水魔法ぐらいしか取り柄がないけど現代知識があれば充分だよね?   作:mono-zo

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第219話 ガニューラっ!!

 

なんとか代表の座を勝ち取った。

 

エルストラさんは私の部屋に来てもらう。一応事情を聞かないといけなかった。毒の手段と内容についても詳しく聞きたい。

 

 

「エルストラ様への無礼は許さんぞ?」

 

「勿論です。貴方の進退にも関わるでしょうし、ついてきてください」

 

「……わかった」

 

 

体からパリパリという音が聞こえてくる『雷剣』の二つ名を持つブレーリグス。倒れたエルストラさんを支えるジュリオンに警戒しているようだ。

 

戦闘態勢の彼だが私とエール先生、フィレーとジュリオンがいるしエルストラさんを傷つけずに私を殺すことはほぼ不可能だろう。

 

鞘に手を添えたままだが素直についてきてくれる。

 

フィレーも部屋までついてきてくれている。それとインフー先生もいつの間にかいた。

 

寮の部屋に入ると窓が開いていて……拘束されたガニューラさんがいた。手紙もある。内容は「こいつ犯人」と汚い字で書き殴られていた。

 

 

彼女は首と手首を石で固められて床に転がされている。

 

 

いったんいろいろと言いたいこともあったが……なんだかこれをやったオレンジ色の髪の少年が思い至る。なぜならいつの間にか居なくなっていたモーモスが動くとすれば……いや、今はいい。

 

 

エルストラさんにも椅子を出して何故こんな事になったのか?伸びているガニューラさんについても聞く。

 

動機と犯人はわかっていた。だが、毒物は見つからなかった。

 

エルストラさんは代表を決めるのに私にできるだけ怪我をさせないようにしたかったはずだ。

 

 

「わたくしにもどのようにやったかは、わからないのです。ただ安全な方法で怪我もさせずにすると。一時的に苦しい思いはするけど、後遺症は残らないようにする……と」

 

 

一応親族であり、私を必要以上に傷つけないガニューラさんにエルストラさんは頼んだ。

 

ガニューラさんも政争でタナナの家がオベイロスから消失したため、オベイロスに残ったタナナの生き残りを連れて行こうとしてこの国に来た。

 

しかし、オベイロスにおけるタナナの家はルカリムの家に吸収合併された。

 

彼女にとっては「生き残った身内を助け、まとめて海外に逃げ出す」という目的は失敗に終わったし外国に逃げ出したいところだろうけど本家ルカリムからも王宮から裏で狙われてもおかしくはない。引き抜きをしにきたのは王宮にとってもよろしくはないはずだ。

 

紆余曲折はあったようだが彼女は秘術や特殊な技能や知識を出す代わりに学園に生徒として居座り続けていた。

 

政争も落ち着き、私よりも前にオベイロス中央に水の家を興す可能性が高かったのはガニューラさんだったということもあってライアーム派には睨まれているし……何なら命を狙われている。

 

学園を出るとおそらく彼女は国を出る前にライアームかオベイロスのどちらかに殺されるだろう。

 

行き場のない彼女にとっては学園に残るよりもリヴァイアス家の当主となった私の家は就職先に最適だと考えていたようである。だけど私の立場も結構危ういから新生ルカリム家の頃から様子見をしていたと報告もあった。彼女は彼女で色々と複雑な状況であるらしい。

 

 

今回、私が代表となれば本家ルカリムと私が争うことにもなりかねない。

 

 

となれば王都にルカリム本家の人間はやってくるし、そうなれば目障りなタナナの彼女はおまけで殺されかねない。

 

だからエルストラさんに協力して私が代表となることを止めに来た。

 

 

「結局、お茶が原因だったのですか?」

 

「それは……わかりません」

 

「何を盛られたんですか私は……」

 

 

思わずガニューラさんを見てみる。

 

きっと私もエルストラさんも周りの皆も同じ気持ちだったのだろう。皆でガニューラさんを見ると……目があった。

 

 

「…………」

「…………」

「…………」

「…………」

 

 

ガニューラさんは起きていた。

 

 

「コホン……えっと、私に何をしたのか、話してもらえますか?」

 

「…………」

 

 

首を横に振るガニューラさん、紫の長髪がふわりと動くが何も喋らない。

 

しかし話してもらわないと……。

 

 

「その……私が食べたものや飲んだものは他の生徒も同じく食しています。もしも他の生徒も同じ毒を食べていたらという可能性を考えれば国も学園も確実に貴方を凄まじい拷問にかけるはずですよ?……生徒たちは貴族が多いですし、私も一応侯爵でシャルルの相談役ですからきっととんでもない感じに……」

 

「グォルルル!フレーミス様!!私が!私にやらせてください!!」

 

「…………!……!!」

 

 

ブチギレているジュリオンが拷問役に立候補しそうだった。

 

しかしそれでも何も言わないガニューラさん。首と手首を石で固定されている。口元はうまく見えないのだが……パキスによって口の中に石でも詰められたのだろうか?

 

取り乱す彼女が必死になにかジェスチャーしている。

 

指を指す方向を見ると、棚の影にナイフの刺さった丸い何かが転がっていた。

 

 

「これは……魔導具かの?」

 

 

フィレーがナイフを拾って注意深く先端の何かを確認している。

 

ナイフに刺さった球体は何なのだろうか?

 

 

「これは声を出す魔導具……か?ガニューラ、声が出せんのか?」

 

「……!……!」

 

 

どうやら、そのようである。

 

ジュリオンにお願いして拘束を外してもらった。ジュリオンは拘束に使われていた石を素手で砕いた。

 

彼女の喉を見ると――ぽっかり穴が空いていた。今傷ついたとかではなく、喉がくりぬかれるように無くて……中まで見えていた。今できた傷ではなさそうだ。

 

ペンを持たせて事情を説明させる。なにか危険なものを隠している可能性もあるから皆で警戒は怠らない。

 

 

どうやら私が倒れたのは毒ではなくタナナの『秘術』であった。

 

 

「でも、エルストラさんは私を止めるように貴女に依頼したのですよね?なんであんな酷いことになったのですか?私が代表にならないように止めることが目的ですし、私が死ねばエルストラさんに本気で狙われることになりますよね?」

 

「……!…………!!」

 

 

ボディランゲージでなにか言われるが……なるほど、わからない。

 

私の部屋に来たのは私の髪の毛を手に入れるためであった。そして一応親族の彼女は私との親和性もあって秘術を私にかけることが出来た。しかし、精霊付きや加護の魔法をかけられた人間は毒や状態異常の魔法には少し強くなる。

 

なかなか効果の出ない私に対して自身と体調がリンクする秘術を更にかけ、自ら毒を飲んだそうだ。本人の毒の効果の何倍ものダメージを私にかける秘術。本来であれば私へのダメージは幻肢痛のように痛い錯覚だけであって吐血するようなことはない。術をかけ終わって数日もすればケロッと元通りになる……そのはずだった。

 

計算外だったのは術者本人に喉がなく、血縁もあって効果が高くなりすぎたようである。ここまで苦しめるつもりはなかったのだと凄まじい速さのペンで紙に謝罪と弁明が書かれていく。

 

ちなみに最後に代表を決める時にはいたのだが……戦闘になる前に部屋の外に出て秘術を再度かけようとした。しかし、オレンジ色の髪の毛の少年と体の丸い少年にしばかれたらしい。私の吐血への報復のためにパキスは喉を突いたのか……だから私とエルストラさんの戦闘中に声を出せるようになったのかな?一気に喉が話せるようになったもんね。

 

パキスの行動は正しい気もするが、うーん、容赦ないな。

 

もともと毒でダメージもあったガニューラさんは裏社会で培われた暴力によってボコボコにされて…………結果簀巻き状態でここまで運ばれた。

 

 

「なにか、他に隠し事はありませんか?」

 

 

胸をぽんぽんと叩くガニューラさん。なにか隠してるのかと思ったが……ボディチェックでなにか出てきた。この場にいる男性はブレーリグスとついてきていたインフー先生だけだが、安全のためだし……出てきたのはなんだろう?

 

肌色で薄いがぷるぷるとした素材で、乳首はないがまるで本物。外付けの胸……??

 

…………ん?

 

 

「――――ついてるな」

 

「………??!!!」

 

 

ジュリオンが体ごと持ち上げて、股間をグワシと掴んだ。

 

何処かまだ余裕の有りそうだったガニューラの顔が一瞬で歪み、ブレーリグスとインフー先生の肩が竦み上がったのが見て取れた。

 

どうやら彼女は彼女ではなく……ガニューラさんではなく、いやでも青年で年上なガニューラくんであったようだ????

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

 

「しかしこやつ、どうする?王宮からは『犯人を見つけて絶対に生かして引き渡せ』と冷たーい声で言われておるが?」

 

「………!!…………!!!」

 

 

ガニューラは椅子に縛られてガタガタしているが……どうするかな?

 

本来なら「ちょっと具合が悪くなる」だけの術をかけるはずが大事になってしまった。

 

喉がないのは大昔に戦闘で焼かれて、魔導具はドワーフの国で作ったものらしい。

 

本人は男らしい男だったのだが、学園内で行動するのに変装して撹乱していたようである。髪を伸ばし、胸にパットを入れ、女性っぽく話すなど……。うん、殺し屋もターゲットが情報と全然違ってたら困るよね。写真があるわけでもないし……女子部屋にいなかったのも、男だったからか……。

 

 

「えっと、私に服従してタナナの秘術なんかについて教えてくれるのならシャルルにも殺されないように一応話をしてあげますが?」

 

「……!……!!」

 

 

この人も自分の安全のために行ったことである。

 

「処刑されて然るべき」とかも思っちゃう部分は無いとは言えない。今もまだ全身が結構痛いし。

 

でも、なぁ……この年上のお兄さん。私には知らない情報も持っているし、もしかしたらパパ上との繋がりもあるかも知れない。秘術とやらも私も使えるようになるかもなどのメリットも大きい。

 

流石に棒で打たれたりはあるかもだけど、服従するなら治してあげるから死なないでほしいな。フィレーも知ったことだし内々で済ませられるかわからないが。

 

ちなみに出されたお茶は普通に健康的なお茶であったようだ。…………今にもジュリオンに殺されそうなガニューラだが、どうなるかな?

 




とりあえず去勢して手足の本数を増やしてから話を聞きましょう。
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