水魔法ぐらいしか取り柄がないけど現代知識があれば充分だよね? 作:mono-zo
シャルルに報告したがガニューラは許されなかった。
「獣刑と迷宮刑と杖刑と薬刑――――……どれか選ばせてやるぞ?」
「それ全部死ぬやつでは?」
「……!!」
ガニューラは結果的にやりすぎて大罪を犯したとわかっているためちゃんと反省しているが……シャルルは私のことを心配していた。
ガニューラの犯したのは国の高位貴族に対しての殺人未遂である。それと女性と偽って女性用の貴族寮に入ったこと。
ただ私を殺そうとしたわけではない。無力化しようとしたが思った以上にタナナの秘術とやらが効いた。むしろ彼自身は私を止めることによって私の安全を考えてくれていた節まである。
しかし、彼はやりすぎてしまったのは確かだ。
獣刑は全ての装備を剥ぎ取ってボコボコにしてから凶悪な魔獣のいる場所に縛ったまま放置する刑罰だ。迷宮刑はダンジョンで生成される何かをとってくると許される刑罰。杖刑は魔法の実験台もしくは杖でぶん殴る刑罰。薬刑は毒薬での死刑。全部殺意マシマシである。
公開処刑するのも良いという意見はあるが……私的には情状酌量の余地はあると思う。
「えと、できれば生かしてほしいので――――「フリムよ。俺は本気で心配した」
――――あ、これあかんやつだ。声色でわかる。逆らったらダメなヤツ。
「学園はほぼ安全な場所だ。そんな場所で、しかも神殿内で此度の事件はおきた……この度、神官長は毒の一件で未だに王宮で取り調べを受けている」
そう言えばエルストラさんと戦った時、神官の担当者さんはいなかった気がする。
「ギレーネの件。あれも精霊教の所属でありながら、精霊教の建物に国家転覆を企む刺客共は匿われていた。――精霊教は、フリムを、我が相談役にして侯爵を、狙っているやもしれぬ」
「それは……」
「そう見えてもおかしくはないだろう?どのような理由があったにしても神殿内での事件だ。責任は神官長にある。……そしてガニューラだ。秘術を使って子供を一人痛めつけるだと?それも己が利益のために?」
椅子から立ち上がってこちらに近づいてくるシャルル。目は見れないでいたが、すぐ眼の前にまで来た。
怒ってる。怒りは私に直接向けられたものではないとはわかるが。本気で怒っているのが伝わってくる。
「フリムよ。優しいそなたのことだ。どうせ助命を言い出すのだろうがな。国を揺るがすほどのことを犯した者を、そう何度も助けては王としての面目も立たんのだ」
私の前で膝をついて、うつむく私の顔を持ち上げて視線を合わせたシャルル。
その顔には怒りではなく、悲しみがあった。
「……はい」
「――――……俺にもっと力があればな。くそっ、刑は決めた」
心配されていると感じて素直に肯定する。シャルルは少し渋い顔をして目をそらした後に刑を決めたらしい。
ガニューラへの刑罰は迷宮刑だ。
ただ、通常のように魔獣や魔物が出てくるような迷宮ではなく、魔物の出ない特別な迷宮で行われることとなった。
神官長とガニューラの二人は明かりの届かない暗闇の迷宮でなにか価値のあるものを探し出すまで刑は続く。
「あの、せめて喉を治してあげていいですか?」
「それはもったいなかろう」
「シャルトル王、治す前に一度 を て治 」
「 」
シャルルに抱き上げられ、椅子に座ったシャルルの膝の上で耳をふさがれた。
あれ?なんかジュリオンとシャルル、私に聞かせないようにしたということはなにか良からぬ相談してる?どうせ治ると思ってなにかする気かな?
一応ぎりぎり生き残れる可能性もある方向で行くが「死んだらそこまで」というのも理解できた。超魔力水で一度治してあげるからぜひなにかいいものをとってきてほしい。
一度部屋から出されたのでガニューラに会いに行った。
「喉も治してあげられると思います。しかしその後はあなた次第です」
「……?」
自分の喉を指さして不思議そうにしているガニューラ。
喉に穴が空いたままのガニューラ。治す方法があれば魔導具に頼ることはなかっただろう。治せることが不思議に思っているのかも知れない。
「貴方が許されるには……とても困難が待っています。迷宮で何かをとってくるまで刑罰は終わりません。……その後も私に仕えることになると思います。覚悟はありますか?」
喉を指差し嬉しそうに自分の胸をトントン叩いて……おそらく感謝を伝えてくるガニューラ。このお兄さん、微妙に飄々としている部分もあって何を考えているかわからないが、おそらく本心から嬉しそうにしている。
何日か、何年か、何十年か……何かを見つけられるまでにどれぐらいかかるかはわからない。
しかしもしも私が死んでいたら、きっとリヴァイアスからもライアームからも攻められてオベイロスは大混乱になっていたはずだ。そう考えると甘すぎる罰かもしれないが……そもそも何かを持ち帰ることは出来るのだろうか?
本人の意思を確認したし、神官長にも話を聞くべく部屋を出た。
「貴方は監督責任で迷宮刑となるそうです」
「神殿に累を及ぼさないオベイロス王に感謝を……ところでその芳しい美髪を一本いただけませんか?」
「…………」
神官長は「2度の失態を自分のみへ刑罰で許してもらえるなんて!」と喜んでいた。私のアホ毛を舐めようとした変態が神官長だったなんて……。何人かいたおじいさんやおばあさんの偉そうな人は別の役職の偉い人だった。
魔力の強さと精霊との親和性が神官長の資格になるとかでこの変態がちゃんとした責任者らしい。偉そうな人が競技の監督してたじゃん……神官長の仕事は別であるから適当な行事は任せてる?誰だよこいつを神官長にしたのは…………人間性とか考慮しようよ。この人も迷宮刑にしてもいいの?
しばらくしてシャルルの元に戻ると……なにかの刑罰を受けたであろうガニューラは恥も外聞もなくとてつもない表情で股間を両手で抑えていた。
私が近くにいるのに、1ミリも動けず、汗がダラダラ落ちて固まっている。
シャルルとジュリオン……まさか…………。いや、何も言うまい。ガニューラ君、いやガニューラさん?どちらなのかはわからないが超魔力水につけて回復を祈っておいた。なぜそこを狙ったのだろうか?女性と偽って私に接近したから?
―――――きっと私の顔は渋いものとなっていたことだろう。治れば良いのだが……。
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今回、裁かれることはなかったのはエルストラさんだ。政治的に彼女はアンタッチャブルな部分があるし「架空の刺客が現れた」ということで監督責任で神官長が罰を受けただけである。ガニューラは表向き私とは関係なく「喉の魔導具の調子が悪かったから旅立った」ということになった。
ガニューラはきっと私の役にもたつし、外国のタナナの家にタナナの名前を持つ私が処刑に加担したとでも思われればどんな災いが来るかわからなかった。できれば許してあげたかったのだが……私が甘すぎるのだろう。
秘密裏に行われるガニューラへの刑の執行の前に書き記された……タナナの薬術や秘術とやらを見ながら、まだ痛む体を休ませるべくベッドで寝転ぶ。
「あの、流石にこれは……」
私の横で私のお世話をしようとしていたエール先生。
ジュリオンに耳打ちしてエール先生をベットに入れてもらった。靴を脱がしてもらって、エプロンのままではあるがキョトンとしている。
私も書類を手放してノロノロと移動する。ベッドの上で座って私が何をしようとしているのか見守っていたエール先生を押し倒してすぐ横に寝る。
「あの、まだ、仕事が」
「あー、あー……エールせんせーがよこにいてくれれば、なおりがはやくなるきがするなー」
「しかし」
一緒にお風呂に入ったり寝てくれるエール先生だが、前世バレによって少し距離があった。
お互い転んで目線を合わせていたのだが、エール先生のお腹の辺りに少し近づく。
「何処にも行かないで……一緒にいてくださいね?」
「――――……はい」
エール先生に撫でられ、ジュリオンに布団をかけてもらって一緒に寝た。子供らしさを全面に出してずるい気もしたが、甘えることにした。
ジュリオンは警備の方に力を入れるようで張り切っているのが目に見える。
私が寝付いて、それから目を覚ましても――――エール先生は側にいてくれた。
ガニューラ ドワーフの国から来たタナナの一族。自己の安全のためにフリムを死なない程度に具合を悪くしようとした結果大事になった。神官長と一緒に迷宮刑に処されることが決まった。
エール フリムの傍に戻ったようだ。