水魔法ぐらいしか取り柄がないけど現代知識があれば充分だよね? 作:mono-zo
「ご、ご領主様……?」
「はい。冷めないうちに食べてみてくださいねー、試作品ですけど」
「「「えええぇぇぇぇ!!!!????」」」
厨房の人たちを驚かしてしまうことになったが結果としては満足できた。
「フレーミス様、ちょっとお話が……」
部屋を抜け出したことをジュリオンに少し注意されたが満足だ。
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一度やってみたかったと言うかやる必要があった。社長が自分のお店や店舗にバイトに行くやつ。
私は料理を運びながら「新しい領主様についてどう思いますか?」と聞いてみた。
大精霊リヴァイアスの力で領主が決まるとは言っても人には感情がある。会社で社長が社長室に社員を呼んで「俺のことをどう思う?」なんて聞いてもなかなか素直な意見は聞けないと思う。
「リヴァイアサンが決めたのだから領主だ」
「でも人族でしょ?仲間を売らなかったら良いんだけど」
「私は見たことあるけどちっこかったよ!」
「頼りなさそうだった」
見たことがあると言われ、三角巾とマスクを少ししっかりつけ直す。アホ毛の動きで三角巾がずれる。
海猫族とは違って彼らの大半は普通の人と変わらない体格の猫科の亜人に見える。
この砦の人間はまだ翻訳スープを飲んでないのかニャーニャーがるると話しているが私には意味がちゃんと分かる。
「どんな領主様でも俺達にゃ関係ねぇよ」
「というと?」
「あん?新入りか?まぁ人事もしまくってるしな……ここは迷宮があるから頭数が必要だ。それはわかるか?」
「なんとなく」
「ここは動ける怪我人ばっか集めてる砦だからな。動けるやつは別のとこに里長が行くように言ってきてるんだわ。それとお前らみたいなちっこい子もな」
「なるほど……」
領民総動員を実行したのは私だ。子供から老人まで出来得る限りの人を備えるように指示した。
クーリディアスの兵力が完全にはわからなかったし、負けた場合でも総動員令を出すことによって「領民の意識」が戦争に向くから何が起きても覚悟は出来るだろうし、逃亡の時間や準備ができると思ったのだ。
総動員とはいっても全員最前線に行ったわけではない。領都をおじいちゃんやおばあちゃん、おばちゃんに護ってもらって領境や重要施設にまだ戦える人を集中して配置。村々などを遊んでいる子供には農業や村の産業をできるだけしてもらって不審者がいないか近くを哨戒をしてもらって……ん?来る途中の子どもたちはそういうことだったのかな?
「子供なのに悪いな、簡単な仕事しかさせないからゆっくりしていくと良い」
「そうだな、ここは迷宮があるから外から攻めてきてもそうそう戦いにはならんからね」
「安心しておくと良い」
ポンポンと頭を撫でられた。
ここも人材不足か。……しばらく聞いてみると指示通り動ける人は領都や領境に向かい、ここでは迷宮に入るか溢れて出てくる魔物を刈り取る仕事をしているがいつもの半分以下で行っていて人員は最低限。普段は歩けても少し戦闘も厳しいかなという負傷者たちを中心としてここの砦は回っている。
聞いていくとここの周囲は害獣も多いが向かってくるため「追いかけ回す必要もないしまだ戦いやすい」とか「肉がいっぱい来るからここは人気」だとか「迷宮から偶に面白いものが出てくるから土産にちょうどいい」とか……いろんなことが聞ける。
私がどこかの村から来たお手伝いの一人だとでも思っているのかな?親身に話してくれる彼も耳が半分無い。すぐにでも治してあげたいが明日になれば領主である私が来たということは知れ渡るだろうしその前に現地調査をしたい。
ちらりと壁際を見ると食材が袋に積まれている。
「食材が余ってるのはどうしてですか?」
「あー、商人共が荷物を運ぶのに迷ってこんな砦まで来ちまってなぁ。都にとにかく食料を運ぶってのに色々持ってきたはいいものの俺等を見るなり道を間違えたとかで慌てて逃げようとしたやつがいて急に馬車回すもんだから門の前で車輪が折れちまったんだわ……で、どうせ運べねぇし山賊じゃないなら安くていいから買ってくれってさ。俺等を山賊か何かだと思いやがって」
「ふぅん……」
まぁここも軍事施設だしここに食料が来ているのなら王命はクリアということにしよう。その商人もまだいるかな?シャルルは食料について対価は国が持つと言っていたし基本無料だがフリーの商人への呼びかけがあるからその分はリヴァイアスで払うことになっている。急な事態だから建て替えしないといけない場合もあるはず。
食材はとにかくなんでもあるようで王都では見たことのないものあったが「とりあえず全部茹でれば食えるんじゃないか」と見たことのないものも全て茹でて味を確かめていたそうだ。……ただ美味しいものばかりではないそうだ。領都に送るにしても結局毒見は必要だから少量ずつ試した食材が並べられている。
「迷宮の魔物に食わせて問題なかったら俺らがちょっと食うんだ。問題なかったら村に送る事になってる。都に行くには橋がないしな」
「あ、橋なら領都の魔法使いが作ったそうですよ?」
「何だと!!?いつ?!」
「今日ですね。私も一緒に来たんで間違いないです。ベスさんも一緒に来たのが証拠です」
「おぉ!」
あまりしつこく領主様ってどんな人かと聞くとバレそうだしこの辺にしておこう。
それにしても毒見。スーパーで売ってるような安心安全な食材がほしい。毒かもしれないものを食べさせられる魔物なるものは憐れだが人類を敵視する害獣らしいしこちらの常識っぽいし、口出しはしまい。
「あ、これって??!」
「知ってんのか?」
「ご、ごはん!!!??」
「ごはん……?食い方知ってんなら教えてくれねーか?」
少し粒が大きなご飯粒、イネ科の食品っぽく見えるそれは茹でられたその中は白くつやつやとした見知ったものだ。玄米状態で一口食べたが味は良い、食感は古古米ぐらいのボソボソ感がある。
大袋にいくつか詰め込まれてあるし農業として成立しているのなら品種改良は少しはされているのだろうか?これはこういう味のものなのだろうか?
産地や価格まで気になるが今はこれを料理してみよう。
醤油もどきの麦もあった。岩塩の産地で火の属性の強い土地でのみ出来るボウリングみたいなサイズにまで大きくなる麦。勝手に醤油のような味になるが大きくなりすぎると実が落ちて酷い腐敗臭が出る。産地の人間の一部でしか消費されない……いや産地の人でも大抵はゴミ扱いされる酷い植物だ。
古古米と醤油もどき、それに卵もあって肉もある。白胡椒のような味のスパイスも。――――うんチャーハン作ろう。
「食材使ってもいいですか?」
「あぁ好きにしても良い。そろそろ腹減ってきたしな」
チャーハンと言えば火力だが薪で作っているので調整は難しそうだ。台を用意してもらってその上で調理開始。
ご飯は精米されているものもある……いや、ご飯の形が違う??数種類あるなっ!!?よっし!数人分は量があるし肉を小さな角切りにして少し炒めて皿に移す。
味を確かめ、数種類の使えそうな野菜を小さく肉と同じぐらいの小さめの角切りにして肉の油で炒める。味を見て水っぽくなるものは避けて使えそうなものを選ぶ……野菜選びも決まった。卵も割ってかき混ぜ、白胡椒もどきを削って粉にし、薪を足して少し火力を上げる。
―――――準備は整った。
お肉に付いてる脂部分を先に入れて美味しい油を抽出、カスを取り上げて割って混ぜておいた卵を投入。パチパチ音がするのは少し火がつかないか不安だがそれよりも期待で胸が張り裂けそうだ。
すぐにご飯を入れてご飯に卵をコーティング、肉と野菜を入れてかき混ぜ、白胡椒もどきを少し入れて炒め、最後に鍋肌に醤油もどきを加えて香りをつける。
「出来ました。鍋が重いので一旦動かしてもらえますか?」
「お、おう」
皿に盛って食べてみる――……まごうことなきチャーハンで泣きそうになる。
味はうま味調味料もなし、中華のペーストもなし、醤油も癖が出すぎて微妙、ご飯もほんの少しごわっとしていて改善点は多い。しかし、この味はチャーハン、幼い頃に妹が作ってくれた失敗チャーハンに近い。
「ウメェ!!?」
「あ、ずりぃぞ!!?」
「面白い味だな」
「おかわり!!」
「つ、作り方教えてくれ!!」
「はーい、他の食材でも試してみますね!!」
感傷に浸る暇もなく、大皿に盛ったチャーハンは食べ尽くされてしまった。
別の品種に見える米もあるし、種類が多くて使えなかった野菜もある。喜ばれたのならもうちょっと頑張ってみるかな。
皆様の応援もあって僕は楽しく書けています(((((((((((>*OωO*)>