水魔法ぐらいしか取り柄がないけど現代知識があれば充分だよね?   作:mono-zo

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第161話 ミニフリム……。

 

「そっちの人はひとまず貴賓室に監視つけて軟禁で」

 

「領主様、ご温情痛み入ります……俺が勝手に馬鹿な真似をしただけです。お望みとあらばこの首を差し出しましょう。主の命ではありません」

 

「……戦争は急なことだったので仕方がないです。そちらの主とは話し合っての解決をしましょう。今は戦時、汚名を晴らしたいのなら杖働きの機会があるかもしれません」

 

「はっ!」

 

 

彼らや周辺の領地にもっと早くに知らせていればと「もしもあぁしていれば」というものを考えてしまうが仕方がない。クーリディアスの攻略でクリータが裏切った以上、周りの領地も裏切っている可能性もあったし知らせて情報を流されるのも怖かったので一切伝えていなかった。

 

謝罪を求めてきた青年は軽くアウトだが今後の関係もある。もしかしたら棒とかムチで数回打つぐらいならありえるが真っ青になってプルプルしていて……放っておけば切腹でもしてしまいそうなほどだ。

 

戦争中に余計なことをしたのだから仕方がない。

 

それよりももう一人だ。

 

絶対に知り合いではないし覚えはないが……。

 

 

「それで貴方は?」

 

「お久しぶりです。とはいっても会話もしたことはないのですが覚えていませんか?」

 

「……全く?」

 

「あれ?兄弟から聞いてませんか?」

 

 

なんだろう、新手の詐欺だろうか?ここで知ってる名前を出せば「その人の知り合いで昔顔を合わせたことがある!」とか言いだしかねな……いや、嫌な予感がした。

 

ちらりとエール先生を見てエール先生も首を振った。

 

焦げ茶の髪の色、私が知らなくて、私を知っている人……エール先生が知らない人。

 

 

「……ご兄弟の名前は?」

 

「レルケフにアレイ、コルコトにゴッフにミュラードにパキス、もしかしたら他にも増えてるかもしれま――――」

 

「確保ぉ!!」

 

 

エール先生が一瞬で動いて後ろを取って頭を絨毯に叩きつけた。

 

遅れて何も知らないだろうジュリオンが剣を突きつけた。

 

 

「あ、あれ?お、おかしいなぁ」

 

「トルニー!貴様領主様の家臣の縁者だって話で口を利いてくれるんじゃなかったのか!」

「紹介料返せ!銀貨13枚だぞ!?」

「は?俺には金貨3枚って言ったじゃないか??!」

「テメーを信頼した俺が馬鹿だった!!?」

 

「一旦拘束で、レルケフについて聞いてください」

 

 

他にも捕まっていた商人らしき集団からもトルニーは文句を言われている。彼らも一緒に捕縛だ。猿ぐつわで口も聞けなくなったトルニー含む商人集団はすぐに連れて行かれた。

 

完璧に裏切ったレルケフの兄弟である。調べる必要がある。

 

問題が多いのに、これ以上問題を増やさないでもらいたい。……尋問は事情を知っているエール先生に任せる。

 

頭を切り替えて列で順番待ちしていた貴族や従者には食料などの礼をし、クーリディアスからの攻撃について伝えた。特に戦争ではシャルルの大活躍を大いに伝えて『辺境も見捨てないシャルルは素晴らしい』と布教しておいた。

 

クーリディアスが再び襲ってくるとすればおそらく王子もいて港もあって物資の揃っているリヴァイアスとなるため、そのつもりでいてほしいと伝えた。そのための物資や戦力だと伝えると全面的な協力を申し出てくれた。

 

食料は少々割高でも買うが中抜きや高騰を狙うようなら許さないともクラルス先生経由で脅しをしてもらう。

 

謁見待ちしてた人は似た要件だったのでまとめて対処できたし次の作業をする。

 

浜辺に行けば兵士や奴隷がてんやわんやと働いているし、漁をしている人が大量に食料をとってきてくれているので大げさに杖を振って過冷却水を大量に出して魚を冷やしてもらう。

 

浜辺では常に塩を生産していて蒸し暑いし、小屋数件分の氷を作っておけばましになるだろう。王都に食料を運ぶにしても氷はいくらあっても良い。……それに領中から人が集まっていることもあって子供の私を初めて見た人は「本当に領主か」「お飾りなのではないか」と侮ってる空気も感じたので力を見せておく。

 

それにしてもトルニーは親分さん、ドゥッガの息子の一人か……。

 

レルケフは裏切って行方不明だし「ミュラード」多分ミュードはモーモスの侍従としてつけていた。パキスは学校で更生中。

 

残りの兄弟はトルニー、アレイ、コルコト、ゴッフ。トルニーは帰ってきたら仕事を手伝わせるということをドゥッガは言っていたはず。アレイとコルコトはチンピラ兼任商人だ。ゴッフというのは全くわからない。

 

一応ドゥッガに見込みがあるかもしれないと言われていたトルニーだが、もしもレルケフを匿っていないとしてもタイミングが悪い。

 

レルケフ失踪後にミュードとパキス以外の兄弟が匿っている可能性があった。アレイとコルコトは王都でチンピラ兼任で賭場で商売をやっていて所在は明らかだったため、候補に上がっていたのがゴッフとトルニーの二人だった。

 

もちろん逃亡してライアーム派と合流した可能性はあったがゴッフとトルニーはレルケフを隠している可能性は大いにあった。名前を微かにしか覚えてなかったけど……顔写真ほしい。

 

人の名前を覚えるのがとても難しい。コピー機はあっても黒の陰影だけで表現されるし元は簡易的な絵では当てにならない。貴族の無駄に長い名前と顔が一致しない。写真はないが代わりに姿絵や石像もある人もいるけど美化されまくっていて現代の写真の加工を超えてもはや別人の人もいる。…………画家もうまく描かないと不興を買うことになるのだから美化して当然なのかもしれないな。

 

 

「撤去で、これはクラルス先生で私じゃないです」

 

「し、失礼しました!!?」

 

 

浜辺の簡易小屋、いや、もはやプチサイズの神殿となったその前におそらく私の石像が出来上がっている。しかも何体も。

 

ボルッソの子どもたちは自分の立場を理解して助け合おうとしている。私への点数稼ぎなのか、土魔法使いにとって石像は作るのが簡単なのか、私らしき石像も出来ていた。

 

だが花嫁作戦でクリータに行っていたクラルス先生と明らかに間違えている像の方が多い。

 

彼らの制作物は監督の人に渡され、監督の人が色んなところに設置していると……ちゃんと私のものもあるが……え?「もっといっぱい作ります」いらないですし防衛設備作っていてください。

 

 

「<水よ。私を形作れ>」

 

 

やってくる大貴族や大商人の対応はそこそこ出来たし、後はテロスやクラルス先生に任せることにした。次々やってきてきりがないし別の仕事をしていれば仕方ないかで済ませるだろう。

 

それにこの仕事は私にしか出来ない。

 

この領地や海域の水は私が操作できる。スマホや電話があればと思ったから――――作った。

 

 

「ジュリオン、記録をお願いします――――北、クリータ、反乱の兆しなし、3箇所で確認。西、隷属兵士の移動で多少、の、問題あり、南、大きな問題、なし、東………………船団を確認、ただし商船…………海中の竜王の角を発見、輸送に難あり。………道を作るので陸で暇な人に取りに行ってもらってください<海よ、割れろ>」

 

 

私の操る水は操作時に触覚に似たような感覚がある。

 

そこで私のミニサイズを何体も作り出した。元々は水球の操作の練習で「分身の術」とかアホなことを考えて魔法の練習で作っていただけだったのだが……しかし、これ、リヴァイアスでは「広範囲」に作り出すことができて「触れられた感覚」が私に伝わるのなら「情報の伝達」に使えるんじゃないか……と、賢いフリムちゃんは閃いてしまった。

 

そもそもスマホがなくて『情報の伝達速度』に不便を感じていた。倉庫の氷の残量や収支報告書、それに重要な情報を誰か人が持ってこなくてはならない。しかも運ぶ人には監視の目もあるらしくて危険がつきまとう。

 

現代では世界の裏側の情報もすぐに、しかも無料で手に入る世の中だった。正確にはサーバーなどもあって金銭がどこかで発生しているはずだから無料の情報ではないのだろうが利用者感覚では基本的に電気代と通信料と本体代金程度、しかしこの世界ではたかが手紙のひとつを送るのに命をかけて貰う必要がある。

 

だから常々情報の精度や伝達速度について考えてはいたからリヴァイアスに舐められて魔法の使用範囲が増幅されて活用法がすぐに思いついた。

 

ドラゴンに追われている最中にも、海底に連れてきていたリヴァイアス軍の本陣に『ミニフリムちゃんとドラゴンを作って追われている』と人形劇のように見せて私達が本陣に逃げ込むのに方向を指示し、バリスタの設置と陣形を整えてもらっていた。いきなり巨大なドラゴンが出てきて逃げ場がなかったら普通に大混乱だったはずだろう。ちゃんと対応できたのこれが理由だ。

 

ミニフリムちゃんは服のイメージが出来ずに裸でなんか恥ずかしかったのでデフォルメ化してプリチーな手のひらサイズで作って妖精っぽくしている。細部まで拘る必要もないし私と分かれば良いのだ。

 

ただ難点も多い。スマホのように相手が自由に持ち運んで見れるものではないし、大体の位置にしか出現させられない。こちらは視覚がないから触られたということしか理解できない。

 

初めは私が予め決めていた符号で荒いものだった。状況を予想してどうなったかを現地の兵士に判断してもらって「ミニフリムちゃんの右手に触れてイエス、左手でノー、頭でわからない」の三択で情報が伝わっていた。

 

今ではミニフリムちゃんにスマホ、いや、板を持たせて文字を浮かび上がらせてマルバツ三角のマークを表記しているので触れてもらっている。まだ手や頭を触ってくるが慣れてないのだろうしマークの意味も理解していない人もいるのだから許そう。

 

水で作ったスマホだけでいいと思うのだがそうすると「誰が出しているのかわからなくなる」という陳情によっておまけでミニフリムちゃんはつけている。

 

試行錯誤次第ではもっとうまくできると思う。

 

「こっくりさん」や「エンジェルさん」のように文字表記にイエスやノーがあれば向こうから言いたいことが伝えられるかもしれないが今はそこまで細かいことは出来ない、そもそも識字率も低いから無理である。

 

慣れない魔法はなかなか難しく、負担も大きいが今の状況でこれほど便利なものはないだろう。決められた場所に人を配置し、ミニフリムが出現したらリアルタイムで情報を返してもらっているのは人員の無駄遣いのような気もするが今は人手は有り余っているしね。

 

 

「うまくドラゴンの角までの海が割れたので騎獣を連れて行って回収してください」

 

「はい、すぐに手配します」

 

「続いて、工事についてです。アモスは応答なし、北、領境の砦、解体完了、道路整備……終わった?……もう?………終わったようです。西、撤退戦向けの壁及び砦、触られ方が良く分からない。次、南、橋の修復………」

 

 




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