水魔法ぐらいしか取り柄がないけど現代知識があれば充分だよね?   作:mono-zo

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第280話 危険 な 魔導具

 

先程までいた場所ではない。闇の魔法で視界を覆われた可能性もあるが、肌で感じる空気が違う。

 

掃除中の埃っぽい臭いに氷を使って肌寒い空気だったはず。何より私が出した水の感覚も消失した。

 

床があるはずの足元に触れるとやはり水はない。闇の魔法ではそういう事はできないはず。なにかの魔導具に閉じ込められた?

 

自分がどこにいるのかも分からない。ただただ静かで誰もいない暗闇………。

 

 

「…………」

 

「<リヴァイアス、オルカス、ルカリムでてきて>あ、出てこれるんだ」

 

 

いや、精霊のみんながいた。イカの精霊が首筋からヌルリとでてくるのはちょっと怖い。ほのかに光る彼らだが闇の靄ですぐに見えなくなる。黒く色ついた雲の中にいる気分だ。

 

なんだか精霊がいつもよりも楽しそうだ。いつも通り浮いて自由にしているがはぐれないかと少し心配。

 

精霊が近くにいないとどこを見ても真っ暗だが……強制的に寝かされたとかではないようだ。

 

彼らが僅かに光ることでなんとなくどんな場所か見える。いや、ところどころ黒い靄があって靄の向こうに行かれると精霊の姿を見失う。扉の下側を潜っていこうとしたときに話していたからか、いつも後ろにいる杖はないようだ。

 

城の地下にはシャルルが政争で隠れていた闇の迷宮があると言っていたしそこにワープさせられた……のかな?

 

 

「っ!?<水よっ>」

 

 

全方向に水を思い切り放つ。ここにいるのがあの騎士の策だとすれば、今この周辺にはあの男のような下衆が配置されているかもしれない。

 

……あれ?周囲に水を放っても何も無い。

 

 

「…………なんだこれ」

 

 

とりあえず周囲には誰もいないみたいだ。少し何が起こっているか考え……決めた。

 

ワープのような機能で飛ばされたとして、もしもそれを誰も感知していなかったら?ここが誰も助けに来れない場所なら?

 

そう考えると「ずっと立ち止まる」という選択肢はない。幸いにして魔法は使えるし、精霊もいる。杖はないが。

 

 

「ここがどこかわかりますか?出口わかります?」

 

「<キュアッ>」

 

 

精霊たちに出入り口を聞いても誰も教えてくれない。闇の靄を泳ぐように楽しんでいるのが見て取れる。

 

 

「<水よ>」

 

 

水を出して周囲を少しずつ把握する。

 

敵が出ても、味方が来ても対処できるように。

 

先程までと全然違って魔法が使いやすい。その操作で周囲を把握する。

 

 

真っ暗だからか移動しながらも思考が巡る。

 

 

精霊が出てきてくれるし、私は安全だろう。杖はないが……それでも大抵の敵なら相手をできるはず。

 

…………もしかしたら襲撃は私に対してだけではないかもしれない。私の他にも襲撃が行っていれば――――エール先生は?シャルルは?みんなは?状況はどうなっているのだろうか?

 

そう考えると焦ってしまう。

 

だから進む。だけどこちらにもまだ敵がいるかもしれないし警戒はしないといけない。精霊がいてくれるが、1メートル先も真っ暗で見えない。

 

水で周囲を少しずつ知覚して……どこに何があるか頭の中に描いていく。真っ暗で、ほとんど何も見えないが、それでも少しずつ…………。

 

 

あれ?アホ毛光らせたら便利じゃないか?

 

 

 

 

 

 

 

使えなかった…………役に立たないアホ毛だな。

 

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

フリムが精霊の恩寵でか髪が光るようになって、試験を一時中止させた。

 

試験の採点に時間がかかるから別のことをやらせてほしいと言う意見もあったし採点の簡単な項目をやらせることにした。フリムがまた一つ精霊の恩寵と言うべきかあの動く髪が光るようになった事も祝ってやることにした。

 

俺は親代わりのようなものだ。臣下に聞くと娘や息子に慶事があったら大げさなぐらいに祝ってやると良いらしい。やったところで娘や息子が喜びはしないかもしれないが、それでもそういう思い出は残るそうだ。

 

俺にはそういうこともなかったしよくわからないが……それでも50年前の祝いでも嬉しそうに話す臣下を見るにしたほうがいいのだろう。道化のように喜んで、祝ってやろう。

 

 

なのに、暗部の報告によると――――……フリムがいなくなった。

 

 

主犯はリュビリーナ配下の令嬢であり、令嬢を厳しく調査したがリュビリーナが命じたわけではなく単独で考えて動いたようだ。

 

リュビリーナに即刻問い詰めに行くと長椅子に寝そべって茶菓子をつまんでいた。まるで警戒心がなく、俺が行くと喜んでいた。

 

 

「リーナ様、リーナ様!」

 

「ほぇ?…………っ!へ、陛下におかれましてはご機嫌麗しく!この菓子は流行のもので……いかがなさいました?」

 

「なんでもない」

 

 

無視して部屋を出た。まだリュビリーナには事態が伝わっていないらしい。

 

令嬢への調べは進んでいた。俺がフリムを祝おうと言うのにフリムが別の男性と付き合っていたら流石の俺もフリムに愛想をつかすのではないかと考えたらしい。

 

そしてフリムは醜聞を隠すためにもその男と婚姻、子供ごとき脅せばリヴァイアスごと手に入ると算段を立てた。

 

そこまでは無理でも「魔導具の暴走」もしくは「足を滑らせて転倒し頭が割れた」として事故死させる予定だったと…………。

 

 

俺の側近が、フリムを害そうとしている。

 

 

こんなことにはならないように、近衛の中でも仕組みを考えて……フリムとともに試験を受ける令嬢方は別派閥の人間で構成した。騎士も選抜したそうだが……1人は全くこの件に関与せず、1人は魔導具が目的、そしてもう1人が主犯と――――最悪の結果となった。

 

他にも掃除する場所ぐらいあったのに、わざわざ精霊が寄り付きにくい特別な場所を選び、水を防ぐ魔導具をも用意した。

 

絶対に族滅してくれる。この手で全員やってやる。――――違うな。今考えるべきはフリムをどう救うかだ。

 

 

異世界式拷問にかけさせた結果、現場にいた嘘の下手な騎士ラッツァーは吐いた。

 

 

使えば近くの迷宮に入ることのできる魔導具。――――保管されていた『死への旅路』は曰く付きの危険魔導具でそれを使われた。

 

近くの迷宮に飛ばされるだけの魔導具、大昔に杖自慢の命知らずがこれを使って100の迷宮を踏破して王となった。

 

地域によって迷宮の攻略難易度はある程度傾向が出る。恐らくは迷宮の中でも致死性の低い傾向の地域を攻略した冒険王。

 

迷宮は人の理を超える。迷宮から別の迷宮に移動するには10日程もある距離なのに迷宮内を半日も歩けば移動できることもある。

 

それほどの距離を短縮して移動できるのなら莫大な富を得るだろう。宝物も湧くしな。使えば何処にあるかもわからない迷宮の有無が分かるのも良い点だろう。

 

未発見の迷宮は魔物が溢れる可能性もあって危険でもあるし調査の観点でも使える。

 

 

莫大な利益を生むことができる魔導具だが……特別危険でもある。

 

 

冒険王は死に、その子孫がこれを使った。

 

 

その子孫は人に擬態する魔物に敗北し、その魔物は国の中枢から徐々に人が魔物に置き換わっていった。

 

結果としてその国には人はいなくなった。そして近隣諸国と戦争し、いくつもの国が滅んだ。

 

魔導具自体は誰かを迷宮に飛ばすだけのものだが……力あるものが使わねば悲惨な末路を迎える。

 

騎士はこれを使って自領のどこから湧くかわからぬ魔物の討伐をするの使おうと考えたそうだ。

 

初めは魔導具の事故で同僚が怪我をし、フリムがいなくなったと主張していたが……あの分厚く頑丈な扉に子供が通れるだけの穴が空いていて、辺りは水浸し、それとは別に氷の塊によって負傷していた騎士がいるなど、嘘があまりにも下手である。

 

もう少し時間をかけて証拠隠滅されれば分からなかったかもしれないが……リヴァイアスの杖が金属製の扉をガンガンと叩き、扉を開ければ壁や床にぶつかっていくなど荒ぶっていたことで異常は隠しようがない。あれだけの大音がすれば人もすぐに集まるというもの。

 

魔導具は近くの迷宮に人を飛ばすだけのもの、確実にフリムのいる場所は王宮地下にある闇の迷宮である。罠を踏めば魔物が出現することもあるが基本的に魔物はいない。

 

闇の迷宮で恐ろしいのが「地形」と「壁」だ。

 

植物に刃物が連なっているような壁があること、光の魔導具や火を使っても見えなくなることもあって……まともな場所ではない。

 

すぐに行こうとするエールたちを止めて、俺が直接行くことにした。

 

あの場所はどんなに戦闘力があっても意味が無い。魔法で地形の把握ができたとしても消耗も激しいし、進むだけでも困難だ。

 

だが俺なら見えるし問題はない。昔王位継承の際に閉じ込められたし、嫌な場所であるが…………今の俺にはルーラがいる。あそこはルーラの領域、どこに何があるか広い範囲で把握できる。

 

可能性は低いが事を起こした騎士の部下でも移動されていれば…………時間がないな。

 

迷宮は広いし、探すだけでも時間がかかる。――――急を要するだろう。

 

 

「開けろってんだよ!」

 

「お待ち下さい!今は会議中でして」

 

「わかってっから来たんだよ!開けろ!へーか!!」

 

「け、蹴らないでください!オギャー「ゴルァ!!」

 

 

外が酷く騒がしい。来客はポヨ令嬢だな。

 

最近は大人しかったと聞くが、扉が蹴破られた。

 

 

「これは問題になるぞ!わかっているのか!!?」

 

「うっせぇ!ボケが!!」

 

「なんだ?ついに俺をやりに来たのか?」

 

「ちげぇ!ダボっ……じゃない、へーかが!!」

 

「おい……」

 

「フレーミスがどこにいるかわかんねぇんだろ?俺ならどこにいるかわかるかもしんねぇ!!触んなボケがっ!!」

 

 

蹴りを入れられた騎士が倒れた。情けない。

 

しかし聞かねばなるまい。

 

 

「どういうことだ?まさかお前が関わっていたのか?」

 

「ちっげぇよ!ちっ……俺の魔法だよ」

 

「ポヨ令嬢の?確か闇の魔法の初歩しか使えないのではなかったか?」

 

「そうだ。まぁ俺は夢に関する魔法が使えてな……何にせよフレーミスを助けることができんだよ。……いやちげーな。出来るかもしんねーんだわ。俺を使えよ、へーか」

 

「ほう」

 

 

不良貴族と名高いこいつが、何故こうも……きっとフリムがなにかしたんだろうなぁ。

 

しかしこいつが嘘をつけるような性格ではないと知ってはいるが完全に味方とは限らない。

 

よく見極めをしないといけない――――もう二度と間違えないために。

 

腰の剣の重みを感じながら、そう思う。

 




そもそもお前がしっかりしろってシャルルのことを思ってる人、コメントや評価していってね!
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