水魔法ぐらいしか取り柄がないけど現代知識があれば充分だよね?   作:mono-zo

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第255話 お見合い の 挨拶

 

「これからよろしくね?」

 

「はい、オッヴァーディア様……これからよろしくお願いします」

 

「陛下にお話伺っておりますから、こちらの席にどうぞ」

 

「ありがとうございます」

 

 

王宮、いや、王宮と後宮に部屋を用意されたので住んでも良いと認められた。

 

私が使うことになったのは後宮の中の水属性の一室だ。建物は水の宮とか水宮とかそのまま呼ばれていてとても装飾が綺羅びやかだ。青色が中心である。

 

『後宮の常識』なんて前世の知識にも無いため、とても興味深い。ここに住む令嬢はある程度属性ごとに部屋を振り分けられるが属性ごとの事情があるようだ。

 

喧嘩が起きても火の令嬢同士であればある程度耐性があるし、風は他の属性の人間に盗み聞きされると他の属性の人間に嫌がられて離れている。土は岩の砲弾が飛び交う喧嘩が起きることがあるので壁が桁違いに分厚いし、何故か落とし穴が作られることもある。水は他の属性の人と喧嘩になると負けるため警備上の問題で隔離される。

 

部屋を紹介されて荷物を入れてもらっているとオッヴァーディア様が迎えに来た。

 

オッヴァーディア様は王家に養子に入り、後に貴族派の大貴族に嫁いだ。しかし旦那さんは流行病で死亡。現在は王宮で貴族派の筆頭として働いているが後宮の仕事もしている。

 

貴族派閥は基本腐ってるし、前の前の王が養子にしたオッヴァーディア様を現在の王家は無碍に出来ない。ゴミ貴族たちは自分で王家に直接文句は言えなくてもオッヴァーディア様を通してなら要望という形で言える。

 

彼女自身は貴族派閥をまとめるのも後宮で働くのも精力的である。基本的に強い権力を持つし……そんな彼女の案内はとても頼りになる。

 

 

「こちらの御令嬢は北方ゲヴェリマーレ家の~」

 

 

そして毎日王宮内に特設された会場で令嬢や子息の紹介を座って受けている。

 

 

――――……何を考えたのか、貴族発案のこの挨拶会はとてつもなく趣味が悪い。

 

 

オペラの会場のような作りで通常の観客席に当たる場所に地方から来た令嬢や子息が集められていて、一人ずつ壇上に上がって紹介をされる。

 

2階の特別席のような場所に王都の貴族がいて……薄いシルクのような布を挟んでそれを眺める。

 

これは『地方から来た貴族師弟から中央の貴族師弟に対して行われる紹介』であって決してその逆ではない。中央の貴族は明らかに地方の貴族を下に見ている。

 

 

彼らは紹介されて、私たちはそれを見ているだけ――――……既にかなり陰険である。

 

 

私はこれ以上のなにかを仕掛けて令嬢の本性を見れるようにしないといけないのか……青年であるシャルルのために「おばちゃん一肌脱いでやりますか」みたいな心境もあったのだが。

 

しっかり生きることを決意したばかりだったのに、なんだかなぁ。まぁ裏側から彼女らの性格を見て記録していくだけでも良いのかもしれない。

 

これからはある程度共同生活をしながら彼らと接することになるわけだが、他にも恐ろしいことがあった。

 

レージリア宰相やオッヴァーディア様の考えをあらかじめ聞いていたのだが、この策は国を割らないためにも次代のためにたくさんの人間を婚約させて少しでも国をまとめようとしている。

 

 

それはわかるのだが…………。

 

 

下は乳飲み子らしき子供から上は――――……ローガンまでいる。

 

ローガンである。うちの……。うん、私ね。もっと若い人ばかりで考えてたよ。

 

考えてみれば400年以上生きているレージリア宰相からすれば全員子どものようなものかもしれないが……オベイロスは現状、政争によって人も減ったし、爵位継承や領地、そして精霊などの要因から婚姻に関する問題が多々あるそうだ。

 

政争によって爵位継承の問題がまだ解決していなかったりするケースもあったり、爵位継承者が軒並み亡くなっていたりして……結構な年齢の人も呼び出されている。それに離婚の理由でよくあるのが「その地の主である精霊が嫁や婿を気に入らなければ離婚」なんてこともそこそこあるそうな。

 

お陰で言葉も話せなさそう子供もいれば、かなりの年齢の人まで集められている。

 

 

「この国は継承の問題が多くあるから……ちなみにあそこ見て」

 

「―――――――…………えっ、うわぁ」

 

 

中央の貴族の中にも未婚の令嬢もいる。2階の部屋はそこそこ広いのだが、その中によく見た顔があった。鎖でぐるぐる巻きになって椅子に縛られたクラルス先生。そして学園長であるフィレーだ。

 

年齢不詳の2人も未婚だからとこの会に参加することになったようで……やたらと可愛い服を着せられている。

 

壁側でレージリア宰相とエンカテイナー侯爵がニコニコと見守っている。対象的に当人たちは全てを諦めたかのような、燃え尽きたかのような生気のない表情となっている。なんだか見ていられない、こっち見ないで。

 

参加者には王宮で働いている人も結構いるし、仕事はもちろんしないといけないがそれ以外はできるだけこのお見合い大会に参加するように申し付けられている。

 

様々な事情で未婚であったり爵位継承に問題の有りそうな人を集められるだけ集めたと……明らかにやる気のなさそうな人もいるが本人たちの意思でなかったのは服装の気合や表情で見て取れる。可哀想に。

 

 

招集される子息令嬢の一覧にはうちの人間も多くいた。

 

 

クーリディアス元王子イリーアン。彼女が選ばれるのはシャルルと結ばれればクーリディアス領に介入できそうだからだろうけど、どう考えてもアモスと良い仲だからなぁ……。補佐役としていて貰うことにしよう。現在リヴァイアスから移動中。

 

次に人魚の長ケミール・ヴォ・ドール。海の種族のまとめ役だし、彼女がオベイロスと結ばれれば……うん、ゴミ貴族たちによる私の力を削ぐためか。でも移動に制限もかかるしどう考えても選ばれることはない。現在彼女は輸送中である。

 

ミリーは希少な光属性、ミキキシカも特別な目があるからか……シャルルの婚姻相手として一応ピックアップされてこのお見合い大会に呼ばれている。

 

男性陣にはモーモスは呼ばれているし、ドゥッガの息子ということでトルニーもいる。正直不安でしか無い。

 

しかしローガン……彼にはリヴァイアス侯爵の権力によって男爵位を与えたのだがこの会にはどこぞの自由な将軍様が押し込んだそうだ。ローガンはとてもお怒りだったが…………国を上げての行事になったし、他にも多くの貴族が集められたことで諦めたようだ。

 

精霊や魔法のある世界だからか、身分だけではなく特別な才能がある人間も参加しているようである。「精霊と縁を持った平民の人」とか「超お金持ちの商人の子供」とかもいる。

 

しかし、おじさんおばさん、いや、初老とも言える人間が成人しているかも怪しい年齢の子供に話しかけている構図は犯罪臭しかしない。貴族だしそういうものなのかもしれないけど。

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

 

「これは些細ですが私共からフレーミス様へのお気持ちです」

 

「ありがとうございます」

 

 

地方の師弟のお披露目会を終わると彼らは個別に挨拶に来る。

 

しかし様子がおかしい。情報によると私以外の場所に挨拶に行ったことが原因と思われる。

 

ただの挨拶のはずなのに彼らは『田舎者など待たせておけば良い』とでも思われているようで面会の約束をしていても「そんな予定はなかった。帰れ帰れ」と追い返されたりもするそうだ。

 

身分や派閥もあるが基本的に挨拶は身分の高い人から順に行う。

 

私の場合はシャルルの相談役や侯爵としての仕事もあってそもそも時間もないし予約制にしてだいぶん待たせてしまっている。これは悪役令嬢として考えた嫌がらせではない。待たせるというだけでも心象を悪くするし、できるだけ時間はとっている。

 

普通に挨拶をされて、普通にこれからよろしくと常識的に返していくだけ。

 

私を値踏みをしているとわかる人もいるが水宮の私の私室には仕事の書類が山ほどあるし忙しいというのが伝わるのか、それとも他にも挨拶する必要があるからか皆手早く帰る。

 

しかし、挨拶後、何故かはわからないがうちの派閥に来たいという人もいて少々困る。

 

今は仕事もあって手が回らないと伝えるが……これはどういうことだろうか?

 

ライアーム派閥筆頭家臣である伯父上を倒した噂が広がっているのだろうか?それとも伯父上が裏から手を回している?……しかし、そのような裏の連絡も来ていないし意味がわからない。全員の身元を調べるのにも時間がかかるし、来るのは良いけどまずは履歴書が欲しい。……挨拶ではなく人事面接の気分だ。

 

頭が痛くなってきそうだ。急激に人が増えていることから多少の問題も起きている。喧嘩は日常的に報告で受けているし、他にも考えないといけないことも多い。

 

ライアームの息子や娘、それに外国からも人が来る。外国から来るのはシャルルの婚姻候補の相手である。彼らは皆恐ろしくゆっくり移動していると報告を受けている。時間をかけることで威厳や経済力を見せつけているという風習もあるが……ライアームの息子とはどんな子供だろうか?

 

 

……いや、いつ来るかもまだまだわからない人物のことよりも直近で気をつけないといけない懸念事項がある。

 

 

エルストラさん含む元々シャルルの婚約者の中でも最有力候補である数人の『筆頭婚約者』。彼女らには建前上シャルルの本命である私に『挨拶をしに来るか、それとも私から挨拶に行くか』という問題がある。

 

私に挨拶に来るか。それとも私が挨拶に行くか。たったそれだけなのに――――『挨拶に行く側は下で、挨拶に迎える側が上』というマウントの取り合いがあるのだ。

 

たかが挨拶。たったそれだけなのにとてつもなく面倒である。

 

まぁ無視して仕事しておこう。それによって彼女らがどう出るかで本性が見れるかもしれない。悪役令嬢と言えばそういうものだと思うし。

 




予約ミスってました。

フリム、悪役令嬢である!
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