水魔法ぐらいしか取り柄がないけど現代知識があれば充分だよね? 作:mono-zo
皆にも功績に応じてお金や財宝、それと重要な役職を渡していった。
彼らの中には爵位や領地を欲しそうにしている人もいる。
リヴァイアス侯爵領だが、広さから爵位を与えた貴族に土地を任せていた場合もあったらしい。今では誰もいないが。
それはそれでありかも知れない。侯爵の権利として配下に士爵や男爵、子爵までなら誰かに付与することも出来るのだが……報告先が貴族院である。してもいいかと一応聞いてみたのだが「充分に論議を重ねた上で検討する」とかいうふざけた対応をされた。そんな回答じゃなく検討の結果が知りたかったというのに。
日本の戦国時代でも誰かに領地を任せた場合、そこを護ってくれるのは確かだ。
しかし、代を重ねれれば忠誠心は薄れて裏切ってくるような事例があった。というわけで今回は役職と財宝、お金がメインで爵位と領地はなし。商売もすごくうまく行ってるしお金なら奮発しても懐が傷まない。
たくさんあげて皆喜んだかなと思っていたのに困った。ジュリオンを筆頭に怪我を治した人は褒美を返そうとして来たのだ。
「これから領地を盛り上げるのに使えば良い」とか「良い武器や防具を新調するのに使えば良いんじゃないか?」なんて宥めすかしてやっと受け取ってもらえた。
エール先生がいないタイミングを狙っての集団直訴だったから本当に焦った。あとで聞くと「領主が吝嗇に思われるから受け取れ」とか「他に仕えたい主でもいるのか?」というのが正解らしい。
いつもならどう受け取らせればいいかも思いつくし、今までにも対応したこともあったのだが……武官と文官の両方一気に来たものだからリヴァイアスのブラックな労働環境に不満を思っての一斉直訴かもとパニック状態だった。クーリディアスとの戦争という危機が去ったことで「お金はいらないから辞職させてくれ」って嘆願されるかもしれないと戦慄した。
なんとか褒美は受け取ってもらえたが……「慈悲深い」とか「より一層の忠誠を」とか「これからより働きます!」とか言って泣いてる人がいた。思い過ごしではあったがもしも皆が辞めていたら私のほうが泣く。
オベイロスにいるシャルルからは「よくやった」とか「土産を期待する」とか軽い感じで手紙が来たが、貴族院とかいうゴミ溜めの塊からは「クーリディアスにある財産を国に献上しろ」とか言ってくる。馬鹿かな?
今までのように「お見合い相手」という刺客を送り込んできているのも本気になったようで男女関係なく大量の人が送り込まれてきている。女性は側近にでもという名目で、男性は子供から老人まで大量にだ。私と年の近い男の子も次々にやってきている。
――――私はここに、一つの活路を見出した。
エール先生のおかげである。学園でインフー先生と戦った時に風魔法使いの監視がいたのだが、エール先生がナイフを体に滑らせて屈服させ、いつの間にか配下にしていた。クーリディアス兵士を閉じ込めた氷河の密閉空間に対してスパイスや毒草を空間に拡散していた彼を見て閃いた。良からぬ感情を持ってきているものでも『使えればそれでいい』と……。
いきなり「俺の嫁になれ!これで侯爵だ!」とか「ぼ、僕のお嫁さんにしてあげるんだな」みたいな変な貴族子弟もいるが、まずはボルッソファミリー製隔離空間に入れて杖を取り上げて新兵教育し、完了後に「頭角を見せてみろ」とワー達の監視付きで働かせる。
なにか怪しい動きをしていれば懲罰と調教を繰り返した後に働かせれば良い。なんならボコボコにして屈服させても良い。既にリヴァイアスはオベイロス有数の戦力と権力を有しているし少々の無茶もOKというレージリア宰相のお墨付きである。
私の目の前で身分差がどうとか言って領民を殴ったり、私を第6婦人にとかって手を出そうとするような……人格が腐っていたりする人も多くいるが「苦情付きで返品していた」のを「再利用」するのだ。
そして最高の一報はアーダルム先生を筆頭に学園から応援が来たことだった。アーダルム先生は学園から政治的理由で出れなかった賢者で、沼の精霊と契約した私の担任のような存在だ。
学園の代表者としてきたのは私と面識があるからという理由が強かったのもあるだろう。学園から出て良いのかと心配もしたが「クーリディアスへの調査ならオベイロス国内の問題は関係ない」として学園から出てきたらしい。リヴァイアスもオベイロスからすれば極東の地だから政治からは遠ざかっていて安全度は高い。
アーダルム先生と同じようにこれまで学園から出てこれなかった人やクーリディアスを研究したい学者もたくさん連れて来ていて…………。さいっこうである!!!!給料も出すし、家も用意するよ!!
ラディアーノとギレーネも呼んでクーリディアスに送ろう。ギレーネはラディアーノの献身的な態度で改心したらしいし。ラディアーノの能力は信用できる。
「土産がほしい。なにかいいものはあるかの?」
「私も詳しくはないのですが、市場で探してみてはいかがでしょう」
「それもそうじゃの」
私の部屋にまで来たローガ将軍。少し部屋をジロジロ見てから大股で行ってしまった。
新たな出会いもあれば別れもある。大量の優秀な文官が増えたのは良いもののローガ将軍は王都に戻るようである。
クーリディアスもリヴァイアスも一応安定したし、貴族院からどうなっているのか報告しろという命令がローガ将軍に来たそうだ。ローガ将軍も兵にそろそろ休みがほしいかと考えたようである。
帰りにはトーテムヘッドを持っていた。私も持ってる口から煙の出るトーテムヘッド……私には誰にお土産にするにしてもそのチョイスは微妙だと思うのだが…………シャルルに贈られたプレゼントを見られたようだ。王様からのプレゼントってことで飾ってるし群を抜いて目立ってたもんね。
「達者での!困ったことがあればいつでも文をよこすと良い!力になれることもあるやもしれん!」
「はい、ローガ将軍もお達者で!」
「うむ!!」
うちの兵力は古参兵や傷病兵への治療によってじわりじわりと増えている。そしてそれらの影響か、これまでそこまで協力的ではなかった民からも信頼を得られたのか新たな人員が増え、戦力が過剰となっている。
一応隷属兵の扱いによってクーリディアスが安定している面もあるというシャルル向けの報告もローガ将軍に任せる。うちの兵士がシャルル宛の手紙を王宮に手紙を届けているのだがシャルルからの手紙によると私からの手紙がなくて心配しているらしい。オベイロス腐ってるなぁとしみじみ実感する。
「誰かに似てる気がするんだよなぁ」
「私も誰かに似ている気がするのですが」
「うーん、だがあんな声のデケェおっさんは他に知らないしな。気のせいか?」
クーリディアスからドゥッガも戻ってきていたのでローガ将軍の見送りに参加してもらった。ドゥッガもローガ将軍が誰かに似ていると言っているが紫の髪の電撃使いのおじいちゃんなんて他にはいない。
紫の髪の知り合いと言えば平民のリコライだけだがあんなに剛毅で声の大きい人物ではない。リコライはオドオドして小動物のような少年だし似ている部分はないはずなのだが……。
しかし誰へのお土産かは知らないが、口から煙の出るトーテムヘッドは誰にプレゼントしてもよろしく無い気がする。しかも馬車に詰めるだけ詰むという始末。なにかの祭りか儀式のようにも見える。
そう言えばゴーガッシュもクーリディアスから戻ってきた。ミノムシのようにガチガチに拘束されて……。なにやらクーリディアスについてリヴァイアスを裏切るつもりだったと。
「ワーきーてた!こいつうーるぎる気だった!!」
「そ、それは話を合わせてより情報を聞き出すつもりだったのです!決してリヴァイアス侯爵を裏切るような畏れ多い気は全くなく!!?」
商人だし、二重取りを目論んだ可能性は大いにあるが……裏切りに厳しいドゥッガと諜報に長けたクラルス先生、それと私を裏切ったという知らせを受けたエール先生によって私と面会する前に死ぬよりも怖いほどのナニカを処置されたようだ。
流石に哀れに思ったし本人も悪いと思っているようだから約束通り船とお店はプレゼントしたのだが両方断られた。
嘘であっても「領主を裏切る」という発言をその家臣が聞いて、領主も知ったというのは家族もろとも狙われてもおかしくはない大罪らしい。しかも敵軍の説得も出来ずにそのまま攻めてきたのだから彼の認識では功績と言える功績もない。
ワーたちが裏で情報を流してくれていたからそれはワーの功績だし、いや機会が出来ただけでも功績ではあるのだけど……。
家族だけはと泣き叫ぶゴーガッシュにはやはり船と店をあげようとしたのが受け取れば殺されると思ったようである。交渉の末、船も店も小さなものなら受け取ってもらえた。特にエール先生に怯えるゴーガッシュだが一応ご家族には何があったのか連絡をしておこう。タイミングが悪かったとしか言いようがない。
文官やお手伝いの大量補充によってリヴァイアス、クーリディアス、おまけにクリータの統治はうまくいっている。特にクリータは現地の家臣がいるしリヴァイアスの兵力からの威圧や王への反逆行為もあって……ものすごく働いてくれている。
自発的に領民が限界だったはずの税率よりも更に多く収めてくる。大分ボルッソは搾取していたのだろう。だけど「村一番の美少女」や「村一番の美少年」を各村から私に差し出すのはやめてほしい。教育を受けさせつつ雑務で働いてもらってるけど。
学園から来ている人の能力が高い。突出していると言ってもいい。これまで学園を支えてきた人員は皆教育を受けていたこともあるだけあって……やってくるゴミ貴族のようにサボらず、誰かに投げず、実家に泣きつかず、逃亡もしない。
もちろん貴族から送り込まれてくる人員の全員が酷い訳では無い。能力が高い者や忠誠心がある人もいるのだが賄賂が基本だし真面目かどうかと言うとそうでもない。……やはり身分に限らず真面目に生きる学園の人間は皆優秀である。
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