水魔法ぐらいしか取り柄がないけど現代知識があれば充分だよね?   作:mono-zo

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第224話 ユーススっ!!

 

金属の開発について総括をしているユース老先生に会いに行った。

 

板バネやコイルスプリングについての進歩が一旦落ち着いたように思うし、新たな素材を確かめてみたい。

 

学園や研究には私も貴族として寄付をしている。研究をしているのは賢者のみなさんだが私はスポンサーであり……研究のきっかけとなった一人である。

 

研究の名目で私も合金の一つ一つをスプリングによって検証している。王都からリヴァイアスの間で馬車を使うことによってことで雑だが金属の耐久性を調べることが出来る。

 

道が土だけあって揺れは激しいし、リヴァイアスは海に面していて潮風の影響も受ける。

 

リヴァイアスから王都までは常にうちの人間が移動しているし、もしも馬車が壊れても次から次にうちの人間が来るからなんとかなる。

 

ホイールも金属製にしてみて駄目なら予備に積んでいる既存の木製に交換したり、馬車が完全に使えなくなっても別の馬車に分解して積み直せば良い。商隊ごとに補いあえるような体制にしている。馬車が駄目でもマンパワーでどうにかなっている。

 

合金の開発にお金を出すのは今のところ完全に赤字な事業だが、学園としても「研究に理解のある」「お金を出し渋らない」「研究成果を他国に売り渡しそうにない」私は最適なスポンサーであるらしい。

 

塩で莫大なまでに儲けているし、高額な金属の実験も出せるのが幸いした。良い金属ができればうちは格安で購入できるし優先権がある。……将来、この研究は大きな利益になるだろう。

 

 

「このゴムというのは面白いの!」

 

「今日は、そのゴムの第一人者であるトルニー・ドゥラッゲンを連れてきました」

 

「おぉ!ここまでのものを作っている賢人と聞いておるが!是非とも一度会わせていただきたい!」

 

 

羽根ペンでなにか書き込んでいたユース老先生だがゴムの発展に貢献しているトルニーの名を聞くと手を止めた。

 

トルニーは普段の服装が酷すぎてうちの家の中でも不審者扱いされて数回揉め事となったがキエットが杖を振るって奇抜な服装を改めさせた。

 

キエットのお仕置きはかなりありがたい。

 

私もリヴァイアスの鳥人たちに馴染むためのコートだと思っていたし、病気へのトラウマなら仕方ないと見逃していた。リヴァイアスでは亜人の毛深さもあって服装も着ていたり着ていなかったりでトルニーに注意すると周囲の人も変わるかもしれなかったし注意できなかった。トルニーもリヴァイアスの文化に馴染もうとしていたのかもしれなかったし……慣れって怖いな。

 

 

あのとんでもファッションをうちの派閥の一部ではかっこいいとでも思ったのか――――同じようなマスクと鳥の羽コートのファッションで上半身を晒す一団が増えていた。…………止めてくれたキエットにはボーナスを与えようと思う。

 

 

式典や礼典の際にはまともな服を着てくれるようになって、今日はまともな服装である。普段はまだあの格好をすることもあるが今日はユース老先生に顔を見せるためにまともな服を着るようにと強く言い聞かせた。

 

もっと気弱そうな人望で細身だったのに、ゴリマッチョになっていて……どこかレルケフを思い出してしまうが味方だと思うと心強い。変な人ではあるが。

 

 

「フレーミス・タナナ・レーム・ルカリム・リヴァイアス閣下が配下。『筋鳥』の二つ名で呼ばれているトルニー・ドゥラッゲンです。『過去』の二つ名を持ちオベイロスの未来を創りし賢者ヴァリエタース様にお会いできて光栄です。この出会いを精霊と叡智集まる学園に感謝を」

 

「おぉ、聞いていたようなおかしな人間ではなく聡明そうな青年ではないか!儂はユースス・ドリー・ ヴァリエタースという研究者よ。ユース老ともよく呼ばれるからそう呼ぶがええ!この交わりが叡智広まることに期待する!早速だがゴムについて聞きたいのじゃが!!」

 

 

少し興奮気味のユース老先生だが、トルニーは今回ドゥッガに似せた服を着せている。

 

そもそもあのファッションの理由を聞くとそれぞれに理由があったらしい。

 

石仮面は病気の再発への不安から外しにくくなっていて、鳥の羽根コートは移動で砂利の上でも寝れる暖かさがある特別な品。手すり付き肩パットは私がいつでも座れるように。素肌に革バンドは羽根のコートと隠し武器の固定用。最近増えたゴム製の謎の黒ジャケットと包帯はゴムを防具として使ってみたり耐久実験として使っていたそうだ。

 

……ある意味ユース老先生とは相性がいいだろう。ユース老先生も実験や調べるのが大好きな人だ。

 

 

「これは何じゃ?」

 

「『いかぺん』とフレーミス様に名がつけられました。クラーケンの幼体をいかと呼ぶ地域があるのか、海の豊穣の象徴の姿を模したものです」

 

「ほほう」

 

「筆記具を作っていると聞き及んでおりましたのでゴムで作ってみました」

 

 

イカペンは元筆記具である。卓上の筆記用具を目指したそうだが、インクを噴射する。文字は書けないが氷河で敵兵に戦意があるのか、降参する気なのかをメモしていくのに使われた。

 

今では別の使われ方をしているが……できればペンを発達させるのにその技術を使ってほしいものだ。

 

 

「ゴムには金属を使うこともありまして」

 

「なに?全く性質が異なると思うのじゃが」

 

「性質が違うからこそ便利な部分もあるのです。例えばゴムは柔らかく弾力もあるのですが布や金属を織り込んで層を重ねることで――――」

 

「ほぅ!」

 

 

二人は盛り上がってゴム製品について話している。

 

布にゴムを染み込ませることで幌馬車の耐水性は桁違いに上がった。しかし、紫外線と乾燥に弱いからかすぐにボロボロになってしまった。

 

厚みを増して重ねて作ると頑丈さは増したが重量も跳ね上がって……雨で幌が潰れた。金属のメッシュを混ぜたり鉄筋を入れれば壁のようにもできたし、矢が貫通しないなどのメリットもあったがゴムの使用量も跳ね上がって金属も使うからコストパフォーマンスが酷く悪い。

 

ユース老先生の実験は金属であり、性質を確かめるのには時間がかかる。

 

塩水で錆びさせたり、薬品をかけたり、魔法をぶつけてチェックしているようで成果も出ているように見える。

 

あまりこの国ではこういう研究はよろしく無いとされている。とれたものはとれたまま食べる。あまり加工するのは恵みを授けてくれた精霊に対してよろしくはないという風潮がある。……マヨネーズも革新的と言われていたのが納得である。

 

金属の合金を作るのにも素材を徹底的に厳選して砕いて混ぜて溶かしてを繰り返すこととなる。ゴムは炭を混ぜたり加熱したりで全く別のものが出来るから金属の基礎科学と同じく研究が必要だ。

 

金属もゴムも同じように素材を徹底的に混ぜてこねてをするし同好の士と言っても良いかも知れない。

 

顔合わせとこれまでのバネに使われてきた金属から傾向を話に来ただけなのだが盛り上がっている二人を横目にゴムとバネの研究についてまとめられた書類を見ていた。

 

 

「そう言えばリヴァイアスの宝物庫か禁所辺りにはなにかあったのかの?」

 

「え”っ?!」

 

 

油断していると声がかけられた。

 

…………あったと言えばあった。エロ本の棚がなっ!!

 

ユース老先生はリヴァイアスの当主になった人と仲が良かったそうだし知っているのか?いや、流石に小さな女の子に対して「エロ本はあったか?」とか「エロ本は読んだか?」と聞くのはアウトだろう。ユース老先生はそんな非常識な人間ではない。……となればそうとは知らずに聞いているはず。なんだ?何を聞こうとしているのだろう?驚いて一気に喉が詰まった気がする。水のもう。

 

 

「どうかしたかの?伯爵よりも上ともなるような精霊の加護を授かるような家には特殊な精霊器や武具、オリハルコンやミスリル製の武具もよくある。苦労はなかったかの?流石に血族に罠をかけるような家は少ないがあるにはあるし、見つからないように鍵をかけたり見てもわからないように隠すこともある。持っていかれた記憶に我が友は何かを投げたとか目が疲れると言っておったように思うんじゃよ」

 

「…………もしかして、本がどうとか言ってましたか?」

 

「そうじゃそうじゃ!精霊から取り戻せたわい!しかし何じゃったか……鍵付きで持ってこれないとか量が多くて目が悪くなるとか言っていたように思うんじゃが」

 

 

あれを……エロ本を目が悪くなるほど読んだのか?「鍵」というのは心当たりもある。「目が疲れる」のも読む行為で起こりうる……「投げた」というのも気持ちがわかるが……。

 

 

「何を学んだとか言ってませんでしたか?」

 

「うぅむ……、そういう事は言っておらんかったが」

 

 

聞くべきだろうか?エロ本が棚の一面にあって水魔法について書いていたかと……。

 

水の魔法の幅が広がるのは私にとって生存率を上げることにつながるし、タナナの秘術のように私の持つ現代知識から生み出された魔法以上のものもあるのかもしれない。

 

……………………しかし「鍵カバー付きのエロ本がぎっちり詰まった本棚がリヴァイアスの家にはあるのですが利用法はありますか?」なんて言えるか?

 

 

 

………………………………………………………………

 

 




皆様の応援もあって僕は楽しく書けています(´・ω・`)╯︵ (●>●)
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