水魔法ぐらいしか取り柄がないけど現代知識があれば充分だよね? 作:mono-zo
ネジやドリル、旋盤と言った金属で作られたそれらは人類の文明の発達に大いに貢献した。ドリルは同じ大きさで穴を開け、ボルトとナットは物を接合した。旋盤は硬い金属をあっという間に加工し、家を、車を、兵器を……文明を一段上に進歩させた。
最先端の技術レベルではミリどころかナノレベルでの精度で物を作っていた。現代の技術は「まるで魔法のようだ」と思ったことはよくあった。
発展と破壊を繰り返し文明を成長させた工作工具たち。その中でも最も大事な中品部品が『ベアリング』だ。アルキメデスのスクリューの芯の部分と馬車、それと輸送用のトロッコあたりにひとまず使いたい。
経済というものは人類の歴史を知れる側面があると言っても差し支えないだろう。
ベアリングは金属が主だが、セラミック、陶器製のものもあったはずだ。たしか飛行機のタービンも金属製では変形してしまうから熱に強いセラミックが注目されていたというニュースがあったから同じように利点があるのだと思う。
耐久実験もしていないがベアリングを使った旋盤を作ってシャルルに送れば良いのではないかと閃いた。まだまだ思案の段階だが。
政治的にも、お礼としても、子供たちの地位を安定させるのにも役立つはず。だけど色々とうーんと悩まざるを得ない。そもそもどういうものなのかを知ってはいるがどう使われていたのか細かくは知らないのだからまだまだとらぬ狸の皮算用である。
あまりにも異質な存在は「出る杭は打たれる」という言葉もある。
クラルス先生はもう少し配慮するように心配してくれた。それは私への優しさだとは思うがこれでも配慮したつもりだ。しかし、こうも思う――――間違った場所に建設してしまったとしても鉄筋コンクリート20階建てビルであればたやすく撤去されることはない……と。
というか自重したつもりでこれなのだが……一般の貴族から見れば私は小さく打ちでた釘か、それとも転びそうな場所に打たれた中途半端な杭なのか。
「むぅ」
「どうかしましたか?鏡に向かって」
鏡に向かって真正面、斜め、肘付き、杖を掲げる……いろんなポーズを取ってみるがいまいちうまくいかない。
いつの間にか部屋にいたエール先生には奇行に見えたのだろうか?
「むぅ……威厳のある人に見られるって難しいですね」
「フリム様にはまだ早いです」
「むぅぅ」
よく「人は見かけで判断してはいけない」というが「見かけは重要な判断基準である」とも相反するものも教わる。これはどちらも正しくもあり間違ってもいる側面がある。
一見してまともそうな人でも危険なことはある。逆に危険そうな人でもまともなことはある。
「身なりの良い老人」と「タンクトップに金のネックレスをジャラジャラ鳴らすゴリマッチョ」かでは明らかに危険度が違うと思う。もしかしたら老人はヤクザの偉い人で前科持ちかもしれないしゴリマッチョは心優しいスポーツマンかもしれない。
……しかし、もしも彼らが酔っ払っていたとしてどちらが危ないか?ゴリマッチョがいきなり腕を振り回せば私は一撃で死んでしまうかもしれない。老人ならまだマシかもしれない。
私は人の見かけは大事だと思う。その人がどんな中身かは分からないにしてもまずは見かけを判断材料とし、中身は実際に話してみてからだ……話してみるとその人がヤバイと思うこともあるが。
魔法のない日本とは安全の基準があまりにも違う。この世界では身長や武装だけで人を判断するものではない。
魔法というとんでもパワーを誰しもが使える可能性がある。強い魔法を使えるか髪や服装である程度推測するしか無い。
だから私は魔法を使えるという意味では侮られることはない。この世界では上等な服を着るだけでもいきなり土下座されることもあるし服装の面では私は上等な人間に見えると思う。
だが、年齢だ。威厳と経験が足りていない。
大人の感性を持っているのに子供の体になって、よりそう見られていると実感する。
お医者様でも「青年の医者」と「老人の医者」では医者としての経験値や能力が同じでも老人の医者の方が経験を積んでそうだし安心できると判断すると思う。
他領から来た商人や貴族は私を見定めるような目でジロジロ見てくる。
フリムちゃんは魔法の力はあるとはいっても幼女である。しかも、シャルルによって擁立された経緯から「お飾り」や「神輿」として見られることもある。リヴァイアス周辺の軍をまとめるのに「幼女がトップである」というのは不安も残るのだろう。
報告書を見ると「私の婿をこちらから送るから軍権は任せてくれ」という意味不明な手紙が来ている。何故に私の婿ができれば軍権をその人に任せることになるのだろうか?なんとなくは分かるが理解したくない。報告書に額縁付きの絵、お見合い写真のようなものがあるのだが立派なヒゲで……どう見ても年齢差がおかしい。
私に威厳があればこういうこともなくなるのだろうか?もっと筋肉が付けば侮られないだろうか?
直接求婚してくる輩もいるがクラルス先生が容赦なく蹴りを入れていた。何代にも渡ってオベイロスに仕えてきた「レージリア家」であるので、いざとなったらどうとでもできるのだと思う。辺境の木っ端貴族では相手にならない。
「ところでトルニーはどうでした?」
「本人はレルケフとは仲が良くないと主張しています。今は人をやって彼の商団を調べさせているところです」
レルケフとトルニーは母親が別でほぼ同時に生まれたそうだ。
レルケフはムキムキマッチョでトルニーは生まれつき体が良くない。力も強いレルケフは自分こそがドゥッガの後継ぎだと思っていて、トルニーは跡継ぎになる気もなく商人としてオベイロス国の内外で行商をしていて王都にはたまに寄る程度。
ドゥッガが大貴族の筆頭家臣、しかも士爵ではなく男爵になった。この情報を彼は知っていたが「戻ったらレルケフに殺される」と考えて王都に戻っていなかった。私のことは商売で王都に帰ってきたときに賭場で見たことがある程度だったそうな。
彼はオベイロス南部から東部への移動中『王命』という特需が急に湧き上がった。
元々リヴァイアスはオベイロスでも随一の交易都市と言う側面がある。大きく海を囲んだ馬鹿げた大きさの壁があることで船が嵐で痛むということもない。最近まで精霊によって人は入れなかったが、入れるようになれば商機はあるはずだ。
新たな領主はなんと自分の父親が筆頭家臣のフレーミス様。縁もある。
商人たちにとって交易都市のトップとの縁は垂涎である。しかも伯爵、上級貴族だ。トルニーに支払う口利きの金など今後の儲けから考えればはした金だ。
トルニーは周りの商人から紹介料を巻き上げた。断れば危険だし、うまくいくかはリヴァイアス次第だけどどうとでも出来る自信もあった。
トルニーは金が目的というわけではなく金を貰うことで商人たちと距離が近くなり、情報を得られるから私にとってはそちらが重要だろうと踏んだ。しかもリヴァイアスにレルケフがいれば口利きに必要なトルニーの身は商人たちにとって必要なのでレルケフから護ってもらえる。
誤算なのはレルケフが既に裏切っていて、その情報が伝わっていなかったことだ。結果トルニーは拘束されてしまった。
トルニーは彼ら商人や貴族の情報や家族構成、主要取扱品、商圏、取引量、取引先などをまとめて手記にしていたし、私の役に立つことを考えていたというのは間違っていないように思う。
更に可哀想だったのは彼らは領都への橋が領主不在の間に自然災害で落ちていてリヴァイアスの重要施設に迷い込んだ。馬車が移動できる道がなくて他の商団や貴族の集団についていった結果迷った。
この国の交通情報は「カーナビで数分前からの起きている渋滞の情報が見れる」なんてことはもちろんなく、そもそも地図がない。道の状態すらまともかどうかもわからない。結果として荷物や商隊の人の大部分はダンジョンのある砦にたどり着いた。貴族や商人の偉い人だけベスさんによって連れてこられた。
彼はほぼ白だと思われるが彼が嘘を言っていて、彼の商団にレルケフが隠れている可能性もある。だから空を飛べるアモスたちが商団を調べに行っている。
――――たった数センチの道路の割れでも補修されていた現代。歩道がカラフルに敷き詰められて安心安全に歩けていた現代…………橋が落ちて年単位で放置されていたとか食料供給に難アリとか……………………日本ではありえない事態に嘆きそうである。
しかも今は開発と整備を「指示する側」というのも―――――頭が痛い。
コメント数が増えても僕に見えてないものがあるのでシステム上僕に見えないか、処理に時間がかかってるとかかもです。僕からは一つも消してないですが……なにか押せば表示されるのかな(;^ω^)コンワク