水魔法ぐらいしか取り柄がないけど現代知識があれば充分だよね?   作:mono-zo

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第213話 精霊教っ!!

 

質を競うのにはもう暫く掛かる予定だった。次は「天候の条件」と「数日の神殿生活」が必要となるらしい。

 

詳しい人によるとこの機会を逃すと次回は1週間ほどずれる。いつもならそれぐらいは待っても良いそうだが全員参加に支障のないうちにやろうという判断となった。

 

雨や曇りの日ではなく、よく晴れた晴天。そういう日に集まって数日間神殿で過ごす。

 

ナーシュによると特設ステージで行った水の量を調べる時にはある程度魔力を増幅するような薬を服用して参加する人もいるそうだ。貴族としての権威を保つために必要らしい。

 

私は飲んでなかったが、数人は飲んで参加していたそうな。

 

 

「それって不正じゃないのですか?」

 

「そういう見方もあります。水属性の力を大衆に大きく見せる意味もありますが……古くからの慣習でもあります。それに魔力の回復薬や強化薬を飲んだとしても大した効果は出ません」

 

 

不正ありきだったのかと微妙な気もするが……一般生徒に対して「水属性の魔法使いの能力が高く見せる」のは良いことだ。

 

なにかの薬を飲んだとしても3割増の量が出れば良い方という結果がユース老先生実証実験で明らかになっているし、石の個数は頑張っても一つ色が変わるかどうかでさほどの差はないようだ。

 

とはいえ特設ステージ外の周りの客席に人は少なかった。他の属性の魔法使いと違って地味なのか観客も少なかったし、うーむ、なんだかなぁ。

 

 

「では、質を競うのに神殿に行く理由はなんですか?」

 

「将来、水の質はとても重要になります。魔法薬の類を飲んだ状態で使えば質が変異し、正しく審査ができません。将来の仕事にも関わるので学園長と神官長が見ている前で行うこととなります」

 

「へー」

 

「大丈夫ですか?フレーミス様」

 

「少し寝不足で」

 

 

この競技では精霊がいるからこそ負けることもあるらしい。そう言えばクラルス先生も私の水は精霊と契約後に悪くなる場合があると言っていたが私の水はなにかかわったのだろうか?いつも通りであるが。

 

そんなわけで属性ごとの祭壇のある神殿に来たのだが。

 

 

「竜よ!穢れた竜が来たわ?!」

「おぉ精霊の愛し子よ!?なぜ!なぜぇぇ!!!??」

「なんと強い水の気配か……」

「皆杖を掲げろ!」

 

「クァー!」

「ゴルァルルルル!!」

 

「やめなさい」

 

 

しまった。精霊信仰において竜は禁忌だった。

 

上位の竜は精霊を食べることもあるようで、精霊教の人には竜は蛇蝎のごとく嫌われている。神殿に連れてきたのは完璧に私のミスだ。

 

全体的に神官たちは攻撃してくるまでの敵意はない。私上級貴族だしね。……だが一部の神官はパニックになっている。その場で祈る神官は良いが髪をかきむしって床をダンダン踏んでいる人もいる。怖い。

 

リューちゃんは威嚇するし、ジュリオンも剣を抜いて威嚇している。

 

 

「<水よ。壁を作れ>」

 

 

杖を抜いている神官さんもいるし、神官さん達の前に水の分厚い壁を展開した。

 

ちょっと驚いたのが他の生徒達だ。神官側につくのではなく、ジュリオンと神官の間、私の前に出て私を守ろうとしている。……水属性の家の人間は「争いごとが嫌いで助け合う」とは聞いていたが味方してくれるようだ。

 

何人かは動けずに神殿側にいるようだが神官さんに止めるように言ってくれているように見える。神官の中にも神官に向かってなにか言っているように見える人もいる。

 

 

「ゴルルル!フレーミス様、いかが致しましょう?」

 

「ここは学園ですし、神殿では私は尊敬されているので大丈夫です。しばらくこちらで生活しますのでジュリオンは銭湯でマーキアーに学園での生活を習っていてもらえますか?」

 

 

ジュリオンは警戒心からか少し過剰になっているようだ。

 

ジュリオンは王都での生活に慣れていない。私も慣れていないことばかりだが、ジュリオンは私を守ろうという気が強すぎて少し空回っている。

 

私の言葉に剣を収めて、前傾姿勢はやめてくれた。すこし表情がシュンとしているようにも見える。

 

私は学園に戻って歩いてるだけで生徒や神官の人に祈られていることもあったし、基本的に……多分リューちゃんがいなければここでは安全なように思う。ナーシュや先輩方もいるしね。

 

 

「しかし……いえ、王都には王都の常識があるようですね。迷惑をかけてしまってすいませんでした」

 

「いえ、リューちゃんを連れてきた私が悪かったです。ちゃんとお世話してあげてくださいね」

 

「……はい。それより御身を大切にしてくださいませ」

 

 

天井の破壊もあってジュリオンは自信なさげだ。ナーシュもいるし、他の生徒の様子を見てか下がってくれた。

 

リューちゃんを連れたジュリオンが神殿から出ていくのを見てから水の壁を解いた。

 

水が床一面を濡れさせたが戦闘になるよりは良いだろう。

 

 

「慌てさせましたね。すいません」

 

「いえ、上位竜とは言え、かの大精霊リヴァイアスに認められた竜。ここに先触れなく連れてきたのは軽率ではありますが……杖に手をかけた神官がいることをリヴァイアス侯爵にお詫びします」

 

「ではここに和解は成ったということで」

 

 

神官の一人とちゃんと和解して握手した。柔らかな笑顔のお兄さんだ。四角い眼鏡で知的な雰囲気を感じる。

 

皆動揺もしつつもリューちゃんがいなくなったことで問題はなくなったようだ。少し不満そうな神官もいるが……他の生徒は精霊をかたどった像に祈りを捧げていた。私もリヴァイアス像があったし祈っておく。

 

神官さんはトラブル対策なのか、私のすぐ横にいてくれた。なんかずっと見られている。

 

精霊教には困らせられているとシャルルと話していたが結構話が通じそうだ。地団駄踏んでいた神官はちょっと怖いが、この人はまともそうで安心した。

 

 

「ところで、その頭の毛はリヴァイアスの恩寵でしょうか?」

 

「はい」

 

「少し、舐めてみても」

 

「ぶち殺しますよ?」

 

「失礼しました」

 

 

――――訂正、やべーやつだった。

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

ほんの数日だが、ここで生活することになる。賢者の衣を脱いで神官さんと同じ服に皆着替えた。従者もなしの貴族集団。着替えができない人もいることにびっくりだ。

 

さっさと着替えたが私はチラチラ見られている気がする。この行事が毎年行われるのなら最年少の私以外はお互いに顔ぐらい知っているはずだが、私はまだ先輩方とは交流が出来ていない。ナーシュが壁になっていてくれて助かる。

 

 

そして皆でここの神殿の料理を食べた。ふつうに美味しいスープだ。

 

 

「味は良いんだが、なんだかなぁ」

 

「文句を言うな。精霊のお恵みに感謝しろ」

 

「……さっさと食って寝るか」

 

 

具沢山のスープだが夕食はそれだけである。食べ盛りの男の子には物足りないのかな?

 

今日はこの神殿に来た段階でもう暗かった。正直さっさと水を出して帰りたかったのだが、これも行事のひとつなのだし仕方ない。男女別で別の大部屋に通され並べられたベッドで寝る。この場で新入りの私は場所なんかもわからないし行動は完全にナーシュ任せだ。

 

昨日も深夜から起きて眠たかったし、とにかく寝るかと思ってベッドで転ぶと周りが何やら楽しげだった。

 

 

「ねぇねぇ、騎士科のハジンって良くない?」

「笑顔がかわいいわよね。婚約者はいないのかしら?」

「イルハビア家だからねぇ。政争でご実家がねぇ……でも彼って水の魔法も使えるし狙ってる人多いわよ?」

「ハジンよりもターカーのほうが良くない?」

「わたくし、お菓子持ってきましたのよ。いかが?」

「少し年上だけど良いわね」

「おいしー」

 

 

しばらく水の神殿で過ごすのだが……なんだろう、修学旅行のようにキャイキャイし始めた。お菓子の持ち込みは有りなのか。

 

私の周りにも何人か集まってきた。

 

 

「リヴァイアス侯爵の水はまた販売される予定ですか?」

「ご挨拶させてくださいませ」

「この子ニキビが凄くて毎日通ってたのです」

「弟を婿にいりませんか?!」

「クーリディアスはどんなところなのですか?」

「ぜひ家臣にしてくださいませ!」

 

「え、えーと、質問は順番にお願いします」

 

 

この行事は、生徒たちには楽しいイベントでもあるようで先輩方は皆楽しげにしている。一応学生だから貴族の当主が相手でもこれぐらいの対応はよくあるようで、別段侮られているわけではないようだ。フレンドリーなのは良い、若干一名婿がどうとか言ってるのはお断りだが。

 

お菓子をもらっておちついてからリヴァイアスやクーリディアスの話をした。水は落ち着いたら販売予定。超魔力水はまだうちの人間にしか使ってないし他に知ってるのはフィレーぐらいだから積極的に開示はしない。こちらからも私がいない間の学園の様子やこの行事の慣習や神殿などの話を聞かせてもらった。

 

 

「シャルトル様!素敵!!」

「宰相閣下が、その、何で竜を殴打したのですって?」

「私の兄もその場にいたのです!強大な竜だったそうですね!」

 

 

守護竜王に対してシャルルと宰相の大活躍の話は盛り上がった。

 

帆船のマストで竜を殴ったと伝えてもここは海が遠いしわかりにくかっただろうか?

 

 

「そう言えばエルストラさんたちはいないのですか?」

 

「代表になれば部屋が別なのよ。その髪私も触っていいかしら?」

 

「……どうぞ」

 

 

エルストラさんは現代表だし、ガニューラさんは前代表だ。この部屋にいないのは当然かも知れない。

 

リヴァイアスによって動くようになったアホ毛は精霊教からのみならず、先輩方からしてもありがたいものらしい。撫でた先輩はありがたそうに拝んでいた。

 

そのままもっと話していたかったが寝不足もあってか、楽しそうに話してる先輩方もいるのにいつの間にか眠ってしまった。

 




皆様の応援もあって僕は楽しく書けています(¦3[▓▓]
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