水魔法ぐらいしか取り柄がないけど現代知識があれば充分だよね?   作:mono-zo

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第225話 リーザリーっ!!

 

天井の修理は仮のもので未だにちゃんとした修理が出来ていない。

 

本来の天井であれば石を作るだけなのだが片側からのみ開く特殊な金具が完璧に壊れていたからだ。おかげで交流ができる。

 

 

「あいす、ありがとうございます」

 

「いえ、交代の方にも持っていってあげてください」

 

「…………そんな仲間はいません。でもありがとうございます」

 

 

犬耳のお姉さんはなにかルールでもあるのか名前も教えてもらえない。

 

一度覗いた天井裏には明らかに複数人の生活感があったが……「スパイのルール」なのか仲間はいないと話している。なんだろう、ちょっとかっこいい。

 

クラルス先生は最近見かけない。クラルス先生はレージリア宰相の娘で、学園の守護をして、更には薬学を教える派閥の長でもある。リヴァイアスでたくさんの薬草や毒草、香辛料を持って帰ってきた彼女は大忙しだ。溜まっていた仕事もあるだろうしね。

 

貴重な薬草を香辛料をオベイロスでも栽培して良いかと聞かれた。独占状態の維持のためなら断るべきなのだろうけど……もしもリヴァイアスのそれらが天災や病気などで絶えた場合にはまた苗を分けてもらえるように話した。

 

敵対派閥に拡散されて収入源が減るのも困るが、収入は裏での活動費にするように話すと「もしもクラルス先生が死んだ場合、それらの権利をリヴァイアスに返す」と言った内容の書かれた書類を渡されてしまった。ちゃんと戻る保証はどこにもないが、きっと彼女なりの誠意なのだろう。

 

リヴァイアス家としてはおそらくレージリア宰相もしくは王宮の諜報部と仲良くなるのはプラスだ。彼らに能力があるかはこの国の腐敗具合から推察するにイマイチかもしれないが……政争によって人員が激減したことが大きな要因だと思われる。

 

リヴァイアスやクーリディアスから彼らに人材を譲ってもいい。諜報部を全面的にバックアップをするという約束をした。お金も支援しよう。

 

彼らの働きで不正貴族が減ったり、情報がもらえるのは素晴らしい話だ。

 

出来たスパイスで余ったものは高値で売りつけてゴミ貴族から搾り取るなどもしてくれる。なんか王宮の貴族の間でスパイスを懐に持つのが流行ってるみたいだしね。

 

リヴァイアスは駄目貴族共に狙われているし……締め付けられたにも関わらず彼らが懲りたとは思えない。

 

本来こういうのって全部国がやるべきものなのかもしれないが……よくわからない。日本ではスパイがどうのという感覚は殆どなかった。しかし、海外ではスパイ対策は当たり前だったし、日本でも技術や何かしらかの開発物が盗まれるのはある話だった。莫大な経済損失が問題視されていた。

 

 

少し整理して考えてみる。

 

 

なんとなくだが組織の背景も推察できる。この天井を通って宰相の娘であるクラルス先生は移動していたし、エール先生も警戒をしていなかった。そこから察するにきっと王宮や宰相辺りのやっている組織だ。

 

本来一貴族である私が首を突っ込むのはよくないかも知れないが、この国の腐敗具合を鑑みるに必要な投資のはず。

 

シャルルの様子や腐敗貴族を切れずに使ってる点から考えてもきっと人員も予算もあまりない。

 

リヴァイアスにもワーたちが似たような活動をしているしリヴァイアスや私の仲間のためにも支援するから……ちょっとぐらい私たちを優先して守ってくれてもいいのだよ?

 

 

「ではおねーさん、なにか私にとって良さげな情報はないですかね?」

 

「……良いとは?」

 

「私が知っておいたほうが私にとって活動がしやすくなるような『良い』情報です」

 

 

少し雑に聞いた。

 

関係の構築をしていきたいが「スパイとの健全な付き合い方」なんて知ってるわけがない。前世の外国映画ではスーパースパイが知的だったり、ジョークたっぷりのトークスキルがあったりするがこのお姉さんは無口だ。居心地悪そうにしていて隙あらば帰ろうとする。

 

お金で支援している以上「これについて教えて」と指定してしまえば命をかけてでもその情報を取りに行ってしまうかもしれないし……まずは「相手が出せる情報」で「問題のない範囲のもの」を軽く聞いてみたのだ。

 

 

人にはそれぞれ視点がある。同じ人物を見ていても評価が分かれるはずだ。

 

 

エール先生は私のことを妹のように思っているみたいだし、ジュリオンは私を主と思っている。この諜報のお姉さんからしたら「アホ毛の動く侯爵な幼女」程度かもしれない。

 

特殊な仕事をしているお姉さんだからこそ、学園内の誰かを深く見ているかもしれないし……私の身近な範囲でわかるなにか有益な情報があるかもしれない。

 

 

「…………リーザリー様とテルギシア様に気をつけたほうが良いのではないかと思われますが」

 

「え?リーズですか」

 

「はい、彼女たちはご実家がライアーム前王兄殿下の派閥に近いですから」

 

「なるほど?」

 

 

そういえばこちらに帰ってから彼女らを見かけていない。

 

話を聞いてみると彼女らは実家から私の情報を流すように言われたらしく「今はそれどころではない」と勉学に励んでいると実家に連絡しているようだ。

 

 

「それはつまり、私の側についてくれているということでしょうか?」

 

「彼女らの心情まではわかりません」

 

 

彼女らは学友だ。

 

リーズは土の名家のタロースであり、クライグくんとは喧嘩腰だった。しかし、その場に私がいるだけで喧嘩が収まる程度には実家に染まっていなかった。

 

テルギシアは不思議な小動物みたいなボクっ娘で何を考えてるかわからないが……リーズとよく一緒にいる。

 

二人はモーモスが高等学校に進学可能になったことでの対抗心から勉強に集中しているだけかも知れないが……もしも実家よりも私を優先してくれてのことなら、嬉しいな。

 

しかし、どういうつもりなのか。聞いてみたい。家族を裏切れないというのならそれでも良い。…………シャルルもこんな気持ちで私に前世について聞いてきたのだろうか?

 

しかし、私に表立って会えないのなら手紙なんかでやり取りする方法もあるが――――

 

「ちょっとお聞きしたいのですが」

 

「なんでしょう?」

 

「あの穴って私が使っても良いですか?」

 

「えぇ……」

 

 

天井の穴を見上げて聞いてみた。

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

実家から届いた手紙はクソッタレなものだった。

 

とうとう私に「フレーミスの動向を逐一報告しろ」なんてふざけた手紙が来た。

 

確かにフリムはドゥラッゲンのクソッタレとは仲が良い。そして我がタロースはライアーム様の派閥に属している。

 

敵など、どんな相手だって潰して土の下に埋めて精霊に捧げてしまえば良いと学校に来るまでは思っていたが……学園は沢山の人がいた。

 

初めて平民と触れ合って、仲の良いテルギシアといっしょに学園で学んで……「敵」はただ「敵」でないと感じ取った。

 

敵対派閥の同士の子供が同じ学園長の像の元で膝を折って祈っていた。同じ食事を食べ、同じ話題でふざけて笑い合っていた。

 

同じ世代で、いえ、親と子ほど離れていても身分がかけ離れたとしても……笑い合える姿がこの学園にはあった。

 

 

敵は人で……でも、単純に敵ではなく、人なのだから笑い合う事ができる。

 

 

クライグやフリムは家族にとって敵のはずだが……もう私は触れ合ってしまった。

 

クライグは「殺して当然の敵」というだけではなく、魔導具について学び、土の魔法に研鑽を積む少年だ。一緒に仕事をして、同じ趣味もあって、同じ研鑽をして――――同じ人間だと知った。

 

フリムなんて実家やライアームの手紙では酷いものだった。

 

『シャルトルをたらしこんだ悪女で、市井で育った出生も怪しい屑』

 

 

――――――……どこがだろうか?

 

 

子供のことを思って唸って、私達の健康を願って服を洗う場所を作り、あったかいお風呂や美味しい料理を考えてくれる幼い子が悪女?

 

モーモスのような傲慢な肉団子をただ打ち倒すんじゃなくて、反省させ、正しく導こうと努力する子が?

 

……ギレーネによって薬屋が襲撃された時。弱い水の魔法使いなのに騎士の前に飛び出た子が?

 

 

後で聞くと私達に魔法が飛んでいかないように突っ込んだって……馬鹿じゃないかな。

 

弱い水の魔法で前に出て、土の砲弾を受けて水の柔らかい障壁を大きく削られていたじゃない。なのに私達を守るため?

 

あんな小さな子が、年上の私達を守るために前に出て、正しい行いをして、努力しようとしている。そんな子が悪女……どう考えたって間違えているのはクソッタレな実家だ。

 

実家には離縁状を叩きつけてやってもいいが……テルギシアがどう思うかわからないし、ただ迷宮探索が終わるまではフリムと顔を合わせないほうが良いように思う。

 

実家には「早く精霊と契約できるように勉強に集中している。他家の貴族に先を越されて侮られている」と時間を稼いでおいた。

 

迷宮探索までにフリムが王都に帰ってくるかはわからないが帰ってくると仮定して……もしもフリムにクソッタレな動きをするクソガキがいれば私が助けてやれるかもしれない。

 

フリムと触れ合った時間は短い。でも、フリムは正しい人間で、私が認めた私の友達だ。決して敵なんかじゃない。

 

家族と離れるのは寂しいが、正しいことをするように教えてくれたのは実家だ。

 

 

しかし……そろそろ誰かが接触してきてもおかしくはない。

 

 

フリムは学生の代表を決めるのに帰ってきて……クソッタレなことに毒を盛られたらしい。フリムに近い私達に迷宮探索で事故に見せかけるように持ちかけてくるかもしれない。

 

私はフリムと一緒に勉強を受けていたし、利用するには最適なはずだ。

 

まぁ、でもこんな自室で誰かが接触してくるわけ――――

 

 

ベッドで寝ていたのだけど、何かが動いた音がしたと思ったら……天井にぼんやりとフリムがいた。

 

 

「ヒャエバッ?!」

 

 

あまりの出来事に悲鳴が漏れそうになったが、その前に風が口の中に入り込んできて……部屋にぞろぞろと天井から人が入ってきた。

 




予約投稿ミスったので編集頑張った!w

皆様の応援もあって僕は楽しく書けています( [▓▓]_;+皿+*)< ヒャエバッ?!
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