水魔法ぐらいしか取り柄がないけど現代知識があれば充分だよね?   作:mono-zo

209 / 391
第194話 変身っ!!

 

クーリディアスの財宝の中から興味深いものが出てきた。

 

 

「これは?」

 

「秘宝です。クーリディアス王家では姫や女王がいない理由でもあります」

 

 

なんと男性が女性に、女性が男性になれる魔導具のようだ。ジャラジャラと身につけた装飾品はただの装飾品ではなかったようだ。

 

王族がいくつか所持している魔導具で、男性が女性に女性が男性になれる。持った瞬間に魔力が吸われて体がニュルッと変わる。体から離せば元通り。

 

とても珍しく特別なものでクーリディアスでは王族がお忍びで遊んだりする時に使うこともある。身につければすぐに変身ができるし、嫁と旦那、両方を持つことが出来るのだから世継ぎが作りやすくなる。あと少し魔力が増えるというスーパーアイテム。

 

他にも変装グッズを王家では継承されていて……髪が伸びる魔導具や胸を大きくしたり小さく出来る魔導具、見る相手の目を引く魔導具などなど渡された。主に変身用のものが多くあった。

 

確かシャルルも激しい衝撃を軽減する魔導具や謎の次元ポーチのような魔導具を持っている。クリータで落とし穴に落ちても、そこで食料がなくても生き残れたのはそれらを持っていたからだという。

 

ローガ将軍の電撃をクーリディアスの精兵が防いだ魔導具は欲しかったのだが損傷が激しく、直しようがないらしい。

 

やはり国の頂点ともなれば危険がつきもので身を守る必要がある。私も魔導具をいくつか持つように説得された。しかし魔導具は迷宮や天使や悪魔、精霊といった上位存在由来のものも多く、同時に持つにしても干渉したり相性があるのだとかで無理に多く持つことも出来ない。

 

それに所持するだけでも悪影響を受けた事例もあるので幼い私がなにか持つことについては家臣の中でも意見が割れていたりする。そもそもリヴァイアスの杖があるから悪い組み合わせを持ってしまって何が起こるかわからないので持たないようにしているのが現状である。

 

そんなものもあるのかと感心して魔導具を見ているとイルーテガ王が笑って言った。

 

 

「イリーアンの胸が小さいのは魔導具の影響ではないはずだ。それを使ったからと言って小さくなるわゲボンっ??!」

 

「父さんのアホー!!!」

 

 

べしんっと拘束されているイルーテガ王をイリアさんが真っ赤になってしばいていた。うん、今のはデリカシーがない。

 

イルーテガ王は部屋に軟禁し、普段は鎖などもつけなくてもいいのだが私と会うとなって両手首を鎖で繋いでいた。あの黒い靄が何だったのか、医者や神官が調べても分からなかった。他国から呪われていた可能性なども考えられたが……また出てくる可能性がないとは言い切れない。

 

水の精霊たちが靄を攻撃し、オルカスとリヴァイアスが食べたと思うが……まだ身体の中に残ってるかもしれない。本人もいつの間にか自分がおかしな行動をしていたのがトラウマになっているようで、部屋で仕事が終わって寝るときにも自発的に自らを拘束していた。

 

イルーテガはこの魔導具をまともに使ったことはなかったそうだが「一度ゴーガッシュに使ったかもしれない」と使用方法を教わりながら微妙な事を聞いてしまった。

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

数ヶ月経ってリヴァイアスもクーリディアスも落ち着いたと言える。

 

ドゥッガがかなり有能である。海賊相手にも物怖じせずに、むしろ海賊狩りをするし方向性さえ指示すれば決断力もある。リヴァイアスとクーリディアス双方の繁栄には彼の存在が欠かせないものとなっている。

 

貴族の子弟や元海賊の部下、隷属兵士たちを取りまとめていて……もはや海賊である。周りにも茶化すように言われているが本人は「筆頭家臣だ!間違えんじゃねぇ!」と主張している。財宝を積んで帰ってくる姿はどちらかというと筆頭家臣よりも海賊の方が近い気がしないでもない。

 

ラディアーノとギレーネをドゥッガの元に配属したのも良かったのかも知れない。

ラディアーノは元々優秀だったが、ギレーネも怖いほど働いてくれる。

 

ギレーネの娘さんはシャルルに対立する道を選んで政争で亡くなった。両親がシャルルの側近であったことから娘の仇として生まれてもいなかった私を恨んで攻撃、外部からのテロも手助けした。

 

ラディアーノによって助命されたギレーネだが反省もせずに再び犯行に及んだ。これは長期の拷問後に殺されてもおかしくないほどの大罪であった。

 

しかし根っからの悪人というわけではなく、普段の彼女は礼儀作法に関して元々ものすごく厳しくはあるが国中で慕われていて長年学園を支えてきた貴族の人間だ。……殺してしまえば影響が計り知れなかった。

 

だから殺さずにギレーネはうちに作った独房で生活してもらった。監視付きの独房でラディアーノと生活をする。家の当主を攻撃し、その新生ルカリム家にある独房なのだから家臣から暴言や嫌がらせは多くあったはずだ。

 

ギレーネは即処刑されてもおかしくない罪を犯したのだから当然といえば当然なのだが……自分のために身分も名誉も何もかも捨てて暴言を吐かれても働くラディアーノの姿に改心した。

 

襲撃時にギレーネは攻撃に直接参加しなかった。隷属に逆らってでも自分を止めようと行動して命の危険もあったラディアーノを無視できなかったのだが……彼女の中で復讐心を超えるなにかが残っていたのかもしれない。

 

ラディアーノは奴隷の立場に自らなりはしたが、ずっと学園長の立場で働いていて国中の人に慕われている。大罪人であるギレーネを見捨てて再婚し、若い嫁に貰わないかなどの誘惑もあった。それら全てを断って重労働と言える仕事をこなした後ギレーネの独房に戻って就寝する。

 

ラディアーノはギレーネと離婚して、大貴族として生活することも出来る。他国の出身だがこの国で「ラディアーノ伝説」なんて本が作られていて、クライグくんのように本気で尊敬している人がいる。学園に建てられた像も何も言わなくても祈りを捧げる生徒や教師もいるほどだ。

 

彼はギレーネに固執しなくても生き方を選べたはずだ。若い嫁さんをもらって、残りの人生を遊んで暮らすことも出来る。なのにギレーネとは離縁もせずに、ギレーネの為ならどんな苦労もいとわずに働き、ギレーネを責めることもなかった。

 

私のもとにラディアーノとギレーネがなにかする可能性から報告が度々入るのだが……「ラディアーノはギレーネが死ねば自分も死ぬとまで考えているんじゃないか」と報告が来たほどだ。

 

ギレーネは自分を見捨てず、毎日働いて食事を持って帰ってくるラディアーノを見て完全に改心したらしい。独房でギレーネはハンカチやスカーフの刺繍の仕事を必死にしている。ギレーネの制作物の売り上げが二人の食費となる。ラディアーノの給料はギレーネが延命されているので出ない。

 

キエット発案による罰だが……ラディアーノが心変わりしないのはギレーネへの愛があるからであり、それが伝わったからこそギレーネが改心したのだと納得した。

 

あれだけ私を攻撃しようとしていたギレーネだったが本気で反省しているようだし、ずっとあの生活はラディアーノもギレーネも年齢から耐えられないと考えたから二人共呼び寄せて働いてもらっている。

 

城壁外でラディアーノとギレーネを含む追加の家臣団を出迎えたのだが、私を見た瞬間ギレーネは公衆の面前であるにもかかわらず土の道路に顔をめり込ませて謝罪してきた。

 

それを見て、もう大丈夫だと思った。彼女の攻撃で無関係の人が死んでいた可能性もあったと考えると気軽に許すとは言えないが。

 

ギレーネをクーリディアスにおいてしまえば逃亡する可能性もあったが二人はそうはしなかった。

 

ギレーネは礼儀作法を教えていただけあって貴族の機微をよく分かっていて情報を収集することに長けているし、オベイロス流の礼儀作法を教えることで「クーリディアスはオベイロスの一部」だという意識改革にも貢献も出来ている。二人は基本クーリディアスにいるが、度々報告のためにドゥッガのようにリヴァイアスを往復している。

 

ドゥッガもクーリディアスを動かすだけの裁量は持っているし緊急な際は任せているが、大きな方針は上司である私の指示を仰いでくれている。ラディアーノはドゥッガに足りない国策や現状報告、草案などの書類にまとめてくれるし、ギレーネは貴族の血縁や因縁、商売などの情報を収集している。

 

 

とてつもなく有能であるがやはり『ギレーネ』は大罪人だ。

 

 

ギレーネもラディアーノもやはりオベイロスで有名人。しかも王都の学園は他国の人間も学ぶのだから顔を知っている人もいるかもしれない。だから魔導具を使って変装し、名前も変えている。

 

クーリディアス王族に伝わる魔導具を渡した。いくつもあるし実験的な面もある。それで男性化しているギレーネ、いや、ギュリアム。

 

 

「愛してるよギュリアム、君はどんな姿になっても美しいよ……」

 

「ランディ……」

 

 

ラディアーノも名前を変え「亜人に見えるようになる魔導具」によって猫耳をはやしている。抱き合いながらいちゃつくものだから……なんか見てはいけないものな気がしてならない。

 

私には二人共壮年の男性に見えるが……本当は夫婦なんだし問題ないはずなんだけども。

 

 

「見ちゃいけません」

 

「え?エール先生?」

 

「そうね、フリムちゃんにはまだ早いわ」

 

「クラルス先生!!?」

 

「「「にゃー」」」

 

「……はい」

 

 

魔導具によって副作用がないか見に行っただけなのだ。もしかしたら体に影響が出ていて「気分が悪い」とか「どこか痛い」となってもトップである私が呼び出してしまえば「全然問題ありません!」と隠すかもしれないと思ったのだが……ドアを開けてみると見つめ合う二人がいた。

 

見えないように視界を覆い隠されてしまったし海猫族の方々に「少し向こうに行っておきましょうね」と肩を押されたので大人しくここは従っておこう。

 




皆様の応援もあって僕は楽しく書けています(´。•ω(•ω•。`)♡
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。