水魔法ぐらいしか取り柄がないけど現代知識があれば充分だよね?   作:mono-zo

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第212話 事故っ!!

 

一応深く聞いてみるも……タナナさんにも向かってくる刺客がいて、その情報を探っている途中に少し耳にした程度。詳細は不明だそうだ。

 

 

「ソうだ!」

 

「はい?」

 

「コンどはお姉さントヨンでホシい!」

 

「あぁ、そうですか。ではまた」

 

「マタね!ゴキげんよウ」

 

 

20代後半、凄く明るい性格の、変わったイントネーションのお姉さん。

 

襲撃についての詳細は不明……話した内容はともかく、一気にどっと疲れが出た。

 

次は水の質について競うときに会うだろう。一応、襲撃には気をつけておくかな。

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

その日の夜。轟音がした。

 

 

「そこぉっ!!」

 

「なっ!?天井ごと?!」

 

「この侵入者が!焼き殺してやるグゥルララァ!!!」

 

 

なにか大きな音がした。それだけではなく、建物が揺れた気がする。

 

何事かと杖を取って見てみると……クラルス先生御用達の天井裏の抜け道にジュリオンが破壊して入ろうとしているようだ。こちら側からは私の水でも動かせなかったからおそらく鍵のようなものもまとめて破壊したらしい。

 

ヒヤッとした。学園の裏側の諜報員。いや、警備の人がうちの護衛に殺されてしまうかもしれない。

 

 

「ジュリオン!ストップ!駄目!あぁ、大丈夫ですか?」

 

「フレーミス様!近づかないように!」

 

「ジュリオン!駄目!この人私達を守るための警備の人だから!多分!」

 

「えっ」

 

 

結構高い天井から引きずり落とされた警備の人はジュリオンによって床に抑えつけられていた。

 

 

「どうかしましたか!!リヴァイアス侯爵!」

 

「対処してくるので二人共動かずにいてください」

 

 

寮母さんが部屋にやってきたようだ。「天井が壊れて」と言うとなんとか理解してもらえた。寮母さんも屋根裏警備のことは知っているようで大事にはしたくないのか事態を収拾してくれるようだ。

 

高位貴族の師弟が多いこの建物に住む他の生徒からすると私のもとには刺客も来て当たり前なので「触らぬ神に祟りなし」とでも思われたのかあれだけの大音だったのに皆すっといなくなった。後で修理費払わなきゃ……。

 

部屋に戻ると動かないままの二人。そのうち黒ずくめの人が一人、ジュリオンが抑えたままで……何故かリューちゃんもジュリオンの上に乗っかっていた。どこか誇らしげである。

 

 

「すいません、うちの護衛が」

 

「いえ、まさか天井ごと抜かれるとは思ってもみませんでした」

 

「怪我を治す魔法があるのでしばらく漬かって行って下さい」

 

「え?漬かって?……いえ、ありがとうございます」

 

「こら、ジュリオン。威嚇しない。でも不審者だと思ったんですよね?ありがとうございます」

 

 

顔を隠しているが、多分声から察するに女の人だ。

 

話せはしているが、ジュリオンが離しても全く動けていないことから結構な怪我をしているだろう。悪いことをしてしまった。

 

 

「<水よ。出ろ>」

 

 

私が超魔力水を作ってバスタブを満たすとジュリオンが彼女の服を脱がせて入れてくれた。

 

獣人の人だったのか。耳がピンと立った犬人に見える。片耳が大きく切れて……それと服が少し焦げている。

 

 

「ジュリオン、おまかせしますね」

 

「待って下さい。警備上フレーミス様の隣にいたほうがよろしいのではないかと」

 

「眠気も無くなりましたし、騒ぎで誰か来るかもなので起きて事務作業しておくことにします。魔法も展開しておくので大丈夫です。……それより彼女が動けないのなら溺れる可能性もあります。どうなるか説明して、ある程度は治ってから戻ってきて下さい」

 

「はいっ!」

 

 

だらんと動かない諜報の人。背骨辺りをやってないかと不安になる。

 

寝ていて分からなかったが石造りのこの建物が震えるほどの攻撃を受けたのだ。死ななくてよかった。

 

部屋に戻って……少し掃除することにした。天井の石を破壊したからか粉塵で部屋がきちゃない。

 

 

「<水よ。出ろ>」

 

 

窓を開けて、床の大きな破片を掴んで外に出していく。

 

大きな汚れも巻き取って外へ、動かしている石の破片が面白いのかリューちゃんはふわふわ飛んで追いかけている。

 

 

……………今なら天井裏が見れるな。

 

 

私が見ているとリューちゃんが先に天井裏に入ってしまった。……水の腕に自分を持たせて、持ち上げて天井裏を見てみる。

 

屋根の裏は照明もあって明るく、意外と広いようだ。机や武器……それに服を部屋干ししている。……なんだか覗きをしているようで見ちゃいけないものを見ている気分だ。覗かれていたり侵入されていたのは私の方のはずなのに。

 

リューちゃんは珍しそうに部屋の中を飛び回っていたが私が頭を出したことですぐに戻ってきた。

 

 

「勝手に行っちゃ駄目ですよ?」

 

「クァルル」

 

 

動物は結構ストレスに弱かったり警戒心が強い場合も多いが、リューちゃんはかなり図太いようだ。

 

私の腕に入ってきたリューちゃんは顎のあたりに頭を擦り付けてきた。少し鱗が硬くなってきた。腕の中のリューちゃんは眠たそうにしたのでバスケット型のベッドに入れて執務用の机の端で寝てもらう。

 

クラルス先生の部下の人の痛みの声も聞こえる中、溜まっている報告書を読んで作業を進める。大方読み終えたので次はシャルル用に簿記のやり方を書いていく。

 

これまでにない、革命的で、洗練された、素晴らしきかな簿記!!便利なはずだが……これまでにこんな方法は無かったわけだし、この素晴らしさに気が付かれない可能性がある。それに王宮でのお金のやり取りの中には前世にはないよくわからない項目もある。

 

簿記のやり方を教えるにしてもこちらで出た数値と実務とのすり合わせが必要なはず。私が作っていたリヴァイアスの書類も同じ世界のはずなのにな……。

 

私がトップのリヴァイアスであれば完全に自由にすることができる。私こそが頂点であり、私の年齢を建前に色々無理を言うことも出来る。家臣も新生ルカリム家でほぼ1からのスタートだし、リヴァイアス家であれば尊敬の目があった。普及させたアラビア数字も定着した。

 

しかし、シャルルは違う。シャルルは元々兄や姉達が優秀で比較されて貴族たちから蔑まれていたそうだ。シャルル自身も劣っていると自覚して『王にはならない』と宣言していたそうだ。なのにそれが精霊によって王になってしまった。

 

政争によって王城も荒れていたことからか、それとも派閥の問題か……まともな貴族は残っていなかったようで家臣にも恵まれていない。不正の酷さを聞くにシャルルは部下に舐められている。しかし、彼らがいないと国政が回らないのはわかる。わかりはするが……酷いものだ。

 

 

ただ、シャルルにも望みはある。

 

 

キエットとバグバルに聞いた話だが。高等学校の卒業をする生徒には王が精霊と契約する場を与えてくれる。精霊と契約できるほどの人材は少ないが、それでも契約ができればやはりそれを取り持った王に忠誠を捧げる生徒は多い。そんな人材が城で働き……頭角を現す。

 

精霊と契約ができるような人材は精霊信仰のあるこの国では尊敬されるし、出世に大きく影響する。少しずつではあるが王への忠誠を誓う人が増えている。

 

人型の精霊である大精霊『精霊姫』と呼ばれる存在に加護と王位を頂く王家はやはり特別なのである。

 

リヴァイアスも大精霊と言われるがそれでもルーラと呼ばれるシャルルの精霊には他の精霊とは違う反応をしていた。精霊も王家の精霊には一目置いているようである。ということは……推測だが精霊と契約する臣下も王家の人間に対して攻撃しにくいなどの効果もあるかもしれない。

 

精霊との契約や縁を結ぶことは別に王家でなくても自然に起きることもある。リヴァイアスの態度はシャルルが取り持ったものではないから起きたのか?分からないが、精霊の存在はシャルルの統治に有利に働いている。

 

 

お風呂から「クックック」と抑えきれていない笑い声が漏れている中、ジュリオンが戻ってきたのでお礼を言っておいた。

 

 

うぅむ。考えながらも簿記で使えるテンプレートや軽い問題を作っていったが、シャルルや国の人にこの簿記の便利さがわかるだろうか?私も学び始めた頃は意味不明だった。そもそも理解されない可能性もある。

 

バグバルは王宮で働いていたが腐りきった王宮が嫌でうちに来た。キエットがヨボヨボで心配というのもあったのだろうけど。……聞いてみると恐ろしいことに今の状態でも王宮の腐敗具合はかなりマシになったそうである。

 

渦中のシャルルは何かしらの方法で助けてあげたいが……その前にストレスで倒れないか心配だ。新たな方法やこの簿記も今の体制では全然取り入れられない可能性のほうが高い。いつか役に立てれば良いのだが。

 

切れていた耳まで回復した警備の人には謝罪してお金を渡した。お金は受け取れないと断ろうとしてきたがこちらの不手際でもあったし、今後もよろしくと言って受け取ってもらった。

 

 

「本当によろしいので?耳まで治していただきましたのに」

 

「いえ、また今度はお菓子でも一緒に食べましょうね」

 

「……姿を見られたら別の配置になる予定なのでもう会えないはずです」

 

「まぁクラルス先生に言っておきます。首にな……じゃない。職を失ったとしてもうちに来て下さい。仕事を与えますので」

 

「ありがとうございます」

 

 

まだ少し具合が悪そうだし水を飲んでもらって話をしてみる。

 

少し聞いてみると男性貴族のもとには男性、女性貴族には女性の担当者がいるそうだ。そうじゃないとバレたときにお互いに大問題になる可能性があるそうだ。

 

ジュリオンは誰かに狙われると聞いて警戒していただけでむしろよく気がついたように思う。これは事故だが縁が繋げた。

 

 

「天井の修理は専門のものがいたしますので、数日かかりますが誰にも相談しないようにお願いします」

 

「はい。ではその間は一緒にお菓子を食べましょうね」

 

「しかし……」

 

 

警備の人を困らせているとはわかっている。

 

 

「あれー?そうじゃないと別の担当者さんを知っちゃうことになっちゃうな私ー、それにちゃんと話が通ってるかわからないと不安になって誰かに相談しちゃうかもなー」

 

「……わかりました。一応そのように言っておきます。……ご厚意、ありがとうございます」

 

 

勝った!子供のわがまま通じた!!

 

このままではもう会えないかもしれない。しかし、逃してなるものか!諜報関係の人と仲良くなれれば私の安全度は格段に上がる!!

 

 

「お金は好きに使って下さい。いつも助けてくれてありがとうございます」

 

「……ぷりん、ありがとうございました」

 

 

天井に帰ってしまったが、以前にプリンを食べたのは彼女だったのか。

 

今まで一方的だったので、やはり、会えて良かったと思う。ただ怪我させてしまったのは申し訳無さもあるけど。

 

名前も教えてもらえなかったが、可愛らしい人だったな。次は名前を聞き出そう。

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

 

「あの子に会いに行ったそうですね」

 

「ソウだヨ!イいネ、アのコ!カワいらしイじゃナイ?」

 

「……とても不快です。私のやろうとしていることは理解していますよね?」

 

「アァ。ホンとうニ、コころがイたいヨ」

 

「私はあの子のために、行動しています。あの子を傷つけることは私が許しませんよ」

 

「ハハハ!イうのはカンたんダ!!……デも、ソれがキみにデキるかナ?」

 

「今だって――」

 

「ホンとうニ?マモっテるツもりナのカ?」

 

「はい。あの子の未来のためにも」

 

「……ソウか、チャンとテツだうヨ。チャンとネ。ソウダ!」

 

「なんです?」

 

「オネえさン、トワイワレナカっタヨ!ハハハ!」

 

「……チッ…………そうですか。これからもお互いのために、よろしくお願いしますね」

 

「ヨロッシクネ!!」

 

「まぁ良いでしょう。喉は大丈夫ですか?」

 

 




【悲報】王都の貴族の腐敗事情【良くなってこれだった】
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