水魔法ぐらいしか取り柄がないけど現代知識があれば充分だよね?   作:mono-zo

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第284話 夢 の つながり

 

今日も良くは眠れないだろう。

 

当たり前にいた家族が突然1人いなくなった。

 

あれから数年経ったが、何をしていてもどこにいようともふと思い出してしまって……どこか暗い生活をしている。

 

皆がこれじゃ駄目だとわかりつつも、なにも改善出来ない。

 

 

あの子はちょっと変わっていた。

 

 

真面目で、不器用で、一所懸命で……変な知識欲があった。

 

何かにのめり込む人はいる。

 

車にだったり、アイドルにだったり、ゲームにだったり、本にだったり、賭け事にだったり……人の楽しみ方は人それぞれだが、あの子は経済が好きだった。

 

夏休みの自由研究では「アメリカの禁酒法における経済の推移と政府の目指した目標と結果は?」これを中学で発表していた。

 

テレビでアメリカの家庭で出たテーマをそのままやってみたそうだが……なぜかのめり込んでいた。嬉しそうに研究結果を発表していたが当然周りの反応は微妙だった。しかし、困惑や冷ややかな視線もあったというのに全く気にかけずに、それどころかより経済や数字、いや、人の生活がもたらす何かを調べてよく夜ふかししていた。

 

まぁ、何が好きでも人様に迷惑をかけなければ良い。

 

それでいて健康で、幸せで、笑顔でいてくれればもっと……、もっと良かった。

 

 

だがあの子は死んでしまった。

 

 

エスカレーターで落ちてきた子を受け止め、代わりに頭を打って死んだ。

 

人として誰かを助けようというのはとても立派で、勇気ある行動だ。

 

称賛される行為だ。とっさでそんな事ができるのは家族としてもとても誇らしい。―――――だが、とても悲しい。

 

リビングで経済新聞を読んで、物静かで、妹と弟に困らされていたあの子はもういない。

 

これからだった。あの子はこれからだった。

 

生きてさえいてくれれば、もっとなにか楽しいことはあっただろう。

 

彼氏を作り、交際をして、結婚し、子供を作ったりもしたのかもしれない。

 

車に乗って、何処かにハイキングや登山をするような趣味もできたかもしれない。いや、あの子はインドアな方だししないか……。でも何かを新たにする可能性はまだまだあったのだ。

 

独り身でも良い。ずっとそのまま家にいて、家族と幸せにいてくれればそれだけで良かった。

 

 

きっと今日もあの子の夢を見る。

 

 

あの子が生まれた日か、あの子が運動会で隣のランナーと激しくぶつかって転んだ日か、成人式か、横で一緒にテレビを見ていた時か、お父さんの足臭いと言ってきた日か……わからないがとにかく寝よう。

 

私達が体を壊してしまえばきっとあの子も悲しむ。

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

 

「ん?だれだ?」

 

 

黒髪の外国人さんがなんか髪の青い子と話し合っている。髪がピンとたった小さな子。後ろ姿だが……変な夢だ。

 

黒髪の子が俺を指差し、青い髪の子をこちらに向かせた。

 

 

「おとーさん!おかーさん!!」

 

「え?あ?」

 

 

声も姿も違う。なのに呼び方があの子のままだ。

 

俺に抱きついてきて、涙を流している。

 

あれ?いつの間にか、横に嫁がいて、家族がいた。

 

横並びで困惑する俺たちにしがみついて泣く小さな子。

 

 

「先に死んでごめんなさい!心配かけたよね」

 

 

困惑しつつも何故か撫でることしかできずにいた。この子は……もしかしてあの子の来世なのだろうか?

 

いやいや、非現実的だ。

 

そもそも髪が青いってどういうことだろうか?意味がわからん。

 

 

泣き止んだ彼女はもそもそと「死んだけど元気だ」と言ってくれている。

 

これが夢だと理解しつつもつい言ってしまう。

 

 

「元気なのか?今幸せか?何か困ってることはないか?」

 

 

父親として、聞くべきことだろう。

 

すると頭の毛が少し動き、目線が軽く泳いでほんの少し俯いた。

 

 

「大丈夫ダヨ?」

 

 

あの子と同じ仕草、嘘が下手だ。

 

いや、夢だし、あの子のことを思い浮かべているのだから当たり前かもしれない。

 

静かに黙って立っていた黒髪の子が、聞いたことのない言葉で青い髪の娘と話し、足の先から消えていく。

 

こちらに向かって髪の青い子が声を上げた。

 

 

「私、幸せだから!」

 

 

それだけ言い捨てて彼女は消えて……朝が来た。

 

 

いつもの平日。いつもの……1人欠けた陰鬱さが残る朝食である。

 

しかし皆の様子がいつもとは違う気がする。こんなことを話すのもおかしな気はするが――――

 

 

「父さん変な夢を見てな、青い髪の子が――」「「「ブホッ!!」」」

 

「え?」

 

「「「…………え?」」」

 

 

コーヒーとコンポタとプロテインを飲んでた3人が盛大に噴いた。口元を拭うこともなく目を見開いてこちらを見ている。

 

同じ夢を見たらしい。

 

西洋顔の黒髪の美人がいて、青い髪の、それもピンと立った髪の子が一緒に夢に出てきたらしい。そこには家族も揃っていたと。夢の中の家族の並びすら全員一致した。

 

もしかしたら、あの子は生まれ変わって髪の青い子になったのかもしれない。

 

 

黒い髪の子の言語が分かれば、居場所を特定できるかもしれない。

 

 

幸せで安全か?の質問を言いにくそうにしていたのはそうじゃないからだろう。あの子は嘘が下手だった。

 

だいたい髪をド派手に青く染めさせるような親のいる家庭がまともなわけが無い。絶対に取り返してくれる。

 

 

久々に家族がまとまった気がする。

 

 

夢の話のはずなのに、今日は全員仕事を休んであの言葉がどこの国の言葉かを考えて調べまくった。

 

もしかしたら「あの子なりのSOSだったのではないか?」と考えると、もう誰も止まれなかった。手首のあたりもなにか貼ってあって……怪我をしたような形跡もあった。

 

夢で会えたんだからまた寝れば良いかもと考えて俺は先に寝る。

 

こんなにも気持ちが高ぶって眠れないのはいつぶりだろうか?

 

 

少なくともあの子のことを嘆くような……沈んだ考えはなくなっていた。

 




コメントと評価ありがとうございます!(15日にこれ書いてます。きっと来てるはず!w)
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