水魔法ぐらいしか取り柄がないけど現代知識があれば充分だよね?   作:mono-zo

250 / 391
第233話 文通っ!!

 

ダンジョンの演習は問題なく終わって学園に帰った。

 

誰かと揉めることもなく帰れたが疲れた。装備のガチャガチャ擦れる音は耳につくし、洞窟だったからか遠くの戦闘音も結構響いていた。

 

更に人にまで警戒しないといけないし……あまり良くは眠れなかった。騒いでる生徒もいるしね。

 

 

眠いが、やらないといけない仕事は多い。リヴァイアスからも応援を呼んだ。

 

エルストラさんによるとヴェルダース伯父さんが王都に来ることは決まった。

 

ヴェルダース伯父さんからすれば王都に来るだけで暗殺される可能性もある。ライアーム派の人間の中でも屋台骨となっていることもあって……ライアーム派に致命的な一撃を与えたい貴族も多い。出向いてくるのは危険なはずだ。

 

しかし、学生からの挑戦状、しかも5歳か6歳の子供からの挑戦を無視すれば大家の長として大恥であるとして歴史に名を刻むことになる。

 

王宮の残念貴族共なら闇討ちをやりかねないが……私の立場からすれば正当な方法で打倒しないとその後の支持は得られないし恨みを買うのは私だ。だからそんな事態が起こらないようにするためにも王都に来る彼らの安全を確保する必要がある。

 

 

「食べ物は何が良いでしょうか?」

 

「フリムの作るものなら何でも喜んで食べるはずです」

 

「……なるほど、では各人の食べられないものを教えてもらってもいいですか?」

 

「フリムの用意したものを食べられないのなら果物でも用意しておけば良いのでは?」

 

「なるほど」

 

 

エルストラさんとたまに会って打ち合わせする。

 

エール先生もエルストラさんも出迎える必要性を理解していないような気がするが……私は必要だと思っている。

 

 

まだヴェルダース伯父さんが来る日程まではわからないが準備は進めている。

 

 

ライアーム派閥の中でも人員の多い本家ルカリムを王都に迎えた後に何が起こるかがわからない。ヴェルダース伯父さんに随行する人員以外にライアームは確実に監視をつけてくるはず、私への刺客もマシマシで。

 

たかが学生の行事のはずなのに……内紛、いや、外国の力を借りてライアームが戦争を起こす事にも繋がりかねない。

 

 

もしもそうなれば私は『誰を守って、どう行動するか』を考えないといけない。

 

 

家臣や仲間、保護者に友達が、今の私にはいる。上に立つ者として可能性を考え、金と時間をかけ……保険をかけないといけない。

 

オベイロス王都や周囲の領地には既にリヴァイアスの人員を配置している。

 

以前クリータに花嫁作戦を実行したときと同じく、オベイロスに塩や交易品を輸送するのと同時に……ゆっくりとだが人員を伏せていっている。

 

既に王都の何箇所にも武器を運び人員を呼び込んでいる。以前神殿入りしたギレーネが離れにテロリストを匿っていたが……あれは有効だった。『いるはずのない人員がいる』それだけで出来ることも増える。

 

塩やミネラルブロック、ブラシや他国からの交易品。量は少ないが鮮魚や干物、そして大量のトーテムヘッドなどをピストン輸送して売っている。

 

トーテムはそのものが虫よけの蚊取り線香のようなものだ。試しに使ってみるとそこそこ良い香りがするのだが……嗅覚の鋭い獣人にはちょっとキツイらしい。

 

リヴァイアスでは「使ってもいいけど使うぐらいなら我慢する」程度の邪魔な木扱いされているため交易が盛んになったこともあってここぞとばかりに売られている。

 

薪にすると獣人の鼻の感覚ではとんでもなく臭うし、口や目をくり抜いた時に出る木屑をうっかり燃やすと数件先でも臭いがするとリヴァイアスではたまに事故も起きているようである。獣人同士で合図にも出来るからうちの関係の家には何処にでも置いているが……これがリヴァイアスの名産って思われているそうだ。

 

――――……商売の影で着実に人を王都に増やしている。

 

独自の地図を作り、秘密の拠点を作り、戦争になった場合に有利になりそうな道を把握。大軍に追われた場合に有利な地形まで調べている。

 

金に糸目はつけない。じっくりと……かつこっそりと行う。

 

クラルス先生にもいくつかの隠れ家を紹介してもらった。

 

最低でも私の仲間や大切な人がリヴァイアスに逃げられるだけの人員を用意しないと……。

 

 

それにしても『要人警護』とかめちゃくちゃ面倒だ。

 

初めは堂々とうちの人員を王都に呼ぼうとしたが貴族共は「リヴァイアスが反逆を!?」なんて騒ぐ騒ぐ。許可を出すシャルルを見て「どうやって王をたらしこんだのだ?」なんて言われる始末。流石に私の目の前でそんな事を言ったバカ貴族は騎士によってどこかに連れ去られた。

 

政治的に考えて本来は王の騎士団が出迎えて安全を確保するべきだろうけど、その騎士団の中には政争で大切な家族を失った人もいる。更に「殺してしまえばライアーム派閥は屋台骨を失う」「出世へのチャンス」などと考えるような人もいる。……王都の騎士団に任せることは出来ない。

 

学生の行事で、学生からの要請である。出迎える私が配慮するのもおかしくはないだろうという事にはなった。以前にも次期子爵当主の学生が出迎えた事例があったから許された。

 

前世のニュースでも「国家元首がどこかの国に行く」なんてことはあった。そして歴史上どこの国でも「別の国の偉い人が事件や事故に合う」なんて事例もあったのだが……あれが起きると原因が何であれ両国間の問題になったりもする。

 

もちろん株価や経済にも多大な影響を残す。もちろん両国間の関係性や会談の内容にもよるが宣戦布告や経済制裁も考えられる。なにか事件が起きた場合と何事もなかった場合の経済損失はゼミか何かで調べたことがあったが……自分が警護側に回るなんて思いもしなかったよ。

 

裏で伏せておく人員に、表立って警備してもらう人員……出来る事は全てしないと…………。

 

 

「ここまでやる必要があるのですかね?」

 

「エール先生、もしもなにか事故や事件がおきたとしても『こちらもこれだけのことをしました』と伝えることが出来ると思います」

 

「……そういうものですか?」

 

「はい」

 

 

もしも何かが起きた場合……考えたくはないがヴェルダース伯父さんが死亡した場合には戦争の引き金になりかねない。流石に『派閥の長の死亡』は派閥の人間にとって報復を考えるだろうし……ん?向こうにも標準的な腐れ貴族がいる前提で考えるなら外敵だけじゃなくてヴェルダース伯父さんをヴェルダース伯父さんの配下からも守る必要がある?

 

いや……そうならないためにも、万全の状況を作り出して出迎える必要がある。そうなったとしても戦争にならないように最善を尽くす必要がある。

 

伯父さんにはできれば私の味方になってもらいたい。派閥の長であるわけだし、簡単に行くものではないと思うが……そのためにエルストラさんを通して文通している。

 

伯父さんが連れてくる人員について「誰を連れてくるのか」「好物や嫌いなもの」など事細かく聞いている。手紙でわからない部分はたまにエルストラさんと会って話す。内容が「本家ルカリム家当主の安全のため」なので護衛であるブレーリグスも聞いてもらって構わない。

 

しかし「確実に来るはずの人間」や「来るかもしれない人間」「来ないはずだが来るかもしれない人間」など……警備上の人員配置や警備日程を考える以上にたくさんの人間のリストを覚えないといけない。

 

 

しかも、最悪なことに……名前が覚えられないっ!!!

 

 

伯父であり水の属性の大家の長である「ヴェルダース」は確実に来る。

 

しかし、もちろん一人で来るわけがない。敵対国の大臣のようなものだろうか?二つ名持ちの護衛も来るはず。それは良い……ぜひとも伯父さんを守ってもらいたい…………しかし、そこじゃないんだ。

 

 

「ディグレス」「ビグレス」「レドリレス」「キーリアン」「ディリーレス」「レドーレス」「ウォールンレース」「レスリグ」「ディレス」「フェッカーリンリグ」「リィディーレス」「タローレス」「リグレス」「ダールレス」「ヴァンリグ」「マリレス」「ゴルドリングレン」「レドレス」「リダレス」「ブレーリグス」「ブジヤマディレググズ」「ローガレス」「リグリグ」

 

 

名前の法則性が……非常にめんどくさい。覚えきれない。

 

ライアームのいる西方の地には何柱かの精霊が崇拝し、祀られている。珍しいことに精霊の名前が「リングーレグ」「リーグリス」「キーリディグレス」など似ているため……西方の人間はそこから少し名前を頂戴するとかでありがたがってつけるそうだ。

 

……凄まじく覚えられない。同じ名前の人も多くいる。ブレーリグスに至っては二人もいる。しかも家名とファーストネーム、セカンドネームがそれぞれシャッフルしたような人間も複数いる。同姓同名の人間も勿論いる。同じ家名だと安心していたら喧嘩別れした家であって家名は同じでも憎み合っている別の家だとか……歴史の授業なんて目じゃないほどキツイ。

 

オベイロスから見て西部と北東部、それと点在して似た名前の人が多い地域もあるそうだ。ディガッシュ商会ゴーガッシュも名前に「ガッシュ」とつけるようにしていたそうだ。「親や親族、偉人や精霊から名前をつける」…………これも文化かもしれない。

 

 

「うぬぬぬぬ」

 

「フリム様、一旦休憩しませんか?」

 

「エール先生……なんでこんなに似た名前が多いのでしょうか?」

 

「そうですね。健康を願ったり、貴族としての伝統であったりもしますが……『偉人のように素晴らしい人物になってほしい』『精霊のようにいつまでも強い存在でいてほしい』など、親は生まれてくる子の将来を願ってつけるのでしょう」

 

「…………なるほど」

 

 

良い話な気もするが、それで今は私は苦しめられている。

 

リストの中には似た名前の人物がとても多い……最悪すぎる。しかも貴族であればあるほどこのような名前は多いようで、リストが「見たことのない古代言語」のように全然覚えられない。ところてん方式でその時見た名前を見ているときだけしか覚えていられない。さっき覚えたはずの名前なんだっけ?

 

 

リーズの部屋にクラルス先生と名無しのわんこ諜報員おねーさんで訪問して話を聞きつつ皆でカレーを食べた。ダンジョンという閉鎖空間で香りの凄いカレーを食べられずに恨めしそうにしてたしね。

 

エルストラ・コーズ・ルカリムさんの思う「要注意人物」とリーザリー・ローガ・レンジ・タロースの思う「要注意人物」では違うかもしれない。

 

エルストラさんは結構な期間をこの学園で過ごしたわけだが、リーズは西方の出身で入学まではそちらに居たわけだし……なにか別の情報が出てくるかも知れない。

 

エルストラさんからの手紙は送るとすぐに返信が来るし、嘘は感じられないが情報源は多いほうが良い。

 




皆様の応援もあって僕は楽しく書けていますオテガミ(╯°□°)╯︵ □
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。