水魔法ぐらいしか取り柄がないけど現代知識があれば充分だよね?   作:mono-zo

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第29話 魔法の練習と属性の大家。

 

広い場所で魔法が好き放題使えるというのは気分がいい。制御の甘い5本の高圧洗浄ビームよりも3本まで減らして自分の近くに水の膜を張ったほうが良いことに気がついた。

 

高圧洗浄で弾けた汚れが水の膜に当たって服が汚れにくくなる。あと石のかけら、極稀に砕けたものが当たって微妙に痛かったのが防げる。

 

像らしき何かも元の状態が悪かったこともあってか「ぶっ壊れてもいい」と言われていることだし、過酸化水素やアルカリ水、酸性水、オゾン水をかけてみたりもした。過酸化水素は汚れに有効な気もするがやはり高圧洗浄で根こそぎ汚れを吹き飛ばしたほうが手っ取り早い。

 

墓石の汚れには消毒液が良いって聞いたことがあるが、多分高圧洗浄出来ない環境下だろうし、そもそもこんなに土が堆積していたら効果もないんじゃないかな。

 

魔法で水が操作できるし高圧洗浄以外にもいろいろ試してみた。

 

 

「<水よ。出ろ>」

 

 

大きく水を空中に作り出して操作していく。ぐるぐると回す。表面は波打っているが見た目では透明だからわかりにくい。

 

 

「<水よ。回って汚れを削りとれ>」

 

 

高圧洗浄では苔や土も飛ぶので自分がめちゃくちゃ汚れる。

 

水の膜のバリアだけでは練習が足りないのか、多少マシになったとは言え結構汚れが飛んでくる。まだ防護服から着替えられないな。

 

渦巻き魔法でも汚れは取れるがやはり高圧洗浄魔法のほうが汚れは落ちる。ただ水を出し続けるわけじゃないから消費は抑えられる。

 

でも操作に手間取るのと汚れが落ちにくいから時間もかかってトントンな気もする。汚れきってどろどろの水は操作しにくくなるし。

 

 

「フリム、飯だぞー」

 

「はーい」

 

 

バーサル様は1日に二度はこちらに来て食事を届けてくれる。3食食べさせてくれと言いたいところだけどこっちでは食事の回数は結構雑い。2食が普通なのか3食が普通なのかは身分で違うのかも知れないな。「余分が出なかったらお前らの分はなしな」なんてことも身分が低ければ結構ある。

 

それでもお腹が空くことはない。何時でも間食できるようにとパンや果物も過剰なぐらいおいて行ってくれるし……私がお菓子につられないようにするためか街で売ってるお菓子も持ってきてくれる。

 

蔦の籠で出来たバスケットに可愛らしい布地で包まれたお菓子。

 

可愛い女の子が持ってきてくれたら様になるかもしれないが、ムキムキで顔がマフィアのバーサル様が持つとなんか危ない物でも入ってそうだと思ったのは内緒だ。

 

 

「そう言えばドゥラッゲンの家の当主様は見ていませんが大丈夫なのでしょうか?」

 

「忙しくてな、ちょっと前まで王城は戦場だったから修復がな」

 

「詳しくおねがいします」

 

「誰でも知ってる話だろ……いや、数年前だしお前が生まれる前かもな」

 

 

数年前、ここでは王位継承権の問題が発生して骨肉の争いがあったらしい。

 

対立貴族に毒を盛るのは当たり前で最終的に城の中で戦いが発生、攻撃魔法で破壊されまくった結果、城が壊れまくったと。

 

 

「誰が直すと思ってんだあのクソどもは……」

 

 

怨嗟の声が漏れ出たがドゥラッゲン家は城や各地の修復でこの数年大忙しだそうだ。バーサル様がいないのは修復作業が忙しいからのようだ。

 

 

「今の王様はどんな王様なんですか?」

 

「ん?この間の祭りで披露したんだがいい出来だったろ?」

 

 

何かを披露したようだが像とかかな?

 

 

「賭場が忙しくて足を運べませんでした」

 

「じゃあ仕方ねぇな」

 

 

数少ない街のお菓子をバリバリ食べているバーサル様、この人甘党なのかな?

 

甘くないクッキーに溶かした糖をかけたようなお菓子。甘味が身に染みるが激甘部分が分厚くて噛み砕けない。仕方なく口に入れているけど甘々でかなり癖のある角砂糖を舐めている気分だ。

 

 

「まだ若いが悪くない王だ。世の中の理をよくわかっておられる」

 

 

最終的に死者も多く出た王位継承は王様の言葉で収まった。

 

「各々の信ずるものもあるだろうが覇権を握ってどうなる!他者を追いやり、潰し合い!その後この国に何が残る!!どの属性だろうとこの国には必要なものだがどの家の人間も減ってしまった!最後に自分の家だけ残ったとしてもそれは今までの国とはならない!その頃には各々の家のものが減り!最後には隣国に食い荒らされて終わるだろう!!そこまでわかっているのか!!!」

 

 

鼻をふくらませて王様のマネをしてくれるバーサル様。

 

もしかしたらファン……いや信奉者なのかも知れない。

 

 

「おぉ~」

 

「そう言って戦争は終結。その頃、いくつかの国境が襲われていてどの家の人間も目を覚ましたんだろうな。まぁ後始末には俺ら土と石の家であるドゥラッゲンが駆り出されてるわけだが……」

 

 

そう言えば聞きたいことがあった。勉強の内容でこの国では多分大事なことだ。

 

 

「四大属性の大家っていくつあるんですか?4つじゃありませんよね?」

 

 

魔導書に出てくる家の名前の数が明らかに多い。もっと読み進めれば答えが書いてあるかも知れないが、働いてるここでは必要になってくるかも知れない。

 

 

「よく勉強してるな。各属性には大家と言われる家は属性につき一つだ。その座を争っている家がいくつかある。大家となれるほどの家は名家と呼ばれて……今は火が3つ、風が4つ、水が1つ……………土が2つだ」

 

 

名家が国家代表級の家で、その中で大家が選ばれる。

 

魔導書で勉強した。どこの国でも差異はあるが基本の属性は似たようなものである。国同士の最高戦力を見せ合うような風習があり、各属性の代表を選ぶのに必要なのだとか。

 

ドゥラッゲン家の庭園でもなんか洗わなくてもいいという説明のあった像は別の土属性の家らしい。みみっちいというかなんというか……。

 

代表となればそれだけ栄誉なことであり、国から金も出るからどの家もその座を目指す。

 

 

「水は1つなんですか?」

 

「元は4つあったんだが一つは内乱、一つは国境での戦争で減って、2つは火が暴れすぎて家の人間が減ったから婚姻、一つになった」

 

「へー、魔導書の説明とは結構違いますね」

 

「最近の話だからなぁ」

 

 

それにしても貴族社会やべー……政権が変わるだけで戦争とか内乱とか嫌だわ。

 

フリムちゃんの元々の出自が旅の魔法使いだったのか平民だったのかそれともそれらの家の出なのかは分からないが聞いておいて損のない話だった。

 

魔導書には属性による性能の違いがよく書かれていた。

 

火は火炎放射ができるし、風は自分の体ごと飛ばす高速移動が可能。だから戦場では恐ろしく力を発揮するし術者は死ににくい。

 

土は壁を作れるし長期戦になれば誰もその壁を突き破れない。魔導書によるとドゥラッゲン本家は山の上で要塞を作っているそうな……。

 

そして水は戦闘向きではない。火や風よりも射程距離がないし射出速度も遅いと書いてある。それに水を出すのには魔力も土ほどではないが多く必要で戦闘になったら弱い。

 

あれかな?風は気体だし、火はプラズマ、水は液体、土は固体……魔力の使用量や効果範囲、展開速度にはそういう部分も関わっているのかも知れない。

 

火は効果範囲も殺傷能力も抜群で戦闘では太刀打ちできない。風は直接的な殺傷能力はあまりないらしいが眼の前にいれば立つことも出来ないらしい。土属性は岩とか飛ばせるらしい……水では防げないな。

 

じゃあ水の属性の人は争いに関わらなきゃ良いんじゃないかと思うのだがそうも行かなかったそうだ。

 

水属性は人の生活に欠かせない飲み水を出せるし、高位貴族には必ずついて回る必要があって……毒とか敵からの攻撃の巻き添えでいっぱい死んで?しかも内戦で火がよくついたから水魔法使いは駆り出されたり、流れ弾で死にまくった?だから水の魔法使いは戦闘しなくても数が減ったと。バーサル様言いにくそうだな。

 

今では……他の属性からも優しく扱われているらしい………さもありなん。

 

 

……………ん?これって国に保護される可能性ワンチャンあり?

 

 

――――いや、ないわ。そんな政争どろどろの国。命の保証がないし後ろ盾もない自分では使い潰されてコロリよ。

 




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