水魔法ぐらいしか取り柄がないけど現代知識があれば充分だよね?   作:mono-zo

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第203話 腐敗貴族っ!!

 

朝起きて王城を眺めつつ朝食を食べる。

 

最近はリヴァイアスの海からの魚や香辛料も入ってきて食卓がより一層豊かだ。それも海の魚を氷漬けにして新鮮な鮮度を保っていて暴力的なまでに脂が美味しい。

 

それまでは金を積んでも買えなかった香辛料が入ってくるものだから王宮では好みの香辛料を携帯し、優雅に料理にかけるのが流行している。これだけの香辛料を惜しげもなく使えると……財力と流行を先取る典雅さを見せつけることができる。

 

 

「うむ、今日はこれにしよう」

 

 

今日の香辛料はどうしようか?

 

最近はいくつかの香辛料を混ぜることで味を追求する愚か者もいるが、やはり混ぜ物などするべきではない。

 

そんなのは最高級品を手に入れられない三流貴族が苦し紛れに行うものだ。

 

 

――――貴族とはどうあるべきか。政争で良く学ぶこととなった。

 

 

誰に家門をかけて支援するかを決め、そして死んでいった。どこの領地も荒れに荒れた。……幸い我が家門は代々続く伝統的な法衣貴族。貴族の税務を任される名家だ。

 

祖父も父も『我が家の算定なくして税を知る術無し』と常々言っていたな。我輩もその誇りを胸に毎日毎日税を取り立てる。

 

地方の貴族共は税を誤魔化してくるし対応が面倒だ。何日か待たせて足りぬ分は借金でもして差し出せと通達する。それが嫌ならさっさと我が家に届けるべきものがあるだろうに……。

 

 

いつもなら田舎者の貴族の相手をするだけなのだが……今はもっと大物がいる。リヴァイアスだ。

 

 

10にも満たない少女、しかも水の大家ルカリムの令嬢でタナナ家とレーム家、更にリヴァイアスの血まで引いている。

 

ルカリム侯爵の弟の娘、本当かどうかは怪しかった。なにせ貴族としての登録もされていない。生まれたことも秘匿されていたのだ。貴族として恥ずかしい、不義の子じゃないかともっぱらの噂だ。

 

陛下の子じゃないかと言う話もある。でなければいきなり伯爵などありえない。もしくは陛下が后を迎えないのは少女趣味だからという可能性もある。

 

フォルハ家やトルイヤード家のような新たな水の名家候補にも国からは支援をしているがフレーミスには桁違いなほど大きな支援がされている。

 

水の家はあればあるだけ良い。彼らには火の家のように傲慢な権力欲はないし、飲み水は誰にとってもなくてはならないものだ。王が命を救われたというのだから支援もわかる。……だが、いくらなんでもやりすぎだ。

 

学園も卒業していない。縁者から支援どころか敵視されるような家の娘など暗殺されて終わりだ。

 

そう考えていたのだが彼女にはエールがついた。あの女、風の名家の血を引いているし、王の乳母兄妹だけあって護り手として優秀だった。王への襲撃で真っ先に毒でやられたことで「何のための護衛か」と批難を浴びて王の側近を辞したが……我輩の嫁に来ていれば良かったものを。

 

しかしエールがついたフレーミスは風の精霊の加護を得たかのように成功を続けた。貴族街での倉庫業に、学園での洗濯と風呂……。倉庫業は王が裏で手を回したのだろうと言われていた。上司を氷漬けにしたヒョーカ・カジャールがいるのだから容易いはずで王がしたことなのだろうと噂となった。

 

洗濯と風呂は自分で考えたのだろうが貴族のすることではない。下級貴族でもやるか怪しいような下賤な仕事を、高位貴族がやるべきではない。品位も知性も足りていない。

 

だが、フレーミスは桁外れの魔法力で見習い騎士を一掃してその力を証明した。派閥と呼べるだけの勢力を築きつつあった。ライアームからの刺客をも撃退した。

 

雨雲ごと吹き飛ばすような爆炎を見ていたが……あれは桁違いだった。あんなのは名家の当主でも中々出来ないだろう。

 

 

――――それでも、まだ子供だ。

 

 

学園の様子を聞けば勉学は全然できぬ。あれが『賢者』となったのはおそらく火と水の両方が最高位の魔法も使えていることから頭のおかしな賢者たちによって何かしらの成果を出したのだろう。

 

リヴァイアスの地では大精霊リヴァイアスから寵愛を受け、クーリディアスからの侵攻を防ぎ、逆に併合してしまった。精霊がいる地ではその精霊の力は絶対だ。おそらく海という環境もあったのが良かったのだろう。

 

報告によればいつもウンウンと悩んでいるそうだ。力はあってもそれだけの知性はないと見える。……我輩もそうだが他の貴族もこの隙を見逃せるものではない。

 

幸いにして陛下がリヴァイアス領の税の免除を決めた。さらに王宮に届く文書を整理する責任者は我が家から借金をしている。法的にも手紙は精査が必要な場合、一時留めおくこともできる。調べたところリヴァイアスで緊急事態も起こっていないのだから陛下に早急に届ける必要もない。

 

 

今のうちにクーリディアスの利権を鉱山を、領土を、財宝を頂いてしまいたい。

 

 

これまでにも他国を切り取った貴族はいた。しかし、オベイロスから離れると精霊の加護は減る。故に切り取った後の統治で他国からの攻撃に耐えられずにまた今の国境に戻る。戦時の慣習でも戦勝時には戦った貴族が上位の貴族にその戦利品を献上し、改めて褒美を渡すというのは当たり前だ。オベイロスでも同じような事例はあった。

 

そして今のフレーミスの上といえば貴族院や王である。一度献上するのが貴族として正しい慣習なのだ。うまくいけば、王ではなく貴族院に献上された戦利品を精査してから国庫に収めれば良い。

 

だがあの小娘は一向に財宝を差し出そうとはしない。我輩が「王を説得して数割は確約してやろう」としたためてやったが……やはり教育も受けていない愚かな子供が貴族になるなど、あってはならないのだ。エールのもとにも「説得すれば謝礼を出し、妻の一人に迎えてやっても良い」と伝えた。

 

 

精霊に愛されているとはいえ、無能な少女には侯爵領も一国の支配もできるものではない。我々のようなオベイロスの中でも名だたる家門の者が統治するべきなのだ。……そもそも外国からの攻撃で国が揺るぐやも知れないというのに、子供に任せる王がおかしい。

 

今のうちに財となるものを全てオベイロスに持ってさせなければならない。これは罪に当てはめられるのではないかと意見も出たが……ローガ将軍は「戦争はほとんどがリヴァイアス侯爵が大魔法で行ったのであって、儂らはほとんど何もしていないのにそんな言葉が言えるか!!」と貴族院に怒鳴り込みにきた。国の将来も見定められぬ老害がっ!

 

しかし、エールもあれだけの謝礼金を贈ったのだから流石に動くだろう。我輩は国士として、この国を動かす貴族として……やるべきことをしているだけだ。後は時間をかけて説得するだけ、そのはずだった。

 

 

王都にリヴァイアス軍が突然来て、絢爛な戦勝行軍が行われ……あの娘は正しくリヴァイアス侯爵となった。爵位としては最上位。上級侯爵であるルカリムと一応は同じ侯爵となった。

 

筆頭家臣のドゥッガ・ドゥラッゲンはダワシと同等の子爵になった。リヴァイアスで筆頭家臣となるのは一段と難しくなっただろう。子弟を送り込んだ貴族たちの悔しそうな顔よ。

 

 

「よくやったな、フリムよ」

 

「ありがとうございます。これから国のため、民のため、王のため。邁進していこうと思います。ご指導ご鞭撻の程よろしくお願いいたします」

 

「うむ!みな!新たなリヴァイアス侯爵を祝福しようではないか!!」

 

 

侯爵位の就任の祝い。中々行うことはないが胸の前に杖をまっすぐ立て、形式上祝うが……一体どれほどの貴族が本心から祝っているのだろうか?

 

しかし、精強な軍よな。亜人が多くいるリヴァイアス軍、とりわけ竜人が二人。将軍と近衛兵長が魔法の力があるとわかる武具を身に纏っている。個体数は少ないがハイエルフのように強大な存在だ。亜人はこの国の貴族には少ないが流石に軽んじることは出来ぬな。

 

どうにかこの場でフレーミスを言いくるめて味方につけられないか?

 

エールと目が合う。より一層美しく成長していて……今この場でも側室に来ないかと言ってしまいそうになる。いや、祝いの席であるなら言ってしまったほうが良いか?いやいや、今は色香に惑わされてはならぬな。しかし、なにかを伝えてその辺の部屋に……税の処理はあまりにこの祝いの場にそぐわぬか。

 

焦るな我輩……これは好機なのだ。税に関する問題がリヴァイアスでは山積みになっている。そうだ、戦後の特例措置で免税とされているが今の収支を知ることと細やかな税の扱いをどうしているか確認しなくてはいけない。あの魔法力だけで祝福されている愚かな子供さえ言いくるめれば良い。しかもその名目が我輩にある。

 

祝いの席が終わってからの方が都合が良い。あぁ、どれだけの財を差し出させることができるのか。楽しみで仕方ない。一国を併合したのだ。これまで見たことも無い財貨が、財宝が我が手に入るやもしれないっ!!

 

レージリアの悪魔爺が若返って帰ってきたが、水の魔法の飲み水は微小ではあるが魔法力を高めると言われている。使い手との相性もあるが……リヴァイアスの精霊の寵愛を受けたフレーミスの水であれほど若返ったのであれば利用価値も大いにある。

 

うまく使えそうなら金子は全て出させた後、成り上がりらしく王宮の掃除をさせ、貴族院のために水を作り続けさせれば良いのではないだろうか?いや、あの胸の大きな竜人に、エールも我が家で囲って我が子を侯爵に――――

 

 

「この男がリヴァイアス侯爵からの手紙を止めていたのか?」

 

「は、はい!」

 

 

お披露目の後、税に関する書類を取りに我輩の部屋に戻ると突然やってきたシャルトル陛下とレージリア宰相。

 

どうかしたのだろうか?我輩は法に触れるほどのことは行っていないはずだが?

 

 

「色々聞かせてもらいたいことがある。爺」

 

 

一瞬で大鬼のようになった宰相が動いた瞬間には全身に衝撃が走り、真っ暗になった。

 

 

「陛下!?一体何を!!?……!…………!!?」

 

「陛下、歳のせいか手がちょっとうまく動きませんでのぉ」

 

「殺すな。証拠もあるがこいつの口から――――」

 

 

巨大化したレージリアに握りつぶされ。体の何処かから何かが割れる音が聞こえつつ……我輩の意識は闇に落ちた。

 

 

――――クソ、陛下の少女趣味は真実だったか?ここまでやるなんて……。

 




オーガさいしょゲフンゲフン……!レージリア宰相 が あらわれた !
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