水魔法ぐらいしか取り柄がないけど現代知識があれば充分だよね?   作:mono-zo

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第2話 主人公は様子をうかがっている。

 

今の私は自分で自分がよくわかっていない。

 

20年以上生きてきた私が夢を見ているのか、今の私が20年以上生きてきた夢を見ているのか……。

 

わからないことばかりだが、どちらの人生が正しかろうと生きるしか無いのだ。

 

 

朝起こされ、まずいご飯を食べ、こき使われる。

 

 

基本的人権なんて無いが騒ぐわけにも行かない。何もしなくてもパキスは私のことを殴ってくるし騒げばパキスはもっと容赦なく私を殴るだろう、誰もそれを咎めようとはしない。

 

それまでにはなかった前世の私の知識が物事の裏側まで色々と読み取ってくれる。

 

石畳の街に、明らかに耳が長かったり歩くトカゲのような普通じゃない人種、スマホを持ち歩く人もいないし財布は紙幣ではなく貨幣……風呂はないのかツンとした汗の匂いが人から漂う。トイレなんてどうすればここまで汚くなるのかというようなトイレだ………文明のレベルが見える。

 

私は捨てられたかなんなのか、とにかくストリートチルドレンとして生きている。

 

そして私もパキスも、マフィアのような反社会勢力の最下部組織の一員である。

 

宿屋のおばさんいわく、魔法は使えるものは多いが私のようにおいしい水を出せるものは少ない。そしてこんなに量を出せるものは平民にはそうはいない。

 

魔法は自分でも驚くほどすんなりと使える。水の魔法はただ言葉と指先に魔力を込めればドバドバ出せる。そしてその価値は普通の水よりや下手な酒よりも高い。

 

この辺りで取引される酒は質が悪いし、魔法で出された水はそう毎日どばどば飲めるものではないからだ。ビール恋しい。

 

 

だからこうやって私はこき使われている。

 

 

「さっさとやれ愚図が!」

 

「はい」

 

 

もうちょっとご飯が食べれるぐらいには大事にしろと思ったが親分は私の意識が戻る前にそこそこの金をくれていた。途中、パキスの上役に金をゆすられて「こ、これはその……お、親分、に!もうちょっと、食べるように言われて」ともたついて言ってたらうるせぇとボコボコにされたが。まだ全身がズキズキと痛む。

 

まだ私は新入りだから大事にする以前に使い物になるのか様子見されている。「死んでもいい」と言った扱いだ。親分さんも毎回お小遣いをくれる訳ではなく、お小遣いをくれたのは私の出した水が思ったよりも美味しかったからか機嫌が良かったからかもしれない。

 

 

ひどい国で、ひどい場所だ。

 

 

人権も、児童養護施設もないし警察機関はあっても親分からの賄賂かこれぐらい許容されるのか……私が目の前でボコボコにされていても何もしない。むしろ治安維持とか正義が役割であるであろう兵士が直接店を強請ってるところも目撃した。

 

どこもかしこも腐っている。

 

神様、こんな事になってるのはもしかしてエスカレーターで落ちてきた子供の打ちどころが悪かったとか、むしろ助けたつもりが私が潰してしまったんでしょうか?不可抗力なので許してください。

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

「<水よ。出ろ>」

 

 

水を出すのは結構楽しくて好きだ。今までにはない感覚が楽しくていい歳してるはずなのに胸が沸き立って大変よろしい。

 

仕事にやりがいを持てるなんて何時以来だろうか?現実逃避とわかっていながらもこれぐらいしか楽しめる要素がない。

 

出し方も一気に出したりじわじわ出したりと調整できるのも面白い……自分の中の何かが減ってる感覚も楽しめる。子供の体だから精神が引っ張られていてこんなひどい状況なのに変にやりがいを感じてるのかな?

 

今必要なのはやりがいでも魔法でもなく栄養と安全のはずなのになぁ……。

 

強いて言うなら自由とか権利とか安心とかが欲しい、日本で何事もなく暮らすって贅沢だったんだなと自覚する。

 

 

周囲から色々読み取り、大人らしいインテリジェンスをもってして生活の改善を考えたい。が、そう簡単に行くものじゃない。

 

 

悪には悪のルールがあり、その中に一度でも取り込まれると、簡単に抜け出せるものじゃない。

 

 

私の世話役兼監視としてついているこのパキスとか言う少年、子供でも駄目だこいつ。すぐに暴力を振るう。しかも私が何も悪いことをしていなくともだ。

 

私の処遇に見かねた浮浪者が一言口出しした。

 

 

「大丈夫かお嬢ちゃん?おい、やりすぎだろあんた!」

 

「あん?うっせぇなぶっ殺すぞ!フリム!さっさと仕事しろクソが!」

 

 

――――……仕事が終わってその路地を通ると、そのおじさんは目を開けたまま動かなくなっていた。

 

 

「ひっ!?」

 

「あ?いつものことだろフリム?さっさと来いよ」

 

 

いつものこと、そうだ……パキスもどうしようもないクズだった。

 

子供だから少し悪さするとかそんなレベルじゃない。楯突いてきた人はあっさり殺すし、日本だと普通に死刑になっていてもおかしくはないどうしようもないクズだ。

 

気に入らなければ殴るし、敵対している団体に上納している店には簡単に石を投げる。

 

 

この状況から逃げ出したくても、どうすることも出来なくて、まともに食べることも出来ない。

 

 

「仕事がおせーんだよ愚図!」

 

「うぐっ!」

 

 

虫の居所が悪かったのか強く蹴り飛ばされて無様に転がるが大通りで人も多いというのに私を助ける人はだれもいない。関わらないほうが良いとばかりに目を背けるものばかり。

 

 

本当に、いやになる。

 




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