
「ありがとうございます!夫共々身命を尽くします!!」
「ふん」
子供が100人以上、赤ちゃんや胎児まで含めて処刑することだけは避けられそうだ。
シャルルに抱かれて部屋を出る。
「シャルル」
「なんだ?」
少しムスッとしたしたシャルルに声をかける。
情報によればシャルルはボルッソの罠にかかったそうだし、ボルッソに思うところがあるのだろう。
ならこれだけは今伝えないといけない。
「ありがとうございます」
「気にするな。殺さずに済むようなら俺だってそうしたいからな……ただ統治をする上でどうしても殺さないといけない、殺した方が良い者がいることも覚えておくんだ」
「はい、私も甘いとはわかっているんですが」
「そうだな、だがそれでいい。本来子供が責任を考えること自体間違ってるはずなのだがな……俺の方こそ助けてくれてありがとうな」
頭を撫でられるが以前のように荒っぽくなく優しげだ。
シャルルはどうしていたのか、精霊のルーラがなにかやったという話を聞いて……この青年が、シャルルが死なずに済んでよかったとしみじみと思った。
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「女性とは知りませんでした」
「アモス殿、頭を上げてください」
「しかし、女性を辱めておいて謝罪もなしでは……」
「責任、とってくれるのですよね?」
「そ、そうですな。では掟通りこの指2本を送りましょう」
「いらない!そうじゃない!!」
「……では、そういう意味ですか?自分たちは敵同士ですが」
「まぁ、そういう意味だね。僕に言わせるなんてアモス殿は存外意地悪なようだ」
「そ、そんな気は!?」
「まぁ冗談だ。こんな男とも呼ばれる貧相な体だ。女と見られんのはわかっている。が――」
「が?」
「これから覚悟しておくと良い。僕は敵だと言うのに、君に恋い焦がれてしまっている……いつか振り向かせてみるさ」
何だこの主人公、もっとドスッ!グリリリギュイイイインドグチャア!!しないの?
これがモゴー!モゴモゴモゴー!!(´・×・`)