水魔法ぐらいしか取り柄がないけど現代知識があれば充分だよね?   作:mono-zo

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第223話 生活向上っ!!

 

リューちゃんに甘えられ、エール先生に甘えつつ……数日休むと無事に痛みも残らずに回復できた。

 

スケジュールを確保し、王都での仕事と授業をこなさないといけない。銭湯や洗濯、倉庫に古着、それと薬品販売を見回った。

 

銭湯はいつもどおりだ。強いて言うなら私の像が増えていた。床に取れないぬめりが出来てしまっていたので高圧洗浄で掃除した。ついでで像も破壊しようとすると止められた。

 

洗濯は漂白剤である過酸化水素水(H₂O₂)が無くなっていたので補充。洗濯しても臭いが取れないものも多く、服の保管部屋に嫌な臭いがこもっていたからオゾン(O₃)で臭いをどうにかする。

 

倉庫も問題なかったが湿気の問題でこれまたぬめりがあった。床を高圧洗浄して氷も追加しておいた。契約者も増えていて経営はうまく行っているようだ。

 

賭場でも……やはり掃除と過酸化水素水とオゾンのお掃除コースだ。

 

学園内の水と薬品を売っている店舗でも取れない床の汚れを高圧洗浄……どこでも掃除している気がする。それと、身内向けではあるが全ての店舗でなぜかカレーが普及していた。

 

リヴァイアス産のカレールウ。リヴァイアスからの輸送は氷を出す私がいない関係で鮮魚は減ったが、カレールウはむしろ増えている。賭場でオークション形式の販売をした分は予想以上の売上を叩き出している。

 

簿記を教えたり数字を少しまとめてあげていて気がついたのだが……カレールウの価格がとんでもないことになっていた。

 

香辛料は高額だが、リヴァイアスにいる間に苗を超魔力水で増やしておいた。

 

いや、うん。売ってるのは私で、超魔力水による栽培で暫くの間は安くなっているがそれはうちの派閥の中だけの話だ。基本的に香辛料の値段は高いのは希少性もあるし辺境と呼ばれるリヴァイアスからの輸送費がかかってるのもわかるが………………王宮に導入されてるカレールウの価格、リヴァイアスでの原価の100倍超えてるよ?身内や交流のある貴族向けだけじゃなくて正式にカレー屋開こうかな??

 

現状うちで使う分には身内価格で安価に設定しているから使えるが、なぜか販売用が少量が超高額で売れている。凄まじい値段で取引されているのにはレージリア宰相とシャルルがカレーが食べたいと言ったからだそうな……。経済って……需要と供給怖い。

 

王様が食べたことのあるものなら、貴族が食べたいのもわかる。たまにレシピを売れとかいう輩も増えてきたほどだ。ロライ料理長にルウを直接売るようにしよう。

 

 

こちらに来る前に超魔力水によって増殖させた「ゴムの草木」や「香辛料」、「船に使う木材となる木」は今のところうまく行っているようだ。

 

 

もしかしたら急成長によってすぐに腐ったり、使用用途に使えないほどに味が落ちる可能性もあったので様子を見ている。

 

新しい試みだしまだどうなるかはわからない。ゴムは普通に樹液が出来ているし、スパイスはちょっと大きい程度で味も普通に良い。船になる木材は乾燥にかなりの時間がかかるからまだまだ報告は先となる。

 

 

リヴァイアス領では作りたくても出来なかったこともあるが……やはり王都に戻ってもカレールウがあるのは少し嬉しいな。「いつでも食べれていたもの」が「食べられなくなる」と一気に悲しくなるからね。

 

 

「どうかしましたか?」

 

「いえ……なんでもないです」

 

 

しかし……トルニーが思いの外役に立っている。

 

トルニーは行商をずっとしていただけあって、各領地の『需要』をわかっているから王都からリヴァイアスの行き来を何度もしてもらい何を何処で仕入れて売るかを指示してくれている。

 

氷は海の種族の中でも数人が氷を作れたからわずかながら鮮魚も入ってくる。故にお刺身や新鮮な魚も食べられる。私が作るほどの氷ではないので量は激減したが売れなくてもうちの派閥内で食べる。外に売る分も希少性ゆえ価格は高くなるが少しは売れる。

 

逆に王都には王都の商品もある。特に布地はリヴァイアスでは高値になるそうでこちらからたくさん送っている。

 

それらを調整しているのはトルニーの手腕あってこそだ。一時の儲けよりも信用重視という売り方をしていることによって王都からリヴァイアスに至る周辺の貴族や領民との関係は少し良くなった。

 

 

――――それと私の野望の一つが……進歩している。

 

 

開発でどうしても成功させたかったのが『馬車』である。王都に戻る前に色々と開発を進めていた。

 

初めは板バネを使おうとした。金属の板を重ね、揺れを防止する装置。コイルスプリングでも良かったのだがすぐに折れたり、一度で形を変えてしまうこともあってうまくいかなかったから板バネである。

 

馬車の下部に設置することで荒れた道路から来る振動を防止する。構造も単純で……出来ると思ったのだ。本当は油圧システムを作って……将来的に農業から工作まで何でもこなす油圧ショベルを作りたかった。スプリングの代替品としてたしか使えるような……あやふやだがなにかで見たような気がする。

 

地形を変え、危険な土地開発をこなし、畑を作る。そんな前世の経済に欠かせない素敵車両だったが…………これも全然駄目だった。

 

板バネやコイルスプリングのように原理や理屈も外から見てわかるものと違って油圧の内部構造は全く分からなかった。油が筒に入っていて……それで、どうなれば物を動かしたりできていたのだろうか?

 

 

――――前世の科学技術の本がほしい!!電気とかもモーターには銅線が巻いてあってぐるぐる回すことで電気が発生する…………なんでぇっ!!!??

 

 

……私は勉強が苦手なわけでもなかったのだが、わからないものはわからない。

 

こちらにはこちらの良い部分もある。ボルッソ製巨大アルキメディアン・スクリューは石で出来ているのに何十、何百メートルでも作動するし前世では再現できないと思う。ベアリングも私の想定以上に壊れない。瞬間的に大きな力が加われば砕けるがそれなりに使えている。石なのに素晴らしい。

 

 

ゴムもあるしタイヤを作ってもらおうとしたが全然駄目だった。タイヤはすぐちぎれるし駄目になる。空気を入れるようなことも出来ない。

 

ゴムの色が違う部分がすぐ割れるし、道路には砂利も多くてすぐ刺さる。適度な強度がなくゴム全体にムラがあるのだ。

 

これも基礎的な科学が進んでないからだ。ここは人に任せてゆっくりま…………てないっ!おしりが割れそうなほどに馬車は荒れる!シャルルの空飛ぶ馬車ほしい!頑張れ私の脳!思い出せ!思い出すんだ!!?なにか解決策をっ!!!……そうだ、ゴムに拘る必要はない。ゴムタイヤに置き換わる『ノーパンクタイヤ』というものが開発されようとしていた。それとあれだ、ゴムのタイヤもただ固めるのではなく何層にも分かれていたりゴム布というものがあったはず、テレビではゴムの廃棄が問題になっていて解体がどうとかで……タイヤを切ろうとして火花が出ていたし中にはワイヤーがあった……かも?

 

先進的なノーパンクタイヤには様々な素材が使われていた。ワイヤーだったり樹脂だったり……タイヤを作る以前に、ゴムの品質も上げた方がいい。現在は特定の木の樹液と特定の草のすりつぶした汁を混ぜてゴムを作っているが固まる前によく撹拌し、布とワイヤーに成分が偏らないように染み込ませて――――――

 

「むむむむむ」

 

「一体どこからその発想が来るのでしょうか?」

 

「便利だし良いんじゃない?」

 

 

実験ではコイルスプリングと板バネでは板バネのほうが性能は良かったが金属板を重ねるので車体の重量が一気に増える。土や草の上では車体が沈みやすくなるし道路の荒れ具合とバネの力で馬車の床が割れた。コイルスプリングの性能はそれほど良くないがまだ板バネよりかはマシかも知れない。

 

すぐに成果は挙げられなかったがタイヤとスプリングと車軸用ベアリングの開発は常にしてもらおう。木製のタイヤと木製の車軸だけの何が悪いのかわかってない人もいるが作ってもらいたい。私が乗る特別性の逸品を!!

 

 

……そう思って色々試行錯誤してもらったのが王都に戻るのには間に合わず、油断するとお尻が割れるかと思うほどの衝撃を何度も味わった。車内で水のクッションで落ち着いていたけど、眠い時に激しい揺れで操作ミスしたのは辛かった。

 

 

それでも開発初期の数メートルで動かせなくなかったり壊れていた馬車に比べるとゴムもベアリングもバネもかなり進歩している。

 

ベアリングもコイルスプリングも破損が減ってきているし、タイヤは数メートルで破れることはなくなってきている。

 

トルニーは王都とリヴァイアスを行き来してもらって開発もしてもらっているが……凄まじく馬車の性能が上がっているのは素晴らしい。

 

 

ゴムの開発でトルニーは独自に爵位を授けられてもおかしくはないな。

 

 

私の「フレーミス・タナナ・レーム・ルカリム・リヴァイアス」は正直言って長い。しかし国からの書類への署名やうちの家臣の就任には必ずこの名前を書く必要がある。

 

すごく長い。しかも火の魔導具でコピーもしちゃ駄目。そこでゴムもあることから印鑑を作った。

 

もうね、革新だよ。めちゃくちゃ長い名前だが、以前あった水の名家だし……これを書くのが正しいのはわかる、だけど、何千枚分も書くと腱鞘炎になりそうだった。

 

すでにうちでは大事な書類以外は判子を押しても良いことにしている。ただ、偽装も考えられるし印鑑は豪華なものにしたりと対策も取った。

 

もうね、トルニーは貴族とかになっても良い。報奨金は与えたが世界をひっくり返す偉業だと思う。多分私だけじゃなくてシャルルも喜ぶはずだ。

 

 

「乗り心地はいいですね。これが求めていたものですか?」

 

「ほんの一端です!……便利な物を知ってると、やっぱり自分で不便に感じますし、周りの人にも味わってもらいたいなーと」

 

「このような馬車のある世界だったとは……」

 

「いや、馬車よりももっと進歩していましたが……なんでもないです」

 

 

新しく届いた馬車に乗ってみるとエール先生は褒めてくれた。

 

以前よりは驚くほどに揺れが軽減されている。まぁ自動車ほどではないのだが。

 

エール先生は私がどうしてゴム製品の推進をしているのか疑問だったようだが、異世界の話をしてから納得してくれているようだ。

 

ゴムはまだまだ耐久性も危うい部分もあるがそれでも少しずつ形になってきた。タイヤや緩衝材、判子に靴底などなど、様々なものに利用している。まだまだな部分もあるが。

 

トルニーが成功しているのは嬉しいが……なぜか少し微妙な気分になる。……いや、人格などを否定しているわけではないがゴムの布地の開発によって変な鳥のコートの下、黒いゴムの混じった服や包帯らしきものを巻くようになった。

 

治ったというのになぜか外さないペストマスク型石仮面にド派手な鳥の羽コート、私がいつでも肩に座れるようにとつけられた手すり付き肩パット、素肌に世紀末な革っぽいゴム布の使われたジャケットとズボン、手や腰に巻かれたゴム布の包帯らしき何か…………細い革ベルトが胸辺りの素肌に直接つけられていたのが見えなくなったが、トルニーはもう見かけがおかしい。

 

それも病気は治ってムッキムキになってるからより不審者度合いは増している。

 

報告によると移動中を含めてすでに片手じゃ数えられないほどの職務質問を受けているらしい。私にとっておかしいだけじゃなくて常識人であるエール先生や親であるドゥッガもおかしいと言っていたからなぁ……。しかし有能は有能……うーむ。王宮につれていけないな。

 

トルニーはミュードと話し合った結果、トルニーが跡取り候補となった。トルニーのほうが年上ということもあるが、経験や知識が段違いだからだ。ドゥッガも「自分になにかあったら」と…………トルニーを渋い顔をして長時間見た後に指名した。

 

トルニーも見た目はあれだが思慮深く、家族にも、部下にも優しい一面を持っている。……見た目はあれだが!




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