水魔法ぐらいしか取り柄がないけど現代知識があれば充分だよね?   作:mono-zo

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第227話 初単位っ!!

 

リーズの従者の人が起きる前に早急に部屋に戻った。

 

伯父さんのことは聞けたが……一筋縄ではいかなそうな相手のようだ。

 

私も『水の魔法使い』ということで何処か伯父さんを侮っていたのかも知れない。

 

水の量を競い合うのに、魔石は3つも色が変わればそれで良いとされる。それを数百個……そこから察するに水の生成速度も早く、それを持続する力もある。

 

他の生徒は「大きな水」を作り出すのにも時間がかかっていた。蛇口の開き方で出てくる水の量が違うように、人によって水を作り出すのに差が出る。

 

リヴァイアスの支配領域であれば確実に倒せるはずだ。海や天候を操り、軍団が乗って活動できる氷河を作り出し……海を動かす大海嘯も使えた。

 

しかし王都に来て、そこまでの力の行使が難しいとはっきり分かった。水魔法で作った巨大フリムは氷河の上で作ったものと王都の前で作ったものでは全く負担が違っていた。――――ここは、リヴァイアスの支配領域ではない。

 

……もしかしたらだが、伯父さんは私と同等かそれ以上の水の魔法の使い手である。もしくは王都が伯父さんの精霊の支配領域である可能性がある。

 

 

――――対策の必要がある。

 

 

伯父さんについて聞くと伯父さんは水の精霊に愛されていて……その力は強大だ。

 

政争が発生し国中で争いが起きて水の魔法使いが死亡していく中、伯父さんはその力で名家の2つを吸収した。水魔法の使い手ではあるにも関わらず飛び抜けた戦闘能力を有していた。

 

………マズいかも知れない。水の量だけで力量を測れるものではないが……真っ向から一対一で競っても負ける可能性もある。

 

私の存在が邪魔な伯父さんなら私を殺す気満々で戦闘に持ち込んでくる可能性だってある。…………これって「負けても良い」どころか殺されないかな。

 

 

鍛えねばならない……。

 

 

備えるのは大切だ。

 

 

そして

 

 

結果として……

 

 

 

 

わ”た”し”の”た”ん”い”が”っ…………また…………また、遠ざかって……遠ざかってしまった。

 

 

 

 

学校の試験はすっぽかすしかなかった。

 

 

…………勉強より命のほうが大切だ。だから、そう、仕方なかったんだ…………。

 

 

せっかく勉強したのに!予習完璧だったのに!!でも情報収集してみると!ヴェルダース伯父さんの強さがよくわかったけど!!私の初単位がっ!!?

 

 

「はぁーーーー……」

 

「お疲れですか?そんなに大きなため息は流石にはしたないですよ?」

 

「……はい」

 

 

エール先生は大家の長は手加減したうえで勝利するのが当たり前の行事であり、ヴェルダース伯父さんは私に傷をつけるだけでも恥に当たるため「まさか殺されたりはない」という前提だったが……私を殺した場合のライアーム派閥と本家ルカリム派閥のメリットが大きすぎる。

 

水の家として頭角をニョキニョキ現してるうちの家はライアーム派の今後にとって邪魔すぎるし、あと一歩にまで迫っていたシャルル暗殺計画を阻止した最悪最低の因縁をもっている。

 

情報が正しく伝わる保証のないこの世界ではリヴァイアスがオベイロスに襲いかかるなども考えられる。東のリヴァイアス、中央のオベイロス、西のライアームでは私になにかあった時に東のリヴァイアスが中央のオベイロスに向かって襲いかかることも充分に考えられる。そうなればライアーム派にとっては都合がいい。

 

リヴァイアスでは王都の情報なんてあってないようなものだったし、未だにシャルルは恨まれたりしているから……。私が死んだとして「守れなかった」とかでリヴァイアスはオベイロス、いや、シャルルに襲いかかる可能性はある。

 

ライアーム派閥が誘導する可能性は充分に考えられる。しかも、競技に関係なくヴェルダース伯父さんでなくても伯父さんが連れてきた人が裏からこっそり暗殺を試みてくる可能性もある。

 

 

怖いことに……ヴェルダース伯父さん。噂や情報を調べると「めちゃくちゃ強い」という情報が次から次に出てくる。

 

 

水の名家を吸収するだけあってヴェルダース伯父さんの魔法はオベイロスでも歴史に刻まれるほどに強い。しかも魔法だけではなく白兵戦においても騎士団相手に剣を持ってバッサバッサ立ち回り……一度大家としての仕事で王都に来たのに襲撃を受け、周り全体が敵しかいない状況だと言うのにたった一人で城門をぶった切って領地まで帰ったらしい。

 

この国の噂には尾ひれや背びれのみならず孔雀の羽までつくものだが…………もしかしたら伯父さんは戦闘民族かなにかなのかもしれない。

 

私が「傾国の美女」とか「魂が抜けるほどの美しい娼婦」などと呼ばれることもあるように、ヴェルダース伯父さんも「ヒゲが脛まである」とか「精霊の化身」とか「川を見たら出てくる」とか意味不明のものまであった。

 

これまでの「学生の代表と大家の長が何をしてきたか」を調べると、普通に魔法の指導をするなんて事例もあったが……「魔法の打ち合い」や「護衛と一緒に戦う」なんて事例も出てきた。

 

事故に見せかけて殺すとすれば護衛込みの戦闘訓練だな。

 

 

――――少数精鋭で強い仲間を集める必要がある。時間がどんどん取られる。受けられるとわかっている試験を無視しないといけないのが辛い……。

 

 

心が重い。だが、生きていればリソースを別のものに割く必要があるのもわかっている。

 

わかっている。学業をしていても、法事や冠婚葬祭があればそちらを優先しないといけない場合もある。人生においてそちらが優先されるべきとわかってはいる。

 

だけど、やっとで手に入りそうになった単位……勉強して頑張った。だけど勉強自体は「卒業して一人前の貴族として認められるため」だとわかっているし貴族は急ぎで卒業する必要もない。むしろ私の場合は安全のためにもこの学園に長期期間在籍したほうが良い。

 

だけど、だけど……今回はちゃんと勉強して「受けようとすれば受けられる試験」でしかも「確実に単位がもらえる試験」なのに、受けられない。単位ゼロである……ウボァー。

 

 

何が起きても対処できるように出来る限りのことはしないといけない。

 

 

相手が連れてくるかもしれない護衛の情報や味方となってくれるかもしれない仲間……色々調べた。

 

オベイロス最大戦力である『無敵宰相』の二つ名を持つレージリア宰相をこちらのメンバーに入れたかったがそれは流石に駄目らしい。

 

護衛付きでの戦闘訓練では「私の関係者と私の関係者なら一名参加可能」ということがわかった。以前に生徒で病気がちな子がいて「それでも参加したかったから家族の介助つきで参加した」という前例があったからありだ。何だその制度と思ったが……その前例から同じように護衛や家庭教師と一緒に戦ったという記録が残っていた。

 

しかし、どんな属性の人間がいても雷属性のブレーリグスが敵に回っている以上やれることは少ない。

 

逆転の発想で彼を寝返らせることも…………難しいか。雷の属性は超希少で他にはローガ将軍しか知らないが彼は政治大嫌いで動かすのが難しい。

 

生徒の名簿を調べてみると一人いたが――――

 

「あ、ああ、あの、なんデしょうか?」

 

「―――いえ、リコライはそのままでいてください」

 

 

リコライは紫の髪の色だが、雷の属性はそうなるものなのだろうか?

 

本人に頼んで魔法を使ってもらっても握手でピリピリするぐらいの威力。肩こりには良さそうだが戦闘は無理だ。

 

 

「ブレーリグスとローガ将軍の弱みはないかな……」

 

「うちのおじいちゃんを弱みで動かそうとしないでよ」

 

「すいません」

 

 

リーズに怒られた。

 

リーズとは表立って会わないほうが裏でリーズに接触する人がいるかもしれないということで深夜に密会するようになった。リーズの従者の人は以前の襲撃……じゃない、お部屋訪問後に賄賂でこちらの味方となった。ちゃんと「監視付き」だと伝えたし何もしないと良いのだが……。

 

迷宮探索への準備はエルストラさん任せで……対策に右往左往している。

 

 

「そういえばおじいちゃんは昔から人を探してて、その人を見つけられたらどんな願いも叶えてくれるって聞いたことがあるわよ」

 

「有名ですね」

 

 

エール先生によると有名らしい。

 

ローガ将軍は味方してくれそうにないが……有益な情報を見つけることができれば、もしかしたら秘伝の雷属性の魔導具でも借りられるかもしれない。

 

聞いてみるとローガ将軍には歳のかなり離れた弟がいたそうだ。

 

リーズによるとその子供は優秀で可愛くて、可愛くて優秀で、可愛くて可愛いという特徴があるらしい。なるほどわからん。

 

優秀で可愛いのはわかったがローガ将軍と10歳以上離れたその子は優秀で……ローガ将軍の家督継承が期待されている中、家族によってその弟は行方不明になったらしい。

 

 

「弟をローブの内に隠すほど可愛がってたおじいちゃんは激怒してね。それからおじいちゃんは家を出ちゃったのよ」

 

 

ローガ将軍はそのことがきっかけで家とはほぼ絶縁。

 

軍に入って雷魔法で功績を積み重ねて将軍になった。将軍になってからは誰も手につけないような仕事をこなしつつ国中を探しているそうだ。

 

 

「弟を見つけることができればおじいちゃんが何でもお礼してくれるそうよ」

 

「なるほど、その弟さんのお名前は?」

 

「探す気?30年以上見つかってないし、もう死んじゃってるかも知れないのよ?」

 

「望みは薄そうですが、手の空いた人に調べてもらうことぐらいならしてもらおうかなと。ほら、もしかしたらクーリディアスにいるかも知れませんし」

 

「……そう、ありがとう。似顔絵があるから見てみて!」

 

 

望みは薄いと言うか、ほぼ不可能かもしれない。

 

ただ、見つかればいいし、見つからなくても恩に感じたローガ将軍がなにか手助けしてくれるかも?

 

 

「えぇ……」

 

「これで見つけるのは無理でしょう」

 

 

似顔絵が出されたが、たしかに凄く可愛い。モデルの子みたいで……まるで天使のようだ。

 

プニッとしたほっぺに、豪華なおくるみにくるまれている多分乳児の絵。たしかに可愛い。…………しかし、これは使えない。

 

生きていれば現在50歳ほどだ。この絵では全然使えない。名前はアールゲース・エフヨー・チャチャクス・ローガ。

 

 

「あ、生きてたらですけど……もしかしたら見つけられるかもです」

 

「心当たりでもあるの!!?」

 

「最近城で見つかった侯爵以上が使える『人の生死がわかるけど迷子になったら飲み込まれそうな部屋』ってのがあるのですよ」

 

「なにそれ怖い」

 

「え?あれ……?」

 

 

説明が悪かったかもしれない。というかあの部屋の話は良くないかもしれないし、ちょっとごまかしておいた。

 




魔石の色を変えられた数。
精霊なしの生徒が3個色を変えられれば良い方。1~2個の生徒が多い。
757 ヴェルダース伯父上
34 フリム
12 エルストラ
7 ガニューラ
4 ナーシュ
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